レビュー

見放題、都度課金など複数サービス対応「SoftBank SmartTV」

ケータイ系スマートTV比較(2)。スマホ連携に課題?

SoftBank SmartTV

 携帯電話各キャリアが力を入れるスティック型スマートテレビ端末とビデオを中心とした配信サービス。第2回目は、ソフトバンクモバイルの「SoftBank SmartTV」を取り上げる。

 テレビのHDMI端子に接続することで、さまざまな動画配信サービスをテレビで視聴できるもので、エイベックスと共同で立ち上げた「UULA(ウーラ)」のほか、GyaOやTSUTAYA TVなど様々なサービスに対応する点が特徴となっている。

 ドコモ「dstick」(レビューはこちら)など、他キャリアの展開するスティック端末との違いはどうなっているだろうか。

【各キャリア端末のサービス比較】

キャリア端末対応サービス月額料金配信数その他機能操作
NTTドコモdstickdビデオ525円約7,000タイトル
約57,000コンテンツ
DLNA
YouTube
スマートフォン・タブレット
dアニメストア420円
※1
約300タイトル以上、約4,000話
※2
dヒッツ315円約100万曲
KDDISmart TV Stickビデオパス590円
※2
約2,000タイトル約7,000本YouTube
ニコニコ動画
Androidアプリ
スマートフォン・タブレット
専用リモコン(同梱)
うたパス315円
※3
約50チャンネル
LISMO WAVE各250円
※3
FMラジオ52局、ミュージックビデオ(Musiclips)
ソフトバンクSoftBank SmartTVUULA490円約60,000本-スマートフォン・タブレット
TSUTAYA TV都度課金約40,000作品
BBTV NEXTチャンネルごと課金50チャンネル
GyaO無料約2,000本
※3

※1一部個別課金あり
※2月額390円のスマートパスとセット契約すると合計で780円に割引
※3スマートパス会員は無料
※4スマートフォン・タブレットは約600作品約9,000話
※5開始当初は500本

見放題、都度課金、多チャンネルなど複数サービス対応のSoftBank SmartTV

 「SoftBank SmartTV」は、テレビのHDMI端子に接続することでさまざまな動画配信サービスをテレビで視聴できるサービス。SoftBank SmartTVのサービス開始に合わせてエイベックスとのジョイントベンチャーで立ち上げた「UULA」のほか、映画やドラマなどをオンデマンド配信する「TSUTAYA TV」、多チャンネル放送の「BBTV NEXT」、無料の動画配信サービス「GyaO」など複数のサービスに対応する。

 サービス加入者には専用端末が無料で送付され、月額490円の定額料金のみで端末を利用可能。このほかUULAやTSUTAYA TVなどの有料サービスを利用する場合には別途課金が発生するほか、申し込みから2年以内に解約すると契約解除料4,750円が発生する。また、サービスの利用には「S!ベーシックパック」の加入が必須となっており、ソフトバンクモバイル以外の端末では利用できない。

SoftBank SmartTVとRAZR M 201M

 スティック端末はアイ・オー・データ機器製で、型番などは設けられておらず「SoftBank SmartTV スティック」という名称がつけられている。Androidベースの端末だがGoogle Playを利用してアプリをインスト-ルするといったスマートフォン的な利用はできず、SoftBank SmartTVを利用するための専用端末になっている。

 本体サイズは70.5×32.1×10.4mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約29g。テレビ接続用のHDMI端子と給電用のマイクロUSBポートを搭載するが、NTTドコモの「dstick」のような設定ボタンは搭載されていない。無線LANはIEEE 802.11b/g/nに準拠する。

SoftBank SmartTVスティック
側面
背面。開発はアイ・オー・データ
本体カバーで覆われている
同梱品はUSBケーブルのみ

設定はテレビ画面にガイドを表示。無線LAN経由でスマホと接続

テレビに接続したところ

 SoftBank SmartTVの利用は、あらかじめMy Softbankでの申し込みが必要。契約が完了するとスティックを契約者住所へ送付するとのメッセージが表示され、自宅に端末が届く流れになっている。

