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「MEMORIES」「ガルパン劇場版」アナログとデジタルで異なる4K HDR化のこだわりとは
2025年11月21日 13:08
1995年に公開された大友克洋原作・製作総指揮・総監督の「MEMORIES」と、2015年に公開された「ガールズ&パンツァー 劇場版」。この2作品が4K化され、劇場での限定上映および4K ULTRA HD Blu-ray(UHD BD)でのリリースが決定した。今回、4K化を担当したクープへ潜入。制作工程やそのこだわりについて、2作品を担当した庄司光裕氏に聞いた。
アニメ作品の4K化といっても、2作品でその方法はそれぞれ異なる。アナログのフィルムが残っている「MEMORIES」は、6K相当の情報量をもつといわれる35mmネガフィルムを、現在のスキャン技術で取り込むことで、フィルムの全スペックを引き出せるようになった。そして、大友監督の意図に合わせて、4K版としてのマスタリングが施されたものがUHD BDに収録される。
一方で、デジタルデータとして保存されている「ガールズ&パンツァー 劇場版」は、元のデータがフルHD解像度しかないため、アップコンバートという手法が採られた。今回はAI技術も活用して高解像度化する「FORS AIシステム」が採用されている。
「MEMORIES」は4K HDRならではの幅広い色彩表現が魅力
さっそく4K版2作品の試聴用シーンを見せてもらう。「MEMORIES」は、「彼女の想いで」「最臭兵器」「大砲の街」の3作品で構成されている。それぞれ数シーンを見て、最も印象的だったのがハッキリとした色合い。
セル画の時代の作品は、ブラウン管テレビや当時の映画館の設備で見た時に色が少し白飛びしてしまうことも考慮した色選びが行なわれているため、その状態の色でデジタル化すると、違和感のある色になってしまうという。そういった要素も踏まえて、現代の作品を観ている人達が違和感を覚えないように調整することもリマスタリングの仕事だそうだ。
色鮮やかかつ、セル画であることがハッキリとわかるので、「鮮やかなアナログの絵が動いている」という感覚。パッと見では、30年前の作品という印象がない。HDR化によるものかと思っていたのだが、以前のHDリマスター版と比較試聴してみると、ノイズのように見えるものがなくなっている。だがこれは、ノイズではなく、フィルムの特性である“粒状性”なのだという。
庄司氏(以下敬称略):最近の映像に慣れている人はノイズのように感じてしまうかもしれませんが、これはフィルムの粒状性という特性です。「MEMORIES」のリマスタリング作業では、この粒状性を残すか、取り除くかという部分も大きな要素でした。大友監督の意向に従って、粒状性を取り除いた現代風の画に仕上げる方向性に決まりました。
庄司:粒状性と同様に、色味なども大友監督とどのような方向性にしていくか? を先に詰めていきます。監督の意図に従って作業を進め、最後にまた大友監督が全てチェックをして今回の4K版が仕上がりました。
とくに「MEMORIES」は、3話収録の作品がそれぞれ異なる方向性で仕上げられているのが特徴です。例えば「彼女の想いで」は、比較試聴で分かりやすいと思いますが、以前は少し緑がかった映像に仕上げられていました。もちろん当時と同じ色味で仕上げることもできたのですが、こちらも大友監督の指示で、4K版の色味の方向性が今回のものに決まりました。「最臭兵器」も同じように色味を大分調整しています。
庄司:「大砲の街」は、スキャンしただけでは当時とはかけ離れた色になってしまったので、従来の色味に合わせて調整していく方向性に決まりました。「大砲の街」はすべてワンカットマッチで制作されていたため、例えば、最初のシーンで色味を調整して作品全体に適用すると、カット毎にバラバラな色になってしまいます。ですから、仕上がりが統一されるようにカット毎での調整が必要で、非常に大変な作業でした。
庄司:今回は4K化と同時にHDR化しているので、輝度と色域が公開当時よりも幅広く使えるようになっています。観ていただく方々には、暗いところから明るいところへの変化や、派手なシーンと地味なシーンの差など、色彩表現の豊かさを是非楽しんでいただきたいです。
ガルパンはより鮮明で派手な映像に進化
「ガールズ&パンツァー 劇場版」も試聴用シーンを観せてもらった。こちらは劇場でも観た作品だが、10年経った今観て、「こんなにクッキリしてなかったよな」と感じるくらいには変化がわかる。
元々演出で見せるアニメ作品という印象が強いガルパンだが、HDR化によって、夜の星空のシーンはより印象的に、爆発は超ド派手に進化して、画そのものが大幅にパワーアップ。試聴用の短い映像でも、より魅力的な作品に昇華されたような印象が感じられた。
新旧の比較映像を観てると明確に線がシャープになっており、その影響か色も締まったように見える。とくに戦車の動きは、より現実感も増している。元々大きなサイズの編集データが残っていて、そこから新たに書き出したのでは? と思ってしまうくらいだったのだが、そうではなく、フルHDサイズに書き出し済みの映像をアップスケーリングした映像とのことだ。
庄司:「ガールズ&パンツァー 劇場版」のアップコンバートには、弊社のFORS AIシステムという技術を使っています。いくつかのパターンを出して元々の映像と比較しながら、水島監督と方向性の確認を行なって、より鮮明に、シャープな映像に仕上げていくことになりました。ただシャープ過ぎてしまうと、2時間観た後に疲れてしまうので、その辺りも考慮して調整しています。
HDR化で輝度の自由度も上がったので、派手目に見せるか、少し地味にするか、オリジナルとの差をつけないようにするか、などの方向性を相談した際には、「派手な方が良い」という要望をいただきました。とくにカール自走臼砲のシーンは爆発を派手に、臨場感が出るように仕上げました。
庄司:FORS AIでは、元の映像を取り込んで高画質化した映像を生成していくわけですが、この作業も一発で正解が出るわけではありません。別のキャラクターになってしまうとか、戦車の形が変わってしまうといったことは起こらないのですが、木が2、3本生えている背景が森になってしまったり、文字が謎の記号になってしまったり、といったことがあります。
また、背景をぼかして距離感を出しているシーンでは、出力物の背景がクッキリした状態で出てしまったり、と人の手では起こらないことが多々起こります。
一方で、ネガフィルムが残っている「MEMORIES」と違って、デジタルデータである「ガールズ&パンツァー 劇場版」については、色域はすでに決まっています。全体の色が引き締まって見えるかもしれませんが、それは4K化によって、線がシャープになった影響だと思います。そのほかにも、HDR化で輝度の方はかなり広くなっていますので、明るくなった影響で鮮やかに見えるようになったという部分もあると思います。
庄司:4K HDR化でより鮮明で、観やすい映像になったと思います。きっと、観たことがない映像のように仕上がったシーンがたくさん出てくると思いますので、是非UHD BDでDolby Atmos音響とともに楽しんでください。






































