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“オーディオ製品の音”は誰が決めてる? ヤマハ、TRUE SOUNDの挑戦

オーディオ機器を買う時に、最も気になるのは“音の良さ”だろう。予算の中で「最も良い音の製品を買いたい」と、AV Watch読者なら誰しもが思うはずだ。だが冷静に考えると“音が良い”とは何だろうか? そもそもメーカーの中で、“誰が製品の音を決めている”のだろうか。

様々なメーカーを取材すると、経験豊富なエンジニアや、サウンドチューニング専門マイスターが“音作り”を担当。彼らが、各メーカーの思想が色濃く反映される“ブランドの音”を担っている、というカタチが多い。そうしたサウンドが気に入ったユーザーが、そのブランドのファンになる……という図式だ。例えるなら“伝説のシェフが手掛けた料理を味わうために、お店に通う”みたいな感じだ。

これはこれで、まさに趣味の世界っぽくて良いのだが、弊害もある。例えば“名物エンジニア”や“伝説的なマイスター”が引退したら、音がガラッと変わってしまった……とか、“そのマイスターが関与していない製品はぜんぜん音が違う”なんて事も起こる。そういえば、シェフが違う人になったら味が変わって、急にお客が入らなくなってしまったお店が近所にある。

そんな事を考えていた矢先、こうした“オーディオメーカーの常識”を覆す、非常に面白い手法で“メーカーとして目指す音作りの統一”と“技術の継承”を実現しようとしているメーカーと出会った。スタートアップの新興ブランドではない、オーディオ業界の老舗と言っていい、あのヤマハだ。

キーワードは“TRUE SOUNDチーム”。彼らの取り組みから見えてきたのは、オーディオ業界が抱える大きな課題と、それを個人の力ではなく“システム”で解決しようというユニークな挑戦だ。

そもそもAV製品はどうやって作られるのか

話を聞いたのは、TRUE SOUNDチームの主要メンバーである、ホームオーディオ事業部HS開発部電気ソフトグループの熊澤進氏、HS開発部 HP・EPグループの加藤尚幸氏、波多野亮氏の3人だ。

左から加藤尚幸氏、熊澤進氏、波多野亮氏

TRUE SOUNDチームの話の前に、“従来のヤマハは、どのようにAV製品を作って来たのか”振り返っておこう。一般的に、製品を作る際には「どのような製品が市場で求められているのか」「どんな人に、どう使ってもらうのか」を調査したり、話し合うなどして決定。それを実現する製品を設計し、試作を何度か繰り返し、音や使い勝手などのクオリティを高めて製品として完成させる。従来のヤマハも、大枠ではこのような流れだ。

ホームオーディオ事業部HS開発部電気ソフトグループの熊澤進氏によれば、「1つの製品を作る時は、企画やマーケティング、設計のエンジニアや音質担当が1つのチームになって手掛けています。音質の面では、1つの製品に対して、チームの中に1人の音質担当者がおり、チームの中で意見交換をしながら音のクオリティを高め、最終的に(この製品の音は、これで完成というゴールを)その音質担当者が決める……という形です」とのこと。

イメージとしては、AVアンプの新モデルを手掛けるAチーム、ヘッドフォンの新モデルを手掛けるBチームと、開発している製品の数だけ社内にチームがあり、そのチームで製品を作り上げていたわけだ。

もちろん、社内でチーム同士に交流はあり、製品によってその都度チームメンバーも変わる。また、作ってるモデルは違うが、カテゴリとしては同じ“AVアンプ”を作っているチーム同士が集まり、意見交換をして、そこで得られた知見を自分のチームに持ち帰り、さらに製品のクオリティをアップさせる……という流れも、多くあったそうだ。

長年こうした製品の作り方をしてきたヤマハだが、状況に変化があったのは4年ほど前の2018年頃。「今後、“ヤマハの音”を一貫した価値としてどうお客様に伝え、届けていくか」というテーマの議論を通じて、「TRUE SOUND」という言葉が誕生したのだ。

