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シャープ、初の8K/HDR対応70型液晶。約800万円、「8K市場の導火線に火を」

 シャープは、業界初となる8K/HDR対応の液晶モニター「LV-70002」を6月30日に発売する。価格はオープンプライスで、想定実売価格は800万円。受注生産となる。

LV-70002

 70型の8K/7,680×4,320ドットの液晶ディスプレイ。既存の85型「LV-85001」(1,200~1,400万円/システムにより異なる)から大幅に低価格化し、新たにHDR(ハイダイナミックレンジ)にも対応。8K放送の映像制作を想定した8Kマスターモニターとしての利用を想定する。映像制作以外にも、医療分野の研究用や、美術館/博物館の研究用途など幅広い業務用途での活用を見込む。チューナは地上/BS/110度CSデジタルで、8K放送チューナは搭載しない。

左が新製品の8Kモニター、右が既存の4Kモニター

 光源は直下型LEDで、ピーク輝度は1,000cd/m2。視野角は上下/左右176度。液晶テレビAQUOSの高輝度/広色域技術などにより高画質化している。

 自社開発の液晶パネルを搭載。既存の85型モデルは高開口率のIGZOパネルを使用しているが、今回の70型はIGZOではない。生産ラインなど量産化を見据え、IGZOパネルを使わなくても8Kを実現できると判断した結果だという。

 HDRはPQ方式とHLG(Hybrid Log Gamma)に対応。HDRで収録された映像の広い輝度情報を画像処理エンジンで忠実に再現。高輝度/高コントラスト/低反射の8Kパネルにより、風景の奥行きや素材の質感までリアルに感じられるという。

 地デジの色域(BT.709)を超える広色域技術を搭載し、LEDバックライトと色復元回路により色再現範囲を拡大。BT.2020比で79%を実現している。画面のエリアごとにLEDバックライトの輝度制御を行なう「メガコントラスト」(ダイナミックレンジ拡張)技術を搭載し、映像の“輝き”を復元する。

業界初のHDR対応8Kを実現
70型8KでHDRに対応、高輝度、広色域化

 8K映像の入力にはHDMI端子4系統を使用し、ケーブル4本で分割して伝送。これに加え、LV-70002には8K非対応のHDMIも4系統備え、合計8つのHDMI端子を持つ。Ethernetも備えるが、現状では8K映像入力はHDMI×4を使用する。スピーカーも内蔵し、フルレンジ2基とサブウーファ1基で構成。出力は10W×2chとサブウーファの15W。

LV-70002の背面

 スタンドを含まない外形寸法は156.4×9.2×91cm。重量は42.5kg。消費電力は470W(待機時0.15W)。既存の85型モニターの重量100kg、消費電力1,440Wから大幅に軽量化/低消費電力化した。

既存の85型(左)との比較

 放送サービス高度化推進協会(A-PAB)による国内初の「左旋円偏波による4K試験放送」が4月1日より始まり、さらに'18年12月からスタートするBS/110度CSによる実用放送に向けて、今後の8K機器の需要増を見据えた製品化となる。4K/8K試験放送受信用のチューナ「TU-SH1050」も発売。想定実売価格は700万円前後。

4K/8K試験放送対応チューナ「TU-SH1050」との組み合わせ
チューナのTU-SH1050

 4K放送のマルチ編成放送を受信可能で、字幕やデータ放送などにも対応。音声は22.2ch音声出力に対応。スピーカーの設定を上層に9ch、視聴者の高さに10ch、床面に3ch、左右に重低音用のウーファを設定した22.2chサラウンドに対応する。デジタル出力としてHDMI×3を使い、リニアPCM 8ch×3の出力ができる。

 8K出力はHDMI×4系統を使用するが、4Kモニターとの接続する場合に、HDMI 1本で出力できるダウンコンバート機能も備える。外形寸法は43.5×61.7×17cm(幅×奥行き×高さ)、重量は約13.5kg。消費電力は105W(待機時0.3W)。

TU-SH1050の背面

近くで観て没入感倍増。「8K市場の導火線に火をつける」

 現在、同社の8K/85型液晶は、全国のNHK放送局54カ所で8K試験放送のモニターとして使用されているほか、8K映像編集のポスプロや映像撮影の現場、研究機関などへ8Kモニターを納品し、活用されている。

シャープの8K機材の活用状況

 販売台数の目標については、「(現行の)85型は、これまで100台強を販売してきた。70型は、年間200~300台が目標(デジタル情報家電事業本部 国内事業部 事業部長の宗俊昭広氏)」とした。なお、製造は現在の85型が亀山、新しい70型は堺ディスプレイプロダクトで行なわれる。

 シャープのディスプレイデバイスカンパニー デジタル情報家電事業本部 副事業本部長喜多村和洋氏は、70型の新モデルについて「8K高精細パネル」、「HDR(HLG/PQ)対応」、「メガコントラスト技術でピーク輝度1,000cd/m2」、「自然界の色をほぼカバーするBT.2020比79%の広色域」の4点を強調。主な用途として、医療、映像編集/デザイン、サイネージ/美術品のデジタルアーカイブへの活用を見込む。

シャープ ディスプレイデバイスカンパニー デジタル情報家電事業本部 副事業本部長喜多村和洋氏

 '18年の新たな4K/8K実用放送開始に向けた同社の液晶テレビ事業についても説明。「8Kは現時点では液晶にしかできない」と位置づけ、「もっとも感動を与えられるテレビ」として強化する。また、いち早く4K/8K放送の受信機やレコーダ、チューナなども展開予定。「モニターだけでは留まらない。周辺機器を含めたラインナップを、シャープから8K提案として、他社に先駆けて拡充したい」と述べた。

2018年に向けた液晶テレビ事業

 8Kの市場性については、「現在、2Kと4Kの構成比は、35%が4K。事業規模を金額に換算すると既に70%が4Kとなった。8Kの画質は4Kの4倍であり、その魅力へのお客様の反応は、4Kと同じようなスピードで拡大すると考えている。インフラ面では日本が引っ張るほか、中国でも新たな商品に対するニーズは高い。日本、海外では中国をメインに8Kは市民権を急激に得ていくのでは。2017年は事業規模は大きくないが、急激な拡大が見込める。(日本で8K放送が始まる)'18年12月を見据え、サイズ展開と、テレビのみならずAV周辺機器の拡充を図り、我々は8K市場の導火線にさらに火を着けるような動きをしていきたい」との考えを示した。

現在と今後の4K/8K放送ロードマップ
4K/8K放送事業者

 8Kの家庭への導入については、日本の住宅事情なども鑑み「画面のサイズが大きくなるよりも、画面に近づいても感動を得られることが大きい。近くで観るというのは、視野角が広くとれるということ。没入感が倍増されるディスプレイが8K」とした。

左が8K、右が4K。精細感が大きく異なる
85型、70型、チューナを展開

 国内でのテレビ開発/生産については、「(栃木県の)矢板はテレビの拠点であることは変わりない」としつつ、「生産は、パイロットラインなどを残しつつ、国内の生産のメインは矢板から亀山に移っていく。亀山では45インチのフルオートマティックな生産の検討を今後続けるとともに、8Kを含めた大型のラインナップの生産を進める。

 海外の工場については「ワールドワイドで事業を進める中で、サプライチェーンの短縮化/効率化を図る意味で、鴻海の持っている生産工場とは、タッグを組んで“協働”作業を続け、コスト削減を図っていく。そのなかで、ワールドワイドで競争力のある商品を開発していく」とした。