 初期設定はテレビにスティックを接続し、マイクロUSBで給電を行なうと設定画面をテレビに表示。NTTドコモのdstickではBluetoothでスマートフォンと接続するが、SoftBank SmartTVの場合は無線LANで接続する仕組みだ。また、対応端末がAndroidのみだったNTTドコモと異なり、SoftBank SmartTVではiOSとAndroid用に2種類の設定方法が設けられている。

初期設定画面。SoftBank SmartTVアプリがオフの時は常にこの画面が表示される

 iOSの場合は設定時のみSoftBank SmartTVが無線LANアクセスポイントとして起動し、画面に表示されるSSIDに接続してからアプリを起動するとスティックを検出。Androidの場合は無線LAN接続の設定は必要なく、アプリを起動するとスティックを自動で検出できる。後はSoftBank SmartTVが接続する無線LANアクセスポイントの設定をスマートフォン側で行なったのち、ソフトバンクモバイルの加入状況を確認すると利用可能になる。

接続可能なスティックを自動で検出
スティックの接続するアクセスポイントを設定する

 なお、加入状況の確認は端末ごとに行なうため、利用する端末はソフトバンクモバイルに限られる。手持ちの端末で確認したところ、Nexus 7やSIMロックフリーの海外製iPhone 4S、Wi-FiモデルのiPad 2ではアプリのインストールはできても端末が認証されず利用できなかった。アプリの設定にはリモコンの追加登録も用意されているが、こちらも同様にソフトバンクモバイル回線のない端末では利用できなかった。

テレビとアプリに同じ画面を表示。アプリの操作をテレビ画面に反映

SoftBank SmartTVアプリ起動時のテレビ画面

 設定が完了すると、テレビとアプリの両方にSoftBank SmartTVの画面が映し出される。画面表示はテレビ、操作はアプリと分けられていたdstickに比べて、SoftBank SmartTVの場合はレイアウトこそ異なるもののテレビとアプリの両方に同じ画面が映し出され、アプリの操作が画面に反映される仕組み。アプリの操作に対してテレビ画面の表示は一瞬遅れるものの、操作に支障が出るほどではなく十分実用的に使える。

アプリ側はデザインが異なるが同じ画面が映し出される
サービス詳細の確認画面
設定画面
リモコンは追加登録が可能。ただし追加できるのはソフトバンクモバイルの回線が入った端末のみ
認証コードを発行してリモコンを追加する

 画面下部には現在対応しているTSUTAYA TVとUULA、GyaOへのアクセスボタンと、契約状況の確認や設定が行えるボタンの4種類を配置。多チャンネル放送サービス「BBTV」は3月24日現在まだ開始されておらず、メニューにも存在していないが、My SoftBankからはサービス開始前の先行申し込みが可能になっている。

 なお、対応サービスのうち、UULAとGyaOはSoftBank SmartTVアプリでの操作やテレビ視聴が可能だが、TSUTAYA TVは別途対応アプリのインストールやTSUTAYA TVのユーザー登録が必要。お勧めの番組としてSoftBank SmartTVにTSUTAYA TVの作品も表示されるものの、実際の操作はTSUTAYA TVアプリを起動して行なう。また、UULAに関しても利用にはUULAの契約が別途必要になるため、ソフトバンクショップやWebサイトなどでUULAに契約し、IDとパスワードを入力する必要がある。

動画再生機能はシンプル。スマホ版「UULA」とは連携せず

 SoftBank SmartTVアプリで視聴できるUULAとGyaOは共通の画面インターフェイスで、UULAの場合は画面下部に「TOP」「ミュージック」「ムービー」「検索」、GyaOの場合は「おすすめ」「新着」「カテゴリ」「検索」という4つのボタンが用意されている。検索はキーワード検索で、UULAの場合はミュージックやムービーそれぞれのカテゴリを指定して検索することもできる。

UULA
UULAのテレビ画面
UULA
UULAのアプリ画面
検索はジャンルを指定してキーワードで検索できる
GyaO
GyaOのテレビ画面
GyaO
GyaOのアプリ画面
GyaOはサムネイル画像の複数表示に切り替えることができる
GyaOのカテゴリ一覧
GyaOの検索はキーワードのみ

