|
総務省は2日、地上デジタル放送推進に関する検討委員会 第21回を開催した。 同委員会では2011年のデジタル放送全面移行を推進ための課題についての検討を進めており、今回、地上デジタル放送で適用されている「コピーワンス」の見直しについて意見交換が行なわれた。ただし、JEITAや放送業界から提案された運用見直し案については、従来より大きな変更は無く、委員会で問題を確認するに留まった。
機器メーカーの意見については、JEITAによる運用見直し案が提示された。同提案では放送局が番組送出時に付加するコピー制御信号を、現行の「1世代のみコピー可(COG)」から、「出力保護付きでコピー制限無し(EPN運用)」への変更することを要望している。 EPN運用では、全ての送出信号に暗号化処理を施して、EPN対応の機器でのみ再生可能になるというもの。対応機器であればDVDなどへのダビングは自由で、コピーの回数制限は無くなるが、再生には対応機器が必須となる。 一方、NHKや民放テレビ16社から構成されるRMP協議会準備会は放送局の意見を集約して見直し案を提案した。運用規定の解釈を見直し、現在の問題に対処していく方針で、現行の運用規定のバックアップ領域を活用することに注目。HDD内にオリジナルと同じバックアップを用意し、この領域を活用することで、最大2つまでのムーブやメモリーカードへのムーブなどを実現可能となる。 また、コピーフリーやEPN運用では、権利者の理解を得て、映画などのリッチコンテンツを放送用に獲得しにくいという事例も紹介。「(2004年4月の)コピーワンスの導入は、当初4月1日より予定していたが、月曜日から開始した方が事業者/メーカーの対応も行ないやすいため、4月5日に変更した。この際に、週末(4月3~4日)に放送を予定していた番組がCOG無しで放送できず、2番組を差し替えた」という。 消費者からの意見についても、「コピー制御お問い合わせセンター」への問い合わせは累計12万件に及ぶが、録画関係は1,000件程度。そのほとんどは録画機器に関するもので、「コピーワンスについてのクレームはほとんどない」という。 海外の放送では、こうしたコピー制御を導入している事例は少ないが、「日本では、テレビがリッチコンテンツのファーストウィンドウ(最初に視聴できる環境)になっている。米国のコンテンツ市場では、映画があって、ビデオカセットや有料放送があって、その後にフリーのテレビが来る。市場の仕組み、事情が異なっている」と、コピーワンスが日本のテレビ放送事情にあわせた仕組みであることを強調した。 その他、教育分野では、三鷹市の9つの学校に地上デジタル放送を導入したが、「パソコンとは全然違い、前の日にテレビが入って、翌日には授業に活用できた。また、デジタル放送の高画質を見て子供から歓声があがった」との事例を紹介。しかし、教職員からの意見では「編集やダビングを活用した独自の教材製作ができないという意見が、9校全てからあがってきた」という。 また、委員の中からも、「コピーワンスの導入プロセスに透明性が欠けていた」といったとの指摘が多く、見直しについては公開の場で進めていくことなどが提案された。さらに、「コピーワンスの仕組みも難しく、JEITA/RMP協議会の両提案の違いもよく分からなかった」と、仕組みの難しさを訴える声も聞かれた。 現在のJEITA案とRMP案では大きく異なっており、「その他の案も出して欲しい」との意見も出たが、既に実際の放送でCOGが利用されていることから、いずれの提案も既存の運用ルールの見直しでの対応となっている。かけ離れた両提案を今後どの様に調整していくのか、という具体的な意見交換は行なわれず、議論はコピーワンスについての“そもそも論”と問題確認に終始した。今後も、委員会で問題と方向性を整理しながら検討を進めていく。 □総務省のホームページ ( 2006年3月2日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
Copyright (c)2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|