プレイバック2017
オーディオ&ビジュアル取材の最強カメラ!? ソニー「α9」をニッチに活用 by 編集部:山崎
2017年12月21日 08:15
取材や製品の撮影などでデジカメを使う毎日。ソニーのフルサイズミラーレス「α7」を愛用していたが、長年の酷使に耐えかねたのか、今年の中頃に故障してしまった。「修理費用もそれなりにかかるだろうなぁ」と考えた末、えいやとハイエンド機「α9」を購入。これが予想以上に仕事で活躍している。その理由は、無音、無振動の電子シャッターだ。
ご存知の通り、α9は、超高速な読み出しスピードを誇る積層型CMOSセンサー「Exmor RS」の、フルサイズバージョンを世界で初めて搭載したカメラ。このセンサーを活かし、従来の一眼レフでは困難な秒間20コマの高速連写を実現。「カメラの歴史を変える、ブレイクスルーとなる製品」とまで言い切る、ソニーの自信作だ。
その高速連写性能のため、「F1やスポーツ、航空機などを連写するプロ機」というイメージが強い。私は趣味でスポーツの撮影もするので、それに期待して購入したのも事実。だが、実際に買ってみると、もう1つの特徴である“無音撮影”機能が便利なのだ。
要するに、進化した電子シャッターを使って、従来のメカシャッターの「カシャ」という動作音を一切出さずに撮影できる。実際に撮ると驚くのだが、本当に音が一切出ない。あまりに出ないので「ホントに撮影できてんのかなこれ」と心配になり、SDカードのアクセスランプを見て「ああ、大丈夫だ」と安心するレベル。音だけでなく、中でメカが動かないので振動も一切発生せず、ブレを抑えるという利点や、メカシャッターの限界を上回る最高1/32,000秒のシャッタースピードが可能という利点もある。
オーディオビジュアル関連で無音撮影が便利なのは、試聴イベントの取材だ。各ブースに入ると、オーディオ機器から音楽が流れ、来場者が静かにその音質を確かめている。その横でカシャカシャやるのは申し訳ないので、CDの入れ替えや、機器の説明など、音が出ていないタイミングを見計らって撮影するのだが、時間の関係などでそれが無理な場合、無音モードで撮影すると、来場者の集中を邪魔せず撮影できる。
製品の開発者インタビューの記事には、話を伺った人の写真を掲載する。インタビュー中に撮影させてもらうのだが、この時にも無音撮影が威力を発揮する。というのも、“喋っている時に撮影される事”に慣れている人なんて、芸能人でもない限りほとんどいない。多くの人は、カメラを向けられると、表情がこわばったり、意識して何を喋っているのかわからなくなるのが当然だ。
だが、無音のカメラだと、最初こそ“カメラを向けられる緊張感”はあるものの、今撮影されているのか、していないのか、無音なのでわからないので、途中から「まあいいや」と気にならなくなる。カメラを意識していない方が、自然で、いい表情が撮れる。
α9というカメラのユーザー層を考えると、「選手の集中力を乱さないため、静寂が求められるスポーツでの撮影」とか、「野生動物を驚かせずに撮影する」といった利用シーンを前提に作られたもので、きっと“オーディオビジュアル関連の取材”なんてニッチな用途は想定されていないだろう。
だが、例えば、ライブハウスで友達のバンド演奏を撮影とか、娘のピアノの発表会とか、赤ちゃんの寝顔を起こさずに静かに撮影……など、普通の人でも活用できるシーンはありそうだ。カメラという成熟した製品であっても、ユニークな機能を1つ追加するだけで、活用の幅がグンと広がるのを実感した2017年だった。