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キヤノン、RFマウントの4K/120p対応シネマEOS「C70」。約60万円

シネマカメラ「EOS C70」
「RF24-70mm F2.8 L IS USM」装着時

キヤノンは、業務用の映像制作機器・CINEMA EOS SYSTEMの新製品として、RFマウントを採用したデジタルシネマカメラ「EOS C70」を11月中旬より発売する。価格はオープンプライスで、想定売価は60万円前後。

小型・軽量設計を実現するため、CINEMA EOS SYSTEMのカメラとして初めてEOS RシステムのRFマウントを採用した、4Kスーパー35mm CMOSセンサー搭載シネマカメラ。CINEMA EOS SYSTEMの基本性能を継承しながら、高い操作性や機動性を両立しており、映像制作や放送用コンテンツ制作など、多様な撮影スタイルに対応した。

コンサートやライブイベント、報道・ドキュメント、YouTube、SNS/Web向けPV、ウエディングなど、ワンマン撮影や特機撮影といった小型カメラが得意とする市場をターゲットにしているという。

前面
上部

「RF24-105mm F4 L IS USM」装着時

外形寸法は約160×115.9×130.2mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1,170gと、RFマウントのショートフランジバックを活かし、従来のCINEMA EOSカメラに比べて大幅な小型・軽量設計を実現。また約6mmの薄型設計(従来の約半分)とした、電動式NDユニットを新たに開発。薄型ながら従来同等の5段階(拡張モード時)の明るさ調整を可能とした。

ボディ内電子手ブレ補正と、対応するレンズ内の光学式手ブレ補正との相乗効果でさらに優れた補正効果を発揮する「コンビネーションIS」をCINEMA EOS SYSTEMで初めて実現。レンズとボディのIS情報を相互通信する協調制御により、従来のEFレンズ+電子ISよりも防振性能が向上しているという。

装着可能なレンズはRFレンズのほか、マウントアダプターを介してEF/EF-Sレンズ、EF CINEMAレンズの取付けが可能。多彩なレンズ群を組み合わせることで、撮影意図に応じて多彩な映像表現が行なえる。

マウントアダプター「EF-EOS R 0.71×」
アダプターを介し、従来のEFレンズを装着可能

さらに、スーパー35mmセンサーでもフルサイズと同等画角で撮影できる、C70専用のマウントアダプター「EF-EOS R 0.71×」を用意。縮小光学系とすることで、画角をテレ側にシフトさせることなく、フルサイズと同等画角での撮影が可能になるという。

また、光学系が0.71倍に変換されることによる集光効果で、装着されたEFレンズのFナンバーよりも明るく撮影することが可能(開放F値が約1段分向上)。被写界深度は装着前と同等としながら、装着レンズ仕様以上のパフォーマンスを引き出せる、としている。

マウントアダプター「EF-EOS R 0.71×」の発売は11月下旬で、想定価格は8万円前後。

マウントアダプター「EF-EOS R 0.71×」を使い、24mm F4レンズを装着した場合のイメージ。フルサイズ画角を維持しながら、F2.8相当の明るさを実現
通常のマウントアダプターを使い、24mm F4レンズを装着した場合のイメージ。F値は維持するが、約1.4倍画角が望遠側にシフトする

1つの画素出力に対して異なるゲインで出力することで低ノイズのHDR動画を生成する、4K/4,096×2,160ドットのスーパー35mm CMOSセンサー「DGOセンサー」を搭載。

明るい部分は飽和優先アンプの画像を使い、暗い部分はノイズの少ないノイズ優先アンプの画像を使うことで、撮影した画像をHDR合成し、低ノイズを実現。明暗差の大きい環境でも、像ズレがなく、豊かな階調を持つ高品位な4K/60pの映像が撮影できるという。ダイナミックレンジは、最大で16+ストップ。

ISO感度は160~25600で、拡張時は100~102400。基準ISO感度は400(Wide DR)、800(Canon Log2/3)。

スーパー35mmのCMOSセンサー「DGO(Dual Gain Output)センサー」。EOS C300 Mark IIIにも搭載されている

高速処理が可能な映像処理プラットフォーム「DiGiC DV 7」を搭載。

豊かな階調を持つ4:2:2 10bitの4K記録のほか、4K/120pのハイフレームレート記録も可能。スロー再生時でも滑らかな映像表現ができ、プロの映像制作に応える多彩な映像表現を実現するという。

映像処理プラットフォーム「DiGiC DV 7」

高画質な動画を効率的に記録するビデオフォーマット・XF-AVCを採用。圧縮形式(H.264/MPEG4 AVC)は、Intra FrameとLong GOPを用意し、編集効率や長時間記録に応じて選択可能。4K記録は、Intraの場合は30pまで(4:2:2 10bit)、Long GOPの場合は120pまで(同)サポートする。

