鳥居一豊の「良作×良品」

最小級個性派コンポ「JVC EX-NW1」の情熱的なサウンドで、宇多田「Fantôme」を楽しむ

 小型・コンパクト化は、プロダクトの技術力の高さを極めてわかりやすく示すことのできる手法のひとつだ。電器製品、情報機器などの分野を見てもいろいろなものが、登場初期に比べるとどんどん小さくなった。だが、さすがに小さすぎれば肝心の使いやすさを欠くのも事実。

JVC「EX-NW1」のアンプ部と2つのスピーカー。システムの横幅は30cm前後という小ささだ

 オーディオ機器は、道具というよりも趣味性の強い機器なので、アナログレコード時代に定着した横幅430mmのサイズが今でも現役だ。アンプが半導体部品を使うようになって、主要な再生メディアがCDになって、今では横幅200~300mmほどの小さいオーディオ機器も出てきた。フルサイズのコンポは今となっては“大げさ”と感じる人も少なくないだろう。しかし、高級機の世界で製品の小型化が進まない主な理由は、小さくすることで音への影響が出てしまうことだろう。

 その代表格がスピーカーだ。スピーカーは、ウーファやツィータといったユニットが振動して空気を奮わせて音を再現する。物理的な理由から口径の大きなユニットほど低音域の再生が有利になる。逆に高音域は口径が小さい方が有利だ。だから、帯域ごとに複数のユニットを使い分ける2ウェイや3ウェイといった構成を取る。人間の可聴帯域である20Hz~20kHzをカバーしようと思ったら、人間ひとりかそれ以上の設置スペースを必要とする大型スピーカーでないと実現が難しい。そこまでの低音は求めないとしても、音楽を十分に楽しもうと思うと、小型化には限度がある。小さなサイズで低音を出す技術もあるが、弊害も少なくないので驚くような小型化はできない。

 結果として、多少でもオーディオと付き合った経験があれば、スピーカーのサイズ(使用しているユニットのサイズと個数)だけでどのくらいの低音が出るかは予想ができる。それ以下のサイズとなると、小型なりの良さはあるが、絶対的な低音感やパワー感の足りない、こぢんまりとした音になってしまいがちだ。

 しかし、久しぶりにそんな常識を爽快にぶち壊す製品が登場した。それが、今回の良作に選んだJVCの「EX-NW1」(直販価格64,800円)だ。実機を初めてみたとき、あまりの小ささにびっくりした。最近はノートPCやスマホなどと組み合わせて使えるコンパクトなコンポに注目が集まっているが、それにしても「やりすぎだろう」と感じた。カジュアルに使えるスピーカーとして、手の平に載るようなスピーカーもあるにはあるが、それにしては作りが立派すぎる。大まじめに本格的なスピーカーとして作っているのである。

本当にデスクトップで使えるシステムを目指した超コンパクトなシステム

 システムの概要から紹介していこう。EX-NW1は、アンプ部と2つのスピーカーがセットになったシステムで、アンプ部はBluetooth対応、USB DACも内蔵しており、PCやスマホなどとのデジタル接続に対応。最大192kHz/24bit対応でWAV、FLACの再生に対応する。DSD音源には残念ながら非対応。このほかに光デジタル入力やアナログ音声入力(ステレオミニ)も備える。アンプの出力は10W+10W(4Ω)だ。

アンプの正面写真。半球状のボリュームを中心に、左側には入力などを表示するディスプレイとUSB端子がある。右側にはソース切り替え、再生/一時停止ボタン、ヘッドフォン出力
アンプを側面から見たところ。角を丸め、ネジなどが見えないなど、質感の高い外観

 このアンプ部は、ケンウッドから「KA-NA7」(直販価格37,800円)としても発売されている。音質チューニングはJVCとケンウッドで異なっており、細部も異なっているが、一番違うのは、KA-NA7がアンプだけの単品販売であり、ペアとなるスピーカー「LS-NA7」(同17,800円)というスピーカーも発売されているが、それ以外のスピーカーとの組み合わせも想定した製品となっている。

