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270度3面上映の日本初「ScreenX」で観るパイレーツ新作。みんなで観るVRが実現?

 映画館「ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場」において7月1日から日本初導入となる、3面(正面+左右側面)の新しい映画上映システム「ScreenX」(スクリーン・エックス)。同日公開の「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」が、国内での第1弾作品となる。実際にどんな映像が観られるのか、国内初上映の前日に体験してきた。

新次元3面マルチ上映システム「ScreenX」が、ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場に7月1日オープン
ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場で体験した

ScreenXは普通の上映と何が違う?

 4DXやMX4Dなど、様々な上映の仕組みが登場する中で発表された今回のScreenXは、韓国のCJ CGVが開発した マルチプロジェクションシステム。正面と左右側面に投写するプロジェクタとマルチチャンネルサウンドシステムを連動させ「観客は270度の視界すべてに映画を感じられ、映画の世界に自分の感覚が没入していくような、新次元の映画体験」が楽しめるというもの。

 CJ CGVは、体感型アトラクションシアターとして知られる「4DX」を開発/提供しているCJ 4DPLEXの親会社だ。

270度に映像が広がる

 正面の映像は従来と同様に後方のプロジェクタから投写され、左右側面には、壁面の上部に設置された左右各4台のプロジェクタで、左のプロジェクタから右の壁、右のプロジェクタから左の壁へそれぞれ投写する。

左右側面にも各4台のプロジェクタを設置

 既に全世界119の映画館が対応(韓国84館、中国26館、アメリカ3館、トルコ2館、ベトナム2館、インドネシア1館、タイ1館)し、'15年~'16年の間で16本の映画がScreenXで上映。'17年以降は、ハリウッド、韓国、中国映画併せて20本の対応作品が上映される予定。

 国内で最初に導入されるのは、ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場の13スクリーン(175席)。鑑賞料金は、通常料金プラス700円(税込)となる。この13スクリーンで上映されるのはScreenX対応作品のみとのことだ。

 ScreenXの仕様に合わせて、正面のスクリーンは既存の湾曲型から、フラット型に変更。左右の映像が投写される壁も、ScreenXの仕様に合わせて実装されたもので、映像を投写した時に発色が良い素材を用いているという。

 ScreenXの撮影機材として、3面同時撮影カメラも開発。CGVと韓国の理工系研究機関であるKAISTの共同開発により製作された。このScreenX専用カメラで撮影することにより、臨場感のある壮大なシーンを提供可能としている。

ScreenXの紹介パンフレットに記載されていた、制作用の3面同時撮影カメラ

視界が映像で覆われる新感覚。制作の新たな手法にも?

 映像を観る前に、ScreenXの公式写真を見てもらうとわかるが、これだけを見ると、左右の壁に映像があるという新しさの一方で、正面のスクリーンが少し小さくも感じる。実際の劇場ではどんな体験ができるのか、気になっていた。

ScreenXの公式写真

 今回は、ScreenXの特徴が分かるデモ映像素材や、国内第1弾「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」の予告編や、3DCGアニメ作品「トランクマン」の映像などを視聴した。「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」では、CJ CGVがディズニーのスタッフと6カ月掛けて協力し、ScreenX用の映像が制作されたという。

「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」のScreenX映像

 スクリーンのサイズは公開されていないが、実際に座席に着いてみると、前方ほぼ一面がスクリーンになっていることもあって、想像よりもずっと映像が近くに感じられ、特に違和感はない。映像が始まると、パンチされた人が画面の後ろの方まで吹っ飛ぶシーンなど、思わず後ろを振り返りたくなり、まるで「大勢で一緒に観られるVR」のようだ。サラウンド音声やVR映像を初めて体験した時のような新鮮さがある。

側面の映像をよく見ると、写真左下の部分が斜めに切れているが、この映像もスクリーンの形に合わせて作られた

 左右にも映像があるからといって、それに合わせて頭をせわしなく動かさなければいけないのではなく、基本は前面のスクリーンを観つつ、視界の端で風景を“なんとなく感じる”ように眺めるのが自然な見方のようだ。一面が海に覆われたシーンや、大爆発に包まれた時など、映像への没入感はかなり高まる。ちなみに、「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」の中で、側面の映像が投写されるのは、全2時間9分のうち30分ほどだそうだ。

ScreenXデモ映像

 従来の、正面スクリーンのみの作品を観る場合は、なるべく前方の席のほうが映像が視界の多くを占めるため作品に没頭しやすいが、ScreenXの場合は、少し後ろから観ると、ただ画面を小さく感じるのではなく、視界が広がったような体験ができる。劇場でどの席に座るかは好みもあると思うが、同じ映画でも、座席の場所によって様々な楽しみ方ができるのも面白い。

「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」のScreenX予告編
3DCGアニメ「トランクマン」の映像

 一方、映像を制作する側としても、スクリーン1面だけだと、いくら画面が大きくても、全体を見渡すようなシーンでは、映像が“引き”になり、主人公など中心の人物などが小さくなってしまうのは避けられない。ScreenXをうまく使えば、中心の人物の表情はしっかりとらえつつ、周りを囲む風景も活かしたリアルな映像が作れるといった新たな可能性も感じた。なお、ScreenXの映像を活かした、一般企業によるCMも既に制作されているとのことだ。

 「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」に続く日本での第2弾作品は、9月1日公開の「新感染 ファイナル・エクスプレス」。ソウル発プサン行きの高速鉄道KTX内で起こった“感染爆発”を描いた作品で、企画段階からScreenXを想定して製作。時速300km以上という状況で、ノンストップで繰り広げられるサバイバルを、臨場感の高いScreenXで楽しめる。

 従来のスクリーン1面での映画の楽しみ方は、今後も続いていく一方で、4DXなどが“アトラクションシアター”として、映画の新しい楽しみ方を提案するように、ScreenXも新たな見方の選択肢となりそうだ。ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場以外の劇場への広がりも期待したい。

映画興行も展開するCJ 4DPLEXのチェ・ビョンファン社長が来場。「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」でのディズニーとの協力などを振り返り、「今後も優れた映画を提供していく」とした
ユナイテッド・シネマの渡辺章仁社長は「これまでにない映像やイベントなどを通じて“エンターテインメントコンプレックス”を推進している。ScreenXの初披露をワクワクしている」と述べた
ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場の大塚達徳氏。「最初は、本当に流行るかどうか不安だった。実際に観て、絶対に成功する、広めないといけないと強く思った」