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シン・ゴジラのVRを先行体験! 巨大ゴジラをPS VRで。樋口監督も「おぉ」

 10月13日発売の「PlayStation VR(PS VR)」と東宝の映画「シン・ゴジラ」がコラボレーションした、PS VRスペシャルデモコンテンツの体験会が3日に開催。招待ユーザーやメディア向けの体験会が行なわれたほか、樋口真嗣監督によるコンテンツ解説や「シン・ゴジラ」撮影秘話などのトークショーが開催された。

PS VRと樋口真嗣監督

 7月29日に公開された、庵野秀明総監督、樋口真嗣 監督・特技監督による、ゴジラシリーズ最新作の実写映画「シン・ゴジラ」。PS VRの発売に向けたノンゲームコンテンツの一つとして、PS VR向けの「シン・ゴジラ スペシャルデモコンテンツ for PlayStation VR」が制作された。このVRコンテンツは、10月13日のPS VR発売日から、PlayStation Storeで無料配信する。史上最大となる体長118.5mと、新しいデザインで生み出された最強のゴジラ。シン・ゴジラが描く“大いなる恐怖”をVRにおいて再現する。

PlayStation VR

 PlayStation VR(CUHJ-1600)は、VRヘッドセット、プロセッサーユニット、VRヘッドセットケーブル、HDMIケーブル、ヘッドフォンなどをセットにし、価格は44,980円。PlayStation Cameraを同梱したPlayStaiton VR PlayStation Camera同梱版(CUHJ-16001)は49,980円。

樋口監督もPS VR争奪戦に参戦。初代ゴジラをイメージ

 トークショーには、「シン・ゴジラ」の樋口真嗣監督とプロデューサーの佐藤善宏氏が登場。PlayStationシリーズをずっと購入し続けているという樋口監督だが、最近はゲームプレイ時間は減少しているという。それでも「PS VRは久しぶりに『欲しい』と思って、予約争奪戦に参加したが、全然予約できず、まだ入手の目処が立っていない。今回ここに参加することで、『大人の力』が働くんじゃないか、と期待している」と、PS VR争奪戦をネタに笑いを誘った。

樋口真嗣 監督・特技監督

 公開直後の最新作のため、ネタバレを避けて語られたが、キャスティングについて樋口監督は、「キーパーソンは映画監督」という。「御用学者三人組を全員映画監督で揃えた」とのことだが、主に原一男監督が原因で、1カットで38テイクを重ねるなど撮影は困難を極めたという。

 撮影現場では、庵野総監督の突然の撮り直しも発生。「(理由が)2cm違うから、とかなので、『何が違うんだろう』と思った(佐藤プロデューサー)」とのこと。キャスト、スタッフも大御所揃いで、スケジュール調整も大変なため、「プロデューサーとしては二度と体験したくない」と笑う。

プロデューサーの佐藤善宏氏

 シン・ゴジラのゴジラはフルCG。一方で、ゴジラ以外の設定や美術は徹底的にリアリティにこだわったという。

 ゴジラの動きは、狂言師の野村萬斎さんがモーションキャプチャーを担当している。このキャスティングは、樋口監督自ら行なったものだという。

シン・ゴジラ 1号雛形

 映画「のぼうの城」の撮影時から交流があり、その縁から萬斎氏の狂言を見る機会があったという樋口監督。「狂言のお題は、『山に住む得体のしれないもの』とか、人間じゃないものを体の動きだけで表現している。だから、『萬斎さんいけるんじゃないか』と思った。単なるCGではなく、伝統芸能の持っているポテンシャルを流しこみたかった。日本で一番魔物に近い本物が萬斎さんだから」と起用の理由を説明した。

 シン・ゴジラのゴジラはフルCGだが、そのデザインは初代ゴジラを強くイメージしたという。またゴジラ過去最大の体長118.5mというサイズも特徴だ。

 佐藤プロデューサーは、「東宝が定めるゴジラの数箇条のルールはある。それ以外はサイズも含めて、庵野さんと樋口さんにおまかせしています。ただ、きぐるみっぽさをなくして、(1954年の)ゴジラ第1作っぽくしたいよね、という話は当初からしていました」という。

