“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”
第550回:来たぞ全録! 東芝レグザサーバー「DBR-M190」
~6ch丸録り+2番組録画機の気になる実力は?~
■ついに登場したレグザサーバー
昨年のCEATECで鳴り物入りのデビュー、昨年末に発売された東芝の「レグザサーバー」こと、「DBR-M190/180」。残念ながら年末のレビューには間に合わなかったが、ここでようやくDBR-M190(以下M190)の実機をお借りすることができた。
昨年末にバッファローの「DVR-Z8」をレビューしたが、こちらは仕様変更のため、3月上旬に発売が延期されている。したがって当面入手できる全録レコーダは、この東芝機だけになりそうだ。
地デジ対応の全録機と言えば、2009年に約100万円というビックリ価格で登場した初代CELL REGZAがスタート地点で、その後プラットフォームを変えながら継続していたが、テレビごとじゃなくてレコーダ型の商品が欲しいという声は当然出てくる。テレビはそうそう買い換えるものではないわけだから当然だ。
かといって単純に録画部分だけ切り離しただけではなく、次世代メディアサーバーとしてどうあるべきかを考えて設計したというのが、この「レグザサーバー」だ。現在ネットでは、5TB HDD搭載「M190」(タイムシフト用4TB+録画用1TB)が約17万円で、最安値は13万円台、2.5TBの「M180」(タイムシフト用2TB+録画用500GB)が10万円台で、最安値8万円台後半といったところ。バッファロー「DVR-Z8」が2TB(タイムシフト約1.7TB+録画用300GB)で8万円代前半なので、値頃感としてはだいたい一致する。逆に言えばM190のお買い得感が光る格好だ。
発売直後はネットでいろいろ不具合も報告されていたが、ファームウェアのアップデートで現在は問題なく動作しているようだ。いよいよ2012年のトレンドと期待される全録ソリューションの幕開けである。さっそくテストしてみよう。
■価格以上に満足感の高いボディ
ではまずデザインから見ていこう。フロントパネルはヘアライン仕上げでセンターにREGZAの文字が光る。天板も同様の仕上げで、東芝レコーダではすっかりお馴染みとなった巨大Blu-rayロゴはない。その代わりREGZAの彫り込みがさりげなくあるだけだ。こういうシンプルなデザインはいい。
薄型だが重厚さを感じさせるデザイン | フロントパネルにREGZAの文字。この上にスロットインのBDドライブがある | 天板もシンプルなREGZAロゴだけ |
正面のスリット部分にはスロットインのBDドライブがある。右側には縦に仕込まれたステータスLEDがあり、ドライブ選択が青、再生が緑、録画が赤に光る。動作時はなかなか美しい。電源ボタンも薄い青で光るようになっており、全体的にかなりデザインに力が入っている。M180も同じデザインなわけだから、同程度の価格のDVR-Z8と比べるとかなりイイ感じだ。
前面パネルを開けると、左にB-CASスロットがある。地デジ用の白いMiniカードと地デジ/BS/CS兼用の赤カードのみである。前面のUSBスロットは、デジカメやビデオカメラを繋いで映像取り込みを行なうか、BD-Liveの追加コンテンツをダウンロードするときのUSBメモリを挿すためのもの。HDDは背面端子に接続するよう注意書きが書いてある。
電源が入って動作するとなかなかかっこいいLED部 | B-CASカードは大小2枚のみ。前面のUSBはHDD接続用ではない |
内部にはタイムシフト用として2TBの3.5インチHDDが2基、通常の予約録画、保存用として1TBの2.5インチHDDが1基入っている。
側面パネルもスリットが入ったパネルになっており、前面、側面からはネジが見えない。ネジ類は全部背面から処理されている。アンテナ入力はBS/CS兼用端子と地デジ端子が一つずつ。
