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Premiere Proが4K/VR/HDR HLGなど全方位進化。動く文字や音声編集も統合

 アドビ システムズ(Adobe)は20日、映像編集/制作ソフトの「Premiere Pro CC」や「After Effects CC」などを含む「Adobe Creative Cloud(Adobe CC)」のアップデートを発表。HDRのHLG(Hybrid Log Gamma)対応や4K/60p再生のパフォーマンス向上、VRワークフロー強化など、様々な機能追加と改善を行なう。

Premiere Pro CC

 4月22日に米国で開幕する国際放送機器展「NAB 2017」に合わせて発表されたもの。Adobe CCの映像制作向けソフトは、ビデオ編集の「Premiere Pro」、エフェクト追加などの「After Effects」と同ソフトの機能である「Character Animator」、オーディオ/波形編集の「Audition」などが含まれる。従来は、発表からアップデート実施までに時間差があったが、今回は発表と同じタイミングでアップデートを開始するという。

 利用料金は、Premiere Pro CCやAfter Effects CC、Audition CCなどの単品がそれぞれ月額2,180円、これらのソフトに加え、Photoshop CCやIllustrator CCを含む20種類以上が利用できるコンプリートプランは月額4,980円。これらのプランでは、20GBのクラウドストレージも利用できる。

料金プランの例

4K/HDR/VR強化。テキストアニメーション作成や音声編集もPremiereで

 今回のアップデートでは、HDR(ハイダイナミックレンジ)コンテンツへの対応を強化。ハリウッド作品などで規定され、既にPremiere Proでも対応しているDolby Visionに加え、日本の放送局からの要望が高かったというHLG(Hybrid Log Gamma)の入力/出力に対応。メタデータの付いたHDRコンテンツを扱えるほか、LogやRAW記録したファイルのHDR化なども行なえる。

HDRのHLG方式に対応

 また、4K/60p再生時の性能も向上。4K映像編集に使われる4K XAVCの60p再生時に、これまではコマ落ちが発生し「パフォーマンスを上げて欲しい」との要望があったという。XAVCの4,096×2,160ドット/59.94pなどのファイルも、Intel Xeonプロセッサ搭載のPCで2ストリーム再生できることを確認したという。

 360度VRコンテンツへの対応も強化。従来は、入力したファイルの正面に当たる部分を一度決定すると、それを変更するのが難しいという問題があったが、アップデート後は、パン/チルト/ロールが自由に行なえるようにした。

 映像だけでなく音声の360度収録ファイルにも対応。VR対応マイクで採用されている「アンビソニック サウンドフィールド」方式の音声も、読み込み/書き出し可能となり、撮影現場で収録した音の位置を指定して書き出せるようになる。

VRコンテンツのパン/チルト/ロール画面

 モーショングラフィックステンプレート機能も搭載。従来は別ツールを使っていた、動きのあるテキストアニメーション作成がPremiere Pro内でもできるようになった。この機能では、Adobeが公開した新フォントの「源ノ明朝」も利用できる。アニメーションを「エッセンシャルグラフィックパネル」に保存することで、他のユーザーとも共同作業しやすくなるという。

モーショングラフィックステンプレートの画面

 また、Auditionが持っている音声編集機能をPremiere Proにも統合した「エッセンシャルサウンドパネル」を採用。BGMや効果音、環境音をそれぞれ選択し、パラメータの変更なども可能。歯擦音(しさつおん)を抑えるといった処理や、ラウドネスの設定などができる。

エッセンシャルサウンドパネル

 Aftere Effectsでは、新エフェクトとして、動画のブレを後から補正する「カメラシェイクデブラー」に対応。従来のブレ補正機能でも映像全体の揺れを抑えられるが、新機能により、動画を構成するコマごとに発生するブレも低減。これによりブレの一時停止した状態でもブレが少なく表示できるようになった。

カメラシェイクデブラーの設定
左が適用前、右が適用後

 複数の2D静止画を元に、Webカメラで撮影した人の顔の動きに合わせて3Dアニメーション動画をリアルタイム作成するCharacter Animator機能も進化。従来から対応している表情などの動きに加え、キャラクターが歩く時の足のアニメーションも設定可能になる。

 また、Character AnimatorはNewTekのビデオ制作ワークフロー支援プロトコル「NDI」にも対応。テレビの生放送などでも、リアルタイムに映像フィールドを伝送可能としている。

 そのほかのアップデートとして、Premiere Proがヒンディー語をサポート。また、制作した映像のアップロード先として、クリエイターが素材を販売できるAdobe Stockへの直接出力にも対応。従来はブラウザ内から動画をアップロードする形だったが、直接Adobe Stockへ書き出して販売できる(ログイン情報などの登録が必要)ため、「Stockから買うだけでなく、売る立場にもなりやすい」という。

Adobe Stockへの直接アップロードも可能

 パートナー他社との連携機能としては、MacのTouchBar対応や、マイクロソフトのSurface Dialにも対応した。

 Premiere Proのラウドネス自動調整機能や、Character Animatorのリップシンク機能には、クラウドベースのAIエンジン「Adobe Sensei/アドビセンセイ」のマシンラーニングが応用されているという。

主な機能強化ポイント

プロ、初心者の両方を想定した「全方位進化」

 アドビシステムズの古田正剛マーケティングマネージャーは、今回の機能強化について、4K/HDRなど、日本の放送局からのニーズにも応えたほか、VRなども含めた様々なコンテンツ/ユーザーに最適化した「全方位進化」をキーワードとして挙げた。

今回のアップデートは「全方位進化」

 同社調査によれば、Premiere Pro英語版(体験版含む)をダウンロードした人の80%がビデオ編集の未経験者だという。今回のアップデートでは、Premiere Proだけでもモーショングラフィック作成や音声編集まで一貫してできるなど使いやすくした一方で、4K/HDRなどプロの要望にも応えている点がポイントだという。

アドビシステムズの古田正剛氏
Premiere Proは25周年。開始当初の対応解像度は160×120ドットだったという