小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第1014回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

iPhoneに必須!? 磁石でくっつけ充電、Anker MagGoシリーズ全部試す

固定しながら充電

iPhone12・13シリーズで搭載されたのが、「MagSafe」という機能だ。これは本体背面にマグネットでさまざまなアクセサリをくっつけることができるというもので、主にワイヤレス充電を行なうために利用される。磁石でくっついてワイヤレス充電するという方法は、Appleでは初代Apple Watchから採用されているわけだが、単に充電するということに留まらず、iPhoneを固定して動画コンテンツなどを視聴するといった役割にも使える機能だ。

筆者は普段iPhone 12 miniを利用しているが、家で使う分には小さくて便利な反面、外でカメラなどをバンバン使うと、バッテリーが夕方ぐらいで切れてしまうという問題がある。またカーナビ代わりに固定しようにも、一般の磁石式固定具ではサイズが違ってくっつかないという弱点がある。やはりMagSafe専用設計のものを使いたいところだ。

そんな折、11月25日よりAnkerからMagSafe対応アクセサリ「Anker MagGo」がシリーズ展開されることとなった。家庭で使えるものから車内で使うもの、モバイルバッテリーまで、全5タイプが一気に製品化された。

今回はiPhoneのAV活用に欠かせないアクセサリたちを試してみたい。

デスクサイドのiPhone母艦に。「Anker 637 Magnetic Charging Station」

まず一番大型の製品、かつ筆者が一番お気に入りのモデルからご紹介してみたい。「Anker 637 Magnetic Charging Station」である。カラーはホワイトのみで、直販価格は9,990円。サイズ的には直径約11cmぐらいの球体で、底部に平たい脚部が付いている。大体Aamzon Echo Dot(第4世代)ぐらいのサイズを想像していただければいいかと思う。

多彩な充電機能を持つ637 Magnetic Charging Station

前面の一部が平たくなっており、ここがワイヤレス充電ポートになっている。最大7.5Wの給電が可能だ。iPhoneはちょうどいい角度に斜めに固定されるので、デスクサイドに置いてLINEやメッセンジャーなどの通知待受に便利である。iPhoneの充電が開始されると、右横のLEDライトが小さく青色に点灯する。金属物がくっついたなどの異常を検知すると、青色が点滅する。

デスクサイドに置くとちょうど見やすい角度に固定される

強力なのは背面ポートだ。コンセント直挿の電源ケーブルから電源を取るわけだが、最大1,000W、3系統のコンセント分配ができる。間隔が空いているので、ACアダプタも直接刺せる作りになっている。

背面は電源HUB的な構造

加えてUSB-A、USB-C端子が各2系統ずつあり、多くの機器の充電ポートとなる。A端子は、1端子最大12Wで、2つ同時に使うと、その12Wを分け合う格好になる。

C端子は2端子合計で最大65Wとなっており、1端子の最大は45Wだ。したがってM1版MacBook AirぐらいならC端子直結で充電できることになる。なおワイヤレス充電やA端子も同時に使うと、出力は若干減る。全部の端子をいっぺんに使うと、C端子合計は35Wまで下がるようだ。要するにACを除いた充電ポート全体で、65Wを分け合うイメージである。

このサイズで65W出力を実現しているのは、中身に半導体素材「GaN(窒化ガリウム)」を使用しているからだ。GaNは次世代パワー半導体素材として注目を集めており、Ankerでは小型大容量の各種充電器を多く製品化してきている。言うなれば637もその1つの流れというわけだ。

重量は約580gあり、意外にずっしりしている。足も後ろに若干長く張り出しているので、ケーブルに引っ張られてひっくり返るようなことはない。またコンセント及びUSB端子にはサージプロテクションもあるので、安心できる。

脚部は前後に長くなっている

正直球体にしなければならない技術的な理由はないように思えるが、仮に倒れてもコロッと転がるだけで、ドーンと倒れてiPhoneに衝撃が伝わるみたいなことがないようにとの配慮かもしれない。

またこの形からすれば、スピーカー機能もあるとより良かったのかなという気がする。いや逆にAmazon Echoに、こうした充電機能を付けてくれればいいのに、と思う。

使いながら充電、「Anker 623 Magnetic Wireless Charger」

上記637の規模を小さくした感じの製品が、「Anker 623 Magnetic Wireless Charger」だ。カラーはブラック、ホワイト、ブルー、パープルの4色で、直販価格は7,990円。

