小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第621回:東芝全録機の二代目登場、「DBR-M490」

“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第621回:東芝全録機の二代目登場、「DBR-M490」

ついにBS/CS全録対応、最大8chタイムシフト

1年半を経て待望の後継機

 2011年末に発売された東芝初の全録レコーダ「DBR-M190/180」は、製品発表直後から大きな注目を集めた。同社得意のネットワーク機能により、タブレットなどでの視聴もでき、リビングだけに収まらない、まさしく「テレビサーバー」としての方向性を強く打ち出した製品であったわけだが、初代からおよそ1年半、期待の後継機が発売された。

 今回は容量違いといったバリエーションはなく、「DBR-M490」(以下M490)一択である。6月20日から発売されており、店頭予想価格は17万円前後で、初号機上位モデル(M190/発表時の想定売価約20万円)からはやや低価格になっている。なお、通販サイトでは既に13万円台のショップもあるようだ。

 初号機では、全録機能である「タイムシフト」は地デジのみであったが、今回のモデルでは、BS/110度CSもタイムシフトできるようになった。また録画チャンネル数も最大で8chとなっており、全録機としてかなり強力なものになっている。

 問答無用の全録機の決定版となるのか、さっそくチェックしてみよう。

大幅にシンプルになったボディ

 先代のM190は同社初の全録レコーダという事もあって、デザイン的に全体がアルミ風のヘアライン仕上げ、BDドライブもスロットイン型を採用するなど、高級路線を意識した作りとなっていた。

 一方、今回のM490は上下ツートンカラーの、レコーダとしてはオーソドックスなデザインとなっている。デザイン的に後退したというよりは、裏で動く機械として目立たないようにしたという路線に変更されたようだ。

オーソドックスなデザインとなったM490
高級路線を意識した従来モデル「DBR-M190」

 フロントパネルは下半分が開くスタイルで、中にはB-CASスロットが3つある。赤の通常サイズがマスターとも言えるカードで、地上波と衛星放送の視聴や通常録画、タイムシフトマシン増設による2ch分の録画で使用される。NHKとの受信確認や双方向サービスも、このカードが使用される。

フロントは下半分だけ開く
メインの赤カードと、地デジタイムシフト専用の青カード

 赤のminiB-CASカードも地デジと衛星放送共用で、こちらはタイムシフト専用となる。衛星の有料放送をタイムシフトする場合は、このカードで契約する必要がある。

 青の通常サイズは地デジ専用カードで、こちらもタイムシフト専用だ。つまりこの3枚のカードで、地デジ9ch分、衛星放送6ch分のデコードが可能になる。実際に内部の物理的総チューナ数も、このようになっている。

少し離れてタイムシフト用miniB-CASカード
全部で3枚のカードを同梱している

 BDドライブは通常のトレイ式となった。内蔵HDDは、タイムシフト用で4TB、通常録画用で1TBとなっている。またタイムシフト用エリアとして、外付けHDDも使用できる。それ以外にも通常録画用として別途、外付けHDDが利用できる。

 背面に回ってみよう。大型ファンが2つ搭載されているのが目を引く。チューナ用端子は地デジと衛星が1系統ずつで、今回はアナログAVが出力だけでなく、入力も1系統付いている。

 外付けHDD用のUSB端子は、通常録画用と、タイムシフト録画用の2つが付けられている。左端の出っ張りは、Wi-Fiアンテナだ。

ファン2つは久々の大物機の予感
タイムシフト用と通常録画用のUSB端子を装備
Wi-Fi機能も内蔵している

 リモコンも四角を基調にしたデザインなのは変わらないが、若干操作性が改良されている。これまでメインメニューは「レグザメニュー」というボタンだったが、今回は「スタートメニュー」となり、より一般的なレコーダのイメージに近くなった。再生操作では、コントロールボタンが3×3となり、視聴時の使い勝手を考慮してか、ポーズボタンが大きくなった。

 またメディア選択として、HDD、DISC、USBの3ボタンが増設されている。そのぶんチャンネルボタンが小さくなっているが、テレビをザッピング視聴するようなマシンでもないので、それほど影響はないだろう。

若干改良されたリモコン
メディア切換ボタンも装備

6+2のチャンネル割り当て

 ではまず、チャンネルの割り当て方法から見ていこう。M490では、まずベーシックなタイムシフト機能である6ch分をどのHDDに記録するかを設定する。この時、どの録画モードで記録するかで、保存可能な日数が変わる。

 内蔵HDDのみで録画する場合、画質と保存日数は以下のようになっている。

【タイムシフトの録画可能時間】
録画モード録画時間
DR約3.5日
(地上デジタル)
約2.5日
(BSデジタル)
AVC最高画質約5日
AVC高画質約7.5日
AVC中画質約10日
AVC低画質約15日
AVC最低画質約17日