 EX-NW1のアンプ部はセットになったスピーカー専用で、音作りも一体のものとして仕上げられているという。

 ミニコンポ的な製品ではあるが、システムにプレーヤーは含まれておらず、再生機器としてPCやスマホなどを用意する必要がある。このほかにUSBメモリを接続しての再生も可能だが、基本的にはPCを置いた机に置いて使うか、スマホを無線接続で使うなどの再生を前提としたシステムと考えていいだろう。

アンプの背面図。左からアナログオーディオ入力、光デジタル入力、USB(micro B)。スピーカー端子はバネ式となっている

 金属製のボディをネジが極力目立たない組み立て方としたボディは、エッジ部の処理やボリュームツマミの形状など、細部まで丁寧に仕上げられており、思った以上に出来がいい。小さくてもなかなか本格的な顔付きだ。内部のアンプは、オーディオ用の高音質部品を使用してチューニングをしているほか、シャーシの振動を制御するため、銅メッキネジを使用。また、装着部位によって銅メッキネジにアルミワッシャ(背面部)を組み合わせたり、インナーシャーシと基板の取付では部位ごとに銅メッキネジと真鍮ニッケルメッキワッシャ、銅ワッシャを使い分けるといった細かな作り込みが行なわれている。

アンプの天面には、電源ボタンとBluetoothのためのNFCのロゴマークがある
アンプの底面部。きちんとインシュレータが装着されるほか、中央のインナーシャーシとの組み付けには銅メッキネジを使っている

3cmウッドコーンユニットと、響きを活かしたエンクロージャーを採用

 最大の特徴となるのが、名刺サイズと言ってもいい小型スピーカーだ。ユニットは、3cmのウッドコーンユニットを採用。薄膜に成型した木材を振動板としたJVC独自のユニットだ。小口径ユニットで十分な振幅を得るために蝶ダンパーを使用し、その形状も試作を繰り返して決定したという。磁気回路には強力なネオジウム磁石を採用している。

スピーカー部の写真。ユニットを保護するためのサランネットも付属。インシュレーターを介した一体型のスタンドは斜めに角度を付けている
左がネットなし、右がネットを装着した状態。純木製のキャビネットは細部の作りも丁寧で、手の平に載るサイズとは思えないほど本格的な作り込みになっている

 さらに、背面にはパッシブラジエーターを備えて低音を増強。小さなバスレフポートは風切り音が目立ちやすくなるため、パッシブラジエーターを選んだという。

スピーカーの背面。上部にあるのがパッシブラジエーター。下部のスピーカー端子はバナナプラグにも対応するネジ締め込み式の本格的なもの

 純木製のエンクロージャーの作り込みも丁寧だし、失礼ながら精巧に作られたスピーカーのミニチュアのように見えてしまう。しかし、本当に驚かされるのは、その内部だ。楽器の作りを参考とし、さまざまな種類の木材を響棒として取り付けて響きを調整しているのだ。例えば、バッフル面には人工熟成チェリーの響棒と同じく人工熟成のスプルースの響棒を装着。さらに、ユニットの後部には重量を増して不要振動を抑制するために人口熟成メイプルのウッドブロックを装着している。エンクロージャー内部の吸音材も、メイプルチップを使った木製吸音材としている。

 さらに、傾斜した専用スタンドは、重心バランスを整えるための真鍮の錘を装着。銅ワッシャとステンレスネジで固定している。スピーカー部を脚部を介して取り付けるネジはステンレスネジとして、こちらも異なる金属素材を使い分けて響きを調整している。さらに、こちらには竹の響棒を配置している。無塗装のため、一見すると安っぽくも見えるのだが、塗装で響きの質が変化をするのを避けていると思われる。

 こうしたエンクロージャーの響きを徹底してチューニングしているのは、箱の鳴りまでも積極的に活かすためだという。小口径のユニットでは低音を含めて豊かな再生音を実現するのが難しいため、積極的にエンクロージャーの響きを活かしている。

 一体化されたスタンド部を裏返して見てみると、竹の響棒が接着されていることがわかるが、こうした音質チューニングが、エンクロージャー内部でも徹底されているわけだ。

スピーカースタンド部の裏面。写真の下に見える丸いパーツが真鍮の錘。竹の響き棒が3本接着され、響きを調整している。

宇多田ヒカルの8年ぶりとなるアルバム「Fantôme」で、その実力を確かめる

 さっそく実機を設置して、視聴を行なった。といっても梱包箱自体が片手で軽々と持ち運べるサイズなので、作業は容易い。デスクトップでの視聴をイメージし、視聴ルームにある薄型テレビ用のラックを使って、まずはスピーカーの間隔が50cmほどとなる距離に置いてみた。スピーカーは約60度の内振りとし、視聴位置もスピーカーから50cmほどの近接視聴としている。このシステムとしては標準的なセッティングだろう。