その他の端子類はシンプルで、AV系はHDMIとアナログAV出力、光音声端子のみである。あとはHDD接続用USB端子とLAN端子がある。電源脇にある2つの黒い出っ張りは、無線LANのアンテナだと思われる。
側面のスリット処理もなかなか手が込んでいる | 背面パネルは結構シンプル | 背面の突起は無線LANアンテナ? |
リモコンも見ておこう。レコーダのリモコンとしては、RDやVARDIA、REGZAブルーレイとは全く違ったデザインで、中央部の十字キーが四角なのが個性的だ。どちらかというとテレビのREGZAのリモコンに近い。十字キーの周りのボタンも四角くレイアウトされており、細かいところまで手が入っている。
どちらかというとREGZAに近いレイアウトのリモコン | 下部のカバーを開けると設定ボタンが |
ポイントとなるボタンは、グリーンの「レグザメニュー」、左上の「タイムシフト」になりそうだ。リモコン下部のカバーを開けると設定や字幕、録画ボタンがある。このあたりもREGZAのリモコンに近い配置だ。
■タイムシフトマシン録画の仕組み
では早速録画機能をチェックしてみよう。本機は全チャンネルレコーダとして注目されているが、内部的には全録機能と、普通の2番組録画機能が同居している格好だ。4TBの全録部分はいっぱいになればどんどん上書きされて、ぐるぐるループレコーディングされていく。一方、個別に予約録画したものは自動では消えない。ここは普通のレコーダと同じだ。さらに全録されたもののうち、残しておきたいものは予約録画領域にコピーすることができる。
なお、チューナはタイムシフト用として、地上デジタルを6基、通常録画用に地上/BS/110度CSデジタルチューナを各2基搭載している。
まず全録のタイムシフトマシン録画部分だが、専用の設定部分にすべて集まっている。設定できるチャンネルは6chぶんで、BS/CSチャンネルにはセットすることができず、地上波のみだ。東京近郊だと地上波は7ch、地域U局を入れれば8ch受信できるわけだが、そこは割り切って6chに絞らなければならないのが辛いところである。おそらくHDD容量と録画時間のバランスでチャンネルを減らしたものだろうが、その点ではバッファローDVR-Z8のほうが8ch録画可能でメリットがある。
タイムマシン録画の設定は1箇所にまとめられている | タイムシフトマシンの録画チャンネルは地デジ6chまで |
続いて録画品質の設定だが、DRも含めて4段階で調整できる。6チャンネル全部を24時間休止なしで録画した場合、以下のような録画期間になっている。
DBR-M190 (タイムシフト容量4TB) | DBR-M180 (タイムシフト容量2TB) | |
DR | 3日間 | 1.5日間 |
AVC高画質(8Mbps) | 6日間 | 3日間 |
AVC中画質(6Mbps) | 9日間 | 4.5日間 |
AVC低画質(3.5Mbps) | 15日間 | 8日間 |
録画の休止時間帯も設定できる。深夜3~5時ぐらいの番組は録らなくていいとか、昼過ぎのワイドショーの時間帯はいらない、など時間帯を節約していけば、録画期間はそのぶん延びる。もちろん録画チャンネルを減らしても、同様に録画期間を延ばすことができる。
録画チャンネルと録画品質を決めたらすぐスタートできる。なお、スタート後に「録画チャンネル」や「録画品質」の設定を変更すると、タイムシフトマシン録画番組は全て削除される。動作から予想するに、おそらく内部にはチャンネルごとにパーテーションがあって、チャンネル数を変更するとそれを切り直すのだろう。
【お詫びと訂正】
記事初出時、録画チャンネルの変更や録画画質を変更しても、タイムシフト録画された番組は消えないと記載しておりましたが、誤りでした。お詫びして訂正させていただきます。(2012年1月25日)