TRUE SOUNDとは何なのか

「TRUE SOUNDとはどんな音か」という話だが、簡単に言うと「アーティストが込めた想いをありのままに表現し、聴く人の感情を動かす音」だという。御存知の通り、ヤマハはオーディオ機器だけでなく、プロのアーティストが演奏する楽器の製造や、ライブやレコーディングといったプロオーディオ機器も作っている。

つまり、鳴らす機械だけでなく「演奏している楽器や、録音する機器まで作っているからこそ、そのノウハウも生かして、アーティストが音楽に込めた想いを表現できるAV機器を作れる」わけだ。

これはTRUE SOUNDという言葉が生まれる前から、ヤマハの強みとして存在する事だ。しかし、ユーザーに伝わりにくい話でもある。だから「ヤマハのオーディオ機器ならば、スピーカーであってもヘッドフォンであっても、聴く人の感情を動かす音が楽しめるよ」というメッセージを“TRUE SOUND”という言葉に集約し、ユーザーに届けていこうと決めた……というわけだ。

ただ、「TRUE SOUNDはこんな音だ!」と言葉としてユーザーに届けていこうと決めても、製品を開発するエンジニアらが実際にTRUE SOUNDを再生する機械を作っていかなければならない。

ホームオーディオ事業部 HS開発部 HP・EPグループの加藤尚幸氏は、「製品を手掛けるチームメンバー全員が、TRUE SOUNDという同じ方向を向いて、しっかりと一貫性を持って進めないといけないよねという問題意識から、音質担当者達が集まり“ヤマハの音とはこういうものだ”というのを、“見える化”しようと話し合いをはじめました」と、当時を振り返る。

しかし、音は目に見えない。“目指す音の見える化”というのは非常に難しそうだが、どのように進めたのだろうか。

加藤氏は「まさにそこが一番難しかったところです。私達はまず、自分たちが製品開発の時に“大事にしている事”を、付箋に書いて、壁に貼っていく事からはじめました。例えば、ある人は“開放感やグルーブを大切にしている”とか“静と動、情感、リアルさにこだわっている”とか、“聴き疲れしない音を目指している”などです」と語る。

つまり、各自が“ヤマハの音”として目指している音を、言葉にして書き出していった……というわけだ。加藤氏によれば、抽象的な言葉だけでなく、「あの曲の、あの部分がこう聴こえるように作っている」というようなこだわりも書き出されたそうだ。

さらに、お互いが開発した製品の音を聴き、書き出した“目指す音”が実際にどのような音なのか、それを実現するための工夫なども話し合ったという。

加藤尚幸氏

熊澤氏は「改めて話を聞くと、意外と知らない事が多いんです。また、“こんなに深いことを考えて作っていたんだ”と驚く事も多かったです」と語る。

加藤氏も「エンジニアが、目指している音を“言葉にする”というのは、自分達でそれを再確認するという面でも大きな意味があったと思います。また、エンジニアというのは、職人気質な一面もあるため、培った技術を自分の中に仕舞い込みがちになるものです。しかし、それでは技術が次の世代に継承されない。それを共有したいという想いがあったからこそ、音質担当者達が集まって話し合うようになったのです」と振り返る。

話を聞いていると、TRUE SOUNDというのは、数百万円する高級オーディオで聴く“究極の音”のようにも思えてくる。しかし、熊澤氏は「ハイエンドオーディオでないと、TRUE SOUNDではないのか? と思われるかもしれませんが、決してそんな事はありません」と笑う。「大切なのは“顧客がその製品を実際に聴いている体験をイメージして、その環境で良いものになるよう、音決めをする事です」。

熊澤進氏

例えば、ヤマハは高級オーディオから手頃な価格のイヤフォンまで手掛けており、そのイヤフォンも“TRUE SOUND”を掲げている。価格差のある製品から出る音は、当然ながら同じではない。

静かな室内で使う高級オーディオに対し、イヤフォンは通勤通学の電車の中や、出張の飛行機の中で使われたりする。そうなると、ノイズキャンセリングで騒音を低減するなど、ユーザーに満足するサウンドを届ける能力が必要とされる。

