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ながら聴きでもノイキャン、低音あきらめない! JBLの“1台2役”革命イヤフォン「TUNE FLEX 2」

全カラーがスケルトンのTUNE FLEX 2。奥からブラック、ホワイト、モーヴ

イヤフォンのトレンドと言えば“ながら聴き”だが、「興味あるけど、買うには高いなぁ」とか「ながら聴きのためだけに、もう1個イヤフォン買うのもなぁ」と思っている人も多いだろう。そんな我々の前に、あのJBLから、救世主的イヤフォンが登場した。その名も「JBL TUNE FLEX 2」だ。

「TUNE FLEX 2」モーヴ

写真を見てほしい。箱を開封すると、このようなイヤフォンが出てくる。傘のようなイヤーピースが無く、そのまま耳に入れて使う。耳栓のようなイヤーピースで耳穴を塞ぐ通常のイヤフォンと異なり、隙間から外の音が入ってくるため、ながら聴きイヤフォンとして使える。

「TUNE FLEX 2」のイヤフォンを取り出したところ。傘のようなイヤーピースが無い

凄いのはここからだ。このTUNE FLEX 2、イヤフォンの先端が取り外せるようになっていて、そこに付属のイヤーピースを取り付けると、普通のカナル型イヤフォンとしても使える。つまり“1台2役”イヤフォンなのだ。

このようにイヤーピースを取り付けると、普通のイヤフォンとしても使える

「でもお高いんでしょう?」と思いきや、価格は15,950円、家電量販店で10%ポイント還元も考えると感覚としては15,000円以下と、そこまで高価ではない。ながら聴きしかできないのではなく、普通のイヤフォンとしても使えるならアリかな? という値段だ。実際に使ってどうなのか? 試してみた。

中身が見えまくるスケルトンデザイン

JBL TUNE FLEX “2”というモデル名からわかるように、このイヤフォンは“第2世代”だ。初代の「JBL TUNE FLEX GHOST」は2022年に登場し、“密閉/ながら聴き”が切り替えられる事が話題となり、出荷台数累計10万台を突破する人気モデルになった。

新モデルのTUNE FLEX 2は、その初代から、アクティブノイズキャンセリングの強化や、再生時間の延長、マルチポイント対応など、様々な進化を遂げ、完成度を高めたモデルだ。

充電ケースがスケルトン

外観から見ていこう。

イヤフォンより先に目を惹くのが、スケルトンの充電ケース。初代は、スケルトンがカラーバリエーションの1つという扱いだったが、人気が高かったため、TUNE FLEX 2ではブラック、ホワイト、モーヴ(いわゆるパープル系)の全カラーがスケルトンになっている。

3色展開だが、全てスケルトン
「TUNE FLEX 2」ホワイト
モーヴ
ブラック

丸みを帯びた充電ケースのフォルムは、初代から少しシェイプされ、よりコンパクトな印象に。このサイズ感なら、ポケットに気軽に入れられる。航空機グレードのポリカーボネートを使うことで、クリア部分は透明度が非常に高く、内部の基板やチップが良く見える。いろんな角度から、まじまじと見て「このチップなんだろう?」と観察するのが楽しい。UV安定化も施されており、黄色く変色もしにくいそうだ。

内部の基板やチップまで見える

イヤフォンを取り出すと、ショートスティックデザイン。こちらもスケルトンで、黒いチップや、巨大なダイナミック型ドライバーなどが見える。

イヤフォン本体もスケルトン

ケースから取り出した、傘のようなイヤーピースを取り付けていない状態を、JBLでは「FLEX」と名付けている。正確には、ノズルの先端に小さな「オープンイヤーピース」が装着されているので、イヤーピースが無いわけではない。

この状態では、耳穴の前にあるくぼみに、イヤフォンをスポッと入れるような、耳珠に引っ掛けるような装着の仕方になる。アップルの「AirPods」を想像すると、あれに近いスタイルだ。

オープンイヤーピースを取り付けた状態の「FLEX」

そして、先端部分を外して、付属のイヤーピースを装着すると普通のイヤフォンのようになる。この状態は「BEAM」と呼ばれている。イヤーピースを耳穴にしっかり挿入し、耳穴をがピースで蓋する事で遮音性が高まり、イヤフォンのホールド力も高いスタイルだ。

