ミニレビュー
“TVスピーカーでゲーム”から、final「VR3000/VR3000 EX for Gaming」に切り替えると、どう変わるか
2025年11月25日 08:00
突然だが、「タイタンフォール2」というゲームをご存じだろうか。巨大メカの「タイタン」とパイロットなどが入り乱れて戦うFPSで、ハイスピードなマルチと熱いキャンペーンがたまらない名作だ。発売からだいぶ経った今でも、私はPlayStation 5とテレビ内蔵スピーカーだけでのんびり遊んでいる。
正直、ゲームにおいて「音」はそこまで気にしてこなかった。テレビの内蔵スピーカーで、最近は「バトルフィールド6」や「Ready or Not」、「DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH」も楽しんでいるのだが、ボイチャもしないし、テレビ内蔵スピーカーに特に不満もなく「まあこんなもんでしょ」と思っていた。
ところが最近になって、「ゲーミングイヤフォン/ヘッドセットを使うと、敵の足音が聞こえやすくて有利になる」という話を耳にするようになった。テレビで十分だと思っていた身としては、ちょっとモヤっとする。「本当にそんなに変わるの?」「そこまでして音を気にする意味あるのか」と思っていた。
そんなタイミングで、編集部から「finalのゲーミングイヤフォン/ヘッドセットのVR3000 for Gaming、VR3000 EX for Gamingを試してみないか」というお誘いが。というわけで今回は、「ずっとテレビスピーカーだったPS5ゲーマーが、finalのVR3000 for Gaming/VR3000 EX for Gamingを使うとどうなるのか」を、実際に遊んでみた感想をお届けする。
今回お借りしたfinalのイヤフォン/ヘッドセットは以下の2モデルだ。
まずは有線イヤフォンの 「VR3000 for Gaming」。コンセプトは、ゲームやVRの“音響空間”を制作者のイメージ通りに再現すること。
低音ドンドンのド派手サウンドではなく、音の位置関係や距離感を重視してチューニングしたそうだ。価格は公式ストアで8,980円。だいたいPS5のフルプライスタイトル1本と同じくらいのイメージだ。
見た目はマットブラックで統一されていて、落ち着いた印象。彫刻みたいな独特のシェル形状ではあるが、変に主張しすぎないので、デスクに置いてあっても「お、ちょっといいイヤフォン使ってるな」という存在感が漂う。
もう一つがワイヤレスヘッドセットの 「VR3000 EX for Gaming」。キャッチコピーは“勝つためのゲーミングヘッドセット”。「3Dエクストラワイドサウンドステージ」 と呼ばれる空間表現で、前後左右に加えて上下方向の情報までしっかり再現することを狙ったモデルだ。銃声や爆発音、ドローンやヘリの飛行音など、立体的な音の配置を重視している。
さらにFPS向けの 「足音モード」 と、25ms以下の低遅延接続が可能なUSBトランシーバーを搭載。無線ながら有線にかなり近いレスポンスを目指した仕様になっている。こちらは直販で19,800円。ゲームソフト2本分くらいの価格だが、「勝つための投資」をどこまでするかで、価格に対する印象は変わってくるだろう。
どちらもPS5に接続。VR3000 for Gamingはステレオミニ入力なので、PS5のコントローラーに。VR3000 EX for Gamingは付属のUSBトランシーバーをPS5のUSBに接続した。「テレビ内蔵スピーカーから乗り換えたら何が変わるのか?」 に注目しながら、「タイタンフォール2」など複数タイトルをプレイしながら体験した。
VR3000 for Gamingを装着。しっかりフィット、価格以上の落ち着いたルックス
イヤフォンのVR3000は、まずフィット感がかなりしっかりしている。1回2時間ほどのプレイを何度かこなしても、耳が痛くなることはなかった。耳に「カチッ」とはまり込む感覚があって、振り向いたり、スティックを激しく操作したりしてもズレる不安が少ない。付属のイヤーピースはサイズが豊富なので、自分の耳に合うものを探しやすかった。
