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【BUILD 2017】Windows 10は秋に進化。MR用ハンドコントローラ登場、iTunesがStoreに

 5月11日(現地時間)、米マイクロソフトは開発者会議「BUILD 2017」2日目の基調講演にて、Windows 10の今後について発表した。

2日目の基調講演に登壇した、米Microsoft Windows & Devices担当上級副社長のテリー・マイヤーソン氏

 話題の中心となったのは、秋に予定されている、次のWindows 10の大型アップデート「Fall Creators Update」と、「Windows Mixed Reality(MR)」、そして、マイクロソフト製アプリケーションが活用する新しいデザイン「Microsoft Fluent Design System」、そしてスマートフォンも含めたマルチデバイス対応の大幅な強化と多岐に渡った。別途詳報をお伝えするが、第一報として、Windows 10とWindows MRに絞ってお伝えしたい。

次期Windows 10アップデートの名称は「Fall Creators Update」に

続く「Creators Update」、人物に追従する動画編集アプリ「Story Remix」

 次期Windows 10大型アップデートは「Fall Creators Update」という名前でわかるように、現在のCreators Updateの流れを汲むものだ。Creators Updateでは「Paint 3D」が登場したが、Fall Creators Updaateでも「なにかを作る」マイクロソフト製アプリが追加になる。

「Story Remix for Windows 10」と名付けられたこのアプリは、動画や3Dオブジェクトを使った「ストーリー」を作るためのものだ。動画編集ソフトに近いが、より様々な要素を追加できる。動画や写真を並べて自動編集する、という、最近増えてきたタイプのアプリだが、完成度はかなり高い。これがOSに付属の無料ツールだと思うと、なかなか興味深い。

Story Remix for Windows 10。写真や動画を指定すると自動的に、簡単に動画ができる
Story Remix for Windows 10コンセプトムービー

 ユニークなのは、映像に写っている人物を認識して働く部分だ。例えば、その中の一人にハイライトして編集そのものを変えたりもできる。また、ペンで動画の一コマに書き込んだメモが、動画を再生すると人にくっついて動いていったり、動画内に合成した3Dオブジェクトが人などの動きを認識し、追従して動く……といった、かなり高度な合成を簡単に行なえるのもポイントだ。

動画の中から登場する人の顔を認識し、それに合わせて動画の構成を変えたり、インデックス化したりできる。すべてマイクロソフトの画像認識AIを活用
動画に書いたメモ書きを人がおいかけたり、3Dオブジェクトを動画内に自然に合成したり、といったことが簡単にできる

 Story RemixはiOSやAndroidなど他のデバイスにも提供され、それらの機器で撮影したり編集したりしたものをクラウド経由で同期して利用することも可能。今回、マイクロソフトはWindowsと他のデバイスとの連携を強化しており、その一環でもある。

Story RemixはiOS版も用意され、Windows版と連携する
今年はWindows 10と「自社製OS以外でも、そうでないものでも」すべてのデバイスとの連携を強化する

Windows MRは年末に本格展開、モーションコントローラーとセットで399ドル

 また、マイクロソフトのVR・MR(Mixed Reality)技術「Windows MR」についても、今年の年末から個人向けに本格展開することから、このFall Creators Updateが行なわれた状態で利用するのが基本になる。

 VR/MR関係でもっとも大きなトピックは、Windows MR用の「Windows Mixed Reality motion controllers」が登場したことだ。これまでWindows MRでは、基本的な操作に一般的なゲームコントローラーを使っていた。だが、他のVRプラットフォームを使えば、「手」を仮想空間の中に持ち込むことには多様な利点がある。

モーションコントローラーの「Windows Mixed Reality motion controllers」

 このモーションコントローラーは、6軸の加速度センサーを備えており、Inside-Out方式のセンサーを使ってポジショントラッキングをする。すなわち、ヘッドセットと同じく、外部にポジショントラッキング用機器を設置する必要がない。

 さらに、価格が「Windows MR用HMDとバンドルで399ドル」とかなり安い。

 個人向けへの提供は「年末」となっているが、アメリカとカナダ向けには、本日からAcer版(299ドル)とHP版(329ドル)のHMDが「開発者向け」として提供されることも発表された。本日からMicrosoft Storeにてプレオーダーが開始され、出荷は「夏の終わり頃」とされている。

AcerのHMDにコントローラ同梱

 残念ながら、日本での提供予定は現状ではわからない。日本マイクロソフト広報によれば「各ハードウエアベンダーの製品になるので、各社からのアナウンスをお待ちいただきたい」とのことだ。

Windows StoreにiTunesが! 狙いは「10 SとWindows Store」推進

 AV的な大ニュースとしては、Windows StoreにてiTunes for Windowsが配布されることがアナウンスされた。先日、SpotifyのクライアントアプリがWindows Storeで配布が開始されたのだが、それに続くものになる。

Windows StoreにiTunesが!

 背景には、5月2日に発表されたWindows 10の新エディション「Windows 10 S」の存在がある。Windows 10 Sは教育市場などを想定し、管理系機能を強化したWindows 10。安全性確保のため、従来のWin32 APIで作られたアプリ(Windows 10 Desktopアプリ)のインストールができない。アプリはすべてWindows Storeからインストールする。

 そのため、多くの人が不満なく使えるようにするには、いかにWindows Storeを充実させるかがカギだ。

 Windows Storeで配布されるアプリには、Windows PhoneやHoloLensを含むマルチプラットフォーム環境での動作を意識した「Universal Windows Platform(UWP)で作られたもの」と、既存のWindows 10 DesktopアプリをWindows Storeで配布できるように「Desktop App ConverterでコンバートしたUWP」の2種類がある。両者ではアプリの見た目や挙動が違うのだが、今回、Windows Storeで配布されるiTunesがどちらなのかは、現状、配布が始まっていないのでわからない。

 Windows Storeで配布されることで、Windows 10 Sから利用できるようになることの他、アップデートがWindows Store経由になり、管理が非常に簡単になる、というメリットがあると考えられる。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、GetNavi、デジモノステーションなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。
 近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
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