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ひと足お先に視聴。66年の時を経て蘇る『ガス人間』の魅力
2026年6月29日 08:00
Netflixが7月2日から配信を開始する『ガス人間』を先行視聴した。
特撮ファンなら「おっ」と身を乗り出し、そうでない人は「なにこのタイトル?」とびっくりしそうだ。
この作品は、1960年12月に東宝が公開した映画『ガス人間㐧1号』のリブート作品。映画から全8話のドラマへと姿を変えた。
知る人ぞ知る作品がどう変わったのか、一足先にお伝えしたい。
シンプルな特撮映画が重厚なドラマシリーズへリブート
『ガス人間㐧(第)1号』は、前述のように、東宝による映画作品だった。監督は本多猪四郎、製作は田中友幸という、『ゴジラ』でお馴染みのタッグによる作品だ。
ガスに変身できる人間が銀行を襲う……という事件からスタートする特撮ものであり、東宝特撮ファンには馴染み深い作品でもある。
『ガス人間㐧1号』はもともと大きな予算で作られた作品ではなく、アイデアを活かして作られたB級映画ではある。原案はアメリカの脚本家であるジョン・メレディス・ルーカスとされているが、1950年代から1960年代らしい、いい意味で「荒い」設定の作品だ。
だが、本作は本多猪四郎の代表作と言っていい。土屋嘉男扮するガス人間と、没落した日舞の家元を演ずる八千草薫の関係が印象的な作品だ。特に八千草薫の美しさが強く心に残る。もちろん本作も、Netflixで配信中だ。
リブート作品である『ガス人間』は、ガスに変身する人間が東京をパニックに陥れるという、いかにもホラー映画的でシンプルなギミックは同じだ。
だが同じであるものの、全8回のドラマとして構成されており、さらに複雑で深みを増した内容になっている。脚本とエクゼクティブプロデュースを手がけるのは、映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』のヨン・サンホ。同じく配信向けホラーとしてヒットした『ガンニバル』を手がけた片山慎三が監督を務めている。
主人公であるガス人間を追う刑事の岡本賢治を小栗旬、同様にメディアの側から事件を調べる記者・甲野京子を蒼井優が演じている。実はこれも『ガス人間㐧1号』からの引用。映画版でも刑事・岡本賢治(演じるは三橋達也)と、その恋人で新聞記者の甲野京子(佐多契子)が物語を引っ張る軸であり、『ガス人間』でも継承されている。
しかし、二人の関係やガス人間との関わりも、映画版とはまったく違う様相を呈してくる。どう違うかは、本編を見てのお楽しみ。
そして、映画版にはなかった新たな物語として軸を構成するのは、広瀬すずと林遣都が演ずる動画配信者兄弟だ。人気配信者とはほど遠く、再生回数を伸ばせない底辺の存在として「バズる」ネタであるガス人間に関わっていくことになる。1960年ではあり得ない、そして、配信者という存在が当たり前になったがゆえにあり得る「厳しさ」を背景にした描画となっている。
ドラマになってより複雑な背景が描けるようになり、さらに、現代という「過去のさまざまな歪みをくぐり抜けてきた結果」をベースとした社会を題材にすることで、シンプルだが魅力的なB級特撮映画の傑作は、「ホラーの手法で社会を描くドラマ」へと姿を変えている。
8本で結末を迎えるミニシリーズ的な作品なので、安心して「イッキ見」して頂きたい。
VFX以上に「ロケ地の幅広さ」が魅力
ドラマと同時に本作の大きな魅力となっているのが、多数のVFXを軸に据えた作品であるのも魅力の1つ。ガス人間を描くのにはもちろんCGが使われる。圧倒的に強く、人々をなぎ倒すガス人間の姿は、恐ろしくもあり清々しくもある。
だが、ガス人間自体の「モンスター的魅力」以上に、東京という舞台の中でガス人間が縦横に飛び回る様が印象的だ。
東京駅前での大規模なロケに加え、関東圏の様々な地域が登場。印象的な風景にVFXを加え、広がりのあるドラマが構成されている。視聴後にNetflixからの資料を見ると、ロケ地は約120か所! ロケ地確定のためのロケハンは、1,000箇所を超える地域で行なわれていたのだという。
日本各地を舞台にした作品、というわけではないのだが、都心とその周辺がもつ様々な顔が劇中で描かれ、そのこと自体が、作品に深みを与えている。非常に贅沢な作りのドラマといえるだろう。
残りの「変身人間シリーズ」のリブートは実現するのか?!
『ガス人間㐧1号』は、東宝製作による「変身人間シリーズ」と呼ばれる作品群の1つだった。1958年公開の『美女と液体人間』、1960年公開の『電送人間』『ガス人間㐧1号』の3作が含まれる。
今回東宝は、Netflixと組んでその1本をドラマ化した。
さて、残る2本は? 「変身人間シリーズ」には入っていないが、1963年には『マタンゴ』もある。
本作がヒットしたら、その辺の「現代リブート」もあったりするのだろうか……?
まずはNetflixで配信中の「変身人間シリーズ」3作、そしてドラマ『ガス人間』を見て、この先を期待しておきたい。