ケーブルは少し硬めの質感だが、タッチノイズは特に気にならない。見た目は黒一色で、「価格相応だけど安っぽくはない」というライン。近くで見るとプラスチック感は多少あるが、PS5本体やコントローラーの横に置いておいても違和感のない、落ち着いたゲーミング感だ。
VR3000 EX for Gamingを装着。重さはあるが、うまく分散されている
VR3000 EXは、手に取った瞬間に「お、けっこうしっかりしてるな」と感じる剛性と重さを感じる。いわゆる“軽量ヘッドセット”ではない。ただ、実際にかぶってみると、荷重のバランスが良いため、あまり重いとは感じない。頭頂部の一点だけが痛くなるようなこともなく、2時間ほどのプレイなら首や肩がつらくなることもない。
私は普段メガネをかけているが、メガネありでも装着は可能。ただ、裸眼と比べると「外せる環境なら、できれば外したいかな」というくらいの違和感はある。フレームの太さや形状によって印象は変わりそうだ。
音量調整はダイヤル式。装着したままでも手探りで回しやすく、音量が「ちょっと大きい」「ちょっと小さい」にすぐ対応できる。ゲーム中にサッと変えたい時にも直感的に操作できるので便利だ。各種ボタンも突起や配置が工夫されていて、慣れてくると「ミュート押したつもりが別のボタンだった」というミスはほぼなくなる。
テレビ→イヤフォン/ヘッドセットで何が変わった?
足音:ただの「それっぽい音」から、“ちゃんと足音”へ
一番わかりやすく変わったのは 足音の聞こえ方だ。テレビスピーカーのときも、「なんとなく足音っぽい音」はしていた。しかし、銃撃戦や爆発音が飛び交う中だと簡単に埋もれてしまい、「今の、足音だった?ただの環境音?」と判断がつかないことが多かった。VR3000/VR3000 EXを使うと、その“なんとなくの音”がはっきりと「足音」として認識できる音に変わる。
たとえばタイタンフォールで「R-201」という武器を連射している最中、背後の通路からパイロットが駆け寄ってくる足音が、「サッ、サッ」と別レイヤーで浮き上がって聞こえるイメージ。テレビだけだと銃声と一緒に混ざってしまっていたのが、VR3000系では「今、右後ろの通路を走ってきたな」と判断できるようになった。
前後左右の方向感はかなりハッキリしていて、バトルフィールド6のコンクエストでも、背後から近づいてくる敵に気づける場面が明らかに増えた。上下方向については読み切れないシーンもあるが、「少なくともどこかから近づいてきている」という気配はしっかり伝わってくる。
距離感と索敵:状況把握が一気にラクになる
もうひとつハッキリ違いがわかるようになったのが距離感。
銃声や爆発音が「すぐそこ」なのか、「建物を一枚挟んだ向こう側」なのか、距離感がつかみやすくなった。Ready or Notのように慎重な立ち回りが求められるゲームだと、ドアの向こうで小さく鳴る足音や、廊下の奥で鳴る叫び声の距離感がわかるだけで、動き方のプランがかなり立てやすくなる。
全体として、銃声・足音・環境音がそれぞれ別のレイヤーに分かれて聞こえる感じで、音の“ごちゃごちゃ”が整理されるイメージだ。結果として索敵がしやすくなり、奇襲に気づく回数も増えた。ランクをガチで回している人ほど、この差は大きく感じるだろう。
没入感と疲れやすさ:良くも悪くも“戦場に放り込まれる”
どちらのモデルもフィット感が良く、遮音性は高いので、ノイズキャンセリング機能はないものの、周囲の生活音はかなり気にならなくなる。音の迫力や臨場感はテレビとは別物で、「DEATH STRANDING 2」の雪山や、タイタンフォールの戦場に本当に放り込まれたような感覚が強くなる。
その一方で、没入するあまり、いい意味でも悪い意味でも疲れやすくなったと感じた。音の情報量が増えて、臨場感が高いぶん、2時間のプレイが終わった時には「やり切った」という心地よい疲労感が残る。
VR3000 EXの「足音モード」はどうだった?