視聴ルームでセッティングした状態。AVラックをテーブルに見立てて、50cmほどの間隔で配置した。視聴位置はAVラックの前に座るような感じの距離だ

 このEX-NW1のために選んだ良作は、宇多田ヒカルの「Fantôme」。長かった休止期間を終えて、8年振りに発表されたアルバムだ。本作はSHM-CD仕様のCD版も発売されているが、ここではe-onkyo musicなどで配信されている96kHz/24bitのFLAC版を使っている。視聴は基本的にUSBメモリの楽曲からダイレクト再生を行なった。

宇多田ヒカル「Fantôme」

 まずは、標準的なセッティングのまま、1曲目の「道」を聴く。天然水のCMソングとして使われた曲だ。今までのイメージに近いポップな曲で、久しぶりの新曲なのだが、ずっと聴いてきた曲のようによく耳に馴染む曲だ。EX-NW1で聴くと、一つ一つの音が厚みのある音で描きだされ、スピーカーとスピーカーの間に音像がくっきりと浮かび上がる。これは、コンパクトで小口径のユニットを使ったスピーカーの特徴でもあり、定位が極めて良好で、音場感も奥行きの深いものになる。

USBメモリからダイレクト再生

 スピーカーの距離が狭いので、絶対的なスケール感は決して大きいとは言えないのだが、左右の広がりが豊かで解放感のある広々としたステージ感になる。ちょっと矛盾した独特な感触だ。普通だと、箱庭的なスケールは小さいが密度が詰まった感じになりやすいのだが、ギュッと密集するというよりもフワッと広がる印象なのだ。

 だから、思った以上にシステムのコンパクトさを意識させない。手で触れるような距離に置いてあるのに小さいから視覚的な存在感も少ないので、一般的な大きさのスピーカーシステムで聴いているのと変わらない印象だ。

 そして、音色はわりと濃いめだ。中域の密度が高く、歯切れが良い再現なので、リズムに乗せるように歌詞を重ねていく歌い方の特徴がよく出ている。リズムを刻むパーカッションも思った以上にしっかりと低音が出ていて、鳴り方としてはなかなかにパワフルだ。

 彼女の声は中域から高域の伸びの良さが特徴的だが、それを瑞々しく描いているし、しっかりとした声量と声の力強さまでしっかりと出してくるので、安定感もあり、存在感たっぷりの再現となる。こうした女性ボーカルの再現は期待通りのものだ。

 開発陣としても、これだけ小さなスピーカーでは、低音の再生能力以外にも、さまざまな弱点があることをわかっていたはずだ。それでも現代の生活スタイルにマッチするサイズとして商品化をした以上、その弱点の克服に全力を注いだだろう。その目標はかなり高いレベルで達成できていると思う。

スピーカーの間隔や向きを変えて、セッティングの違いを試してみる

 今度は3曲目の「花束を君に」で、さまざまなセッティングを試してみよう。まずは、ラックの両端まで間隔を広げて聴いてみた。スピーカーの向きは内振りのまま。視聴位置は少し後ろに下がっている。正直に言って、ボーカルが薄くなる。スピーカーの間隔が広がり、遠ざかった分だけ音も遠ざかってしまった感じだ。中域の情報量がしっかりとあり、厚みのある音なので、BGM的に聴くならばあまり不満は感じないが、音像も薄くなるし、音場感も広がるというよりも散漫な感じだ。

 1mほどの間隔も一般的なスピーカーの配置としては狭いくらいだが、それでもEX-NW1にとっては適正でないと思う。音場の立体感や音像の厚みがなくなってしまうのは、本機の持ち味のほとんどをそぎ落としてしまうと感じる。

 「花束を君に」は、最初の歌い出しはピアノのみの伴奏でしっとりと始まるが、本来ならば優しい歌い方と相まってじんわりと染みてくるような導入なのに、単純にさみしい音になる。サビ付近で伴奏の編成が増えて音の厚みが増してくるのに、音数は増加に対してあまり盛り上がってくる感じられない。あまり印象に残らないタイプの音になってしまう

