トピック
Technicsの高音質小型オーディオ「SC-C70MK2」。CD再生の“手間を楽しむ”
- 提供:
- Technics
2021年3月5日 07:00
Technicsが音楽ファンのために作った一体型システム
昨年からのコロナ禍の影響で、自宅で過ごす時間が増えた人も多いだろう。巣ごもり需要が増したことで、家の中で楽しむホームエンターテイメント分野の需要が大きく増している。オーディオ機器もそのひとつだ。定額制で世界中の膨大な楽曲を聴き放題で楽しめるストリーミングサービスも普及し、家の中だけで快適に音楽を楽しむ環境は整っている。そこで悩ましいのが“聴くための機器をどうするか”。スマホやタブレットでは味気ないが、スピーカーにアンプ、プレーヤーなどを揃えていくとお金がかかりすぎるし、そのための場所の確保も難しい。できれば、ちょっとしたスペースに置くことができ、しかも音の実力は本格的というモデルが欲しい。そんな人におすすめなのが、Technicsの「OTTAVA f SC-C70MK2」だ。
Technicsというと、高級機がずらりと揃ったハイエンド・オーディオブランドと思われがちだが、高価なモデルだけではない。SC-C70MK2の価格は10万円(税別)で、決して手の届かない価格ではないし、しかも、CDプレーヤー、アンプ、2.1chのスピーカーを一体化しており、FM/AMチューナー、ネットワークオーディオ機能、Bluetooth機能などなど、現在のさまざまな音楽ソースに幅広く対応している。要するに、SC-C70MK2が一台あれば、あらゆる音楽を自在に楽しめるというわけだ。機能を考えれば、お買い得と言えるほどのモデルだ。
そもそもTechnicsはオーディオの黄金期とも言える1960年代に始まった。1965年に発売された密閉型2ウェイスピーカーの「Technics 1」を皮切りに、優れた新技術を積極的に採用し、高性能なモデルを次々に製品化した。世界的に知名度を高めたのは、世界初のダイレクトドライブ方式のターンテーブル「SP-10」。そして、「SL-1200」。世界中に愛好家のいる名機の原点だ。ダイレクトドライブ方式をはじめ、その歴史を見ていくと、「世界初」の技術を採用したモデルがかなり多い。ブランドの名の通り技術にこだわるブランドで、新しい技術でオーディオの可能性を拓いてきたのだ。
その後、2014年に新生Technicsとして復活。高級オーディオ機器をはじめとした製品を発売し、2016年にはアナログ・ターンテーブルの「SL-1200GAE」を発売し、世界中で大ヒットとなった。かつてのデザインテイストを色濃く残しながらも、ヘアライン加工されたアルミパネルを備えた清潔感のあるデザインを採用し、幅広くラインアップを展開している。また、人気の高いヘッドフォン/イヤフォンの分野でも「EAH-TZ700」や完全ワイヤレス「EAH-AZ70W」などでその名を知る人も多いだろう。
カバーを手で開閉してCDを再生する喜び
SC-C70MK2は、そんなTechnicsの技術を惜しみなく投入して、手軽に使える一体型のオーディオシステムとして製品化されたもの。それまでの高級オーディオとしてのTechnicsファンではなく、音楽を良い音で楽しみたいという音楽ファンに向けた製品だ。まずは製品をじっくりと見てみよう。
アルミのトッププレートにはTechnicsのロゴが彫り込まれ、中央にはトップローディング方式のCDプレーヤーがある。トレイで内部に収納するのではなく、ディスクカバーを手動で開閉して中のメカ部に直接ディスクをセットする方式だ。今ではあまり見かけないが、透明のカバー越しにディスクが回転する様子が見えるようになっていて、音楽を楽しむ機器という雰囲気にあふれている。
ディスクメカ部分には白色LEDのイルミネーションもあり、再生中のディスクを照らす機能もある。現代のオーディオ機器は、ディスプレイの表示やインジケーターの点灯くらいで、外から動作状態がわからないものがほとんどだが、趣味のオーディオとしては、回転しているディスクが見えるなど、動作しているのがわかると音楽を聴く雰囲気もよくなると思う。