 樋口監督は、「第2作以降のゴジラは、怪獣と戦うためのデザインで、相手と取っ組み合いするために、ある意味人間的になっていた。一方、最初のゴジラは、恐竜が核実験の影響で2足歩行の怪獣になって、東京を滅茶苦茶にするためだけに出てくる。目の作りだとか、腕の小ささも、きぐるみの必要が無いから」と説明。佐藤プロデューサーも、「人間的な可愛らしさを忘れて、恐怖の象徴としてのデザインが頭にあった。だから、初代ゴジラを意識した」と語る。

 一方、ゴジラ以外は全て「本物にこだわった」という。「自衛隊も『うてー』とか言わないわけですよ、でも統制を取って攻撃する。そういうことを全部調べてやった。映画の嘘で、なんとなく本物らしくではなく、本物はどうしているのか調べてそれを積み上げた」(樋口監督)と語る。そのため、「首相官邸にも2回に入った。写真は撮れないので、美術チームが歩測したり、ドアの厚みをかばんで測ったりで、本物に近づけた。ニュースで普段見かける首相官邸は、入り口とか組閣の時の階段だけで、実際の会議室とかは皆が見たことがない。そのとおりに作っても、殆どの人は見たこと無いので『殺風景な部屋』と思うかもしれない。でも、そこにこだわっている」という。

 「官邸地下の危機管理室は見せてもらえなかった」とのことだが、入った人の話を聞くと、「有明のセンターに近い」とのことだったので、有明の危機管理センターを撮影に利用。河野太郎 前防災担当大臣が1日3万円とツィートしたことも話題になったが、「地震や災害が起きたらすぐに退出する」という規定があるため、「30分以内にクレーンやモニターを搬出できるように、撤収の練習をしてから撮影した」とのこと。

 ソニーインタラクティブインタラクティブエンタテインメントの秋山賢成氏は、今回のコラボの経緯について、「PS VRを東宝さんに体験していただく機会があり、その際に『ゴジラを拡張して、もっと面白い表現ができるんじゃないか』という話になった。世界的に有名なゴジラをVRにするのであれば、最高のものを作ろう」と、説明。

SIEの秋山賢成氏

 さらに、VRならではの表現の苦労として、今回のゴジラは「過去最高のサイズ(118.5m)。そのゴジラとの距離感や、足音などの色々な音と臨場感を出すための調整に苦労した」とのことで、前日まで調整を行なっていたという。VR版のCGは映画で使っているCGデータをそのまま使いながら、ゴジラや尻尾の動きなどは東宝の監修を受けて制作しているので、「ゴジラそのもの」とのこと。

シン・ゴジラVRを体験。巨大なゴジラが徐々に迫ってくる恐怖が味わえる

 佐藤プロデューサーは、映画業界から見たVRについて、「脅威ですね。見せる映画に対し、VRは体感でき、見たいものを見られる。相乗効果もあれば、ライバルという部分もある」と言及。樋口監督は、「アングルもカットを割るという、映画の大きな2つの要素を奪われる。映画ではVRは絶対できないし、だから、VRでは映画のようなことはできないともいえる。ゲーム的な体験をどこまで拡張できるかに期待している」と語った。

 最後に、VRシン・ゴジラ未体験の樋口監督による「公開初体験」が行なわれた。

 東京駅の周囲をゴジラが暴れまわる数分のコンテンツだが、PlayStation VRを装着した樋口監督は、ネタバレを避けつつも、ぐるぐる周囲を見回し、「あぁー」、「おおー」と言葉にならないうめき声をあげる。

樋口監督が、シン・ゴジラ スペシャルデモコンテンツを公開初体験

 少し慣れた頃に、「熱い」、「あぁそれはだめだ!」など叫ぶなど、見事なリアクションを披露。VR体験終了後の樋口監督は、「この企画の話頂いた時よりも全然ヘッドセットが良くなっている。邪魔くささがかなりなくなって、調整もやりやすくなった。メガネオンメガネもちゃんと考えられている。いやー欲しい」と、PS VRを絶賛。会見終了後のフォトセッションで使ったPS VRを持ち帰ろうとするなど、遠回しに「大人の力」(編注:PS VRのプレゼント)の行使をSIEに求めているようだった。

「あぁそれはだめだ!」