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プロジェクタに変形する自走ロボ「Tipron」。Cerevoが約23万円で年内出荷
2016年12月9日 14:55
Cerevoは、プロジェクタ内蔵で自走式のホームロボット「Tipron(ティプロン)」を12月9日より発売する。価格は229,800円。12月中の出荷を予定している。
「宅内のあらゆる壁や床、天井をディスプレイに変える」をコンセプトとして開発された、プロジェクタ搭載のホームロボット。平日の決まった時間にニュースを見ながら食事をしたり、寝室の天井でYouTubeの好きなチャンネルを観るといった楽しみ方ができる。なお、掃除機能は持っていない。
プロジェクタを内蔵し、投影場所に全自動で移動するホームロボット。プロジェクタは3mの距離で80インチの投写ができ、スマホからリモートで本体を操作できる。プロジェクタユニットは縦横左右に動き、壁や天井など好きな位置に投写できる。出力5Wのスピーカーも内蔵。本体のみで映像と音声が再生できる。AFや自動台形補正なども搭載。本体に深度センサー、IRセンサー、9軸センサーを内蔵する。防水防塵ではなく、屋内専用となる。
移動時は転倒や障害物接触を防ぐコンパクトな形態で、映像投写時には全高約80cmの形態へと変形。壁や天井に映像を映し出せる。
頭部にあたるプロジェクタユニットは左右それぞれ90度、上方向90度、下方向35度に向きを変えられるほか、左右に90度回転し、縦や斜めにも投写できる。
Androidをベースとした独自OSを搭載。操作は専用のスマートフォンアプリから行なう。リビングや寝室といった場所、時間、コンテンツを指定することで、毎日指定した時間に、充電ステーションから指定した場所へ自動で移動し、指定した壁、床、天井などに、指定したコンテンツを投写する。アプリのOSはAndroid 4.4以降、iOS 10.0以降を推奨している。
本体に無線LAN(IEEE 802.11b/g/n)を内蔵し、YouTubeのチャンネルを指定しておけば、連続で動画を再生/投写可能。RSSリーダー機能も備え、WebサイトのRSSを登録しておくことで、決まった時間にニュースなどをチェックできる。ネット経由で取得する情報は、現時点ではYouTubeやRSSの取得だが、今後は対応コンテンツを拡充する予定。指定したスケジュール操作を終えると、自動で充電ステーションへ戻る。
HDCP対応のHDMI入力も用意し、パソコンやレコーダなどの映像も表示可能。Chromecastなどを使って、ネットの動画などを室内の好きな場所に投写できる。DLPプロジェクタで、パネル解像度は1,280×720ドット。輝度は250ルーメン。映像入力は1080pまで対応する。USB端子を備え、USBメモリ内の動画や静止画の投写も可能。USB動画再生時の推奨フォーマットと解像度は、MPEG-4 AVC/H.264の1,280×720ドット。
上部に500万画素のカメラを搭載し、カメラ映像をスマートフォンでストリーミング再生しながら変形や移動操作を行なうマニュアル操作も可能。スケジュールを設定せず、任意の位置へ動かすこともできる。
本体内蔵のバッテリ(5,900mAh)で2時間の利用が可能(輝度50%時。輝度100%の場合は半分)。付属バッテリは1本だが、本体には2本まで収めることができ、2本利用すると4時間(輝度50%時)利用できる。バッテリ単体購入時の直販価格は13,800円。
外形寸法は変形前が300×340×420mm(幅×奥行き×高さ)で、変形後は300×330×810mm(同)。重量は約9.5kg。ACアダプタも同梱する。
「日本人なら変形」。実用性にも効果
Tipronは、1月のCES 2016で披露され、IFA 2016などの展示会にも登場。岩佐琢磨代表取締役は、「最も長い開発時間、最も高い金型代がかかり、社運を賭けた製品」として紹介。
岩佐氏が最初にハードウェアのスタートアップを立ち上げてから約9年となり、20以上の製品を発表。インターネットへの動画ライブ配信機「LiveShell」において、映像/通信をバッテリ駆動で扱う機器に取り組み、スノーボードのバインディング型端末「SNOW-1」では耐久性/防水防塵/センサー制御を行なうという、大手企業にとっても高いハードルへ挑み続けてきたことを紹介。また、アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」の劇中に登場するアイテムを再現したスマートトイ「ドミネーター」では複雑な可動機構も実現している。
Tipronには、そうした同社製品開発で積み重ねられた経験が活かされており、「マイノリティ・リポート」など様々なSF映画で登場するような、「壁にディスプレイが浮かぶ、何もない空間にディスプレイが生まれるといったことを現実的に家でやろうとすると、色々な場所に液晶ディスプレイを埋め込む方法はコストが高い。プロジェクタの側が動けば、と思いついたのがTipron」だという。
DLPプロジェクタのモジュールに関しては、Cerevoの開発メンバーがTIへ出向き、Tipronの高度な動作を実現するためにはSnapdragonのチップが必要となり、Qualcommと交渉。製造はFOXCONN(鴻海)に委託するなど、世界の大手企業からの協力を得て製品化に至っている。
変形機能については、「日本人がやるなら変形だよね」という発想からスタートしたものの、移動中は低い姿勢になることで倒れにくく、投写時は背を高くすることで台形補正をなるべく少なく済み、スピーカーの位置を上げることで聴きやすくするなど、実用性を重視した結果でもあるという。プロジェクタ部が、愛嬌のある顔のようにも見えるデザインにもなっている。変形機能は「3割くらいが男のロマン、7割が実用性」(岩佐氏)だという。
海外の展示会などでの反応としては、「掃除機機能は無いのか?」、「ホログラムは投写できないのか?」、「(声で)呼んだら来るのか?」といったことをよく質問されるとのこと。Tipronはいずれも対応していないが、声で呼ぶ機能については、「何らかの形で技術的にはできる」とし、今後対応予定であることを明らかにした。また、他社サービス/アプリとの連携を可能にするためのAPI公開も検討しているという。