「その製品が実際に使われて、ユーザーが聴いた時に“自然で良い音だ”と感じていただける事が何より重要です。ですので、ユーザーと同じ環境で、同じ聴き方をして、その時に、ユーザーにどう感じてもらえる製品を作るのか……それをすり合わせて、その製品ごとにTRUE SOUNDを追求していくわけです」(熊澤氏)。

こうした話し合いを経て、TRUE SOUNDチームが誕生した。

彼らが付箋に書き出した“大切にしている事”は「音質指針」として集約。この指針は、顧客を中心に据えながら、追求すべき「音質」、「技術」、「思想」のポイントをまとめたものとなった。

音質指針

例えば「音質」の部分では、「楽器・声を鳴らし切る:音色」、「静と動の対比が明瞭な躍動感を表現する:ダイナミクス」、「作品のニュアンス、ムードも含めた空気感を表現する:サウンドイメージ」という項目がある。TRUE SOUNDチームは、開発中の製品が、これらを満たした音になっているのかを、チェックするわけだ。

どうやって音をチェックするのか

「チェックする」と言うと、試作機をTRUE SOUNDチームが試聴し、彼らが合格をつけないと開発が終わらない……みたいな想像をするが、実際には、その遥か以前から動いているようだ。

TRUE SOUNDチームの取材は、浜松にあるヤマハの試聴室とオンラインで接続して行なった

「実は、TRUE SOUNDチームは試作のずっと前の、商品の企画立案の段階から関わっています。先程も申し上げた通り、“どんなお客様に、どのような環境で、どんな体験をしていただきたいか?”というのが、製品にとっては重要です。逆に言えば、それがしっかりしていないと、製品をどんな音にしていくかという設計もできないからです」(熊澤氏)。

TRUE SOUNDチームのアドバイスも踏まえて、商品の企画が決まると、設計が行なわれ、試作機が作られる。製品が完成するまで、試作機は大きく3段階作られるそうだが、各段階の最後に試聴会が設けられ、そこでTRUE SOUNDチームと、製品の開発メンバーが集まり、前述の「音質指針」を軸に音をチェックする。

チェックは、単に“音が良いかどうか”を聴くだけではない。「企画の段階で定めた方向性や、ターゲットとしているお客様、そしてそのお客様にどんな音体験をして欲しいのかという部分。そうしたテーマを満たす製品なのかという観点でも、評価します」(熊澤氏)。

「ですので、例えば、海外向けに作っているスポーツ中の使用を想定したイヤフォンなどでは、装着して聴くだけでなく、会社の中を実際に走りながら聴いてみます。こんな利用シーンで、こんな体験ができる製品を……とコンセプトを掲げているので、その通りに実際やってみて、本当にその体験ができるかどうかが重要なのです」(加藤氏)。

当然、TRUE SOUNDに到達していないと判断された場合は、TRUE SOUNDチームからアドバイスを行なう。「細かなパーツの提案だけでなく、グランドの配線をこうしたらどうか? など、内容は様々です。オーディオは電気部品だけでなく、例えば、RAMへのアクセスの仕方を変えるだけで音が変わったりしますので、ソフトウェアのエンジニアも音に関わっていると言えます」(熊澤氏)。

TRUE SOUNDチームが音をチェックする事で、製品のサウンドクオリティが上がる。だが、効果はそれ以外にもあるようだ。

「開発チーム間でのコミュニケーションが活発になった、というのはあると思います。“相談しやすくなった”という声もあります。例えば、何か音に問題がある時に、試聴会でなくても、アドバイスが欲しいとはやめに相談が来る事もあります」(熊澤氏)。

「使えるコストは限られていますので、エンジニアが1人で抱え込んで、苦しんでしまう事もあります。AVレシーバーやHi-Fi機器は、お金をかければ良い音になるというわけでもなくて、本当にグランドの引き回しを変えたり、電源の取り方などで音も変化します。コストをかけられないのであれば、こういう方法があるんじゃない? と、提案するのもTRUE SOUNDチームの役割です」(加藤氏)。

