プレイバック2019

クルマ貯金がヘッドフォンとポータブルプレーヤーに消えた! 金銭感覚崩壊の1年 by 野村ケンジ

2019年はバタバタしているうちにいつの間にか年の瀬になっている、といった印象の1年だった。とにかく、あっという間に通り過ぎていってしまった印象だ。とはいえ、仕事は結構頑張ったと思う(結構な数の原稿を書いたはず!?)し、年末には運良く2回も海外取材に行くこともできた。おしなべて、充実した年だったと思う。

気がつくと増えているヘッドフォン

いっぽうで、世の中的にはTWS、完全ワイヤレスイヤフォンが一世を風靡した年だったと思う。数年前から倍々で新製品が増えていった製品ジャンルだが、2019年は100モデル超の新製品が登場し、機能性や音質についても、かなりのステップアップを感じた。使い勝手、音質ともに納得のいくモデルが多数揃うなか、そのなかでも特にAVIOT「TE-BD21f-pnk」とNOBLE AUDIO「Falcon」のサウンドが気に入っている。

さて、ここからが「プレイバック2019」の本題だが、これまでの記事ではその年に入手したオーディオ製品をピックアップして紹介してきたため、今年も購入したモノのなかからこれぞという製品を紹介しようと思い振り返ってみたところ、これがまたひどい内容だった。一言で表すならば、「歯止めがきかなかった」といった印象で、欲しいと思ったものを片っ端から手を伸ばしているという、かなり残念な状況だったのだ。

言い訳をさせて貰えるならば、実は今年はクルマを買い換える(100万円前後の中古車)つもりだったのだが、車検が来年まで残っていることに気がついてしまい、せっせと貯めたお金が浮いてしまったこともある。そんな中、購買意欲をそそるヘッドフォンが発売された。あれ、これもしかして買えるんじゃね!? と気がつき、ついついfinal「D8000 Pro Edition」に手を出してしまったことが、金銭感覚崩壊の始まりだった。

「D8000 Pro Edition」

「D8000 Pro Edition」の実体感あるリアリティ派サウンドを聴いているうちに、開放型ヘッドフォンのもうひとつの雄(と勝手に思っている)であり、微細な表現を徹底的に拾い上げてくれる超解像度派のオーディオテクニカ「ATH-ADX5000」も欲しくなってしまい、入手。

オーディオテクニカ「ATH-ADX5000」

代わる代わる聴いて、両者のサウンドキャラクターの違いを楽しむ日々を堪能することとなった。そんな矢先に、今度はヒビノからAKG「K701」と「K240studio」の正規販売が復活したのでこちらも入手。加えて、AudioDoの調整機能が素晴らしいノイキャンヘッドフォンSKULLCANDY「CRUSHER ANC」などなど、気がついたら半年足らずのうちにヘッドフォンが10台以上増えているという、不思議な状況に陥っていた。

それにしても、開放型ヘッドフォンのストレスのない、広がり感のあるサウンドは大いに魅力的だと思う。フォーカスがよく、それでいて確かな実体感のもつ歌声を聴かせてくれる「D8000 Pro Edition」も、超解像度派の「ATH-ADX5000」も、そして名モニターヘッドフォンAKG「K701」にも共通する独特のヌケのよさ、聴き心地の良さは、何物にも代えがたい魅力がある。音漏れがあるため屋外では扱いづらい開放型ヘッドフォンだが、この先もずっと好きで居続ける気がする今日この頃だ。

気がつくと増えているDAP……

もうひとつ、散財に貢献した製品ジャンルがある。それがDAP(デジタルオーディオプレーヤー)だ。実は、2019年は中国ブランドの進化が急激に進み、同時にウォークマンの大幅な刷新もあって、なかなかに魅力的な製品が揃う当たり年となった。最新のAndroid OSを搭載することで(SIMなしながらも)ストリーミング再生に対応するなど、利便性を高めたモデルも登場。音質一辺倒のアピールではない、使い勝手にも配慮された製品も見られるようになってきた。

そういった事情のなか、特に気に入って手に入れることになったのは、高級DAPの定番中の定番であるAstell&Kernからは音質最優先でやや持ち運びに難のある「KANN CUBE」とハイエンドモデルの最新型「A&ultima SP2000」、音質が好みだった頃のニュアンスに近くなってきたiBasso audio「DX220」、そして昨日到着したばかり、Android OSを搭載しながらも音質は下がらず利便性が格段に向上したストリーミング・ウォークマン、ソニー「NW-ZX507」の4台。

「KANN CUBE」はホームオーディオ用として、「A&ultima SP2000」は仕事上のリファレンス機として、アンプ部が交換できる「DX220」はいろいろといじり倒す趣味の1台として、「NW-ZX507」はBluetooth接続などの検証用にも使えるもうひとつのリファレンス機として、それぞれ大いに活躍している(ソニーのみこれからだが)。

このように、ヘッドフォンとDAPだけでもクルマ用の貯金はまるっと全部なくなってしまったが、後悔はしていない。なにせ、その代わりに公私ともに得られるものが随分沢山あったのだから。

……とりあえず来年は、クルマ購入に向けて節制を心がけ貯金を増やしたいと思います。反省してます。

野村ケンジ

ヘッドフォンからホームシアター、カーオーディオまで、幅広いジャンルをフォローするAVライター。オーディオ専門誌からモノ誌、Web情報サイトまで、様々なメディアで執筆を行なうほか、TBSテレビ開運音楽堂「KAIUNセレクト」コーナーにアドバイザーとしてレギュラー出演したり、レインボータウンFMで月イチ番組のコーナー・パーソナリティを務めるなど、様々なメディアで活躍している。最も得意とするのはヘッドホン&イヤホン系で、年間300モデル以上の製品を10年以上にわたって試聴し続け、常に100製品以上を個人所有している。一方で、仕事場には100インチスクリーンと4Kプロジェクタによる6畳間「ミニマムシアター」を構築し、ステレオ用のプロフェッショナル向けTADとマルチチャンネル用、2系統のスピーカーを無理矢理同居させている。