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ヤマハ、平面磁界型「オルソダイナミック」搭載の最上位ヘッドフォン
2022年11月17日 13:00
ヤマハは、同社がこだわるTRUE SOUNDと“極上の装着感”を実現したというハイエンド有線ヘッドフォン「YH-5000SE」を12月下旬に発売する。独自の「オルソダイナミックドライバー」を搭載し、価格は495,000円。付属アクセサリーを除くヘッドフォン本体には、5年間のメーカー製品保証が標準で付与される。
「アーティストが音楽に込めた想いをありのままに表現し、聴く人の感情を動かす音」というTRUE SOUNDを追求した開放型のヘッドフォン。
ユニットとして、高応答かつしなやかな音調を実現するため、自社設計の平面磁界型ドライバー「オルソダイナミックドライバー」を再構築した。ヤマハは1976年に「HP-1」というヘッドフォンを開発しており、そのヘッドフォンに平面磁界型ドライバーを既に搭載していた。
当時の開発ノートを参考に、このヘッドフォンの中核技術であり、薄膜フィルムに金属コイルパターニングを施した振動板を平面駆動させる独自のドライバー技術を、最新のテクノロジーと融合させ、新たなドライバーとして再構築するプロジェクトを2019年頃からスタート。完成したものを、オルソダイナミックドライバーとして今回のYH-5000SEに搭載した。
何度もトライを繰り返して開発。生産を継続する困難さもあったため、本社の近くにあり、ヤマハのピアノも作っている掛川工場でドライバー作りと製品の組み立てを、熟練の工員が担当している。これにより、試作中に何度も開発メンバーが工場に足を運ぶことができ、高い品質を実現したとのこと。
構造としては、平面の非常に薄い振動板を採用。フィルム両面に独自のコイルパターンでボイスコイルをエッチング(表面処理)し、微細コルゲーション(波上の表面凹凸)を付与している。一般的なダイナミック型ドライバーに比べ、大幅な軽量化を実現しており、優れた応答性能を持つ。
さらに振動板両面に、透過度の高い微細孔エアダンパーを配置することで、振動板を適切に制動。外周以外に固定点を持たない真円形状になっており、膜全体の動きを阻害することなく濃密で抜けのよい低域表現も可能にしたという。
平面磁界型は、極めて小さいギャップの中で駆動するため、そこから飛び出して他の部品にぶつからないようにするためのダンピングが必要となる。YH-5000SEでは、振動板の両面を黒いパンチングメタルで挟むことで、振動板の低域再生時の振幅を制御している。
開放型のハウジングは、密度感と開放感の両立を目指して設計。耳介をゆったり覆うほどの大きな音響容積を持っているほか、開放型にする事で、バックキャビティ内の反射音との不要な共鳴を排除。ハウジングの内圧調整に、新規開発の日本製圧延平畳織ステンレスフィルターを採用したほか、ハウジング内にアーチ状突起を配置し反射板として機能させている。これらにより楽器や声のリアリティと、それらが鳴って消えるまでのニュアンスを適切にコントロールした。
再生周波数帯域は5Hz~70kHz、インピーダンスは34Ω。感度は98dB/mW。
極上の装着感を実現するため、筐体にはマグネシウムを導入。剛性を軽量化を両立させた。その結果、重量は約320gを実現。ハイエンドヘッドフォンとしては、かなり軽量になっている。
ヘッドバンドは2層構造で、装着感と良好な側圧を両立。頭部曲面形状にフィットするバンドを選択。ヘッドパッドは、バンドと完全に分離しており、アーチ状に立体縫製。ほどよい厚みのソフトクッションを内包し、頭部曲面形状に柔軟にフィット。金属部分は側圧を適切にするための役割も果たすという。
長さ調整のスライダーはステップレスで、クリック感が無く、スムーズに稼働する。スイベル機構も備え、耳裏のくぼみに対して追従性をアップさせるためにスラントスイベルを採用。意図的に回転軸をスラントさせて、耳裏の空気漏れを防いでいる。
イヤーパッドは2種類付属。レザータイプは、接触部分に羊革を配したもので、適度な吸湿性で蒸れを低減。外周に柔軟性の高い有孔合成レザー、内周に高通気メッシュを組み合わせることで、「輪郭のある音像と明瞭な音場感を両立する」という。
スエードタイプは、高級車の内装に採用されている「ウルトラスエード」を採用。「沈みこむような装用感と柔らかく温かみのある音で、よりいっそう長時間の没入体験に誘う」という。
ケーブルは着脱可能。3.5mm 3極プラグに、6.3mmアダプターもセットにしたケーブルと、4.4mm 5極のバランスケーブルを両方同梱。どちらのケーブルも線材に銀コートOFCを採用。組み込みケーブルは左右チャンネルのセパレーションに優れ、接続機器からの信号を最良のカタチで伝送できるとする。
別売ケーブルとして、XLRプラグのバランスケーブル「HXC-SC020」も2023年2月に発売する。価格は93,500円。
製品には、YH5000に専用設計されたヘッドフォンスタンドを同梱。同梱のケーブルも一緒にかけることができる。
なお、製品に付属するスタンド、イヤーパッド、アンバランスケーブル、バランスケーブルは、2023年2月に単品販売もされる。
- ヘッドフォンスタンド「HST-5000」 38,500円
- イヤーパッド(レザー)「HEP-5000LE」 27,500円
- イヤーパッド(スエード)「HEP-5000SU」 27,500円
- アンバランスケーブル「HUC-SC020」 60,500円
- バランスケーブル「HBC-SC020」 71,500円
- XLRケーブル「HXC-SC020」 93,500円
音を聴いてみる
音を出す前に、装着して驚くのはその軽さだ。ハイエンドヘッドフォンでは、重いモデルも多いが、YH5000は非常に軽く、開放型ヘッドフォンの中でもかなり軽量なモデルと言える。そのため、装着した状態でも“大きなヘッドフォンをつけている”という感覚は少ない。側圧も適度で、イヤーパッドが耳の周囲に密着する感覚にも安定感がある。
音を出すと、開放型らしい広大な音場が広がる。開放型ヘッドフォンの中でも音場は非常に広く、ヘッドフォンで聴いているとは思えないレベル。
平面磁界型ドライバーによる再生音は“精緻でクリア”。超広大な音場に、非常にシャープな音像が、トランジェント良く描写され、歯切れの良い、聴いていて気持ちが良いサウンドだ。平面磁界型では低域が弱いヘッドフォンも多いが、YH5000は十分パワーのある低音が描写されており、ベースの量感や、押し寄せる音圧のパワフルさが感じられる。
イヤーパッドは複数の素材を組み合わせ、三次元的に縫製したレザーのパッドを採用。
イヤーパッドは2種類付属しているが、羊革のイヤーパッドは、解像度重視のまさにHi-Fiサウンド。YH5000の情報量の多いサウンドを活かすのであれば、羊革イヤーパッドが良いだろう。一方でスエードのイヤーパッドでは、中低域の迫力がアップ。低音がズシズシ響くビリー・アイリッシュの楽曲などは、スエードの方がマッチする。