録画休止時間の設定もできる | 「録画チャンネル」や「録画品質」の設定を変更すると、タイムシフトマシン録画番組は全て削除される |
■レコーダとは似て非なる操作性
メインメニューは画面下に半円状に表示 |
順序が後先になったが、メインメニューを見てみよう。リモコンの「レグザメニュー」ボタンを押すと、テレビ画面の下部に半円のメニューが現われる。下が大項目となっており、中央に位置している項目のサブメニューが上に表示される。メニューはループ式になっており、右なり左なりにぐるぐる回っていくというスタイルだ。
「見る」に合わせると、普通に予約録画した番組の「録画リスト」、予約のための「番組表」、テレビ視聴中に番組表が見られる「ミニ番組表」がある。そしてタイムシフト録画したものにアクセスする「タイムシフトマシン」、指定したニュースに瞬時にアクセスする「今すぐニュース」となっている。
タイムシフトマシンを選ぶと、録画している6chぶんの過去番組表が表示される。また、このような手順を踏まなくても、リモコンの「タイムシフト」ボタンを押すと一発で過去番組表が表示される。
タイムシフト番組の視聴は、まず過去番組表から見たい番組を選ぶ。すると「番組指定再生」なる画面が出て、番組情報とその下に「見る」「保存する」「連ドラ予約」のボタンが出るので、やりたいことを選ぶという方式だ。
タイムシフト録画による過去番組表 |
番組を選択すると「番組指定再生」画面が表示される |
ただ、殆どのユーザーが過去番組からやりたいのは、まず番組の中身を見ることだろう。UIとしてはまず決定ボタンで問答無用に再生を開始し、何かそれ以外のことをやりたい場合は別途画面を出す、というほうが良かったのではないか。いろいろ番組をつまみ食いしたい場合に、いちいちこの画面が出て「見る」を押すというのは、まどろっこしい。
一度再生して途中まで見た番組は、視聴ポイントを覚えているようだ。再度番組を選び直すと、続きから再生が始まる。
AVC中画質で録画してみたが、画質と録画期間のバランスからすれば十分満足できる。複雑な画面では圧縮による荒れが見えるときもあるが、全部録れているというメリットから考えれば、それほど問題ではない。大事な録画は別途高画質で予約録画しておけばいい。
またタイムシフト録画された番組には「マジックチャプター」による自動チャプタが打たれていないので、CMスキップなどはできない。リモコンのスキップボタンを押すと、次の番組までジャンプしてしまう。なお、通常録画では2番組同時に自動でチャプタを付与する「Wマジックチャプター」が使える。
番組検索機能は入力箇所は多いが、あまり効率的ではない |
一方、タイムシフトで録画される番組は限りなくあるわけで、どこまでも番組表をスクロールして行くのでは効率が悪い。しかし番組の検索機能は、従来のレコーダにあったような番組予約の補助的な検索機能を、過去番組に適用したようなタイプのものがあるだけだ。説明書には「番組の詳細情報はキーワード検索の対象になっていない」となっているが、タレント名を検索するとある程度は出てくる。ただ、例えば番組のメタデータを使って出演者を自動的にリストアップする機能などは、本体には実装していない。
ただ東芝の場合はタブレットのアプリを使ってレコーダやテレビをコントロールしたり、録画番組に付けたタグリストをシェアするといった方向に向かっており、CESのレポートでもお伝えしたように、米国向けには番組情報データベースとの連携も実装を進めている。今後、番組検索のきめ細かいサポートはタブレット側で実装し、そっちからレコーダを制御するという仕掛けになるのかもしれない。
そうなれば、今後レコーダを数年にわたって使い続けても、最新の検索機能はタブレットのアプリをアップデートしていけばいいことになり、レコーダが陳腐化しないというメリットがある。過去新モデルが出る度にいろいろ切り捨てられていた我々ユーザーにとっては、歓迎すべき方向だろう。
■予約録画、ダビング機能はテレビ並み?
