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22日、いよいよ発売された「Xbox 360 HD DVDプレーヤー」。Xbox 360にUSB接続する外付け型のHD DVDドライブで、20,790円と低価格。Xbox 360と組み合わせることで、次世代のハイビジョン映像の再生を可能にするものだ。 「Xbox 360(39,795円)」や、HDDやD端子ケーブルを省いた「Xbox 360コアシステム(29,800円)」との併用を前提としたドライブのため、合わせるとXbox 360+HD DVDプレーヤーで60,585円、コアシステム+HD DVDで50,590円となる。20GBモデルで約5万円、60GBモデル6万円強でBlu-rayの牽引役として登場した「PLAYSTATION 3」と真っ向勝負する価格設定だ。HD DVD、Blu-rayのフォーマット争いのHD DVD側の目玉の一つといえる製品。その使い勝手にも期待がかかる。 サポート対象外のパソコン利用については昨日レポートしたが、今回は本来の使い方ともいえるXbox 360との組み合わせによるHD DVD再生をテストした。 ■ シンプルなデザイン。ACアダプタの取り回しに工夫が必要
Xbox 360 HD DVDプレーヤーの付属品は、ドライブ本体のほか、ACアダプタ、電源ケーブル、USBケーブル、Xbox 360ユニバーサルメディアリモコン、HD DVDプレーヤーインストール用ディスクなど。 まずは利用前にXbox 360を用意する必要がある。Xbox 360とHD DVDプレーヤーともに電源は外付けで、ACアダプタが付属する。HD DVDプレーヤーはそうでもないが、Xbox 360のACアダプタは巨大なため、テレビ周りでの取り回しという点では苦労しそうだ。 アダプタが2つになってしまうほか、USBケーブルの配線など、システムとしてのスマートさでは一体型で電源を内蔵したPS3のほうが上だろう。一方のXbox 360 HD DVDプレーヤーは2万円というコスト差だけでHD DVDを導入できるのがメリットといえる。
本体の外形寸法は実寸で178×230×54mm(幅×奥行き×高さ)。本体前面にはイジェクトボタンを備え、トレー部にはHD DVDロゴと[XBOX 360]のロゴを刻印している。縦置き/横置きも両対応の筐体を採用している。 背面にはACアダプタ接続用の電源端子とミニUSB端子×1、USB端子×2を装備する。USBミニ端子がXbox 360との接続用、他のUSB端子は拡張用となっており、USBのXbox 360用コントローラなどを接続できる。また、背面のMicrosoftロゴ付きの突起部はXbox 360 ワイヤレスLANアダプタの取り付け穴となっている。
付属の「Xbox 360ユニバーサルメディアリモコン」は、12キーまで備えており、国内大手メーカー製テレビ用のリモコンコードもプリセットで用意。対応する4桁のコードを入力すれば、テレビ用リモコンとしても活用できる。 Xbox 360とHD DVDプレーヤーをUSBで接続すると、付属のシステムアップデートディスクをXbox 360本体にセットするよう促される。同ディスクはXbox 360本体側のドライブのみで利用可能で、ディスクを入れると10秒弱で、アップデートが完了する。
■ 機敏な動作。アナログRGB接続も可能
HD DVDプレーヤーに対応するためのXbox 360用アップデータは10月31日より提供されている。すでにレビューも掲載しているが、最大の変更点はゲーム画面の1080p出力に対応したこと。 Xbox 360はHDMI出力を備えていないが、コンポーネント/D端子の出力ケーブルを接続すると、「ハイビジョン(HDTV)設定」の中に「D5(1125p/1080p)」という項目が追加され、1080p出力ができるようになる。 ただし、コンポーネント/D端子の1080p出力はゲームのみで、HD DVDビデオの出力は1080i(D3)/720p(D4)までとなる。これは、「AACSによる著作権保護の問題でD5のアナログの出力がコンポーネント/D端子では許可されていないため」としている。 一方、アナログRGB接続の場合はHD DVDビデオでも1080p出力が可能だ。PCのアナログRGB接続は基本的にプログレッシブなので、HDTV信号のような720p/1080iといった表記でなく、解像度指定画面が現れる。ここで1,920×1,080ドットを選択すると、HD DVDビデオをアナログRGBで1080pで出力が可能となる。今回、PC用の液晶ディスプレイとしてデル「2407WFP」を接続したが同ディスプレイのOSDでも1080p出力が確認できた。