623 Magnetic Wireless Charger パープル

直径63mm、高さ80mmの円筒形で、小さい野菜缶ジュースぐらいのサイズ感だ。上部がワイヤレス充電ポートになっており、天井のフタ部分を手前に起こすことができる。固定角度は30度から60度。それ以下の角度だと、磁力によってフタが閉じてしまう。充電が開始されると、底部のリング部が光って、5秒ほどで消える。

上蓋が開いて固定角度が調整できる

なお蓋を開けた天井部分もワイヤレス充電ポートになる。ここにはマグネットがなく、 Soundcoreシリーズのワイヤレス充電対応モデルやAirPodsなどを置いて充電するということになる。最大出力は、マグネットありのフタ部分が7.5W、フタを開けたマグネットなし部分が5Wだ。

フタを開けた隙間部分でも充電できる

これまであまり気にしたことがなかったが、ワイヤレスイヤフォンでワイヤレス充電に対応しているものは、案外あるものだ。筆者手持ちのものだと、「Soundcore Liberty Air 2 Pro」、「Galaxy Buds Live」、「Nothing ear(1)」、 「EARIN A-3」が対応していた。ただマグネットでくっつくわけではないので、位置がずれると充電できなくなる。充電できていない場合は、底部のリングが点滅して知らせてくれる。

本体重量は約450gで、見た目より重い。給電は付属のUSB-Cアダプタから行なうので、内部にAC-DC変換などはないはずだが、おそらく転倒防止やiPhoneを引き剥がすときに本体がくっついてこないために、重りが入れてあるのだろう。

なお付属の充電アダプタは小型ながら出力は20Wある。日本国内での単品発売はなかったようだが、米国で今年7月に発売された「Anker PowerPort III 20W Cube」と同等品のようだ。元々iPhoneの高速充電用として売られているものなので、急ぐときはこのアダプタ直結で充電すると早いだろう。

付属のアダプタは小型だが20W出力

スタンドにもなる拡張バッテリー「Anker 622 Magnetic Battery」

続いてご紹介するのはモバイルバッテリーではあるのだが、MagSafeでくっつくことで意味合いが若干変わってくるという製品だ。カラーはブラック、ホワイト、ブルー、グリーン、パープルの5色で、直販価格は5,990円。

背面にくっつけるバッテリ、Anker 622 Magnetic Battery ブラック

モバイルバッテリーでスマホを充電するというのはよくあるケースだが、大抵はケーブルで繋がっているので、スマホの機動力は著しく制限される。だがモバイルバッテリーがMagSafeで背面にくっつくことでスマホと一体となり、機動性を損なわないある種の拡張バッテリーとして使える事になる。

iPhoneの背中にくっつけるだけで給電

サイズは約105×67×13mmで、iPhoneシリーズのどれかとピッタリサイズというわけではない。どれにも中途半端とも言えるが、逆にどれに付けても大体そんなもんかと思えるサイズとも言える。

iPhone12 miniでは若干お尻がはみ出す

バッテリー容量は5,000mAhで重量は約140g。iPhone 12 miniが容量2,227mAhの133gなので、2倍の重さになることを我慢すれば、容量は合計で約3倍になる。

背面には薄手のカバーのような機構が取り付けられており、これを折り曲げることでスタンドとしても利用できる。iPhoneは縦だけでなく横でも充電できるので、出先や移動中にバッテリー残量を気にせず映画でも見ながら過ごすということもできる。

背面を折りたたんでスタンド状にも

底部にUSB-C端子があり、ここからバッテリーを充電するわけだが、普通のモバイルバッテリー同様、給電もできる。ちなみに、2台同時充電には対応しておらず、ケーブルで有線接続している機器が優先され、ワイヤレス充電は停止される。

【お詫びと訂正】記事初出時、“有線接続とワイヤレスで同時充電できる”と記載しておりましたが誤りでした。お詫びして訂正します。(2022年2月2日23時)

底部のUSBポートから給電もできる

「Anker 613 Magnetic Wireless Charger」

iPhoneを車載アクセサリとして利用する際には何らかのホルダーが必要になるわけだが、そのiPhoneの固定と充電を同時に行なえるのが「Anker 613 Magnetic Wireless Charger」だ。カラーはブラックのみで、直販価格は7,990円。

車載用充電アクセサリ、613 Magnetic Wireless Charger

吸盤タイプの台座から15cmほどのカーブしたアームが伸びていて、その先に充電パッドがある。アームの角度は水平から垂直まで90度の間で任意に固定できる。また先端の充電パッド部も角度が変えられるようになっている。

