プレイバック2019
初上陸スピーカー導入など視聴環境刷新。高音質ストリーミングの衝撃 by 逆木 一
2019年12月27日 08:30
2019年も、例によって始まりから終わりまでオーディオビジュアルにずっぽりとはまった年になった。ある種の谷間だった2018年に比べると、2019年は新たな機器の導入にだいぶ投資した年でもある。とはいえ延々と買い物記録を開陳しても芸がないので、「オーディオ関連で今年一番のニュース」と「筆者の視聴環境の変化」の2つに絞って2019年を振り返ろうと思う。
今年一番のニュースは何といっても……
筆者の考える今年一番のニュースは、ずばり、ロスレス/ハイレゾ音楽ストリーミングサービスが日本国内で正式にスタートしたこと。具体的には、「Amazon Music HD」と「mora qualitas」のスタートである。もともとmora qualitasは2018年12月の時点で「2019年初春開始」と予告されていたのだが、実際の開始は大きく遅れ、それに先駆けてAmazon Music HDが電撃的な登場を果たした。
ロスレス/ハイレゾ音楽ストリーミングサービスは以前からTIDALやQobuzといった先行するサービスが存在していたのだが、日本でのサービスは始まっておらず、日本から利用するにはある程度のハードルがあった。Amazon Music HDとmora qualitasのスタートによってようやくその状況が改善され、多くの音楽ファンが気軽に、気兼ねなく「CD相当、あるいはそれ以上」のクオリティの音源を定額聴き放題で楽しめるようになった。
ただ、Amazon Music HDとmora qualitasは先行するTIDALやQobuzに対し、各種ネットワークプレーヤーや再生ソフトとの連携という点では遅れていることも事実である。この二点は使い勝手と再生品質の両方を高めるうえで必要不可欠。色々と言いたいことはさておき、今はひとまずサービスの開始を素直に喜ぶとしても、Amazon Music HDとmora qualitasには今後いっそうの頑張りを期待したい。
思えば、2010年代はPCオーディオにせよ、ネットワークオーディオにせよ、ディスクではなくデジタルファイルそのものを再生するスタイルがおおいに存在感を増した時代だった。一方で、再生に先立つ「手持ちのCDをリッピングまたは音源をダウンロードして自分のライブラリを構築する」というプロセスが少なからぬユーザーにとって障壁となり、ファイル再生の普及にブレーキをかけてきた感は否めない。
それに対し、音楽ストリーミングサービスではクラウド上に用意された音源を利用する形なので、ユーザーが自前のライブラリを用意する必要はない。ユーザー自身が所有する音源を含め、「本当に聴きたい曲」をすべて音楽ストリーミングサービスで賄える保証はないものの、オーディオファンがファイル再生に取り組むための障壁は間違いなく下がるだろう。
2010年代の最後に、日本でロスレス/ハイレゾ音楽ストリーミングサービスが始まったことは、ネットワークオーディオにオーディオの未来を見出した筆者にとっても、とても喜ばしいニュースとなった。
置き場所に限界! 新ラックや日本初上陸スピーカー含む視聴環境の変化
筆者のメインシステムは以前からオーディオ系を部屋の前方、ビジュアル系を部屋の後方に置き、AVアンプのプリアウトを長く引き伸ばすことで両者を繋いでいた。しかし、オーディオ用PCやら外部電源やらクロックやら、ファイル再生関連の機器がとどまることなく増殖した結果、今までのラックではとうとう機器の置き場所が枯渇してしまった。
そこで、一念発起して大型のラックを導入し、「アンプ以前のすべての機器を部屋の後方に置く」レイアウトに刷新した。
おかげで余裕をもって試聴機を置けるようになり、スピーカーの間もすっきりした。再生音にもプラスの影響があったし、今まで以上にアンプやスピーカーの試聴もはかどりそうだ。
もうひとつの大きなトピックは、昨年にPC環境にそのまま組み込む形で構築した「ゲームシアター」のレイアウトを刷新し、デスクトップ・オーディオ環境としても使えるようにしたこと。基本は変わらず、Monitor Audioの小型スピーカー「MASS」とマランツの薄型AVアンプ「NR1608」から成るサラウンドシステムとなっている。
そもそも、筆者のライターとしての活動の根底には「オーディオやホームシアターの楽しさ・面白さを伝えたい」という想いがある。
一方で、筆者のメインシステムは、長きにわたってこだわりを投じ続けた結果、一般的な視点からすれば明らかに「非現実的」なものになってしまった。オーディオビジュアルの楽しさを追求すればするほど、その魅力を伝えたい相手との溝が深まってしまう。これは筆者が学生時代から常に意識してきた課題である。
というわけで、このデスクトップ環境/ゲームシアターは、ともすれば暴走するこだわりを意識的に抑え、多くの人に対して説得力や現実感を持ち得ることを目指した。最大限のこだわりを詰め込んだメインシステムとは別のベクトルで、多くの人にオーディオビジュアルの楽しさを伝えていきたい。
最後に、2019年で特に印象的な買い物をひとつあげるなら、今年日本に初めて導入されたカナダ・Paradigm製のブックシェルフスピーカー「Persona B」(1台750,000円/ペア販売)になるだろう。
Persona Bはツイーターだけでなくウーファーの素材にもピュア・ベリリウムを採用し、「全帯域をベリリウム・ドライバーが担う」という稀有なスピーカー。幾度かの試聴を経て、未だかつて体験したことのない出音の透徹さに心奪われて導入を決めた。
あまり設置にこだわっていない状態でなお、Persona Bは筆者のメインスピーカーであるDynaudio Sapphireに比肩するパフォーマンスを発揮しており、今後さらに実力を引き出し、様々に活用するのが楽しみでならない。
きたるべき2020年も、やっぱり例によって始まりから終わりまでオーディオビジュアルにずっぽりとはまる年になるに違いない。