電源を入れるとディスクを認識し、そのまま再生が始まる。USBのHD DVDドライブと、Xbox 360のDVDドライブの2つのドライブが接続されていることとなるが、Xboxダッシュボード上のドライブ表示部の丸いアイコンで各ドライブを選択可能。リモコンの上下キーで、各ドライブを切り替えできる。 もっとも、基本的にディスクを入れるとそのディスクの再生を開始するので、明示的にUIからドライブを選択することはあまり無いかもしれない。ディスクを入れると勝手に再生がスタートすると考えていた方がいいだろう。 HD DVDプレーヤーにHD DVDディスクを入れると、10秒強で画面が切り替わり、HD DVDを自動的に再生開始する。ディスクを入れてから出画までの時間は約20~25秒。PLAYSTATION 3のBlu-ray Discのほうが認識は早いが、Xbox 360の起動も比較的高速だ。HD-XA1のように40~50秒以上待機するわけではないので、さほどストレス無く利用できるだろう。Xbox 360でDVDを再生する時(出画まで約11~16秒程度)より若干遅いが、印象としては大きく変わらない。 基本操作はメディアリモコン、もしくはXbox 360コントローラから行なう。リモコンでは上部に再生、停止、一時停止や、スキップ/バック、チャプタスキップ/バックなどのボタンを用意。[DVDメニュー]と[タイトル]ではHD DVDのポップアップメニューを呼び出して、チャプタ選択や各種設定が行なえる。 また、利用中のテレビをプリセットコード選択だけで登録可能で、[TV]ボタンを押すだけでチャンネルやボリューム切り替えが行なえる。リモコンは自照式なのでシアター利用でも重宝しそうだ。
ポップアップメニューの動作もかなり高速。PS3ほどではないが、ボタンを押したら瞬時にメニューが切り替わり、ストレス無く再生操作が行なえる。「The Phantom of the Opera(米国版)」にはポップアップメニュー上から8倍までのズーム表示を行なう機能を備えているが、それらも問題なく利用できた。 リモコンの[表示]ボタンを押すと、専用のUIを画面上に出力、チャプタスキップなどが可能となる。ただし、HD DVDの場合はポップアップメニューからチャプタを選んだ方が使いやすいように感じた。 十時キーの下には、コントローラと同様に[A]、[B]、[X]、[Y]ボタンを装備。最上部の[Xboxガイドボタン]と組み合わせて、XboxダッシュボードやXboxガイドなども操作できる。 なお、リモコンのトレー開/閉ボタンはXbox 360側のドライブのみの動作となっており、HD DVDプレーヤーのトレー開/閉には利用できないようだ。HD DVDのディスクを入れ替えようとして、ボタンを押すと、本体側のトレーが開いてしまい、結構間抜けだ。なお、HD DVDビデオでは、ディスクレジュームが効かないため、一度ディスクを取り出して、再度トレーに入れると最初から再生を開始する。DVDビデオの場合はレジュームが効くだけに残念なところだ。 DVD-ROMで提供されるXbox 360ゲームのプレイ時に比べると、HD DVDプレーヤー自体の騒音レベルは低い。HD DVDの読み込みが1倍速(36.55Mbps)ということもあり、ディスクの回転音などのノイズはXbox 360本体よりかなりも小さく、映画などの視聴中はドライブ側の音はまず気にならない。ただし、Xbox 360本体の低く持続的なノイズを伴うので、静かなシーンになるとやや耳障りだ。 なお、HD DVD/DVDツインフォーマットディスクの「夜桜」や「Sabra 20号付属ディスク」などを入れてみたところ、HD-XA1のようにHD DVD/DVD層の選択画面は現れず、すぐにHD DVD層の再生を開始する。DVD層を再生するためにはXbox側のドライブを利用する必要がある。また音楽CDはHD DVDプレーヤーからは再生できない。 ただし、通常のDVDビデオソフトはHD DVDプレーヤーからも再生可能だ。PC接続時には、ドライブがリージョン1(北米)扱いとなっていたが、実際にXbox 360に接続したところリージョン2(日本)のDVDビデオを問題なく再生できた。逆にリージョン1のディスクは「地域コードが違う」と表示され、再生できなかったが、PALの「Spirited Away (千と千尋の神隠し)」は再生できた。 なお、RD-A1で記録したHD DVD-Rディスクは認識できず、「HDR-UX1」で撮影した8cm DVDのAVCHDディスクも同様に認識できなかった。また、Xbox 360用のゲームソフト「クロムハウンズ」をHD DVDドライブに入れたところ、本体側のドライブにディスクを入れるよう促された。
