小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第871回

ついに完成!? 超強力手ぶれ補正搭載の「GoPro HERO7 Black」
2018年10月10日 08:00
GoProはまだスポーツNo.1カメラか
スポーツシーンで活躍するアクションカメラは、GoProのサクセスストーリーを目指して多くのメーカーが参入した。日本はカメラメーカーの威信にかけてオリジナリティを発揮してきたが、中国勢は成功者の模倣をするのが一番の近道として、GoProコンパチとも言えるカメラを多数投入。市場に対して供給過多の状況に陥ったのは記憶に新しいところだ。
フィールドスポーツを撮影するというニーズは、スポーツそのものが弱体化しない限り堅調ではある。Insta360やDJI Osmoなど、GoProとは違う手段でフィールド撮影に挑む製品も出てきた。
そんな中、GoProの次の一手が注目されてきたわけだが、GoProも世代を重ねて7世代目、強力な手ブレ補正を武器に市場に帰ってきた。すでに9月27日から発売が開始されており、最上位モデルの「HERO7 Black」は53,460円(税込)となっている。
GoProはHERO4の発売以来、毎年この時期に新製品を積み重ねてきているが、こう立て続けに出されると、自分にとっての買い時がいつなのかが難しいところでもある。今回の「ジンバルいらず」を標榜するHERO7 Blackの実力は本物か。早速検証してみよう。
ボディは同じで中身は激変
GoProは、基本的にはボディを数世代使い回すのが恒例となっている。それは製造コスト的な部分も大きいが、ユーザーにとってはアクセサリが使い回せるというメリットもある。見た目でパッとした新しさがないのは物欲という面ではマイナスだが、そのあたりは痛し痒しである。
今回のHERO7も、HERO5以降のボディと同じデザインだ。ただし側面に大きく「7」の文字がフィーチャーされており、ちょっと“今回は違うぞ”的な雰囲気を醸し出している。
スペックから確認していこう。動画は最高4K/60p、静止画は12Mピクセル。防水性能は水中ハウジングなしで水深約10mまで使用可能。新開発となる強力な手ブレ補正は「HyperSmooth」という名称で訴求されている。
HyperSmoothを使うと画角が10%ほど狭くなる。加えてGoProには画角モードとして、SuperView、広角、魚眼無効の3タイプあるのだが、この3つが選択できるのは解像度が2.7K以下の時だ。4Kでは「広角」しか選択できない。6と7を比較してみたが、画角はほぼ同じだと考えていいだろう。
スローモーションはフルHDで240p(8倍速)まで可能なのは、前モデルと同じだ。新機能としては、Facebook Live等へのライブストリーミングが可能になったほか、強力な手ぶれ補正を活かしたTimeWarpといったモードを備えている。これは後で試してみよう。
マイクは3箇所搭載され、ウィンドノイズを低減しつつステレオ収録が可能になっている。なおマイクアダプタを使用すれば、外部マイクを使う事もできる。
今回外観は変わらないが、実はUIが大きく変わっている。HERO6の場合、動画撮影画面の下の方に解像度やフレームレート、あるいは撮影モードがかなりベタッとした感じで表示されていたが、新しいUIではモード表示がシンプルになり、半透明となった。どちらも1タップでメニューは消せるのだが、新UIではメニューを消さなくても、撮影時のフレーミングがしやすくなっている。
また撮影後のクリップを再生するには、旧UIでは左から右へスワイプだったが、新UIでは下から上にスワイプとなるなど、4方向のスワイプ動作が変更されている。
旧UIでは、手ブレ補正の有無などが撮影解像度と無関係に独立していたため、どのモードなら使えるのかの関連性が把握しづらかった。一方新UIでは、画面下にある半透明のモード表示をタップすると、解像度とフレームレート、手ぶれ補正の有無などが1画面内ですべて設定できるようになったため、右から左へのスワイプメニューが廃止されることとなった。
また今回はタイムラプス関係のメニューが充実、写真画質も大幅にアップしたこともあり、頻繁に撮影モード変更が行なわれる事を想定してか、画面の左右スワイプで簡単に撮影モードが変更できるようになっている。
もう一つ大きな変化は、縦撮りに対応した事だ。単にカメラを縦にすれば縦撮りになるわけだが、UIも縦方向で表示される。ただしたてUIだと解像度やフレームレートへアクセスする半透明メニューが出なくなる。こうした設定変更は、横向きの時に済ませておくか、スマホと繋いで専用アプリから変更する事になる。
なるほど、こういう違いか!