 動画の再生はUULAとGyaOで異なり、UULAの場合は字幕のありなしや画質が表示されるのに対し、GyaOは動画を選択するとすぐに再生が始まる。しかし、多くの動画では字幕のありなしが固定になっているほか、画質も「最高画質」のみとなっていて選択はできない。無線LAN接続が前提となっているため、画質も常に最高画質で視聴するということだろう。

UULA
UULAでキーワード「高校教師」の検索結果
動画選択中のテレビ画面
UULA動画選択中のアプリ画面
ドラマの場合は視聴したい回を選択
画質は「最高画質」で固定
再生中のアプリ画面

 動画の再生時はテレビにのみ動画が映し出され、アプリ側は早送りや早戻し、一時停止が可能なリモコン画面が表示される仕組みになっており、音量もアプリ側で操作できる。読み込みに多少時間がかかるものの、一度読み込みが終わればスムーズな再生が可能だ。ただし、マイページのような機能は搭載されていないため、ドラマなどの続きを見たい場合は検索機能などを使って毎回アクセスする必要があるほか、再生は毎回冒頭から始まることになる。

GyaO
GyaOの再生画面。「ストリーミング再生」を選択するとすぐに再生が始まる
再生中のアプリ画面

 元々PCやスマートフォン向けに提供されているGyaOはもちろん、UULAもスマートフォン単体で視聴することが可能。スマートフォンでUULAを視聴する場合はマイページ機能が備えられており、視聴履歴や続きから見る機能などが利用できる。また、動画の画質も「標準」「高画質(Wi-Fi)」「最高画質(Wi-Fi)」の3段階から選択可能だ。ただし、GyaO、UULAともにスマートフォンとSoftBank SmartTVとの連携機能は備えておらず、SoftBank SmartTV側で視聴した作品の続きをスマートフォンで視聴することはできない。

UULAスマートフォン
スマートフォン版UULAのトップページ
プレイリストの連続再生などSoftBank SmartTVのUULAにはない機能を搭載
特集ページも充実
再生時には画質を3段階から選択できる
再生中の画面
動画は端末内へのキャッシュ保存やプレイリスト登録が可能
続きから見る機能も備えるが、SoftBank SmartTVのUULAとは連動しない
再生履歴
続きから見る

TSUTAYA TVは視聴履歴や続きを見る機能を搭載

 TSUTAYA TVはUULAやGyaOとは異なる独自のインターフェイスになっており、トップページには配信作品のカテゴリやランキング、配信事業者のブランド別表示などメニューが豊富。定額プランのUULA、無料のGyaOと異なり都度課金となるTSUTAYA TVの場合はコンテンツ視聴の際に料金が表示され、確認の上で「レンタルする」を押すと視聴を開始する。

TSUTAYA TVのテレビ画面
再生前のテレビ画面
TSUTAYA TVのアプリ画面
検索などメニュー機能が豊富。マイページ機能も備える
再生前のアプリ画面
レンタルアイコンを選択すると価格と視聴期間を確認した上でレンタルを開始

 視聴中はSoftBank SmartTVアプリと同様、アプリで早送りや早戻し、一時停止、音量といった操作が可能だ。また、動画再生中はメイン画面に戻ることができないSoftBank SmartTVアプリに対し、TSUTAYA TVは映像を再生したままメイン画面に戻ることができる。

視聴中のアプリ画面
TSUTAYA TVは動画を再生したままメイン画面に戻ることができる
UULAの場合メイン画面に戻るには動画を終了する必要がある

 TSUTAYA TVの映像はマイページ機能が用意されており、レンタル中の作品や購入履歴、お気に入りに登録した作品などを確認できる。また、年齢設定のある成人向けビデオ作品を非表示にできるペアレンタル機能なども搭載されている。また、PCやAndroid、対応レコーダであれば同一IDを登録することで視聴履歴を共有することも可能だ。

マイページ機能
レンタル中の動画を確認できる
レンタルビデオ店のTSUAYAらしく料金表も搭載

定額視聴のUULAはミュージックビデオが中心

 配信作品数はサービスごと分かれており、定額サービスのUULAは約6万本、都度課金のTSUTAYA TVは約4万本、無料サービスのGyaOは約5,000本、3月中旬よりサービス開始予定のBBTVは50チャンネル。ただし、GyaOの配信作品数はサービス開始当初500本程度となる。

