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FOCAL再び、ラックスマンが10月から19機種発売。「UTOPIA III EVO」も発表

 ラックスマンは、仏FOCALのスピーカー、ヘッドフォンの取り扱いを7月1日より開始。新製品の2機種×5色を含めた、全19機種・64アイテムを10月より改めて日本市場に発売する。それに先立ち9月5日、製品ラインナップや同社の技術を紹介。さらに、日本を含めて10月から全世界同時発売するフロア型スピーカーの新製品「UTOPIA III EVO」シリーズの「Maestro Utopia Evo」と「Scala Utopia Evo」も公開した。

10月から全世界同時発売するフロア型スピーカーの新製品「Maestro Utopia Evo」

 仏FOCALのスピーカーやヘッドフォンはこれまで、ロッキーインターナショナルが取り扱っていたが、7月1日からはラックスマンが取り扱う。

 10月から発売するのはスピーカーのハイエンドラインと、ベーシックライン、ヘッドフォン。ハイエンドはUTOPIA IIIシリーズである「Grande Utopia EM」(1台1,225万円)、「Stella Utopia EM」(1台550万円)、「Diablo Utopia」(1台78万円)。前述の新製品「Maestro Utopia Evo」(1台340万円)、「Scala Utopia Evo」(1台210万円)、SOPRAシリーズの「Sopra N°3」(1台128万円)、「Sopra N°2」(1台78万円)、「Sopra N°1」(1台48万円)。

SOPRAシリーズ
後方の左2台が「Sopra N°3」、右が「Sopra N°2」、手前が「Sopra N°1」

 ベーシックラインはARIA 900シリーズの「Aria 948」(1台30万円~)、「Aria 936」(1台23万5,000円~)、「Aria 926」(1台19万円~)、「Aria 906」(ペア16万2,000円~)、「CC 900」(ペア11万8,000円~)。CHORUS 700シリーズの「Chorus 726」(1台12万8,000円~)、「Chorus 716」(1台10万6,000円~)、「Chorus 706」(1台10万6,000円~)、「CC 700」(1台7万8,000円~)。

ARIA 900シリーズ。後方の左端が「Aria 948」、その右が「Aria 936」、手前の左端が「Aria 926」、その右が「Aria 906」
CHORUS 700シリーズ。左から「Chorus 726」、「Chorus 706」、「Chorus 716」

 なお、サブウーファは10月の発売開始時点では取り扱わず、「安全規格の問題をクリアして、その後、検討したい。ラインナップとして加えていくつもりではある」という。

 ヘッドフォンは「UTOPIA」(58万円)と「ELEAR」(17万円)をラインナップする。なお、これらは9月29日、30日、10月1日の3日間、東京国際フォーラムで開催される「2017東京インターナショナルオーディオショウ」で一般にも披露する。

「UTOPIA」
「ELEAR」

FOCALとは

 FOCALから、ホーム製品カテゴリのグローバルセールス・マーケティング担当のカースティン・ロス氏と、技術・商品担当で製品の音決めも担当しているプロダクトマーケティングマネージャーのニコラス・デバート氏が来日。FOCALの概要や技術的な特徴を解説した。

グローバルセールス・マーケティング担当のカースティン・ロス氏

 FOCALは1979年に、エンジニアのジャック・マユール氏によって設立された。所在地はフランスのリヨン近くにあるサン=テティエンヌ。総従業員数は200人で、内30人は研究開発のエンジニア。技術革新志向が強く、機械工学に基づく独自のユニット開発や、洗練され、色彩豊かな現代的デザインなどが特徴だ。

リヨン近くにあるサン=テティエンヌのFOCAL本社

 サン=テティエンヌにはスピーカーのドライバを作る工場、原材料倉庫、リスニング・ショールーム、R&Dなどが、17,000m2の敷地に広がり、カースティン氏によれば、現在は別の場所にも倉庫用意しているという。

 さらに、そこから車で2時間ほどのブルボン=ランシーには、スピーカーのキャビネットを作る工場もある。カースティン氏は、本社の様子をビデオを交えて紹介、「商品の研究・開発、生産を自社で行なっている、現代では稀有な会社」と説明すると共に、例えば、特殊なユニットを作るための治具や機械なども自分達で作ってしまう“技術者集団”である事もアピール。「38年前に設立したジャック・マユール、彼の技術や工夫が、現在も綿々と受け継がれ、今の新しいスピーカーのかたちへと生まれ変わっている」という。

開発向上の様子
研究施設も充実している

 さらに「JMLAB初のラウドスピーカーとして1979年に“DB 13”が誕生して以来、色々なトピックがあったが、去年、一昨年から、上位機種の新技術を盛り込みながら、価格はミドルクラスを狙ったSOPRAシリーズを展開している。今後も、ヘッドフォンも含め、続々と開発していく」と、ラインナップ拡充に意欲を見せた。

FOCALを代表する3つの技術

 ニコラス氏は、FOCALスピーカーの特徴となる3つの技術「逆ドームツイータ」と「ベリリウムツイータ」、「Wサンドイッチコーン」を説明。

ニコラス氏

 逆ドームツイータは、その名の通り、通常は中央が突き出たドームツータの逆で、中央が引っ込んだタイプ。「逆ドームにする事で、ドーム(振動板)がよりフラットに近くなり、動きが均一になる。ボイスコイルも直径を短くでき、振動系の質量が小さくなり、高効率で正確性が向上する」という。また、1インチユニットで比較すると、逆ドームの“深さ”は、突き出た通常ドームの“高さ”と比べて短い。「指向性はドームの高さに比例するので、曲率が小さく、浅い逆ドームの方が、(指向性は狭く)音像が明確になる」とのこと。