■ シンプルに高画質。ライバルは東芝のプレーヤー? 東芝「REGZA 37Z2000」とD端子/1080iで接続したが、画質は良好で、HD DVDの高精細な映像を十分に体感できる。コンポーネントビデオのアナログ接続ながら、しっかりした色再現はさすがにパソコンでの視聴時とは趣を異にしている。HDMI出力は備えていないため、デジタル出力はできないが、それでも「The Phantom of the Opera」の劇場内の細かな装飾や、きらびやかな衣装の微妙な明暗や質感をしっかりと表現してくれる。 ただし、画質設定機能は全く無いので、例えばノイズリダクションの効果設定などが気になる場合などは、テレビ側で全て設定を行なう必要がある。このあたりにこだわる向きには物足りないだろう。 なお、DVDビデオのアップスケーリング出力はできないが、480iから480pへのプログレッシブ出力は可能。取り立てて高機能でもないが、DVDを再生する機会もまだまだ多いので、活躍の幅は広がるだろう。もっとも単にDVDを再生するだけであればHD DVDプレーヤーはいらないのだが。
音声出力は光デジタル出力とアナログ音声のみ。光デジタル出力の音声設定ではデジタルステレオ/ドルビーデジタル5.1/WMA Pro(Windows Media Audio Professional)が用意される。この設定画面は、パススルーで出力できない場合の出力形式を定めるもののようで、HD DVDやDVDの音声がドルビーデジタルであれば、そのままパススルーで出力できる。また、同様にDTSもパススルー出力される。 一方、新たにHD DVDで採用されている新コーデックのドルビーデジタル・プラス(DD+)や、ドルビーTrueHD音声は変換されて出力される。そのとき、設定画面でデジタルステレオを選んでいると2chのリニアPCMに変換、ドルビーデジタル5.1chを選択しているとドルビーデジタルに変換して出力する。 使いにくく感じるのは音声の切り替え。例えばドルビーデジタルプラス 5.1chが収録されているHD DVDディスクの再生時に、本体側でデジタルステレオに設定している場合、5.1chで出力するためには一度再生を停止し、本体のシステムから音声をドルビーデジタル5.1chに切り替えて、再度再生を行なう必要がある。 では、「ドルビーデジタル5.1」を選んでおけばいいように思えるのだが、これを選んでおくと、今度はリニアPCMがドルビーデジタルにエンコードして出力されてしまうのだ。せっかくのリニアPCMを、あえてドルビーデジタルに圧縮して聞きたい人はいないだろう。ということで、デジタルステレオとドルビーデジタル5.1をタイトルによって、切り替えることになってしまう。このあたりはやはりゲーム機の拡張機能という印象を残してしまう。 音質に大きな不満はないが、DVDビデオで、3年前のマランツ製ユニバーサルプレーヤー「DV8400」と比較しても、奥行き感やキレが今ひとつ。もちろん音声はしっかり楽しめるが、音にこだわりたい人にとってはやや物足りないかもしれない。東芝のHD DVDプレーヤーではアナログ5.1chの出力(HD-XA1/2)や、リニアPCM変換でのHDMI伝送などに対応しているため、音にこだわる場合は専用プレーヤーを選択した方がいいだろう。 とはいえ、とにかくシンプルにHD DVDを楽しみたいという人にとっては現在もっとも安価な選択肢。Xbox 360を持っている人はもちろん、Xbox 360で気になるゲームがあるという人にとっても、購入を後押ししそうな魅力的な製品だ。 BDビデオの再生機能を搭載した「PLAYSTATION 3」も競合製品ではあるが、HD映像のプレーヤーという視点からは、東芝の新HD DVDプレーヤー「HD-XF2」も強力な競合製品といえる。実売5万円という価格はXbox 360コアシステム+Xbox 360 HD DVDプレーヤー(50,590円)とほぼ同じだ。そうした意味では、12月末のHD-XF2を待つか、360を選択するのかという点も悩ましい。 例えば、純粋にCDやDVDプレーヤーの置き換えを考えれば、おそらくHD-XF2のほうが使い勝手や音質面でのアドバンテージは大きいだろう。また、HDMI出力が付いているのもHD-XF2の強みだ。 しかし、Xbox 360のゲームやドライブのPC転用などを視野に入れているのであれば、Xbox 360 HD DVDプレーヤーも魅力的。また、大型のPCディスプレイへのアナログRGB出力を想定している人にとっては、Xbox 360 HD DVDプレーヤーはHD-XF2に無い特徴を持っているともいえる。 ともあれ、いままでHD-XA1もしくはQosmio以外の選択肢が無かったHD DVDに新しい、それも安価な選択肢が加わったことは歓迎したい。Blu-rayとのフォーマット競争の行方を見極めるのもいいが、「今すぐHDコンテンツを楽しみたい」人にとって、Xbox 360 HD DVDプレーヤーの果たす役割は大きい。 □マイクロソフトのホームページ ( 2006年11月22日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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