オープンイヤーピースを取り外し……
傘のようなイヤーピースを取り付けた状態が「BEAM」

ながら聴きなのに、強力ノイズキャンセリング

まずは、ながら聴きスタイルで使ってみよう。

耳に挿入するのではなく、耳穴の前に“置く”ような装着であるため、“耳穴に何かを入れた”という閉塞感、不快感はほぼ無い。カナル型が苦手という人でも、このスタイルなら大丈夫だろう。

近くで人が話していて、遠くで音楽が鳴っている喫茶店で装着してみたが、話し声や音楽は少し小さくなるものの、ほとんどそのまま耳に入ってくる。電車の中で使えば、ガタンゴトンというレールの上を走る音や、車体が振動する「ゴーッ」というノイズもほぼそのまま聞こえる。

これだけ外の音が聞こえるで、例えば、職場で話しかけられたり、家の玄関チャイムが鳴っても、聞き逃す心配はないだろう。装着時の耳の負担も少ないため、リモートワークなどで長時間装着してもストレスは少ない。

面白いのは、ながら聴きスタイルでもアクティブノイズキャンセリング機能が使える事。耳穴の隙間から外の音が入ってくるので、ONにしても無音にはならないのだが、外からの音がやや小さくなる。ながら聴きで使いたいけど、少しだけ静かにして集中したいという時はノイズキャンセリングをONにすると良い。

では、ながら聴きスタイルで音楽を再生してみよう。

スマホのAmazon Musicアプリから「大橋トリオ/空とぶタクシー」を再生すると、思わず「おわっ!」と声が出る。ベースやドラムの低音が、ズンズンと低く響き、肉厚に迫ってくるのだ。ながら聴きイヤフォンにも関わらず。

ながら聴きイヤフォンを使ったことがある人ならわかると思うが、耳穴を塞がないイヤフォンは、どうしても低音が抜けてしまい、スカスカした高域寄りの音になりがちだ。そのため「ながら聴きイヤフォンだから、音質はイマイチだよね」とか「音楽はBGM的に薄く流すくらいしか使えないよね」という話しになるのだが、TUNE FLEX 2は、ながら聴きモードでも、しっかりとした中低域が出ており、音楽がちゃんと楽しめる。これは凄い。

初代のTUNE FLEXと比較しても、低音の再生能力が大幅に強化されている。AirPodsと比較しても、よりコンパクトで開放的なつけ心地なのに、この低音は立派だ。「YOASOBI/アイドル」冒頭の「ズバン!!」という低音。あの空間全体が押し寄せてくるような迫力が、ながら聴きスタイルでもしっかりと感じられる。まるで魔法のようだ。

面白いのは、これだけしっかりしたサウンドを楽しめているのに、形状はながら聴きなので、外の音も聞こえる事だ。試しに、TUNE FLEX 2で音楽を聴きつつ、YouTubeのトーク動画を流してみると、音楽とトークが等しく聞き取れる。

音楽と外音を、まったく同じくらいのボリュームにすると、どっちに集中したらいいのかわからなくなり、脳が混乱する。その時は、ボリュームで調整する。TUNE FLEX 2の音を小さくすると、トーク動画に集中できる。逆にトーク動画のボリュームを小さくし、TUNE FLEX 2の音量を上げれば音楽に意識が向く……という具合だ。

このテクニックを使うと、例えば、仕事に集中したい時はTUNE FLEX 2の音楽のボリュームを少し大きめにする。その状態でも、人に話しかけられたり、チャイムが鳴った時は反応できる。

外を散歩中に使ってみたが、自転車やクルマに注意したい時は、音楽のボリュームを少し抑え目にすると安心だ。周囲の世界に、音楽が広がっていくような聴こえ方が気持ち良い。映画のサントラを流しながら歩けば、自分が映画の登場人物になったような気分になる。

イヤーピースを取り付けると、NC効果が爆上がり

イヤーピースを取り付けて「BEAM」スタイルを試してみよう。

イヤーピースを取り付けた「BEAM」スタイル

装着感は通常のカナル型イヤフォンに近くなるが、耳奥までグッとイヤーピースを押し込むような装着方法ではないため、閉塞感や不快感は思ったより少ない。

驚くのは、アクティブノイズキャンセリング(ANC)の“効き具合”。ながら聴きモードとの比較なので当たり前ではあるが、先ほどと同じ喫茶店で試すと、「こんなにも世界が変わるのか」と思うほど静かになる。

人の話し声が大幅に小さくなり、店内BGMや、頭上にあるエアコンの「ゴォオー」というノイズも気にならなくなる。完全に無音になるわけではないが、人の声に意識をとられたりする事がなくなるので、眼の前のパソコンに集中できる。しばらく仕事をした後で、イヤフォンを外すと「俺はこんなにたくさんのノイズに囲まれていたのか」と気がつくほどだ。

