レビュー

このカオスっぷり、必見! Netflix「ドロヘドロ」イッキ見。ギョーザ食べたい

ドロヘドロ
(C)2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会

気軽に外出できない日々が続く昨今、気になっていた映像配信サービスに加入し、映画や連続ドラマなどをイッキ見している人も多いだろう。筆者がイッキ見して、いやぁ面白かったと深夜の自室で拍手喝采したのは、Netflixで先行配信、テレビでは今年の1月から放送された「ドロヘドロ」だ。Netflixでは現在も全12話がイッキ見できる。

原作を含め、アニメを既に楽しんだ人からすれば「いまさらオススメされるまでもない」と言われそうな名作だが、「ドロヘドロ」という、ちょっとキツめなタイトルゆえ、「なんかグロテスクな作品でしょ?」と敬遠している人は筆者のまわりにも多い。というか、ぶっちゃけタイトルからどんな作品なのかぜんぜんわからない。だが、そんな理由で見ないのは激しくもったいないオススメ作品だ。

いきなりわけがわからない

TVアニメ『ドロヘドロ』PV

「タイトルを聞いただけでは、どんな作品かぜんぜんわからない」と書いたが、1話の再生を開始しても、どんな作品かぜんぜんわからない。ツナギを着た金髪の女の子と、頭がトカゲな大男のコンビが、チンピラ風の2人の青年と戦っている。チンピラに見えた2人は、指先から黒い霧のようなものを出して攻撃してくる、そうは見えないが“魔法使い”だ。

トカゲ男は、魔法使いの1人をとらえ、その大きな口で頭をガブリ。すると、トカゲ男の喉の奥から、気味の悪い男の上半身が出てきて“お前は違う”と告げる。トカゲ男と金髪女に敗れた魔法使いは、魔法で地面に生まれた“ドア”から逃げる……。

トカゲ男ことカイマン
(C)2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会
ニカイドウ
(C)2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会

書き起こしていても、わけがわからない。続いてオープニングムービーだが、金髪女ことニカイドウが、猛烈な勢いでひき肉をぶっ叩いて餃子を作っている。なんだこのカオスなアニメは。

(C)2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会
(C)2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会
(C)2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会
TVアニメ『ドロヘドロ』ノンクレジットオープニング映像 (K)NoW_NAME「Welcome トゥ 混沌(カオス)」

はてなマークだらけだが、「どろろ」や「ゾンビランドサガ」など、ハイクオリティかつ異色のアニメを手掛けてきたMAPPAによる、3DCGと2Dの融合した見事な映像と、実力派声優陣の素晴らしい演技にガッツリつかまれて、再生が止まらない。

見ていると、徐々に話が理解できるようになる。トカゲ男の名はカイマン。魔法によって顔をトカゲにされてしまい、しかも記憶喪失。本当の顔と記憶を取り戻すために、相棒のニカイドウと、“自分に魔法をかけた魔法使い”を探しているようだ。

“自分に魔法をかけた魔法使い”かどうかを判断するのが、カイマンの口の中にいる謎の男。冒頭で“お前は違う”と言っていたヤツだ。つまり、カイマンは目当ての魔法使いが見つかるまで、倒した魔法使いに手当たり次第にかぶりついているわけだ。

ニカイドウはカイマンの恋人……ではなく、友人。食堂「空腹虫(ハングリーバグ)」の店主で、大葉のギョーザが名物らしい。ニカイドウの大好物で、とにかく大葉ギョーザを美味しそうにパクパク食べる。あまりによく食べるので、見ていると餃子が食べたくなってくる。

カイマンとニカイドウのいる世界(通称ホール)と、魔法使いのいる世界は異なり、2つの世界は“ドア”で繋がっている。仇の魔法使いを探すカイマン&ニカイドウは、やがて、魔法使いの大物“煙(えん)”へとたどり着く。

そして、煙の手下で殺し屋の“心(シン)”、心のパートナーで筋骨隆々な女性“能井(のい)”らと対峙していく事になるのだが……。

魅力的にもほどがあるキャラクター達

基本は“魔法使い VS やたらと戦闘能力が高いニカイドウ&カイマン”のバトルアニメで、指が折れたり、体がバラバラになったり、血が出たりと、ある意味、タイトルのイメージ通りな殺伐としたシーンも多い。

ただ、個人的には“キツすぎて目をそむける”ほどでもない。おそらく、3DCG+2Dアニメという映像だからかもしれない。グロテスクさよりも、スタイリッシュなカッコよさの方が強く感じるのだ。