 最低でも1週間以上は残しておきたいと考えると、AVC高画質か、中画質程度で運用するというのがオーソドックスな使い方だろう。画質はチャンネルごとに設定できるわけではなく、6ch共通となる。

録画モードは6段階
画質モードを変更すると、これまでのタイムシフト録画は消える

 内蔵HDDは、タイムシフト用が4TBで、録画先としてはHDD1とHDD2に別れている。USB HDDを使ってタイムシフト領域を拡張する場合は、2ch分が外付けにアサインできるだけなので、HDD1と2とUSB HDDで2chずつに振り分けることになるだろう。

6チューナは3つずつ内蔵HDDにアサインされる
2ch分の録画先をUSB HDDに変更してみた

 今回使用したUSB HDDは、推奨HDDであるアイ・オー・データ機器の「AVHD-UR2.0B」という2TB/USB 3.0対応のものである。従って、合計では6TBとなり、チューナの6ch分は丁度1chにつき1TB割り当てられる結果となる。

タイムシフト用領域をUSB HDD「AVHD-UR2.0B」で拡張

 これでAVC中画質で記録した場合、およそ15日間の記録日数となった。満足できる画質でフルセグを半月分保持できるというのは、なかなか魅力的である。なおこのアサインでAVC最低画質を選択すると、保持日数は約26日となる。

 タイムシフトに使えるUSB HDDは1台のみだが、現在市販のHDDでは4TBまで存在する。したがって2ch分だけは、さらに長期間の記録も可能になるわけだ。なお、従来モデルからの進化点として、初期設定後にチャンネルの変更や追加、削除などを行なっても本体が初期化されなくなり、ストックされている録画番組が削除されなくなった。

タイムシフトの有効時間を表組みで設定

 タイムシフト録画の時間帯は、表を使って設定する事ができる。メンテナンス用の時間が1日に1時間必要なので、そこはどうしても録画が止まることになるが、それ以外にあまり見ないであろう時間帯で休止させておけば、それだけ録画保持日数も伸びることになる。地デジを中心に考えている人は、思い切って早朝から午後3時ぐらいまで休止させると、保持日数が2倍近く伸びることになる。なお、休止時間を変更しても録画番組は消えないので、シーズンやイベントの都合によって録画時間帯を変更するといった使い方も気軽にできる。

メンテナンス時間中には予約録画も途切れる可能性がある

【訂正】
 記事初出時、「従来モデルでは休止時間を変更すると録画が消える」と記載しておりましたが、誤りでした。休止時間の変更では、従来モデル、DBR-M490共に録画番組は消えません。訂正させていただきます(2013年7月3日)。

 なおメンテナンス時間では、タイムシフト番組のサムネイルを作る処理などを行なっているようだ。つまり気持ちよく使うためには、どこに1時間のメンテナンス時間を差し込むかというプランニングも重要になるという事である。

 さらに追加で、通常録画用のHDD領域とチューナを使って、タイムシフト用のチャンネルを2つ増やす事ができる。これを設定すると、通常録画用のチャンネルが1つになってしまうが、手動でいちいち録画設定などしないと言う人にとっては、魅力的な機能だ。

 ただしこの追加の2ch分はAVC録画ができず、DR録画のみとなる。またHDD領域は、通常録画用の1TBを全部使用することはできず、最大でも75%までとなる。したがってここにアサインするのは、ビットレートの高い衛星放送よりも地デジのほうがお得、という事になるだろう。

予約録画用の2チューナを使ってタイムシフトの追加ができる
1TBの領域をタイムシフト用に割り当て

 こういう録画のやりくりは、ある意味全録機ならではの楽しみである。これを自分でも体験してみたいという方は、東芝サイトにシミュレータがあるので、遊んでみるといいだろう。そしてモリモリ欲しくなるがいい。

 なお衛星放送の有料チャンネルを録画する場合、1枚のB-CASカードにつき3chぶんしかデコードできないので、タイムシフト用の6chのうち、miniB-CASカードで契約したぶんの3chをアサインすることになる。それ以上の有料チャンネルを録画したい場合は、メインカードとなる赤B-CASカードもさらに契約し、この追加2ch領域に録画することになる。

再生の目玉「ざんまいプレイ」

 では録画後の機能を見てみよう。まず大きく変わったのが、メインメニューの構造である。前作ではメニューも気合いが入りすぎたのか、テレビ画面の下に半円状に配置されるという凝ったものだった。