喫茶店で、ANCの効果を体験

初代のTUNE FLEXと比べても、NC能力は大幅に強化されている。「グォオオ」という盛大なノイズに包まれる電車の中でもTUNE FLEX 2の方がより綺麗に中低域の騒音をキャンセルできている。

これは、NC機能が、従来のアクティブNCから、ハイブリッドNCへと進化したためだ。ハイブリッドNCは、イヤフォンの外側の騒音を集音するフィードフォワードマイクと、耳の近くに配置し、耳に届くノイズを集めるフィードバックマイクを組み合わせたものだ。

この結果、TUNE FLEX 2のNC機能は「ながら聴きイヤフォンのオマケ」レベルではなく、通常のカナル型イヤフォンのNC効果と比べても負けていない、非常に強力な効き具合になっている。

周囲の騒音から隔絶され、眼の前の仕事や勉強に集中したい時は、イヤーピースを取り付け、NC効果を最大にすれば良い。ちなみに、NCの効き具合はアプリから7段階(BEAMスタイル時)で調整できる。

アプリから、NCの効き具合を調整できる
シリコンの密閉イヤーピースは3サイズを同梱する
外出時も密閉とオープンのイヤーピース付け替えができるようにと、1サイズのイヤーピースが収納できる小さなケースも付属する

密閉イヤーピースモードで体験する、圧巻のサウンド

イヤーピースを取り付けた「BEAM」スタイルのサウンドはどうだろうか?

まず、イヤーピースを取り付けただけで、何も設定せず音楽を流したところ、凄い低音マシマシなサウンドが飛び出してきて驚いた。迫力は凄いのだが、何か変だ。アプリを見ると、イヤーピースごとにサウンド設定が設けられており、これが「オープンイヤーピース」のままになっていた。

サウンド設定を「密閉イヤーピース」に切り替えると、低音過多だったバランスが、ニュートラルなバランスに変わり、音楽をじっくり楽しめるようになった。ここからわかるのは、ながら聴きのオープンイヤーピースの状態では、抜けてしまう低音を補うために、イコライザーで低音を持ち上げているという事。密閉イヤーピースでは、それをする必要がないので、ニュートラルに戻るわけだ。

サウンド設定が「オープンイヤーピース」のままになっていたので、低音が過度に出ていた。「密閉イヤーピース」に切り替えると良いバランスに

Amazon Musicアプリから「ダイアナ・クラール/月とてもなく」を再生してみる。

先ほどながら聴きモードで、驚きの高音質を体験したわけだが、密閉イヤーピースでは、その音質がさらに1ランク、いや2ランクほどアップする。

全体のバランスとしては、低域がやや強めの、JBLらしい迫力のあるサウンドデザイン。冒頭のアコースティックベースの低音が「ズーン」と深く沈み、肉厚に迫ってくる様子が圧巻だ。やはり、密閉イヤーピースの方が、ながら聴きの時よりも、低音がより深く沈むため、音楽全体がより低重心で、ドッシリと安定感のあるサウンドになる。

中高域は、豊富な低音に負けないクリアさを持っており、ボーカルやピアノの音は埋もれず、気持ち良く伸びている。人の声や、ギターの木の響きはナチュラルな音色で、ダイナミック型らしい、質感描写に優れている。

ながら聴きで感動した「YOASOBI/アイドル」冒頭の低音も、密閉イヤーピースではさらに深く沈むため、「迫力あるな」を通り越して、ちょっと怖いくらいだ。

音質としては、決して“ながら聴きイヤフォンのオマケ”というレベルではなく、普通に“迫力あるサウンドが楽しめる高音質イヤフォン”と言って良い。「音の良いイヤフォンを買ったら、ながら聴きモードも使えちゃった」という選び方をしても良い製品だ。

BluetoothのコーデックはSBC/AAC対応で、LC3に今後のアップデートで対応予定。欲を言えばLDACなどにも対応して欲しいところだが、実際に音を聴くと、正直あまり気にはならなかった。

また余談だが、新たに「Personi-Fi 3.0」という、サウンドのパーソナライズ化機能も備えている。これは、アプリの指示に従ってヒヤリングテストをする事で、個人に最適なサウンドで再生してくれるというもの。実際にテストをして、自分のプロファイルを作成してみると、音のコントラストがより深まり、低域もより沈む込むサウンドになる。これは積極的に活用した方がいいだろう。