もう一つの録画機能である予約録画機能は、RDシリーズというよりも、REGZAの予約録画と同じ操作だ。番組表から番組を選ぶと、録画予約、連ドラ予約、予約日時変更の3つの選択肢が出てくる。画質や録画先(USB HDDがある場合)の選択は「録画設定」から行なう。BS、CSの番組はタイムシフトできないので、必然的にこちらの機能を使っていくことになる。
予約録画された番組は、「録画リスト」から選んでみるわけだが、その間にドライブ選択画面が入る。そこにはネットワークで繋がったNASなどが見えており、レコーダというよりも、ホームネットワークAVのステーション的な立ち位置をめざしている感じがする。ただ、一番多い使い方というプライオリティからすれば内蔵HDDであることは間違いないわけで、ドライブ選択をバイパスする方法も欲しかったところだ。
番組の予約録画機能はREGZA譲り | 録画リストを見ようとする度にいちいち全ドライブとNASの選択画面が出る |
こちらのほうは「Wマジックチャプター」が機能する。なお、テスト時はDRモードで録画した番組に自動的にチャプタがつき、AVC録画ではつかなかったが、東芝によれば機能としてはDR/AVCどちらの録画でも動作するとのこと。録画した番組が、本編とCMの判別がしづらいものだったようだ。
【お詫びと訂正】
記事初出時、「Wマジックチャプター機能は、どうもDRモードで録画したものに限るようだ」と記載しておりましたが、AVC録画時でも利用可能でした。お詫びして修正・追記させていただきます。(2012年2月1日)
このチャプタは、そのポイント以降が本編かCMかを属性付けすることができ、その情報を元に本編だけ、あるいはCMだけをダビングすることができる。編集機能としてはRDシリーズに劣るが、最低限困らない程度にはなっている。
手動でのチャプタ編集では、属性もセットできる | ダビング時に属性を選択できる |
なおダビングという意味では、タイムシフト録画されたものの保存も気になるところだ。先ほどの再生メニューから「保存」を選択すると、タイムシフト領域から保存領域へのダビングが始まる。
ボタンを押すと、すぐにそれまで見ていた番組に戻り、バックグラウンド処理されるのだが、ダビングの実態としては等速ダビングになる。その間は、タイムシフトの再生は可能だが、予約録画した番組の再生はできない。またダビング中に追加で別の番組の保存もできない。等倍ダビングは仕方がないとしても、保存のバッチ処理ぐらいはしてくれても良さそうである。
ちなみにタイムシフトから保存した番組のダビング回数は、タイムシフト側に1つ残してダビング残数は8となっている。予約録画した番組は、ダビング回数が9だ。10回目のムーブはダビング回数にカウントしないという数え方のようだ。
■総論
リーズナブルな価格で手に入る地デジ対応全録レコーダとしては初の製品となるM190。CEATECの時からコンセプトは伺っていたが、やはりRD系列のレコーダの進化形というよりは、CELL REGZA以降の全録機能部分を切り出したと製品と解釈した方がいいだろう。
東芝のレコーダユーザーは、どちらかと言えばガッツリ編集したいタイプが多いと思われるが、そこを求めている人にはちょっと違うなーという感触を持つかもしれない。ただ、大量の番組を保持して視聴するという点では十分な機能を有しており、同時にこれまでの録画スタイルとなるべく違和感のないように設計されているので、第一歩の製品としてわかりやすさを重視したように感じられた。
うちの小学2年生の娘も、タイムシフトでの番組の見方はあっという間に覚えて、もう勝手に番組を見ている。検索による効率という点ではタブレット側のサポートを待つ必要があるが、過去番組表を見ながらステップバイステップでのわかりやすさがある。
録画容量としてはやはり、中程度の画質で1週間越えというのはキープしたいところで、そうなると容量が半分のM180ではちょっと物足りない。満足度が高いのはやはりM190ということになるだろう。
ネットでは全録するというソリューションに対して懐疑的な声も聞かれるが、こればっかりは“家にある”という状況が一度でもなければ、その利便性は分からないかもしれない。しかしテレビ情報へのアクセシビリティを考えると、とりあえず全部録ってあるということの強烈さは、確実にAVライフへのインパクトを与える。
レコーダの行く末はこっちだろうという予感は、M190の登場で揺るぎないものとなった。