 ということで、間隔を50cmほどに戻す。ボーカルの厚みがぐっと増して、音像の彫りも深くなる。影響として大きいのはスピーカーとの距離だろう。スピーカーの間隔を50cmのまま視聴位置だけ後ろに下がると、同じように音像が薄まっていく。スピーカーのサイズ的にも、アンプの出力としても絶対的な大音量が出せるわけではないので、かなり接近した位置で聴くことが条件になる。

 これは、使い方にも大きく影響する。広いリビングにおいて、遠く離れたソファで聴くようなスタイルでは持ち味が活かせない。喫茶店のBGMのように、なんとなく音楽が聞こえていればいい、という使い方であれば、わざわざ本機を手に入れる必要はないだろう。

 今度は間隔を50cmとしたまま、スピーカーの振りの間隔を真正面(0度)に向けてみた。内振りに比べると音像はやや薄まるが、もともとが濃い口の鳴り方なのでそれほど不満はない。すると、音場の広がりはさらに増してくる。そのぶん、奥行きが多少狭くなる印象だ。

 個人的に一番まとまりが良いと感じた間隔50cm、60度内振りで、4曲目の「二時間だけのバカンス」を聴いてみる。この曲は、椎名林檎が参加していて、1コーラス目は宇多田がボーカルで椎名がコーラス、2コーラス目でそれが入れ代わるという構成だ。ふたりの声質の違いがはっきりと表現されるし、存在感たっぷりの音像が立つので、ステージ上が二人が立ち位置を変えながら歌っているかのようなイメージになる。

 早くもベストなセッティングが完成か? と思ったが、このセッティングはなかなかピーキーで、体ひとつぶん横に動かすとステレオイメージが崩れてしまう。音像が引っ込んでしまい、そのわりに奥行き感も乏しい。音楽と対話するようにじっくりと耳を傾けるならばこれがベストだが、もう少しリラックスして聴きたいというときには、聴こえ方の変化が気になりやすいので、曲を聴いていても窮屈な感じがある。

 そこで、再び真正面で試してみたが、こちらの方が体をちょっと動かしたくらいでは音像の立ち方や音場感が崩れるようなことはなく、楽な姿勢で聴くことができた。ただ、一度内振りを試してしまうと、その音像の存在感が魅力的なので、内振りに戻したくなる。結果的に、30度~40度くらいのやや内振りとすると音像の立ち方と聴く姿勢による音場の変化がほどほどに抑えられた。日常的に使うことを考えると、このあたりが妥当なセッティングではないかと思う。

 このあたりは、聴く人の好みによって異なるので、いろいろと試してみて欲しい。このほかでなかなか感触が良かったのは、間隔を40cm弱まで短くして、ほんのわずか(10~20度ほど)内振りにしたセッティングだ。

 壁に接したテーブルなどに置く場合は、後ろの壁との距離の影響も大きいことが予想できる。基本的に、後方にパッシブラジエーターが配置されていることもあり、後ろの壁に近づけるほど低音感は増える。聴く音量にもよるが低音が過剰になれば中高音が不明瞭になり、せっかくの艶やかで色気たっぷりのボーカルが曇ってしまうので注意したい。大型スピーカーはもちろん、標準的なブックシェルフ型スピーカーでも、こうしたセッティングを追い込むのは、部屋の家具の問題などもあり、なかなか難しい。だが、EX-NW1ならばデスクトップ上でいろいろと試せるので、スピーカーセッティングの基本を身につけるのもいいかもしれない。

 「Fantôme」をそのまま聴いていくと、彼女らしさの本質に大きな変化はないと感じるものの、歌声はもちろん、曲や歌詞のどれもが、いっそう豊かなものになっているように感じる。熟成が進んだ感じというか、人間的な成長をはっきりと感じることができる。そんな豊かな印象が、EX-NW1の厚みがあって情熱的とも言えるホットな音とよく合う。どの曲もあまり激しい曲調のものではないが、曲それぞれで役割を変えるように歌唱にも変化を付け、椎名林檎をはじめ、小袋成彬、KOHHらのゲストを迎えた楽曲もあり、バラエティーも豊かだ。

