レビュー

パソコンやNexus 7/10で再生可能になった「dビデオ」

525円のドコモの映像配信がより手軽に

パソコンでのdビデオ視聴に対応

 NTTドコモとエイベックスが運営する定額制の動画配信サービス「dビデオ」が、5月16日に対応端末の拡大を実施。新たにPCでの視聴が可能になったほか、ドコモ以外のタブレットである「Nexus 7」「Nexus 10」にも対応した。

 dビデオはもともとNTTドコモのスマートフォンやタブレットでのみ視聴できる専用サービスとして提供されていたが、2013年に入って視聴環境を次々に拡大。3月にはdビデオを含む動画配信サービスや音楽配信サービスをテレビで楽しめるスティック型端末「dstick」を発売、同月にはdビデオを含むNTTドコモのサービスが回線契約不要で利用できるWi-Fiタブレット「dtab」を発売している。

 また、AV WatchのNTTドコモへのインタビューでは、今後dビデオなどの各種サービスをNTTドコモの端末以外でも利用できるようにする、というキャリアフリーの方針を示している。そうした利用環境拡大の流れの中で、まずはPCやNexusシリーズへと対応、NTTドコモ回線を利用せず視聴できる環境がさらに拡大された格好だ。

WindowsとMacを幅広くサポート。Nexus 7/10も対応端末に

 対応するパソコンのOSは、Windows XP/Vista/7と、Mac OS X。Windows、Macの両方に対応し、視聴可能ブラウザもInternet Explorer 9以上、Firefox 15.0.1以上、Chromeと幅広く対応しており、MacではSafari 6.0.3以上もサポート。

 未だに対応ブラウザがIEのみという「iモード.net」、同じくIEのみの対応かつ推奨環境がIE7止まりという「ドコモオンラインショップ」など、これまでNTTドコモが提供するWebサービスのブラウザはお世辞にも対応が充実しているとは言いがたかっただけに、Mac OSも含めた対応ブラウザの充実はユーザーとしても嬉しいところだ。

 対応タブレット端末は、GoogleのNexusシリーズ「Nexus 7」「Nexus 10」の2機種。Google Playで配信されている「dビデオプレーヤー」をインストールすることでdビデオの視聴が可能になる。dビデオをNTTドコモのスマートフォンやタブレットで視聴する場合は、無線LANを利用して視聴する際でもSIMカードを装着している必要があるが、Nexus 7やNexus 10ではNTTドコモのSIMカードを必要とせず、無線LANのみでdビデオが視聴できるようになる。

 なお、PCやNexus 7などでの視聴はあくまでサブ端末として利用できるものであり、PCやNexus 7だけでdビデオを視聴できるわけではない。利用にはNTTドコモおよびdビデオの契約に加えて、NTTドコモのSIMを装着したスマートフォンやタブレットをメイン端末として登録する必要があり、その他にPCやNexus 7などの端末を最大で5台まで登録して視聴できる仕組みだ。

 5台の範囲内であれば料金は変わらず、月額525円で複数端末での視聴が可能。ただし、同時に複数の端末でdビデオを視聴することはできないほか、複数端末を登録した場合はダウンロード動画のライセンスが変更され、視聴時間が3時間に制限される。

【dビデオ】
対応端末NTTドコモスマートフォン/タブレット
パソコン
Nexus 7/10
dStick
月額料金525円
登録可能台数5台
同時利用台数1台
番組数約11,000タイトル、73,000コンテンツ以上
ドコモ回線契約必要
(dビデオ契約のある回線のdocomo IDが必須。
利用端末にドコモSIMが入っている必要はない)

*太字は今回追加された端末

PCからはブラウザベースで再生。端末登録はブラウザ単位

PCでdビデオサイトにアクセスするとPC対応をポップアップ表示

 PC対応を開始した5月16日からは、WebサイトにアクセスするとPCサイトからの視聴に対応した旨がポップアップ表示されるほか、Webサイト上には「PCで視聴する」リンクが追加され、PC専用の視聴画面にアクセスできる。