操作ボタンはシンプルで、スピン加工された電源ボタンのほかは、右側手前に主要な機能ボタンの名称があるだけ。これらはタッチセンサー式のボタンで、触れるだけで操作ができる。シンプルに徹したデザインで、インテリアと自然に調和するものとなっている。取材用にお借りした製品はトップパネルも含めてブラックのモデル(新色)だが、トップパネルが白に近いシルバーとなった、他のTechnicsと同じトーンのカラーも用意されている。
背面を見ると、さまざまな接続端子がある。ネットワーク端子やUSBメモリー用のUSB端子、FM/AMチューナー用のアンテナ端子。これに加えて、アナログ音声入力が1系統(ステレオミニ)、光デジタル入力端子もある。薄型テレビの音声をSC-C70MK2につないで再生することだって可能だ。本機がとても多彩なオーディオソースに対応し、さまざまな機器と組み合わせた使い方もできることがわかるだろう。
ボディはガッシリとしていて、重量も約8kgとそれなりにある。内部構造については後で詳しく説明するが、いわゆる安価なミニコンポ的な安っぽさはまったく感じない。一般的な棚やラックがたわんでしまうほど重いわけではないが、構造のしっかりとした頑丈なラックや棚に配置してあげたい。
Technicsの技術を惜しみなく投入したユニットや電気回路
前面のルーバー状のデザインがほどこされたフロント部には、スピーカーが内蔵されている。前面にあるのは、20mmドーム型のツイーターと、8cmコーン型のウーファー。2ウェイ構成で左右に配置されている。ツイーターは振動板形状の最適化に加えて、振動系の軽量化、ボイスコイルワイヤを銅線からCCAW線に変更するなどを行なって基本特性を改善。超高域の伸びを改善し、音場感豊かな再生を可能にしたという。
ウーファーは、ボイスコイルの軽量化とマイカ混抄振動板を採用して剛性を高めるなどして、音のレスポンスと明瞭度を高めた。これらによって、より情報量豊かで生き生きとした音を実現している。
また、ツイーターの前面には「逆ドーム形状フィン」と呼ばれる音響レンズも採用している。左右のスピーカーの距離が短くなる一体型でも豊かな広がりのある音を実現するためのもの。SC-C70MK2では、ツイーターに合わせて形状を最適化し、8kHz~12kHzにおいて30度方向の音圧を高め、より豊かに音が広がるようになっている。この音響レンズもルーバー越しに見ることができるが、音響レンズのフィンとルーバーの間隔が合わせてあることがわかる。これにより放射される音がスムーズになるという。デザインと音質のための機能が一体となっているのがわかる。
そして、本体の底部には、12cmのサブウーファーがある。ウーファーの大振幅を支えるため、NBR(ニトリルゴム)製の大型エッジ、高強度繊維ダンパーを採用。これに背面のあるデュアル・ロングポートを組み合わせ、豊かで迫力のある低音再生を実現している。
このように、本体のほとんどの部分はスピーカーとそのためのキャビネットとなっている。そのため、筐体は木製だ。サイドプレートに加え、底面も金属製のプレートで補強されているのでほとんどわからないが、ボディは木製の箱に木製の板でスピーカー部、メカ部、回路部などを仕切った構造となる。仕切りを入れることで各部の振動などの影響を遮断するほか、ボディ全体の剛性の強化も兼ねている。こうした各部の独立したブロック構成や木製エンクロージャーの採用は、電気回路やCDドライブメカ、振動源でもあるスピーカーが同居した一体型システムとして、もっとも重視した点だという。
スピーカーを駆動するアンプ部には、ハイエンドモデルとなるリファレンスシリーズでも使われるデジタルアンプ技術「JENO Engine」を採用。スピーカーの直近までフルデジタルで信号を処理し、アナログアンプの問題点であるクロスオーバー歪みなどの問題を解決したフルデジタルアンプだ。高精度なデジタル信号処理により、デジタル的な音質劣化の原因であるジッターの除去なども高精度に行なえる。