逆ドームツイータの利点

 他にも、ユニットを駆動するボイスコイルを短くする事で、効率的にエネルギーをドームに効率的に伝送できるという。

 上位モデルでは、ベリリウム・ツイータを使っているのも特徴。ベリリウムはアルミより13倍剛性が高く、音速も2.5倍速いなど、ツイータの振動板用素材として優れている事を説明。「シルクでは波うってしまう動きでも、ベリリウムは剛性が高いのでたわみが出ず、ディストーションが発生しない」のが音質での強みになるという。

ベリリウムの利点
音叉の響きでアルミとベリリウムの違いをチェック。高い音が長く響くアルミに対して、ベリリウムは響きが瞬時に止まる
「Scala Utopia Evo」に採用しているベリリウム・ツイータ

 しかし、ベリリウムは素材として扱いが難しく、「ベリリウムの逆ドームツイータを作る機械を開発するのに、4年をかけた」とのこと。

 「Wサンドイッチコーン」は、ロハセルフォームをコアとして、それをグラスファイバーで挟んだもの。これも振動板の素材として開発されたもので、剛性はケブラーの20倍、内部損失も高く、なおかつ軽量だという。

Wサンドイッチコーン

 ニコラス氏は、こうした技術を活用し、ツイータ、ミッドレンジ、ウーファの各ユニットを、最適な素材と技術で開発している事を、FOCALの強みとして説明。「例えばミッドレンジでは繊細で細かな描写が大切となるが、ツイータほど剛性はいらないというように、それぞれのドライバに合った特性を出すために技術を活用する事が大事」だという。

「Sopra N°1」

新シリーズ「UTOPIA III EVO」

 こうした技術を土壌とし、最新シリーズの「UTOPIA III EVO」では最新のユニットを採用。「IAL 2」ツイータは「現在最も高性能なツイータ」とするもので、ピュアベリリウムの逆ドームユニットを採用しながら、そのユニットの背圧をコントロール。解像感、定位、応答性を改良している。

Maestro Utopia Evo

 16.5cmのミッドレンジには、Wサンドイッチコーンを採用。サスペンションの不要な動きを低減する「TMDサスペンション」や、安定した磁界が得られるという磁気回路も採用。

 「Maestro Utopia Evo」のウーファには、MDS(マグネティックダンピングシステム)を採用。部屋のサイズに合わせ、低域のレベルを調整できるもので、上位機種に採用しているEMスピーカーと同様な役割を低コストで実現できるという。

 他にもEvoシリーズでは、ネットワークの使用パーツを一新し、歪を低減。内部ケーブルも新しいものになっているほか、入力端子分もバイアンプ/バイワイヤリングに対応する。

 各モデルの構成として、「Maestro Utopia Evo」は3ウェイで27mm径のIAL 2ツイータ、16.5cmのパワーフラワーNIC W(サンドイッチ)ミッドレンジ、27cmのW(サンドイッチ)ウーファ、27cmのMDS W(サンドイッチ)ウーファを採用。再生周波数帯域は25Hz~40kHz。インピーダンスは8Ω。外形寸法は455×770×1,470mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は116kg。

Scala Utopia Evo

 「Scala Utopia Evo」も3ウェイで、27mm径のIAL 2ツイータ、16.5cmのパワーフラワーNIC IMD W(サンドイッチ)ミッドレンジ、27cmのW(サンドイッチ)ウーファを採用。再生周波数帯域は27Hz~40kHz。インピーダンスは8Ω。外形寸法は393×670×1,247mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は85kg。

ラックスマンのアンプとFOCALのスピーカーは「良いマッチング」

 ラックスマンは現在、自社製品の無償保証期間を標準の2年に加え、製品の種類によって、プラス5年、またはプラス1年延長するプレミアム延長保証制度を導入。例えば半導体プリメインアンプであれば、延長保証登録する事で2年+5年で7年の保証が受けられる。

 FOCALのような輸入製品では、アフターサービスが気になるユーザーも多いが、ラックスマンでは業界最長となるアフターサービス体制などで培った信頼を軸とし、「高額機器購入者の不安を払拭したい」とする。また、製品の音質だけでなく、デザイン面でFOCALがコンセプトとしてライフスタイルに溶け込む世界観を、ユーザーにアピールしていく事も説明した。

ラックスマンの川上晃義社長

 FOCALのカースティン氏は、ラックスマンアンプでドライブしたFOCALスピーカーのサウンドについて、「良いマッチングだなと感じた」と笑顔でコメント。

 日本での展開については、「日本市場については、様々な事を鑑みて、より良いパートナーを見つけたいと考えていた。(販売代理店の)移行に関しては、法的な面も含めて一つ一つステップを踏んで進めてきた。うまく進まない部分もあるが、販売店にもご迷惑がかからないよう慎重に進めてきたつもりだ。7月1日からは新しいパートナーのラックスマンと共に、FOCALの事業を推進していく事を、私とFOCALのCEOも含め、ここ表明したい」と締めくくった。

会場には、ラックスマンのプリメインアンプのフラッグシップモデル「L-509X」(9月下旬発売/78万円)も展示された