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キヤノン、HDR対応ドラマなどをコストを抑えて撮影できるCINEMA EOS「C200」

 キヤノンは、CINEMA EOS SYSTEMシリーズの新モデル「C200」と、ビューファインダやLCDモニタなどを省いてドローンなどへの搭載も想定した「C200B」を7月下旬に発売する。価格はオープンプライス。店頭予想価格は「C200」が83万円前後、「C200B」が67万円前後。C200のレンズキットモデル「C200LK」も94万円前後で用意する。

CINEMA EOS SYSTEMシリーズの新モデル「C200」

 CINEMA EOSでは、映画制作向けのC700、テレビCMやドラマ向けのC300 Mark II、報道やブライダル向けC100 Mark IIをラインナップしているが、C200はC300とC100の間に位置する製品で、報道やインディの映画制作、政府・放送学校や企業紹介ビデオ、結婚式やイベント、映画学校などでの利用を想定している。

 C100 Mark IIで培った使いやすさを踏襲しながら、新たな収録フォーマット「Cinema RAW Light」にも対応。HDR収録をより身近で低価格にするもので、Netflixなどの動画配信サービスのHDR作品の撮影も想定。「C700、C300 Mark IIのサブカメラとして、制作系ユーザーの更なる拡大を図る」という。

C200とC200Bの違い

 撮像素子など、カメラとしての基本的な性能は2機種でほぼ共通。C200は「すぐに箱から出して使えるオールインワンカメラ」、C200Bは「ジンバル、ドローンなどの撮影に最適な、ユーザー自身が周辺パーツを取り揃えて使う最小構成モデル」と位置付けられている。

 C200の本体には、0.46型/177万画素のビューファインダを搭載。さらに、4型/123万画素のタッチパネル液晶も備えている。周辺機器もセットになっており、モニタ用のアタッチメント、ハンドルユニット、マイクホルダ、アイカップ、バッテリ、チャージャー、コンパクトパワーアダプタ、ACアダプタ、ストラップ、カメラグリップ、サムレスト、ボディキャップ、メジャーフックなどが付属。

C200。別売の有機ELファインダー「EVF-V70」を取り付けたところ

 C200Bの本体にはビューファインダは非搭載。さらにC200のセットから、モニタ、モニタアタッチメント、ハンドルユニット、マイクホルダ、アイカップ、カメラグリップなどが省かれる。

LCDモニタなどを省いてドローンなどへの搭載も想定した「C200B」

HDR対応の新収録フォーマット「Cinema RAW Light」

 CINEMA EOSではこれまでCinema RAWを採用していたが、データ量が多く、記録には外部レコーダを使い、ストレージとして高速なSSDを使うなどコストがかかる。Cinema RAW Lightは、RAWファイルとしてグレーディングの自由度はそのままに、ファイル容量をCinema RAWと比べて約1/3~1/5に軽くした。

 これにより、外部レコーダを使わず、カメラに搭載したCFast 2.0カードへの4K映像が記録が可能になった。撮影や保存に必要なコストを抑え、編集の負荷も軽い、より取り回しのしやすいフォーマットとして作られており、「RAWという名称も、静止画のカメラから入ったユーザーに、映像のダイナミックレンジを広げる手段として、LogよりもRAWの概念の方がわかりやすいという面もある」という。

 解像度は4,096×2,160ドット/10bit/60p/1Gbps、4,096×2,160ドット/12bit/30p/24p/1Gbpsに対応。30pまでなら12bitの色深度が実現でき、60pでも10bitであるため、バンディングが起きにくいという。プロキシ用ファイルとしてSDカードに、2,048×1,080ドット/4:2:0 8bit/35Mbps LongGOP/60p/30p/24pでの撮影も可能。

 BT.2100規格(PQ)のHDR収録にも対応。キヤノンの業務用4Kディスプレイ「DP-V2420/2410」に、SDIかHDMI経由で表示し、収録現場で確認しながら撮影が可能。C200では部分的にHDRをシミュレーションしたEVFのLUT(ルックアップテーブル)により、HDRディスプレイに近い表示をファインダーで確認しながら撮影できる「HDRビューアアシスト」機能を搭載。複数の表示パターンから選べるほか、別売のLM-V1やEVF-V70と組み合わせた場合も、HDRビューアアシストでの確認が可能。