これは、現在のTechnicsの核となる技術でもあり、現行のTechnicsの製品では幅広く使われているものだ。フルデジタルアンプに供給する電源もスイッチング方式の電源となる。スイッチング電源はノイズが多くオーディオ機器には適していないと言われていたが、それは過去の話。例えばスイッチング電源で生じるノイズは、スイッチングを行なう周波数を可聴帯域よりも高いところに設定することでその影響の多くを排除することが可能だ。
これまでのTechnics製品でスイッチング電源の改良が進んでおり、今では大きなトランスを使ったリニア電源よりも低ノイズを実現しているという。もちろん、アンプ部とそれ以外の回路部との電源を独立し、アンプ部への影響を排除するなど、さらに徹底したノイズ対策も施されている。
デジタルアンプとスイッチング電源の採用は、一体型の機器や小型の製品には欠かせないものだが、Technicsでは単純に小型化するためだけに採用しているのではなく、オーディオ用として数々の技術を盛り込み、音質も含めて優れた性能を実現したものが使われている。これまでのTechnics製品の開発で得られた技術やノウハウが一体型のボディに詰め込まれているのが、SC-C70MK2だと言える。
こうした高精度なデジタル信号処理を行なう「JENO Engine」を、SC-C70MK2では3個使用している。2個はデジタルアンプ用で、ツイーター/ウーファーとサブウーファーをそれぞれ独立して駆動するバイアンプ構成を採用。残りの1個は、室内の設置場所や音響特性に合わせて最適な音場に補正する「Space Tune Auto」用として使っている。「Space Tune Auto」については、詳しくは後日掲載する後編で紹介する。
このほか、スピーカーの再生する周波数によって変動するインピーダンスがパワーアンプに与える影響をなくすため、「LAPC(Load Adaptive Phase Calibration)」という技術もリファレンスクラスから継承している。この技術は組み合わせるスピーカーに合わせて測定を行なう必要があるが、SC-C70MK2は一体型なので、製造時にあらかじめスピーカーの特性を測定しており、その特性に合わせて理想的なインパルス応答を実現している。このため、使用時に特別な測定などを行なう必要はない。
CD再生でクオリティをチェック!
ではいよいよ音を聴いてみよう。今回の記事では、一番の特徴であるCD再生について紹介する。まずはCDのカバーを開けてディスクをセット。カバーは回転式で左右方向どちらにでも回転できる。ただ回転するだけでなく、回していくとカバーがわずかに上に上がっていく。メカ部が完全に見えたらディスクをセットしよう。CDのディスクケースにセットするときと同じように、中央のロック部分にカチッとハメこめばいい。後はディスクカバーを閉める。一般的なトレイ式のプレーヤーよりも手間がかかるが、このくらいのひと手間があった方が音楽を聴く気分も上がるというもの。
後はディスクの読み込みが始まり、再生ボタンを押せば音楽が鳴りはじめる。
アンドリス・ネルソンス指揮ウィーン・フィルによる「ベートーベン/交響曲全集」から「交響曲第9番」の第四楽章を聴いたが、CDらしい輪郭の立ったくっきりとした音だ。音の粒立ちがよく、さまざまな楽器の音、合唱団の声がクリアに再現された。音場の広がりは一体型としてはなかなか優秀だ。
なにより驚くのが低音のパワー。各楽器が一斉に音を出すときの厚みや迫力はコンパクトな一体型システムとは思えない。AVラックがテレビ用のそれほどしっかりとしたものではないこともあり、ラックごとビリビリと震えているし、そのせいで低音の再現が甘く感じてしまう。一体型の親しみやすいシステムと思っているとびっくりするような音だ。
そこで、製品と一緒にお借りしたオーディオボードを使ってみた。これは、昨年の発売時のキャンペーンでプレゼントされていたもの。正体を明かしてしまうとTAOC製。複数の木材と独自の構造を持った鋳鉄の層を重ねた構造で、音楽の豊かな響きはそのままに、濁りの原因になるような振動だけを吸収するようにチューニングされたオーディオボードだ。なぜTAOC製かというと、製品の開発ではもともとTAOCのオーディオボードを使って音の確認やチューニングが行なわれていたそうで、プレゼント用にと企画した時にも同じTAOC製ならば、開発時に近い音になると考えたためだという。