個人的に期待していたのが、VR3000 EXの 「足音モード」。「オンにした瞬間、足音だけ爆音になるのかな」と思っていたが、実際はもっと繊細な効き方だった。足音だけが不自然に浮き上がるのではなく、全体のバランスを保ったまま、距離感がよりクッキリする印象。
バトルフィールド6で建物の中にこもっているとき、外の階段を上がってくる足音が、「今2〜3歩分くらい」と感じ取れるようになって、ドア前で待つか、先に出て迎え撃つかの判断がしやすくなった。「足音だけうるさくて疲れる」という感じは全くなく、常時ONでも問題ない“じわっと効くアシスト” というイメージだ。
ゲーム以外のエンタメでも使ってみた
VR3000:J-POPやアニソンも“普通にアリ”
ゲーム以外の音楽再生などでも使ってみた。VR3000では、TOMMO「あわいに」、RADWIMPS「賜物」、汐れいら「味噌汁とバター」あたりを中心に試聴すると、低音もちゃんと出ていて、ボーカルの位置もつかみやすく、日常的に音楽を楽しむ分には特に不満のないバランスと感じる。純粋な“音楽専用ハイエンドイヤフォン”と比べると、繊細なニュアンスで物足りない部分はあるかもしれないが、ゲーム用なのに音楽も普通にいける万能さがうれしい。PCやスマホと兼用して、「日中は音楽、夜はPS5でゲーム」という使い方も全然アリだと思う。
VR3000 EX:映画・アニメ・配信がかなり楽しくなる
VR3000 EXは、映画やアニメ、配信を視聴すると、イヤフォンよりもさらに迫力のあるサウンドになるため、コンテンツがより楽しめる。爆発音や環境音に包まれるような迫力がありつつ、キャラクターのセリフもちゃんと前に出てきてくれるので、アクション映画でもセリフが聞き取りやすい。
音楽だけをじっくり聴く用途でも十分使えるが、個人的には「PS5のゲームからサブスクでの映画まで、エンタメ全般をまとめて面倒見てくれるヘッドセット」と感じた。リビングでゲームして、そのまま動画アプリを立ち上げて映画を観る。そんなライフスタイルの人とは、かなり相性が良さそうだ。
結論:テレビ勢でも、“音の環境整備”は重要だった
テレビスピーカー勢だった自分が、VR3000とVR3000 EXをPS5で数日間試してみたが、全体の満足度はかなり高かった。テレビのスピーカーでもゲームは十分楽しかったが、ゲーミングイヤフォン/ヘッドセットを導入すると、足音や距離感といった “勝つための情報”と、戦場の空気まで伝わってくるような臨場感、この2つが一気に手に入る。
どっちを選ぶべきかは、なかなか悩ましい。
VR3000 for Gamingは約8,980円で、ゲーム以外にも幅広く使える万能型有線イヤフォン。価格的には「ゲームソフト1本分」と考えればかなりお手頃だ。有線なので、PS5コントローラーに挿すだけで使えるのも手軽。J-POPやアニソン、動画視聴にも普通に使える。「初めてのゲーミングイヤフォン」にちょうど良いだろう。
VR3000 EX for Gamingは約19,800円と高価ではあるが、臨場感と足音をセットで味わいたいゲーマーに向いているとい思う。FPSで足音をしっかり拾いつつ、爆発や環境音の迫力も失いたくない人はこちらぼ選ぶといいだろう。足音モード+低遅延無線で、“勝つための必要経費”と割り切れるなら十分アリ。映画やアニメ、配信まで1台で済ませたいリビングゲーマーにもおすすめだ。
「勝ちにこだわるガチ勢」だけでなく、私のように 一人でカジュアルにPS5を遊ぶタイプ にとっても、ゲーミングイヤフォン/ヘッドセットへの投資は、思っていた以上に“アリ”だと感じた。少なくとも、自分はもう、完全には 「テレビスピーカーの音」には戻れそうにない。