 しかし今回は、一般的なレコーダと同じで全画面のパネル式となった。機能的にもシンプルで、ブロードバンドやメディアプレーヤー、今すぐニュースといったボタンがなくなっている。あまり間口を広げず、シンプルに使いこなせるように、機能を絞ったという感じだ。またサブメニューから簡単モードにも切り換えられる。

通常のレコーダと同様のデザインとなったメインメニュー
簡単モードのメインメニュー

 タイムシフト用の過去番組表、録画予約用の未来の番組表は、リモコンにダイレクトボタンがあるので、メインメニューのお世話になるのは設定の変更やダビングするときぐらいになるだろう。

通常のレコーダと同様のデザインとなったメインメニュー
簡単モードのメインメニュー

 しかし全録機を利用する上では、過去番組表から探してみるというケースはあまりない。それよりも検索によって、興味がある番組と出会うことのほうが重要である。

 この点では、新しく搭載された「ざんまいプレイ」は面白い機能だ。アニメ、音楽、スポーツなどのジャンルごとに番組をまとめてくれるだけでなく、EPGデータにおける出現頻度の高いキーワード情報をもとに番組が見られる「急上昇ワード」で、今日のトレンドがわかる。「あなたにおすすめ番組」は、過去の再生履歴から類似の番組を探してくるようだ。

様々な切り口で番組をまとめてくれる「ざんまいプレイ」
新しいジャンル設定もできる
今日のトレンドがわかる「急上昇ワード」

 面白いのは、「ほかにもこんな番組」である。これは現在放送中か、タイムシフトなど録画から再生中の番組に対して、同じような番組を拾い出してくれるというものだ。文字による検索ではなく、番組そのものから検索するような機能で、「なるほどその手があったか」と唸らせる。

 なお、タイムシフトで記録された番組にはチャプタが存在しないが、そこから通常録画領域へ保存するときに、マジックチャプタ機能を使う事ができる。

再生中の番組と類似のものを瞬時に探してくれる「ほかにもこんな番組」
番組の抜き出し時にマジックチャプター機能が使える

 Blu-rayへの書き出しも、前モデルから若干進化した。以前はタイムシフト内にある番組をBDに書き出すためには、いったん通常録画領域に番組をダビングし、そこからさらにBDへ書き出すという二度手間が必要であった。しかし今回からは、タイムシフト内番組の書き出しは、この二度手間が自動化された。

 いったん内蔵HDDに作業ファイルとして書き出しが行なわれることには変わりないが、BDへの書き出しまでを一気に行なう。ただ、この方法ではマジックチャプターを使った編集ができない。

 これを行なうには、やはり従来通りいったん通常録画領域に書き出したのち、BDへの書き込み時にチャプタ編集を行なうという作業になる。

BDへの書き出しは、HDDへの抜き出しからメディア書き込みまで自動処理される
チャプタごとに抜き出して保存するには、いったんHDDの書き出しが必要

総論

 若干変則的な設定ではあるが、ついに8chの全録にまで進化したDBR-Mシリーズ。地デジだけでなく、BS/CSも全録可能ということで、有料放送契約者にとってはこんなおいしいマシンはない。搭載ハードウェアのリソースを、とことんまで使い倒した結果が生んだ機能だと言えるだろう。

 ただ、今回使用した限りでは、通常の予約録画機能まで使って全録を行なうと、メニュー操作のレスポンスが落ちるのは残念だ。番組リストを上から下に送っていくと、リモコンボタンと一拍遅れで表示が付いてくる感じである。

 一方、追加タイムシフトを使わず、通常の予約録画機能として使った場合は、機能的にはトリプルチューナ仕様のレコーダ「DBR-T360」とほぼ同等の機能を持つという。それにプラスして6chタイムシフトが付いたマシンというのが、M490の実態と言えそうだ。

 さらにUSB HDDで容量が拡張できるカスタム性も魅力である。タイムシフト用は1台しか接続できないが、番組保存用としてなら4台同時に接続できる。BDに残すのではなく、とりあえずHDDに退避という考え方もアリだろう。

 「ざんまいプレイ」が今回の目玉機能と言えるが、従来存在したジャンルやEPGデータ検索のような機能を、うまくまとめて見せている。非常に使い出のある機能なので、リモコンのボタンはもう少し「一等地」に移動させてもよかっただろう。

 東芝機が面白いのは、ユーザーがどう使うかを自由に設計できることである。以前は操作法がマニアックすぎて難しいと評されたこともあったが、今回のようにあまり本体に機能を詰め込みすぎず、シンプルかつ拡張性の高い設計にシフトしたことは好感が持てる。

 もちろんREGZAアプリも色々使えるのだが、原点に戻って家族みんながテレビ周辺機器として楽しめるマシンに仕上がっている。

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DBR-M490

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチボックス」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。