現在はこのオーディオボードのプレゼントキャンペーンは終了しているが、低音のパワーが予想以上に大きいので、こうしたオーディオボードの使用がおすすめだ。オーディオボードもさまざまなメーカーから発売されているので、選択に迷ったらTAOC製を選ぶといいだろう。
ラックにオーディオボードを敷いて、その上にSC-C70MK2を置いて再生してみる。すると低音の明瞭度がかなり上がる。第4楽章の冒頭では、合唱の最初と同じメロディーを低音弦で演奏するが、メロディーがぼやけず、そして胴鳴りの豊かな響きもよりスムーズに広がる。このため、音場の広がりがさらに明瞭になり、オーケストラが配置したステージの見晴らしがスカッと晴れる。オーディオボードだけでそんなに影響があるの? と疑問を持たれそうだが、オーディオボードの効果も大きいし、SC-C70MK2の低音のパワーがそれほど大きい。スピーカーの低音が音を汚すなどとよく言われるが、そのことがはっきりとわかるので、SC-C70MK2のユーザーはぜひともオーディオボードの有無による音の違いを聴く比べてみるといい。このような、ちょっと一汗かいて、音の変化を楽しむのも自宅で楽しむオーディオ再生の面白さのひとつだ。
続いては長年の愛聴盤である大瀧詠一の「ロングバケーション 30th Version」を聴いた。「君は天然色」などを聴くと、実にフレッシュで張りのある音で爽快感のある曲調もあって、とてもすがすがしい気持ちになる。ドラムスの打音はもちろん、ピアノの音も案外骨太で力強い。現代的な感覚で言うと、音のエッジが立ったやや硬めの印象もあるが、CD全盛時のクリアで生き生きとした音だ。
ここで、音質調整の機能である「CDハイレゾ リ.マスター」を試してみた。これは、CD音源をアップサンプリングすることで、20kHz以上の音も復元するなど、ハイレゾ音源に近い音として再生する機能。これを使うと、角が取れてピアノの音色などが少し滑らかになる。張りのある生き生きとした音が鈍ることもなく、なかなか気持ちよく聴けるようになる。
CDの音を聴き慣れた人にはオフのままで、パリっとした切れ味の良さが良いと感じる人もいると思うし、もっとパワフルなロックサウンドでディストーションを効かせた歪みに近い音まで楽しむにはオフがいいと思う。逆にアコースティックな楽器主体の曲はオンの方が聴き心地がよい。ボーカルも同様で、クリアさや勢いのよさはそのままに声の伸びや高音域の声がスムーズになるので、より生々しい演奏になる。好みに合わせて使い分けるといいだろう。
最後は森口博子の「GUNDAM SONG COVERS2」から「月の繭」を聴いた。こちらもハイレゾ版があり、ふだんはハイレゾ版の音を聴くことが多いのだが、CD版のキリっと音の立つ感じをしっかりと出し、ハイレゾ版との音の違いをしっかりと描き分けた。絶対的な情報量はハイレゾ版の方が優れるが、CD版は特にボーカルにスポットライトを当てたように、ボーカルが立つので、独特の魅力がある。音質的には「CDハイレゾ リ.マスター」を使うとハイレゾらしいスムースさも出てくる。ボーカル主体でじっくりと聴きたいという人はCD再生はなかなか魅力的だ。
注目の「Space Tune Auto」の効果は!?
長くなったので、今回はここまで。使っていて感じるのは、CDをセットする作業や、CDが回転する様子を見るのはやはり楽しいという事。そして、CDらしい音をストレートに鳴らしてくれた。音質からも一体型とは思えない出来の良さ、ストリーミングやハイレゾ全盛の今でもCD再生が好きという人にはぜひおすすめしたい製品だ。
しかし、SC-C70MK2の魅力はまだまだある。音の実力という点でも、実はまだまだ本領を発揮していない。SC-C70MK2には、「Space Tune Auto」という音場補正機能もあるのだ。次回ではこの「Space Tune Auto」についてじっくりと紹介しよう。そして、ハイレゾ音源やストリーミング再生、Bluetooth再生などなど、多彩なソースに対応する機能を試してみることにする。SC-C70MK2が、単なる一体型システムではなく、実に活躍する幅の広いオーディオ機器であることがよくわかるはず。お楽しみに。