 PC専用画面では、タブレット向け表示と同じデザインを採用。動画が「オススメ」「新着」「ランキング」などカテゴリごとに表示されており、カテゴリ名横の×ボタンで表示数を減らすこともできる。タブレットではフリック操作で横に移動することが可能だが、PCの場合はマウスカーソルを画面左右に置くと左右の矢印ボタンが表示され、左右の移動が可能になる。

PCサイト画面のデザインはタブレット向け表示と共通。マウスカーソルで左右に移動できる

 動画の視聴にはdocomo IDでのログインが必要。docomo IDでログインした後、視聴する端末を追加登録することで動画の再生やマイリストなどの機能が利用可能になる。

docomo IDでログイン後、PCを視聴端末として登録

 視聴はすべてブラウザベースとなっており、専用ソフトのインストールなどは必要ない。動画の再生は別ブラウザがポップアップで立ち上がり、Silverlight形式で動画が再生される。なお、スマートフォンやタブレットでは画質を3段階から選択できるが、無線LANでの接続が前提となるPCの場合は、常に最高画質で再生される。

続きの再生や「あとでみる」機能が利用できるマイリスト
動画の詳細。再生ボタンを押すと再生が開始され、画質の選択などはできない

 動画はブラウザのサイズに応じて可変するほか、フルスクリーン再生にも対応。変わったところでは、動画のみを非表示とし、動画タイトルの表示と音声再生のみにすることも可能だ。

動画の再生画面
フルスクリーン再生
動画だけを非表示にして再生。音声は通常通り流れる

 タブレット向け表示とデザインが同じこともあり、ブラウザベースでの動画再生やフリック操作の代わりにマウスカーソルで操作するといった違いを除けば、利用感はタブレットとほぼ変わらない。視聴履歴も自動で保存されており、他の端末で視聴した続きをPCで見ることもできる。

 なお、PCでの視聴はdocomo IDでログインし、PCを視聴端末として登録する必要があるが、登録はブラウザ単位で行なう仕組みになっており、同一のPCでもChromeとFirefoxはそれぞれ1台分の端末としてカウントされる。視聴登録は他のブラウザや端末からも解除可能なため、簡単に変更可能だ。

登録端末は設定から変更可能。ただしNTTドコモ端末は常に1台登録されている必要があり削除できない
視聴できる端末は常に1台のみ。他の端末で視聴している場合はアラートが表示される

 ブラウザベースで視聴できるため、機能はシンプルながらも使いやすい。画面サイズも自由に可変できるため、フルスクリーンでの視聴はもちろん、作業しながら動画をながら見するという使い方にも便利だ。

Nexus 7は専用アプリが必要。SIM不要で動画を再生

ホーム画面

 Nexus 7の場合は、前述の通りGoogle Playで「dビデオプレーヤー」をインストールして視聴する。NTTドコモのスマートフォン向けアプリ「dビデオ」とは別のアプリとなっており、「dビデオ」アプリではNTTドコモのSIM装着を必ず確認するが、「dビデオプレーヤー」は対応端末であればSIM回線の確認なくdビデオが利用できるようになっている。

 SIM確認の仕様を除けばスマートフォン向け「dビデオ」とアプリの仕様は同一で、docomo IDでログインすることでdビデオの各種動画を視聴可能。使用感はNTTドコモの端末と変わらず、続きの視聴やマイリスト登録などの機能も利用できる。

マイリストや再生時にdocomo IDのログインを要求
docomo IDでログイン
初回ログイン時はデバイスを追加登録する
デバイス登録画面
視聴済み動画や「あとでみる」登録した動画を一覧できるマイリスト機能

 動画の再生は、NTTドコモ端末の場合プリインストールされている「メディアプレーヤー」で再生するが、dビデオプレーヤーの場合はアプリに内蔵されたプレーヤー機能で再生。デザインは多少異なるが基本的な機能は同一で、画質を3段階から選択できるほか、画面の回転ロック機能も備える。

