フィックスターズ、Cell利用の業務向け高速AVCエンコーダ

-ソフトエンコーダをCellに最適化、リアルタイム変換可能に


エンコード画面

2月24日発売
4月上旬出荷開始

標準価格:304万5,000円~367万5,000円



 株式会社フィックスターズは、Cell Broadband Engine(Cell/B.E.)を搭載した業務向けのMPEG-4 AVC/H.264ソフトウェアエンコーダ「CodecSys」シリーズを2月24日より発売、4月上旬より出荷を開始する。Lenovoのワークステーションと合わせたターンキーソリューションとして提供し、価格は下表の通り。なお、2年目以降の保守料は45万円/年となっている。

シリーズ型番  ワークステーション基本構成価格

ベーシックモデル
CE-100シリーズ

CE-100Thinkstation S10304万5,000円
CE-110

Thinkstation D10

325万5,000円

キャプチャカード付属モデル
CE-200シリーズ

CE-200Thinkstation S10346万5,000円
CE-210

Thinkstation D10

367万5,000円

製品の構成

 映像配信サービスや、Blu-ray Discオーサリングなどの業務向けに販売するAVCエンコードソリューション。米Broadcast Internationalと共同開発したソフトウェアエンコーダを、ハードウェアにプリインストールした形で提供する。システムに組み込まれるCell/B.E搭載アクセラレータカード「GigaAccel 180」の演算能力を使用することで、フルHD映像でもリアルタイムエンコードできることが特徴。

 インターレース/プログレッシブ映像のどちらにも対応。AVCのHigh Profileにも対応し、BDオーサリングなどフルHD映像の圧縮にも適しているという。低ビットレート映像の圧縮効率を高める「CABAC」(Context Adaptive Binary Arithmetic Coder)をサポートし、従来は難しいとされたCABACの高速化を、Cellへの最適化で実現した。バッチエンコードも可能。音声/ビデオを多重化し、配信向けのTSファイルとしても出力できる。

 「GigaAccel 180」は、Cellの派生チップであるPowerXCell8iを搭載。IBMのスパコン「Roadrunner」にも搭載されている同チップの性能を最大限に引き出すとしており、具体的には、画素単位で行なう処理の全てをSPEの並列演算命令向けに書き換えたほか、演算性能を最大限まで引き出すためにデータ転送タイミングも最適化、8個のSPEコアを全て並列動作させるタスクスケジューリング技術を採用している。

 こういった処理性能の向上により、フルHD(1080/60i)で16.7秒の映像をエンコードした場合では、エンコード時間が14.28秒と実時間以下まで高速化。なお、比較としてIntel Core 2 Duo(2.53GHz)PCとMainConcept H.264エンコーダで圧縮した場合は139.55秒だったという。

GigaAccel 180

CE-200/210に含まれるキャプチャカード「Bluefish EPOCH│HORIZON」

操作画面


 CE-100/110は、ファイルベースのエンコードを想定したスタンダードモデル。CE-200/210にはHD-SDIやHDMI入力に対応するキャプチャカード「Bluefish EPOCH│HORIZON」が付属し、ビデオカメラからの取り込みから圧縮までがリアルタイムで行なえる。また、CE-110/210にはFibre Channelにより外部ストレージとの接続も可能。

 エンコーダは、Broadcast Internationalが提供したソフトをベースとし、フィックスターズがCell向けに最適化。独自のマクロブロック(16×16画素)選択アルゴリズムを採用したことで、画質の劣化を抑えた圧縮を実現したという。

新製品の特徴

エンコーダの特徴

高速処理を実現した要素


■ Cell/B.E.×2個のハイエンドモデルも開発中

Cellエンジニアリング第1事業本部 第1部の近村啓史部長

 CodecSysの開発責任者であるCellエンジニアリング第1事業本部 第1部の近村啓史部長は、新製品の強みとして、ソフトウェアベースによる拡張性の高さを持ちながら、Cellによりソフトウェアエンコーダの課題だった処理速度を改善したことを挙げる。

 実際に、様々なサイズの映像を圧縮するデモも会場で行なった。1080/30p/YUV4:2:0の映像を、12Mbpsの広帯域IPTV配信向けファイルに圧縮したほか、1080/24p映像とWAV音声からTSフォーマット(8Gbps)へ、480/30p映像から2MbpsのPC配信向けといったエンコードを行ない、いずれも実時間程度で完了していた。

家庭用ビデオカメラで撮影しながらリアルタイムAVC変換するデモも行なった

 ワークステーションはWindows Vistaの32bit版で、64bit版への対応についてはアクセラレータカードが対応し、ユーザーからの要望があれば進めるという。なお、ワークステーションの変更といった個別のカスタマイズにも対応予定だが、コンシューマ向けにカードとソフトのみを販売するといった予定は無い。

 製品の目標販売数は初年度で100セット/3億円程度。海外での販売についても、4月から米国子会社Fixstars Solutions経由で行なう予定。

 さらに、ハイエンドモデル「CE-1000/2000」も開発中。Cell/B.E.を2個搭載したIBMのブレードサーバー「QS22」をハードウェアとして採用し、マルチチャンネルエンコードや、更なる高画質化を実現するという。ゴールデンウィーク頃の出荷開始を見込んでいる。

 


(2009年 2月 24日)

[AV Watch編集部 中林暁]