では新しくなった手ブレ補正、HyperSmoothの威力を試してみよう。わかりやすいようにHERO6 Blackもお借りして、同じ条件で撮影してみた。なおHERO6の手ブレ補正が効くのが4K/30pまでなので、HERO7 Blackも同じフレームレートで撮影しているが、HERO7 Blackでは4K/60pでも同様の手ブレ補正が効く。
まず通常の歩行だが、正直この程度では6も7も大きな違いは見られない。そもそも6の時も、手ブレ補正が強力になったというフレコミだったのだ。いくら強力に補正するからとはいえ、歩行時のふわふわとした上下の動きは完全には吸収できず、やはり7も「歩行感」がある。
ただこの歩行感は、歩き方を変えるだけでずいぶん軽減される。膝を曲げて、いわゆる能や狂言のような歩き方をすれば、歩行特有の上下の動きはなくなる。サンプル動画の2つめがそういう歩き方である。
stab.mov(51.32MB)
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい
もっとも大きな差があらわれたのは、走ったときである。6では補正可能範囲を超えてしまい、ガクガクした絵になってしまっているが、7は持ちこたえている。こうした大きなブレに対する耐性が付いた、ということだろう。
自転車にも装着してみたが、普通の道路ではどちらも差がない。ブロックが敷き詰められてガタガタした道も、一部6では補正の限界が見られるが、大きな違いは少ない。細かい振動のような動きに関しては、6も7も補正力はそれほど変わらないようだ。だが、大きなガクンとした絵の戻りがない点では、やはり7のほうが安心感がある。
stab2.mov(45.03MB)
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい
続いて、マイクが増えて大幅に改良された内蔵マイクを比較してみよう。そもそもGoProは初期の頃から、音声収録に関して関心が薄かった。その点では、ちゃんとステレオ収録できるソニーのアクションカムの方が、音声も必要な撮影では有利であった。
今回は2パターンテストしたが、どちらも7のほうが明瞭感が高い。特にスポーツ撮影においても、人の声は大事なポイントであることを考えれば、7を使うメリットはかなり大きい。
Audio.mov(127.28MB)
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい
ただ音声コマンドの認識については、HERO6のほうが良かった。今回は2台を同時に録画するために音声コマンドを多用したが、HERO7だけ音声コマンドでは回らないし、止まらないということが度々起こった。このあたりは今後のファームウェアで調整されることを期待したい。
一方で静止画機能も、HERO7ではHDRとノイズリダクション機能が強化され、暗部撮影でも良好な結果が出せるようになった。高感度カメラのようにかなりの暗闇となるとさすがに厳しいが、夜の街をぶらぶらしながらスナップを撮るようなポケットカメラとしても、使えそうな感じになってきた。
強化されたタイムラプス
HERO7の強化ポイントの1つが、タイムラプス機能の強化だ。以前から「タイムラプス ビデオ」、「タイムラプス フォト」、「ナイトラプス フォト」の3機能はあったが、「TimeWarpビデオ」が新たに追加された。
通常タイムラプスはカメラを固定しないと難しかったが、HyperSmoothとの組み合わせで、手持ちで移動していても滑らかなタイムラプスが撮影できる。
設定は解像度、画角、速度の組み合わせで決まり、速度は2倍から30倍まで、5段階のプリセットとなっている。動きが激しい場合は、10倍速以上が推奨されている。
今回は5倍速で撮影してみたが、多少トコトコとした歩行感はある。だが手持ちで撮影したとは思えない滑らかさで撮影できることがわかった。
GH010128.MP4(66.86MB)
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい
HDRとノイズリダクション機能が向上したことで、「ナイトラプス フォト」の機能も上がったかと思ったが、こちらはシャッタースピードが遅いため、ショットしながらのショットには向いていなかった。定点撮影で車の流れなどを撮影した方が面白いだろう。
Night-Laps.mov(10.98MB)
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい
もう一つ新たに追加された機能として、LIVE配信機能がある。これはGoProの本体からは設定する事ができず、スマートフォンとGoPro専用アプリを使って配信を行なう。
カメラとスマホをWi-Fi接続すると、GoProアプリからは動画、静止画、タイムラプスのほかに、「LIVE」のモード選択ボタンが見える。これをタップすると、LIVE配信の設定へと移行する。
Facebookがデフォルトとなっており、元々スマホにFacebookアプリが入っていれば、基本的にはアプリからのアクセスを許可するだけで配信が可能になる。それ以外のストリーミングサービスに関しては、AdobeのRTMP(Real Time Messaging Protocol)に対応するのであれば、配信URLを入力して設定をすすめていくようである。
今回はFacebook Liveで配信してみた。カメラは自分を撮影しているのでモニターできないのは仕方がないが、GoProアプリ上でもプレビューが見えない。配信状況を確認するには、Facebookアプリへ移行する必要がある。
ただしタイムラグは相当あるので、あまりアングルを細かく変えながらの放送は厳しいだろう。ただ、配信に至るまでの手順はものすごく簡素化されているので、ここで躓くケースは少ないと思われる。
総論
GoProのデビュー当初は、壊れても惜しくない、使い捨てビデオカメラという文脈で登場した。しかし次第に試行錯誤が進み、30個ぐらい並べてタイムスライスに使うなど、スポーツに限定されない使い方を生み出してきた。
会社自体は一時ドローンやハンディジンバルに手を出したものの、事業としては失敗に終わり、本業とも言えるカメラ事業に集中してきた結果、非常に完成度の高いものを出してきたという印象だ。
今回実装のHyperSmoothは、歩きながら撮影する程度の揺れ、あるいは細かい上下振動であれば、HERO6と大きな違いはない。だがカメラが揺さぶられるような大きなブレとなると、その差は歴然だ。
個人的には、音声がきちんと撮れるようになったのは嬉しい。実はこれまで、取材メモをソニーの初代アクションカム「HDR-AS15」で撮影してきたのだが、さすがに6年間使って来たので、そろそろほかのカメラに変えたいと思っている。HERO7は、その点でもなかなかよさそうに見える。
本当にジンバル要らずかと言われれば、水平方向をキープするためには、まだジンバルは必要だろう。例えば長いスティックの先に取り付ける等した場合、先端にジンバルがあったほうが撮影の自由度が高い。しかしある程度水平さえ取れれば、手持ちでもかなりイケるカメラである。
これだけ全体的に完成度の高い製品が登場すると、今後、単体のカメラが生き残るためには、「極端に○○」という部分がキーになっていくだろう。
GoPro HERO7 Black CHDHX-701-FW |
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