起動時にはおすすめの動画がポップアップ表示される
動画再生の流れ。通常のdビデオアプリと違いは無い
動画再生プレーヤーはdビデオプレーヤーアプリに内蔵
NTTドコモの「メディアプレーヤー」。デザインは異なるが機能は共通

 あくまでNTTドコモ回線の契約が前提で、端末を追加登録するという前提はあるものの、SIM不要でdビデオを再生できるという点はdtabと同様。ただし、dtabはdビデオを含め、dアニメストアやdヒッツといった定額制サービスも利用できるが、Nexus 7で利用できるのは現時点でdビデオのみという点が異なる。

 なお、Nexus 7やNexus 10など新たに対応端末として追加された製品以外では、引き続きdビデオは視聴できない。別キャリアであるKDDIの「HTC EVO 3D ISW12HT」で試したところ、Google Playからdビデオプレーヤーはインストールできるものの、アプリ上で表示される画面がPC扱いとなり、対応外の端末と表示された。

KDDIの「HTC EVO 3D ISW12HT」にdビデオプレーヤーをインストールしてアプリを起動するとPC向け画面が表示されアクセスできない
ドコモ「ARROWS V F-04E」にSIMを装着せず、dビデオプレーヤーをバックアップデータ経由でインストールしたが、再生はできず

 また、NTTドコモの端末の場合はこれまで通りSIMの装着を判断し、SIMが未挿入のスマートフォンやタブレットからは視聴できないようになっている。「dビデオプレーヤー」はGoogle Playで非対応端末と表示されてインストールできず、別端末でバックアップしたアプリデータをインストールしても「dマーケットアプリ対応機種」として認識され、通常のdビデオアプリを利用するよう促されて視聴できなかった。

PC対応で視聴機会が格段に増加。dアニメなどの対応も期待

 テレビで視聴できるdstick、回線契約不要のdtabに続き、PC対応とNexus対応でさらに視聴環境を拡大したdビデオ。ノートPCなどは解像度だけ見るとハイスペックモデルのスマートフォンやタブレットに劣るケースもあるものの、画面サイズの大きなPCは動画をより迫力ある環境で楽しめる。PCであれば画面の隅に動画プレーヤーを表示しながらブラウジングするなど、「ながら見」しやすいのも嬉しい。

 また、パソコンからテレビへのHDMI出力も可能だった。より大画面で楽しみたい場合は、テレビでも見る、という選択もやりやすくなる。

 一方、これだけ対応端末が充実したことで、視聴環境の制限がやや厳しく感じる面もある。例えばdビデオの利用に必須であるスマートフォンを1台登録した上で、dstickやdtabといったNTTドコモ公式の端末を登録、さらに今回から対応を開始したPCを登録すると、登録台数はすでに4台。ヘビーユーザーの環境ではあるものの、自宅用のPCとモバイル用のPCを別途登録したり、Nexus 7を登録したりと端末を増やしていくと、5台という上限に達してしまう。登録端末数の拡張は期待したいところだ。

 対応端末という点では、他社端末のNexusシリーズでdビデオが視聴できるのに、NTTドコモの端末はSIMがなければ視聴できないという仕様も残念だ。機種変更などで今は使っていないスマートフォンやタブレットをdビデオなどのサービスに利用できれば、ユーザーの利便性も向上し、NTTドコモの他のサービスを契約するきっかけにもなるだろう。

 と、さらなる対応を望みたい部分はあるものの、今回のPCやNexusシリーズの対応はユーザーにとってデメリットになる要素はなく、視聴環境の拡大という点では歓迎したい。今回はdビデオのみの対応だが、今後はぜひもう1つの定額制動画配信サービスであるdアニメストア、さらには音楽配信サービス「dヒッツ」などのPC対応にも期待したい。

甲斐祐樹