吸盤自体も粘着素材でできており、凹凸のないダッシュボード天板にはそのままくっつくだろう。凹凸のある場所に対しては、両面テープ型の固定プレートが付属しており、そちらを併用して固定することになる。

粘着素材でできた吸盤
両面テープ型の固定用プレートも付属

電源は背面のUSB-C端子にケーブルを接続する。シガーソケット用のアダプタも付属する。電源を繋ぐと、充電パッドの周りが薄く光る。昼間は気がつかないが、夜にiPhoneをセットする場合は、ガイドになる。

付属のシガーソケット型アダプタ

筆者の車にはすでにAndroid用のマグネットも付いているので、真ん中あたりに取り付けることになったが、充電パッドがエアコンの吹き出し口近くにあると、iPhone本体が暖房で高温となりロックされるというトラブルが起こった。ちょうどGoogle Mapでカーナビさせながら運転していたので、焦った。

アームが長く、自由な角度で設置できる

夏場はクーラーにするのでOKだろうが、冬場はセンターの吹き出し口から暖気が出ないような設定にするか、アームを上げて暖気が直接当たらないようにするといった工夫が必要だろう。

今はMagSafeを利用したスマホ固定アームはたくさんの種類が既にあり、価格も2,000~3,000円台の製品が多い。エアコンのスリットに挟み込むタイプの固定具も多いが、あれを取り付けると重みでスリットが下向きでしか使えなくなるという難点がある。

7,990円の本製品は高いと思われるかもしれないが、アームの曲がり具合によってダッシュボード天面よりも下にiPhoneが設置できたり、逆にアームを上げるとiPhoneが空中に浮いているように設置できたりと、設置バリエーションが広いのが特徴だ。

吹き出し口を避けて固定する

マグネットを利用したグリップリング「Anker 610 Magnetic Phone Grip」

スマートフォンは手で持って操作したり視聴したりするものだが、うっかり落とさないよう背面にリング状のホルダーを付けている人も多い。ケースの上から貼り付ける製品も多いが、これはマグネットでiPhone背面に直接貼り付けるタイプのリングだ。カラーはブラック、ホワイト、ブルー、パープルの4色で、直販価格は2,000円。

610 Magnetic Phone Grip ブルー

ポイントとしては、マグネットで強力にくっつく一方で、外そうと思えば両面シールのように跡が残るわけでもなく、何度でも着脱できるところだろう。リングを閉じた状態で、ちょうどAppleのリンゴマークが見えるようになっている。

ロゴマークを隠さない作り

リング部のヒンジも適度な粘りがあり、リングを立てた状態にすればスタンドとしても利用できる。安いリングは使っているうちにヒンジがフニャフニャになってしまうものだが、本機はそうした心配はない。

リング部を使ってスタンドにも

リングの向きは特に回転機構などはないのだが、所詮は円形の磁石でくっついているだけなので、全体をぐるっと回せば自由な角度で使えることになる。ただしこのリングを付けたままではワイヤレス充電はできないため、充電する際には取り外す必要がある。

リングは自由な角度に回転できる

総論

MagSafeはワイヤレス充電の機構としてスタートしているが、磁石で強力にくっつけることができるということで、最近はiPhoneを固定するためのマウント機構として使われ始めている。これまでクランプで挟み込んでいたような三脚固定用のマウントなども、マグネット固定に変わってきている。こうした製品が登場する背景には、やはりiPhone12以降の出荷数が相当あって、市場性があるからだろう。

筆者もここ数日、充電はMagSafe経由で行なっているが、充電はパチっとくっつけておけばいいだけなので、朝起きて充電し忘れ残量2%、みたいなことがなくなった。車載タイプも磁力が強力なので、振動でiPhoneが落ちるようなこともない。ナビさせながら充電もできるので、到着地ですでにバッテリー半分、みたいなことにもならない。

iPhoneケースは、薄手のシリコン素材のものなら付けたままでも充電はできるが、マグネットの固定力は弱まる。やはりMagSafe対応ケースへの変更も検討したい。

ケーブルレスの運用の良さもさることながら、とにかくいろんなところにパチっと固定できるということで、スマホは手に持って使うだけではないということを改めて認識した次第だ。

今後5Gの普及に伴って、待機電力も大きくなる。こまめな継ぎ足し充電は必須になるだろう。あちこちにMagSafe対応充電器があるというのは、モバイルバッテリーの持ち歩きよりもスマートではないかという気がする。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。