 TSUTAYA TVはテレビやレコーダが対応していればテレビ画面で視聴でき、PCやAndroid向けアプリも提供している。また、GyaOもPCのほかにiOSとAndroid向けアプリが提供されている。まだサービスが開始されていないBBTVも、チャンネルの内容は他の多チャンネル放送サービスとラインアップは変わらない。コンテンツだけを見れば、SoftBank SmartTVの特長はUULAがどんな作品を配信しているかということになるだろう。

 NTTドコモのdビデオやdアニメストアと異なり、配信作品の一覧などが公開されていないため詳細はわからないが、お勧め作品やサービスのキャッチコピーを見る限りUULAの配信作品数は音楽コンテンツが中心。動画コンテンツは「高校教師」「SPEC」などTBSオンデマンド系と「モテキ」「孤独のグルメ」などテレビ東京オンデマンド系ドラマ、「24」「BONES」「プリズン・ブレイク」といった作品が用意されており、dstickと似たラインアップになっている。

 それぞれのコンテンツごと特集も用意されており、ミュージックは「卒業式」「世界一周」といったテーマやアーティストごとのテーマでミュージックビデオを視聴できる。ムービーも同様に「頑張るヒロイン」「映画に学ぶパートナーシップ」といったテーマごとに映画作品がまとめられている。

 ただし、スマートフォンのUULAアプリでは特集やプレイリストに登録したミュージックビデオを連続再生できるのに対し、SoftBank SmartTVでは連続再生に対応しておらず、作品を1つずつ視聴する必要がある。マイページ機能も含め、機能面ではスマートフォンアプリに比べてSoftBank SmartTVは簡易版といった印象だ。

複数サービスの対応が魅力だが、使い勝手の面に課題

 見放題の動画配信サービスのみに限定されているNTTドコモのdstickに対し、見放題のUULA、無料のGyaO、都度課金で視聴できるTSUTAYA TVと選択肢の広さがSoftBank SmartTVの特長。多チャンネルのBBTV NEXTもまもなくサービス開始されるということもあり、1台でいくつものサービスを視聴できるのは魅力だ。

 操作についてもスマートフォンとテレビで同じ画面が表示されるためわかりやすい。dstickのリモコンアプリはテレビ画面を見ながらスマホを操作しなければいけないため、手元が狂って意図しないボタンを押してしまうこともあったが、手元にサービス画面が表示されるSoftBank SmartTVであればそうした心配もない。

 一方、気になるのはサービスの料金体系。端末は2年契約前提であれば無料にはなるものの、SoftBank SmartTVの利用は月額490円が必要。ここにUULAの月額490円を加えると月額料金の総合は980円と1,000円近くなってしまう。

 TSUTAYA TVでは、利用料金を1年間にわたって毎月490円を上限として値引きするキャンペーンをSoftBank SmartTV向けに展開しているが、これは作品のレンタル料金の値引きで、月額料金は変わらない。見放題サービスのUULAを前提で考えると他キャリアに比べて価格面でのパフォーマンスは下がってしまう。

 UULAを契約せずTSUTAYA TVだけを利用する、という場合も、実はNTT東日本で同様の端末「TSUTAYA Stick」が販売されている。利用可能サービスがTSUTAYA TVに限定されるが、端末を6,000円で購入すれば月額費用は必要ない。SoftBank SmartTVでは毎月最大490円を値引きするキャンペーンがあるため、レンタル回数次第ではSoftBank SmartTVのほうが安価になる可能性もあるが、単にTSUTAYA TVをテレビで楽しみたいだけであれば回線の契約が不要なTSUTAYA Stickの利用も1つの手だろう。

 現状で残念な点は、SoftBank SmartTVとスマートフォンの連携がされていないこと。UULAやGyaOにおいてテレビで視聴した続きから、スマートフォンで見るといった連携ができない。また、利用端末もソフトバンクモバイル回線が必須なため、手持ちのタブレットなどを利用した操作もできない。UULAも視聴履歴や続きを見る機能を搭載していないため、ドラマなどのシリーズ作品を見る時に不便だ。スマホ版のUULAにおいては、こうした機能を搭載しているだけに、SoftBank SmartTVでも視聴履歴関連の機能強化を期待したい。

甲斐祐樹