“3DCGはキャラクターがツルッとしていて、綺麗過ぎて苦手”という人もいると思うが、この作品は3DCGでも“ジメッとして薄汚れた描写”が上手い。それでいて、細部まで描き込まれた2Dアニメほどグロテスクではない。3DCGの“綺麗さ”をうまく使いこなし、凄惨なシーンも、スタイリッシュに描いてみせる。「こういうCGの使い方もあるのか」と唸ってしまう。

(C)2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会

ニカイドウとカイマンが暮らす、薄暗くてゴチャゴチャした裏路地のような世界(ホール)の描写も、実に見事だ。一見、暗く見えるだけの路地にも、よく見ると様々なモノが描きこまれており、その情報量の多さが、画面全体から伝わる世界観に重厚さをプラスしている。洗練された、綺麗な魔法使いの世界との対比も強烈だ。

そんな薄暗い世界で、たくましく生きるニカイドウ&カイマンの日常、彼らと関わっていくホールの人々の暮らしぶりも、生き生きと描かれる。それゆえ、摩訶不思議な世界観にも関わらず、画面に不思議なリアリティがある。激しいバトルだけでなく、バイトに精を出すカイマンや、お店で腕を振るうニカイドウなど、キャラクター達の生活や、その時の表情、心理描写が細かく描かれているのも、この作品を魅力的なものにしているポイントだ。

TVアニメ『ドロヘドロ』PV第2弾

キャラクター自体も実に味わい深い。気づいたら顔がトカゲになっていて、記憶がないなんて、私だったらとれも耐えられないが、カイマンはカラッとした性格の持ち主で、そんな日々でも暗くなり過ぎず、前を向いて生きていこうとする気持ちのいい男として描かれている。まさかこんなにトカゲ頭の大男に感情移入できるとは思わなかった。

そんな彼を、食事(餃子)の面からもサポートするニカイドウは、大柄で身体能力も高い女性。友人としてカイマンを信頼し、心配しているが、時には女性として、その関係に悩みを見せる時もある。2人の微妙な距離感がまた、なんとももどかしくて魅力的だ。

悪役も憎めない。カイマンとニカイドウの前に立ちふさがる殺し屋・心は、義理堅く、弱い相手との戦いは好まない実にカッコいい男だ。そんな彼のパートナーである能井は、ニカイドウのさらに上を行く筋骨隆々な美女。性格も男勝りで、ケンカが大好きというキャラクターだが、心の事が大好きという、素直でかわいい一面もある。

1話の時点では“恋愛要素なんてあるのかこの作品に”と思えたのだが、話が進むにつれ、まさか2組のカップルの行く末にヤキモキしながら鑑賞する事になるとは……。

BD-BOX発売も開始、この続きが見れないのは耐えられない!!

“魔法使い VS ニカイドウ&カイマン”の構図は、ストーリーが進むにつれ、意外性と共に変化していく。

カイマンの口の中にいる男は何者なのか? というか、そもそも“口の中に男が住んでいる”ってなんなのか? カイマンは記憶を失う前に何をしていたのか? ニカイドウは食堂の店主なのになぜこんなに強いのか?

様々な謎が解けていく快感と、それが新たな謎を呼ぶストーリー展開に目が離せないまま、ダッシュで走り切るように鑑賞してしまう全12話。

原作は、2000年から18年にわたって連載された、林田球の同名コミック(全23巻)。国内外で熱狂的なファンを持つ原作だが、前述のようにカオス過ぎる内容で、映像化は生半可な覚悟ではできなかっただろう。しかし、見事なアニメ化に拍手喝采だ。

Netflixで全話見られるが、Blu-ray BOXの発売もちょうど5月20日からスタートした。第1話~第6話まで収録された上巻と、第7話~第12話に新作OVA「魔のおまけ」を収録した下巻で構成されており、発売日は、上巻の初回生産限定版が5月20日、通常版が6月17日。

下巻は初回生産限定版が6月17日、通常版が7月15日だ。価格はそれぞれ初回生産限定版が19,800円、通常版が17,800円となっている。

初回限定生産版には特典として、上巻にはニカイドウが劇中で使用しているスケートボードと同じデザインのフィンガースケートボード、ギョーザ男のステッカーなど。下巻には、心と能井のマスクがデザインされたスニーカーの紐に付けられるアクセサリー・オリジナルシューピアスなどが付属するそうだ。ステッカーが超欲しいです。

Blu-ray BOX上巻 初回生産限定版
(C)2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会
Blu-ray BOX下巻 初回生産限定版
(C)2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会

それにしてもこの12話、凄いところで終わる。「2期も待望」どころか、「この続きが見れないのは耐えられない」と頭をかかえるレベルだ。未見の方は、ぜひ週末にでもイッキ見して、私と同じ苦悩を味わっていただきたい。

アニメ「ドロヘドロ」Blu-rayBOX上巻&下巻 CM

山崎健太郎