パナソニック、2009年度のテレビ出荷は1,550万台に

-ボリュームゾーンへ本格展開。'08年度決算発表


パナソニック 大坪文雄社長

5月15日発表


 パナソニック株式会社は15日、2008年度連結決算を発表した。

 売上高は前年比14.4%減の7兆7,655億円、営業利益は86.0%減の729億円、税引前損益は前年の4,349億円の黒字から大幅に悪化して、マイナス3,826億円の赤字。当期純損益は前年の2,818億円から、マイナス3,790億円の最終赤字となった。なお、中期計画「GP3計画」で掲げているCO2排出量の削減目標については、前年比50万トン削減の347万トンとなり、1年前倒しで達成した。

2008年度の実績

2008年度 総括

 大坪文雄社長は、「2008年度は金融バブルの崩壊を契機とした未曾有の世界同時不況、低価格品や新興国市場への需要シフト、環境市場の拡大という市場構造変化が同時進行した年であった。選択と集中の加速や、構造改革の前倒しなどの手を打てたが、全体としては、成長性、収益力ともに力強さを発揮できず、日本中心の事業構造、固定費、成長事業や新規事業の不足など、当社の構造課題が浮き彫りになった1年と認識している」と述べた。「もはや、2001年以降の構造改革による成長性、収益性の押し上げ効果は完全になくなったという認識を出発点に、2009年度は新たな発展、成長に向けて思い切った改革に取り組む。とくに不採算事業の撲滅、グローバルな拠点再編は、スピーディーに徹底して実行する。また、次の成長に向けた仕掛けも進める。撤退、縮小、合理化で得たものを思い切って成長分野に投資する」とした。

2008年度 第4四半期連結決算2008年度 年間決算

2008年度 商品別売上高分析

2008年度グローバル 地域別販売概況

 2009年度から全社戦略費制度を開始。ドメイン主体の投資は別に、本社が戦略的、機動的に経営資源を投資する考えで、2009年度は100億円を予定している。

 また、「当社が製造業として成長を実現する方法は、次の3つに集約される」として、「新事業・新商品費で新市場を創造すること」、「既存事業、商品をグローバルに展開すること」、「ボリュームゾーンの攻略に正面から取り組む」ことを掲げた。

2009年度の位置付け

成長に向けた取り組み

全社戦略費制度

 


■ 薄型テレビは来年度赤字も、“ソニー越え"を目指す

薄型TV事業の拡大

 薄型テレビ事業に関しては、販売目標として、2008年度実績の1,005万台から大幅に増加させ、1,550万台の出荷を計画。PDPで775万台、液晶テレビで775万台とした。液晶テレビのうち、IPSαパネル搭載モデルは160万台とした。

 「2009年度のテレビ事業は、引き続き赤字が残ることになるだろう。超薄型、動画性能、省エネなどによる商品力強化、部品点数の削減や売価ダウンに対応した材料コスト低減への取り組みをはじめするコスト競争力の抜本的強化などに取り組み、他社を上回る成長を遂げる。経済環境の悪化や価格下落などの影響もあり、他社は慎重な計画だが、今年度、来年度、再来年度と、2,500万台から3,000万台近い成長が見込まれている。2009年度は踏ん張りどころであり、逆にいまが当社にとってチャンス。この計画をきっちりとやれば収益の点でも先が見え、世界におけるシェアもあがってくる。テレビ単体だけの商売ではなく、つながるコンセプトで総合的な収益構造が見えてくることになる」として、1,550万台の計画達成に意欲を見せた。

 2008年度実績では、ソニーの1,520万台に対して、パナソニックは1,005万台と、500万台の差が開いているが、2009年度の計画では、ソニーの1,500万台に対して、パナソニックが1,550万台と逆転を目指すことになる。

3Dテレビについて

 さらに大坪社長は、3Dテレビについても言及。「劇場の高品位3D映画を、家庭でも見てもらえるような努力に取り組んでいる」とした。

 成長戦略においては、4月1日に新設したシステム・設備事業推進本部において、情報・通信、照明・電設資材、環境・エネルギー、AV、セキュリティ、換気・空調、住宅設備・建材を、「機器連携・空間統合パッケージ」として、業界別、顧客別にまるごと提案を行う体制を構築。「現在、システム・設備事業の売上高の8割が国内だが、日本以外に強力に打って出ることで、2012年度には、事業規模で2兆円以上を目指す。エチオピアの中学・高校における遠隔教育システム、中国・上海の上海環球金融中心など、数10億円規模の事例が出ている。国内外とのビジネスパートナーとの連携も強化しており、今後の成長エンジンのひとつに位置づけたい」とした。

 新興国市場への展開、またこれら市場に対しての主力製品となるボリュームゾーンの展開においては、「2009年度はBRICs+ベトナムで2桁成長を必達目標にするのに加えて、インドネシア、ベトナム、ナイジェリアなどの次なる新興国市場の攻略を本格化する。ボリュームゾーンの商品とは、『安物』というイメージではなく、その国の人にとってマジョリティとなる商品であることが大切。インドのタタ自動車はサイドミラーがひとつ、ワイパーがひとつなどの仕様となっているが、インドの人にとってみれば憧れのブランドとなっている。一番消費者が求めているものを作っている。そのためには、各国におけるマーケティング、生活研究を徹底しなくてはならない。柔軟な発想で設計し、生産も自社でやるのか、パートナーでやるのかといったことも考えていく。ロスのない設計、不要なスペックを切るということも必要であり、そのためには日本にいると限界がある。海外の中核拠点に、現地人技術者を配置するなど、正面から取り組んでいく。タタを参考にしたい」とした。