 EX-NW1というよりもこのスピーカーのひとつの個性だが、エンクロージャーの響きを積極的に活かした音作りは、再生される音に一定の音質傾向が付加されることを意味する。つまりどの楽曲を聴いても同じ傾向の再現になりやすい。確かに濃いめの味付けで情熱的に音楽を奏でるタイプと言える。音楽を再生する機械として、こうした味付けはけっして悪いものではないし、決してアクが強いと表現するほどクセが強いわけでもないので、多くの人は好ましいと感じるだろう。このバランスの良さは見事だ。

 このあたりは、最終的な音質チューニングの監修にも関わっている「ビクタースタジオ」の協力があってのものだろう。さざまなジャンルの曲の持ち味をきちんと出しつつも、他にはない魅力的な音に仕上がっている。こうした最終的な仕上げの巧みさが本機の一番の特徴かもしれない。

 もっとクールに、モニタースピーカーのように正直に記録された音を正確に出して欲しいという人もいるし、もっと淡麗な味わいの方が後味がすっきりとして好みだという人もいるかもしれない。なんだか料理かお酒の話みたいになってしまったが、どちらかという個性を主張するタイプの音なので、好みに合う人もそうでない人もいるはずだ。購入前に自分の好みに合うかどうかをきちんと確認するようおすすめしたい。

「桜流し」で、Bluetooth再生の音質も確認してみた

 最後は、Bluetooth再生の音質もチェックしてみた。音源自体は同じものだが、手持ちのiPhone 7に保存した楽曲をハイレゾ対応の再生アプリ「NePlyer」を使ってBluetooth接続で再生している。そのため、音源は96kHz/24bitだがSBCで圧縮して伝送されるのでスペック上はCD品質となる。

 一言で言って、最近のBluetoothの音質の良さに驚いた。音の情報量を含めてほとんど劣化した感じがない。切ない曲と歌詞を愁いを帯びた声で歌っているが、サビの部分の感情の盛り上がりもしっかりと伝わるし、伴奏の楽器の音色の再現も十分だ。強いて言うならば、音場の広がりや奥行きがやや希薄になるが、もともとそのあたりの再現性は十分以上に優秀なので、物足りなさは感じない。ここ最近のBluetooth機器の音質は優秀になってきているが、チップなどもの熟成もかなり進んできているように感じる。

 ここぞというときは、PCと有線接続したり、USBメモリ再生でハイレゾ品質そのままの再生をした方が満足度は高いが、スマホを使って音楽配信サービスなどをBluetooth接続で聴くような使い方でも、本機の良さは十分に楽しめる。

 こういう仕事をしていると、視聴前の期待を大きく上回る製品に出会うことは数多いし、なかには試聴をしながら自分の家で使うならば、どの場所にどう置こうか、と考えはじめてしまうような製品と出会うこともある。本機のそんな機器のひとつだ。

 こんなに小さなサイズという驚きに加え、情熱的な鳴り方も気に入った。机の上で使うことを前提としているので、活用の幅は限られる部分はあるが、ノートPC用の質の高いスピーカーを探している人など用途に合う人には、ぜひとも試して欲しい。個人的には、大きめのタブレット端末と組み合わせて使うのも面白いと考えている。

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Fantôme

鳥居一豊

1968年東京生まれの千葉育ち。AV系の専門誌で編集スタッフとして勤務後、フリーのAVライターとして独立。薄型テレビやBDレコーダからヘッドホンやAVアンプ、スピーカーまでAV系のジャンル全般をカバーする。モノ情報誌「GetNavi」(学研パブリッシング)や「特選街」(マキノ出版)、AV専門誌「HiVi」(ステレオサウンド社)のほか、Web系情報サイト「ASCII.jp」などで、AV機器の製品紹介記事や取材記事を執筆。最近、シアター専用の防音室を備える新居への引越が完了し、オーディオ&ビジュアルのための環境がさらに充実した。待望の大型スピーカー(B&W MATRIX801S3)を導入し、幸せな日々を過ごしている(システムに関してはまだまだ発展途上だが)。映画やアニメを愛好し、週に40~60本程度の番組を録画する生活は相変わらず。深夜でもかなりの大音量で映画を見られるので、むしろ悪化している。