 ポスト処理により、HDRなどの表現用とや出力デバイスに合わせたアウトプットが可能。RAW現像ソフトとして「Cinema RAW Development 2」が無償でダウンロードでき、Cinema RAW Lightにも対応する。H.265やProResなどの画質劣化の少ないフォーマットへの変換にも活用できる。

 アナモフィックレンズにも対応するほか、このソフトから外部モニタにSDI出力する場合は、PQに対応したLUTを適用して出力できる。

 Cinema RAW Lightに対応したグレーディングソフトとして、DaVinci Resolveが、製品の発売と同時に対応予定。EDIUSやAdobeのPremiereなどにも順次対応していくという。

カメラ機能

 撮像素子は、単板式のスーパー35mmサイズ。885万画素のCMOSセンサーを搭載する。解像度は4,096×2,160ドット、3,840×2,160ドット、2,048×1,080ドット、1,920×1,080ドットに対応。4Kセンサーから得られる情報をオーバーサンプリングし、高画質に2K収録する事もできる。

撮像素子は、単板式のスーパー35mmサイズ

 映像処理プラットフォームには「DUAL DIGIC DV6」を採用。前述のCinema RAW Lightに加え、MP4でも4K撮影が可能。4K/4:2:0 8bit/60p/50p/30pに対応し、記録メディアはSDカードが利用可能。SSDやCFastカードよりも汎用性が高く、安価で入手できるメディアでの記録に対応する事で、映像制作のコストを低減できる。ビットレートは150Mbps LongGOPに対応。8bit信号にCanonLogでは最大12STOP、CanonLog3では最大13STOPのダイナミックレンジが記録できる。

映像処理プラットフォームには「DUAL DIGIC DV6」を採用
「C200B」

 HDRの方式ではないが、高輝度部をなめらかに圧縮し、800%の広いダイナミックレンジを実現する「ワイドDRガンマ」にも対応。ガンマカーブとの連続性を維持したなめらかな階調と、白トビを抑えた撮影ができるという。多彩なスローモーション撮影も可能。最大1080/120pで撮影できる。

 SDカードスロットは2基搭載。それぞれのカードにMP4のUHD LongGOPで同時記録できるほか、フルHDのLong GOPでも同時期録画可能。前述の通り、CFast 2.0のメディアにCinema RAW Lightで記録し、SDカード1枚にプロキシ用として2K(2,048×1,080ドット)のMP4で同時録画する事もできる。

SDカードスロットは2基搭載

 ISO 800が基本感度だが、CMOSの画素構造を進化させる事で、低ISO感度域の設定範囲を拡大。感度拡張によりISO 100での撮影が可能になり、絞りを開けて、大判センサーならではのボケ味を活かした撮影ができる。高感度はISO 102400まで対応。さらなる低ノイズも実現したという。

 色域はAMPASが提唱するACESの伝送規格「ACESproxy 1.0」をサポート。対応した入力機器と接続する事で、撮影現場と編集現場での映像の色味を一致できる。

 EFマウントレンズが使用可能。魚眼ズームやシフトレンズなども利用できる。

 フォーカス性能を高めるために、デュアルピクセルCMOSを採用。1画素を2つのフォトダイオードで構成しており、2つの画像信号を検出し、位相差AFを行なうことで、AF搭載の全EFレンズで、コントラストAFより高速なピント合わせができるという。

 4K撮影ではシビアなフォーカス精度が求められるが、それを補助するための機能も搭載。C200では、画面内縦横約80%の範囲内で高速なワンショットAF、コンティニュアスAF、顔検出AFが可能。測距エリアは十字キーで操作できる。

 新モニター「LCDモニター LM-V1」を搭載した場合は、ピントを合わせたい被写体をタッチフォーカスでダイレクトに選択可能。AF速度は10段階からチューニングでき、被写体追従特性も7段階から調整できる。前ピン/後ピンを視覚的に伝える、「デュアルピクセルフォーカスガイド」も利用可能。

 外形寸法は約178×153×204mm。重量は1430g。

新モニター「LCDモニター LM-V1」を搭載した場合は、ピントを合わせたい被写体をタッチフォーカスでダイレクトに選択可能
ブラウザ経由でリモート制御する事もできる