エナジー事業の強化

システム・設備事業グローバル強化

新興国市場の開拓

アプライアンス欧州展開

モノづくり改革

 

世界ナンバーワンへの基盤づくり

 2018年度に、創立100周年を迎えるパナソニックは、「世界ナンバーワンへの基盤づくり」として、事業軸では新たな成長事業としてのエナジー事業の強化、地域軸では次なる新興国の攻略、マネジメント軸では三洋電機の子会社化に連動した新グループガバナンスの確立に取り組む姿勢を示した。

 なお、2008年度におけるセグメント別の業績は、デジタルAVCネットワークの売上高は、前年同期比13%減の3兆7,490億円、営業利益が99%減の32億円。

 テレビの販売金額は、前年並みの9,981億円。そのうち、プラズマテレビが8%減の5,759億円、液晶テレビが29%増の3,385億円となった。出荷台数は、PDPが31%増の557万台、液晶が38%増の447万台。合計が34%増の1,005万台となった。

 アプライアンスの売上高は7%減の1兆2,229億円、営業利益が43%減の490億円。デバイスの売上高は19%減の1兆1,273億円、営業利益が93%減の71億円。電工・パナホームは売上高が8%減の1兆7,663億円、営業利益が58%減の401億円。その他事業の売上高は1%減の1兆717億円、営業利益は63%減の239億円となった。

2008年度 営業利益分析

主要セグメント別概況

 


■ 2009年度も純損失1,950億円の赤字を見込む

2009年度の業績見通し

 一方、2009年度の業績見通しは、売上高は前年比10%減の7兆円、営業利益は3%増の750億円、税引前損益はマイナス950億円の赤字、当期純損益はマイナス1,950億円の最終赤字を見込む。「売上高では、為替の影響分を含めても5%の減収となるが、営業利益では増額を目指す」とした。また、CO2排出量目標は350万トンとし、「生産量を増加させなからも、増加量分の削減を目指す」とした。

 地域別では、日本が6%減の3兆8,500億円、米州が2%減の8,900億円、欧州が4%減の7,600億円、中国が7%減の7,700億円、アジアが3%減の7,300億円。


2009年度の年間見通し

2009年度 商品別売上高分析2009年度 グローバル 地域別販売見通し

 事業構造改革費用として、2009年度は880億円を計上。2008年度の3,674億円に加えて、2年間で4,554億円の規模となる。

 「2008年度は不採算事業からの撤退、固定資産の減損などに取り組んだが、2009年度はグローバル規模での製造拠点の統廃合、人員の再配置や削減などに取り組み、コスト削減効果として1,350億円を目指す」(パナソニックの上野山実取締役)とした。

 セグメント別の業績見通しは、デジタルAVCネットワークの売上高は、前年比10%減の3兆3,730億円、営業利益が400%増の160億円。

 同セグメントの主要ドメイン会社では、AVCネットワークス社の売上高が前年比8%減の1兆7,458億円、営業損益はマイナス185億円。携帯電話事業を担当するパナソニックモバイルコミュニケーションズの売上高は14%減の3,365億円、営業利益は44億円とする。

 大坪社長は、「2009年度第1四半期(4~6月)は、日本ではPDP、液晶ともに前年実績を上回る見通しだ。また、北米ではPDPが1.4倍以上、液晶が3倍、中南米はPDPが1.5倍、液晶が2倍、欧州ではPDP、LCDが前年を上回り、大洋州でもPDPが1.5倍、液晶が2.6倍、中国ではPDPが2.5倍、液晶が90%。ロシア、中近東は前年を下回る形になっている」などとした。

 アプライアンスの売上高は4%減の1兆1,800億円、営業利益が12%増の550億円。デバイスの売上高は11%減の1兆20億円、営業利益が252%増の250億円。電工・パナホームは売上高が5%減の1兆6,720億円、営業利益が15%減の340億円。その他事業の売上高は20%減の8,600億円、営業利益は79%減の50億円とした。

 グループ事業領域別では、デジタルAVCネットワークソリューションが売上高が10%減の3兆3,730億円、営業利益が160億円、営業利益率は0.5%。環境・生活快適実現ソリューションは売上高が5%減の2兆8,520億円、営業利益は890億円、営業利益率は3.1%。デバイス・産業ソリューションは売上高が15%減の1兆8,620億円、営業利益が300億円、営業利益率が1.6%。

デジタルAVCネットワーク

AVC社、PMCの見通し

アプライアンス

電工・パナホーム

デバイス

その他

PED・FA事業の見通し

2009年度 グループ事業領域別見通し

 

上野山実取締役

 パナソニックの上野山実取締役は、「2009年度は、引き続き厳しい経済環境が見込まれるが、景気回復時に向けた仕込みを行っていく。損益分岐点を10%引き下げることにより増益を確保し、さらなる構造改革の実施により経営体質を強化。キャッシュフロー経営の徹底推進を行なう」とした。

 なお、今日から開始されたエコポイントについては、「いまの国内の市況を考えると的を射た施策である。この施策は大いにプラスになる」(大坪社長)と期待を寄せた。



(2009年 5月 15日)

[ Reported by 大河原克行 ]