「我々3人は、これまで様々な製品を手掛けて経験を積んでいますし、他の開発チームと話す機会も多いので、例えば“別のチームで、こんな技術を使っていたよ”とアドバイスする事も可能です。各チームの技術的な“繋ぎ目”のような役割もTRUE SOUNDチームが担っています」(熊澤氏)。

こうしたTRUE SOUNDチームと開発チームのやりとりや、それによって試作機の音がどう変化したか、といった情報は、ライブラリとして記録される。

もし、“これを読むだけで、ヤマハが蓄積してきた技術的ノウハウがわかる!”みたいな秘伝書があれば、話は簡単だ。しかし、そんなそんな都合の良い本は無い。しかし、こうした試行錯誤の記録と、それによって生み出された製品が増えていけば、それが技術の共有・継承にとって最高の“秘伝書”になっていく……というわけだ。

音をチェックされる側はどう考えている?

TRUE SOUNDチームがユニークなのが、主要メンバーの3人が、現在もバリバリのエンジニアであり、それぞれがAV機器の新製品を開発しているという事。つまり、TRUE SOUNDチームのメンバーとして音をチェックする時もあるが、逆に、自分の作っている製品をTRUE SOUNDチームに聴いてもらい、“アドバイスを受ける側”にもなるというわけだ。

ハイエンド有線ヘッドフォン「YH-5000SE」

例えば、波多野氏が最近手掛けたのが、12月下旬発売のハイエンド有線ヘッドフォン「YH-5000SE」(495,000円)。

オルソダイナミックドライバー

薄膜フィルムに金属コイルパターニングを施した振動板を平面駆動させる独自のドライバー技術と、最新のテクノロジーを融合させ、新たな「オルソダイナミックドライバー」として再構築。軽量で優れた応答性能を持つドライバーの特性を活かし、圧倒的な情報量を再生するヘッドフォンに仕上げた。

このヘッドフォンも当然、完成までにTRUE SOUNDチームによるチェックを受けている。

「YH-5000SEの開発途中では、TRUE SOUNDチームから“接続するアンプによって、低域の質感の差が大きい”という指摘を受けました。そこで、振動板に補強を入れて調整をしました。上流の音によって大きく変化するのは悪いことではないのですが、アンプの特徴を拾いすぎる部分があったのは確かで、それを少し落ち着いた方向に調整しました。もし、最後まで1人で作っていたら、アンプに敏感過ぎるヘッドフォンになっていたかもしれませんね」。

波多野亮氏
インターナショナルオーディオショウで展示された「NS-2000A」

熊澤氏が最近手掛けたのは、2023年2月24日発売のフロア型スピーカー「NS-2000A」(1台44万円)。主張し過ぎず、リビングにも設置しやすい柔らかなデザインが特徴だが、中には上位機種となるNS-5000/3000で培った技術も多数投入し、音質面も高めたモデル。

音質面では「リビングでより心地よく聴ける音」を追求したのが特徴。今年のインターナショナルオーディオショウでも、ヤマハブースで注目を集めていた。熊澤氏は企画段階から関わり、音のディレクションも担当している。

「インターナショナルオーディオショウのような場所では、各社さん、それぞれ個性のある製品が多くありますが、NS-2000Aはそれと比べ、派手さはありませんが音色を追求しました。心地良い、音楽的なダイナミクスや、音場感をテーマに開発しています。並み居る個性派の中で、ヤマハらしさを貫けたと思います。開発時にTRUE SOUNDチームに聞いてもらった事で、自分が目指していた音に対して“大丈夫だ”と言ってもらえて、“この音の方向性でいいんだ”と、自信をつけさせてもらった感じがありますね」(熊澤氏)。

「NS-2000A」

加藤氏は、TRUE SOUNDチームのメンバーとして、企画とエンジニアの架け橋になる事も重要だと語る。「企画者は企画の段階で、ターゲットとなる顧客に、どんな音体験をして欲しいかを考えるわけですが、彼らは製品の音作りをしているわけではないので、“こんな音にして欲しい”とエンジニアに要望する時に、うまく言語化できず、ついふわっとした表現になってしまうことが多い。そうすると、エンジニア側も、どんな音にすればいいのかわからない。具体的に“高域や低域がこういう表現で”“あの曲でこの楽器がこう鳴ってほしい”というような要望をして欲しい。私自身製品の音作りを経験しているので“エンジニアが求めているオーダーの仕方”を理解しているつもりです。企画者の意図を汲んで、それがしっかりとエンジニアに伝わるサポートもしています。