2週間使って感じた、3つのポイント

2週間ほど、家でのリモートワークや編集部での作業、移動中の電車などで使ってみたが、イヤーピースの付け替えで1台2役できるため、活躍するシーンが多いと感じた。その上で、印象的なポイントを3つお伝えしたい。

1つは、「ながら聴きイヤフォンとしての快適さ」だ。

筆者は今までながら聴きとして、イヤカフ型や耳掛け型、ネックバンドタイプの骨伝導イヤフォンなどを使ったことがあるのだが、それらと比べてもTUNE FLEX 2は快適だ。

イヤカフ型は、耳を挟むような装着方法であるため、どうしても“何かが耳にぶら下がっている”ような感覚がある。TUNE FLEX 2は、耳穴の手前にスポッとはめているだけなので、そうした違和感が少ない。

また、筆者はメガネを使っているのだが、メガネとマスクを装着した状態で、耳掛け型やネックバンドタイプのイヤフォンを使うと、マスクを外そうとした時に、紐がイヤフォンのフックなどに絡まり、てんやわんやになる。ひどい時は、メガネもマスクも全部はずして、絡まりをほどく作業をするハメになるのだが、TUNE FLEX 2ではそんな心配はない。これは快適を通り越して偉大だ。

2つ目はバッテリーの持ちが良いこと。

公称スペックとして、NC ON状態でイヤフォン本体8時間+充電ケース使用24時間=32時間、NC OFFではイヤフォン12時間+充電ケース36時間=48時間だが、実際の感覚としてもそれに近い。

リモートワークや職場などでは、長時間装着しっぱなしで使う事も多いので、「途中で充電しないとなぁ」と思わずに使い続けられるロングバッテリー仕様は嬉しい。

3つ目は、音楽鑑賞以外の用途にも活躍する事。

新たに「空間サウンド」に対応しており、アプリから機能をONにすると、広がりのある疑似的なサラウンド再生をしてくれる。効果のタイプは動画、音楽、ゲームの3つから選択できる。

個人的に、Netflixで映画やアニメを見る事が多いのだが、空間サウンドをONにして再生すると、広がりが生まれ、中低域の迫力が増すため、イヤフォンでもちょっとしたホームシアター気分が楽しめて面白い。

映画を「空間サウンド」で楽しむと、ホームシアター気分

これとは別に、アプリに「リラックスサウンド」という機能があり、波音、月夜の虫の音、焚火、森林の鳥の鳴き声、川のせせらぎから好きなものを選ぶと、リラックスできる自然の音を聴く事ができる。

オープンイヤーピースで、ながら聴きしている時は、「音楽は再生しなくていいけど、何か集中力を妨げない音は欲しい」という時がある。その時に、河のせせらぎや虫の音を小さく流しておくと、ピッタリだ。タイマー設定もできるので、波の音を聴きながらリラックスして眠る……なんて使い方もできるだろう。

アプリから選べる「リラックスサウンド」

ながら聴きでも、NCや低音をあきらめないイヤフォン

実際に使った結果、コンセプト通り、JBL TUNE FLEX 2の“1台2役”っぷりを堪能できた。

密閉イヤーピースを取り付ければ、低音の迫力もしっかり出るイヤフォンとして使える。そして、オープンイヤーピースに交換すると、外の音がしっかり耳に入り、なおかつ耳への負担も少なく、さらに音質も満足できる“ながら聴き”イヤフォンになる。これは間違いなく、他のイヤフォンには無い魅力だ。

では、“他のながら聴きイヤフォンが不要になるか?”というと、そうでもない。前述の通り、TUNE FLEX 2のオープンイヤーピースは、ホールド力が少ないため、例えば、ジョギングなどの運動をしながら使うようなタイプではない。そうした使用方法を想定するのであれば、ネックバンド型の骨伝導や、耳掛式ワイヤーを備えたタイプの方がマッチするだろう。

あくまで、職場やリモートワーク、喫茶店などで、仕事の邪魔をせず、それでいて集中力を高められるツールのように使うと良い。そして、移動中は密閉イヤーピースにチェンジすれば、高いNC性能を活かし、静かな環境で、迫力あるサウンドで音楽や映画が楽しめる。1日を通して、活躍の場が多ければ多いほど購入後の満足度は高くなるものだが、JBL TUNE FLEX 2は間違いなく“活躍するイヤフォン”になるだろう。

山崎健太郎