西田宗千佳のRandomTracking
注目はカメラの進化と「音」。iPhone 7/7 Plusファーストインプレッション
2016年9月8日 10:05
9月7日(現地時間)アップルは、米・サンフランシスコで発表会を行ない、iPhone 7シリーズを初めとした新製品群を公開した。発表会の模様はのちほど伝えるが、まずは現地でのハンズオンでチェックした、新製品の情報についてお伝えしたい。スペックや価格などについては、別掲の記事をご参照いただければ幸いだ。
iPhoneはディテール変更で印象も変化
まずはiPhone 7シリーズから。iPhone 7シリーズは、iPhone 6世代と同様、ディスプレイサイズが4.7型の「iPhone 7」と、5.5型「iPhone 7 Plus」の2ラインナップ構成になる。ストレージ容量はどちらも、32GB、128GB、256GBになり、ぐっと増えた。
カラーはどちらも、ゴールド・シルバー・ローズゴールド・ブラック・ジェットブラックの5色。ジェットブラックが今回からの新色で、全体を磨き込んだ光沢仕上げになっている。ジェットブラックはハイエンド扱いらしく、ストレージ容量について最廉価の32GBモデルがなく、128GB・256GBのみになる。
デザイン面から言えば、サイズ感はiPhone 6世代と同じで新鮮味はない。だが、背面を見るとちょっと変わった印象を受ける。アンテナを分割するための樹脂のラインが目立たない形に変わっていること、レンズの突起部の仕上げが角を取った丸い形に変わっていることが理由だ。
レンズの突起については、正直「なくなって欲しい」。だが、iPhone 6世代の「いかにもパーツが出ています」という仕上げから変わったので、印象としては少し良くなった。iPhone 7 Plusはデュアルカメラ採用になったことで、カメラ周りはより目立つデザインになっているのだが、ここの仕上げも角を取った丸い感じだ。特にジェットブラックでは、全体の光沢感も相まって、ずいぶんルックスが変わった印象を受ける。
見た目ではあまり差を感じないが、ホームボタンは物理的なボタンからタッチセンサーに変わった。ただし、背後に振動をコントロールする「TAPTIC ENGINE」が入っていて、働いたことが振動でわかる仕組みになっている。押し込み感はないが押した感じがするという、ちょっと不思議な感触だ。少なくとも、これで操作感が落ちた、とは感じなかった。なお、TAPTIC ENGINEによる押し込み感は、設定で強さを変更できるようになっている。
また、TAPTIC ENGINEはアプリでも使うことができるので、ゲームで振動を伝える、といった使い方もできる。過去のiPhone用ゲームでも振動は使われていたが、「レースゲームで路面の感じを伝える」といった要素にも対応可能、とのことだ。
同様に見た目ではわかりにくい点として、今回から「防水」「防塵」が謳われることになった、という点がある。過去のiPhoneは飛沫程度ならば耐えるよう設計はされていたものの、防水ではなかった。日本を含め、アジア発のスマホでは防水の製品が先行していたので、ここはiPhoneが追いかけた部分、といっていい。保護等級はIP67。防塵かつ水没に耐える、という。ただし、お風呂に入っても大丈夫、といっているわけではないので過度な期待は禁物だ。
さて、iPhone 7について、日本向けの機能としてもっとも注目を集めているのが「FeliCa」対応だろう。ハンズオンで試すことはできなかったものの、アップル関係者に詳細をきくことができた。この辺は少々複雑なので、別記事で説明している。
今回、秋の新製品では「iPhone 7シリーズ」と「Apple Watch Series 2」がFeliCaに対応しているのだが、この「FeliCa対応」が行なわれているのは日本向けに出荷される製品(iPhone 7の場合、大手3キャリアを介して販売されるものと、アップルから販売されるSIMフリーモデル)のみであり、海外版のiPhone・Apple WatchはFeliCaに対応しない。この点は注意が必要だ。
ヘッドホン端子廃止、ワイヤレスヘッドホン「AirPod」登場
内蔵スピーカーはステレオになり、横にして使うことで音の広がりが増すように感じられる。ここは、他のスマートフォンでは増えている構成で、iPhoneでも「ようやく」というイメージの方が強い。
音という面では、慣れ親しんだ3.5mm径ヘッドホン端子がなくなった、ということが気になるところだ。厚みに関しては過去のモデルと変化なく、なくなったことは正直、ユーザーに直接的なメリットがない。あえて言えば「防水」だが、それもヘッドホン端子をつけていてもキャップレス防水に対応するメーカーはあり、できないわけではない。ユーザー目線で言えば「一歩後退」だ。
今回より同梱のヘッドホンがLightning直結のものになり、3.5mm径ヘッドホン端子とLightningを変換するコネクターも同梱される。だからすぐに使えなくなる、ということではないものの、充電しながら同時に音楽を聴く際、3.5mm径ヘッドホン端子を使っている人は不便になることは間違いない。ここは評価が分かれるだろう。
一方、アップルが未来として提示しているのは「ワイヤレス」である。10月下旬発売予定として、左右まで完全にワイヤレス化した「AirPods」を発売する。AirPodsは非常に小型な完全ワイヤレスヘッドホンで、現行のEarPodsのケーブルをなくしたような形状になっている。
指向性マイクが入っているため通話やSiriにも使える他、赤外線による接触センサー、振動センサーなどを統合して処理をするAirPod用プロセッサー「W1」を内蔵している。そのため、片耳だけ外すと音楽が止まり、入れると再び再生する、といった動作が実現されている他、2タップでSiriを呼び出すことも可能だ。片側ずつ使うこともでき、その場合にはバッテリーが「より長持ちする」という。充電器を兼ねたケースはインテリジェントなペアリング機能を持っていて、蓋をあけるだけで近くにあるiPhoneとペアリング作業が行えるようになっている。ケース内には磁石が入っていて、ケースをひっくり返してもAirPadは落ちてこない。なかなかよく考えられた構造だと感じた。
ハンズオン会場はうるさく、音質を語るには不適切な環境だったので、音質評価はまたの機会としておきたいが、印象でいえば悪くなかった。CodecはAAC、ということなので、iPhone向けのBluetoothヘッドホンでは標準的な仕様である。16,800円という価格帯で完全ワイヤレスであることを思えば、十分検討に値するものと思える。
カメラの性能は大幅アップ、特に「デュアルカメラ」に注目
性能の面で大きく進化したのがカメラだ。以前は「Plus」のみだった光学手ぶれ補正機能が全機種搭載になり、f値も2.2から1.8になった(iPhone 7 Plusは望遠のみf 2.8)。
しかし、なによりも違うのは画質だ。画面から受ける印象だが、6sシリーズとはかなり異なる。詳細はレビューの時に検証するが、スマートフォン用のカメラとしては傑出したクオリティになった、と感じる。撮影後の処理がかなり変わり、それが画質向上にプラスに働いている、と感じる。
iPhone 7 Plusでは広角と望遠のデュアルカメラになり、2倍ズームは光学ズーム、そこから10倍まではデジタルズームになっている。UIも改善され、いままでよりも使いやすい印象を受けた。実際のところ、デュアルカメラ構成はズームだけに効いているわけではなく、常に2つのカメラの映像を合成しつつ最適な映像を作る、という方針で動いているようだ。それが画質向上に寄与していると考えていい。
iPhone 6s世代以上に、「7と7 Plus」では、カメラに画質の差が出そうだ、という印象を受けた。