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総務省は、地上デジタル放送推進に関する検討委員会 第19回を開催。2011年のデジタル放送全面移行を推進ための課題についての検討し、地上デジタル放送で適用されている「コピーワンス」の見直し方針については、機器メーカーや放送事業者からの提案が行なわれた。 コピーワンスは、地上デジタル/BSデジタル放送の原則として全ての放送に、「1回だけ録画可能」の制御信号を加え、暗号化して送信するもの。不法コピーの対策などを目的として2004年4月5日より本格導入され、コピーワンス信号を付加された番組は、対応メディアに“一回だけ”録画できる。そのため対応レコーダのHDDからDVDやBlu-ray Discなどへ“ムーブ”すると、HDDに記録したデータは、光ディスクに転送した後、HDD上から消去される。 デジタル放送で新たに導入された著作権保護の仕組みだが、「アナログでできたダビングなどが自由にできず、デジタルは不便と言う印象を消費者に持たせてしまう」という意見が機器メーカーを中心に提出され、中間答申で「コピーワンスの現行の運用を固定化する必然性はなく、私的利用の範囲で視聴者の利便性を考慮して運用の改善を図る」と見直し方針が打ち出されていた。 今回は、機器メーカーによる見直し提案が、社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)から行なわれたほか、JEITAの提案を受けて放送事業者らから構成される「RMP協議会準備会」が代案を提出。継続して意見交換を行ない、早期に見直し策の方向性を決めていくことが確認された。ただし、具体的な見直し時期については言及されなかった。 ■ JEITAは出力保護で家庭内のコピー制限無しを提案 中間答申を受け、JEITAは11月8日のコンテンツ保護検討委員会にて提案内容を決定。放送局が番組送出時に付加するコピー制御信号を、現行の「1世代のみコピー可(COG)」から、「出力保護付きでコピー制限無し(EPN運用)」への変更することを、放送業界に提案した。 これは、全ての送出信号に暗号化処理を施して、EPN対応の機器でのみ再生可能となるというもの。対応機器であればDVDなどへのダビングは自由で、コピーの回数制限は無くなる。ただし、コンテンツがあらかじめ暗号化されているため、PCなどにコピーしても再生できず、「インターネットを介した不正な再配信などを防ぐことができる」という。 EPNについては、現在の地上デジタル放送における運用規定でも定められており、その運用ルールを実際に活用する形で、コピー制限の見直しと、利用者の利便性を図る方針だ。JEITAコンテンツ保護検討委員会委員長を努める田胡修一委員(日立製作所)は、「COGの導入時に想定していたのはD-VHSだが、HDDやDVD、メモリーカードなどさまざまな記録媒体が登場し、多様化している。デジタル時代には利便性を確保したコンテンツ保護、という視点が必要で、提案の基本になっている」とEPN導入について説明した。 なお、ホームネットワーク上の配信や、モバイル用途のダビングなどは引き続き検討を進めるという。 ■ 放送事業者はコピーワンス維持と現行システムの拡張を提案 受信機メーカーと放送事業者との検討の場として「コンテンツ保護運用に関する合同検討会」が新たに設置され、JEITA提案について協議を進めた結果、放送事業者では12月9日のRMP協議会準備会にて、放送事業者の方針をまとめた。 同準備会では、「デジタル放送普及にはリッチコンテンツの充実が求められる。そのため、多数の権利者が安心してして参加できる環境が必要。私的録画の機会を確保しつつ、番組の充実を図る必要がある」とし、コピーワンスの撤廃には反対し、現行の枠組みの運用見直しで、利用者の利便性向上を図る方針を決めた。 竹中委員(NHK)は、「EPN導入で、インターネットへの流出は保護できるが、権利者の理解を得ることは非常に難しく、ハイビジョン映像や5.1ch音声など、デジタル放送の魅力を生かせるコンテンツが提供されない可能性がある。出力保護では劣化のない海賊版を普通の視聴者が作成可能となることは非常に重要な問題だ。海賊版が作成できる状況で、良質なコンテンツを提供して貰うことは困難。著作権を侵害する違法行為と知らずに、ネットオークションを利用して番組を録画したディスクを販売するなどのカジュアルコピーも防げるため、コピーワンスの維持は必須」との立場を示し、現行のB-CASカードを利用したコピーワンスの仕組みを使いながら、運用ルールの改善により、利便性の向上を図る方針を説明した。 具体的には、現行の運用規定でバックアップも含めて2つのコピーをHDD内に持つことができることに注目。この領域を活かして、HDDのオリジナルのほかDVDやメモリーカードにムーブするためのバックアップを用意し、DVDやメモリーカードなど異なる種類のムーブが2回行なえるようになる。また、機器やメディアの不良などでムーブに失敗した場合も、もう一度オリジナルからのムーブが可能となる。さらに、DTCP-IPを利用したホームネットワーク上の映像伝送にも対応する予定という。 □総務省のホームページ (2005年12月22日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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