加藤氏は、“こんなユーザーに、こんな音体験を届けたい”という想いを、明確な言葉にするという作業は、製品を消費者に伝える“マーケティング”でも有効だと語る。「先程の“音質指針”にあった3つの項目について、その製品の開発チームから“コンセプトワード”を出してもらっています。音をチェックする時にも有用なのですが、そのワード自体を、完成した製品のマーケティング時に音の説明として使うことも増えています」。

そのコンセプトワードを目標として製品を開発しているので、当然、完成した製品の音はそのワードに近い。そのワードをマーケティングに使えば、その言葉に惹かれて購入した人が、「イメージしていた音と違った」とガッカリする事も少なくなるわけだ。

TRUE SOUNDを永続させるために

取材をしていて印象的だったのは、熊澤氏の「音について、もっと普通に語り合いたい」という言葉だ。熊澤氏は、「オーディオ業界自身が、音を“オカルティック”にしてしまっている気がしています。音がわかることが“凄い”というか……、逆に音がわからないと、音について語ってはいけないような……そういうのは、ちょっと違うんじゃないかと思うのです」と語る。

「例えば車を作る時には、“子供がいる家族に、こんな風に乗ってもらって旅行を楽しんで欲しいから、こんなサスペンションを搭載して、こんな乗り心地にしよう”みたいな話をしていると思うんです。それと同じようにオーディオ機器も作りたい。音についてしっかり話し合いながら、マーケティングとエンジニアが両輪で作っていきたいのです」(熊澤氏)。

きっと、TRUE SOUNDチームが生まれた背景には、音についてもっと自由に話し合う雰囲気を作り、音質に関われる人を増やしたい、という願いがあるのだろう。

現在、TRUE SOUNDチームには3人のほかに、数人のメンバーがいる。彼らが、音をチェックし、アドバイスを行ない、製品の音質改善に寄与しているわけだが、当然メンバーの入れ替わりも起こる。

それを見越してヤマハでは、TRUE SOUNDチームとは別に「音質フォーラム」というグループも作り、TRUE SOUNDチームをサポートしたり、TRUE SOUNDチームの活動を音質フォーラムで報告するといった関係を作っている。

この音質フォーラムは、ホームオーディオの音質関係者を取りまとめたもので、TRUE SOUNDチームよりももっと多くの人数が参加している。彼らがフォーラムの中で学び、目指すべき音の方向性に対する理解を深めているそうだ。つまり、音質に関わる人材を育成する仕組みそのものを作るために、音質フォーラムが存在するわけだ。

TRUE SOUNDチームが製品の直近の改善を担当するのに対し、音質フォーラムは、こうした活動が長期的にできるように担保する役目を担っている。遠い将来、現在のTRUE SOUNDチームメンバーが全員いなくなったとしても、音質に関わる人材が育ち、様々な技術を吸収し、“音質指針”を変わらず大切にしていれば、その未来でも、新しいTRUE SOUNDチームのメンバーが、ヤマハの音を守っていることだろう。

話を聞く前は、TRUE SOUNDチームに対して“絶対的な権力を持つ試験官”のようなイメージいを持っていた。しかし、実際は製品の作り手をサポートし、必要な人や技術の橋渡しをしてくれる“頼れるアニキ”であると共に、社内で音質についてもっと多くの人が語り合える雰囲気を作る、象徴的な存在なのかもしれない。そして、その存在を属人的なものとせず、次代を育成する仕組みを作る。「老舗オーディオメーカーの音を守る」という難問に、システムで答えを出す。それがヤマハのオーディオ機器に通貫する音 “TRUE SOUND”を支えている。

(協力:ヤマハ)

山崎健太郎