また、扱いやすく汎用性の高いビデオフォーマット・MP4にも対応する。MP4使用時は、H.264に加え、H.265(HEVC)の圧縮形式を選択可能。MP4フォーマットでも、最大4K・120pまでの動画記録が行なえる。Cinema RAWやProRes記録には対応しない。

10bit階調を損なうことなく、広いダイナミックレンジを確保した独自のLogガンマ「Canon Log 2」「Canon Log 3」を搭載。撮影後のカラーグレーディングで画質の作りこみを行なうことを重視したCanon Log 2と、階調を整える程度の簡易なカラーグレーディングを可能にするCanon Log 3を備えることで、映像制作の意図に応じて最適なLogガンマを選ぶことができる。HLG、PQのHDR方式もサポートする。

DGOセンサーとDiGiC DV 7によるなめらかで自然な色のトーンを実現しているのも特徴。C70ではガンマや色空間、カラーマトリクスを組み合わせたカスタムピクチャを用意し、プリセットほか、カスタマイズも可能とした。

さらに、これまでモニタリング用に使用可能だったViewing LUTに加え、記録に対応したLook Fileをカスタムピクチャに追加。カラーグレーディングソフトなどで作成した.Cube形式の3D LUTをカメラ内に取り込み、取り込んだ3D LUTを適用した収録が可能になった。これにより、カラーグレーディングを前提としないワークフローにおいても、意図したLookで収録でき、より効率的な作業が行なえるという。

全画素において、撮像と位相差AFを兼ねる独自のAF技術「デュアルピクセルCMOS AF」を、新開発のDGOセンサーにおいても実現。測距エリアは画面内の縦横約80%をカバーし、タッチフォーカスによるコンティニュアスAF、顔検出AF、トラッキングAFなどを可能とした。

ディープラーニング技術を用いて開発した被写体認識アルゴリズム「EOS iTR AF X」をCINEMA EOS SYSTEMのカメラとして初めて搭載。デュアルピクセルCMOS AF時の顔検知AFにおいて、従来の顔検出に加えて、頭部検出アルゴリズムによって、安定して被写体を検出し、追尾の信頼性を向上したという。

背面のタッチパネル操作で素早く撮影設定を変更できる「ダイレクトタッチコントロール」機能を初めて搭載。これまで階層構造になっていた撮影設定を素早く変更できるようにした。RFレンズ装着時は、被写体までの距離をモニター上にバーと数値で表示できる。

撮影設定を変更できる「ダイレクトタッチコントロール」機能
背面の液晶モニターはバリアングルタイプ。3.5型で、解像度は276万ドット(1,280×720)。ビューファインダーは非搭載

縦撮りにも対応。縦撮り時には、自動でUIが切り替わるほか、グリップ部には縦撮り用三脚穴も設けた。

なめらかにゲイン切り替えを行なうことができるDGOセンサーの特性を活かし、自動で感度調整を行なう「オートISO機能」をCINEMA EOS SYSTEMのカメラとして初めて搭載。明るさが大きく変わる屋内から屋外の移動などでの撮影時に、絞り値などのカメラ設定を気にせず、フレーミングに集中した撮影ができるという。

小型・軽量に加え、握りやすく手になじむ形状のエルゴノミクスデザインを採り入れたグリップ一体型のボディには、3つのダイヤルとジョイスティックを設置。

3つのダイヤルとジョイスティックを搭載

よく使うNDフィルターやWBボタンなどは本体右側に集約し、従来のCINEMA EOS同様の操作性を継承。レンズマウント下部にはAF LOCKボタンを新設し、ハンドヘルド撮影に特化した操作性を目指した。また底面から光軸まで高さが統一されており、カメラ間でのアクセサリー共有が可能。C70をサブカメラとして使いたいCINEMA EOSユーザーにもおすすめできるとする。

ボディ内部のセンサー基板・メイン基板に直接空気が当たらない上位モデルと同等の独立気室ダクト構造を採用。プロの使用に耐える耐久性と高信頼性を実現しているという。

グリップ部に、縦撮り用の三脚穴を用意。上部の穴は排気口
底面部にも排気口を設けている

高速UHS-IIに対応した、SDカード用デュアルスロットを採用。バックアップのための同時記録、プロキシの同時記録、リレー記録、4K/2Kの同時記録など、多彩な記録モードが行なえる。

プロ仕様の音声収録が行なえる、2系統の3pin ミニXLRオーディオ入力端子(48Vファンタム電源対応)を装備。XF-AVC時は、リニアPCM 48kHz/24bit 4ch記録をサポートする。

側面のインターフェイス部。右上のスリットは、吸気口

ミニXLR入力以外のインターフェイスとしては、HDMI出力(Type A)、USB-C、タイムコード入出力、マイク、ヘッドフォン、リモート端子を用意する。

ハンドルユニット、マイクホルダーアダプター、ボディキャップ、マイクホルダー、グリップベルト、ショルダーストラップ、メジャーフック、バッテリーパック、チャージャー、ACアダプターを付属する。