【CEATEC 2010】携帯マルチメディア放送が実現に向け加速
-TransferJetは、携帯電話をモデム化してPC動画視聴
■ 携帯端末向けマルチメディア放送に向けた動き
地上アナログ放送停波後のマルチメディア放送の事業者に認定されたmmbiは、ピンクを基調としたひと際目立つブースを展開。ステージでのプレゼンテーションを撮影して配信していたほか、アイドルグループ「アイドリング!!!」のメンバーによるステージイベントを行なうなど、注目を集めていた。
mmbiのブース |
mmbiは、地アナ終了後に空いたVHF-HIGH帯を用いて、ISDB-Tmm方式による携帯端末向けマルチメディア放送サービスの2012年4月開始を目指している。同社にはフジテレビやNTTドコモ、スカパーJSATらが出資している。
VHF-HIGH帯の放送免許をめぐっては、mmbi以外に、KDDIらが支持するMediaFLO方式の事業化を計画していたメディアフロージャパン企画も認定申請を行なっていた。既報の通り、9月8日に行なわれた電波監理審議会において、mmbiのほうが「(基準への)適合度合いが高い」とされ、mmbiの開設計画が認定されている。
ブース内ではISDB-Tmm方式を用いた放送波の受信デモを実施。携帯電話をベースにした試作機端末で、リアルタイム型放送(ストリーミング)や、蓄積型放送(ファイルキャスティング)のコンテンツが視聴できるようになっている。今回のデモでは13セグメントで配信していた。
インターフェイスの特徴としては、十字キーで直感的に操作できるメニュー画面構成を採用。「1週間に300以上のコンテンツが放送されることを想定してデザインし、探しやすくした。試聴や購入など、目的まで最短の導線で到達できるようにした」という。会場では、コンテンツのレコメンドサービスや、天気/ニュースなどのウィジェット、Twitter/mixi連携といった機能を紹介していた。
展示されていた試作機の端末 | コンテンツ視聴画面 | ストリーミングコンテンツの番組表 |
リアルタイム受信とファイルキャスティングの受信デモ | 試作端末として、Xperiaをベースにしたものも | デモにコンテンツを提供した企業。アニマックスや在京民放、スカパー、ディズニーなど |
料金体系について詳細は決まっていないが、説明員によれば「iモードのような月額料金をイメージしている」とのこと。「1話無料」などのPPVコンテンツについても検討しているという。携帯電話向けの動画配信は、既に様々な有料サービスが始まっているが、mmbiは差別化のポイントとして、「放送波を利用することでパケット料金を抑えられること」や、「蓄積型サービスで、地下移動などの“すき間時間”を有効活用できること」などを挙げている。
TOKYO FMのブース |
同じく、地アナ終了後の放送サービスとしては、エフエム東京(TOKYO FM)が、VHF-LOW帯でのマルチメディア放送の実現を目指し、福岡のユビキタス特区において「3セグメントマルチメディア放送サービス」の実験を行なっている。福岡タワーから、ISDB-Tsbの3セグメント方式で放送実験を行なっており、こちらは2013年の秋ごろの本サービス開始を目指し、準備を進めているという。
エンターテインメントが中心のmmbiとは異なり、ラジオ局ならではの地域密着型の放送サービスを目指していることが特徴で、携帯電話型の端末に留まらず、車載向けや、フォトフレームといった端末も想定している。
なお、TOKYO FMでは「マシュマロ団」というキャラクターを使ってマルチメディア放送をPRしている。CEATECの会場でも、ショートアニメでサービスの特徴などを紹介していた。
携帯電話型端末のイメージ | 車載向け端末のイメージ | デジタルフォトフレーム型端末のイメージ |
マシュマロ団は「マルチメディア放送を使って世界征服をたくらむ悪の組織らしいが、実際は、ムラング博士(人間でいうと49歳/実は妖怪)率いる謎の妖怪集団」とのこと。一団には人造人間のミエルちゃん(17歳)や、その子分のエムズたちがいる |
■ TransferJetで携帯電話をモデム化して動画視聴
近距離無線伝送技術のTransferJetコンソーシアムのブースでは、対応のモジュールの展示や、サービスイメージのデモなどを行なっている。
東芝から2011年に発売予定のTransferJet対応SDカード |
現在、対応機器としては対応LSIを内蔵したメモリースティックがソニーから発売されており、一部のサイバーショットや、USBクレードルなどを使ってデータ転送が可能となっている。
今回のCEATECで参考展示されていたのは、東芝製のTransferJet対応SDカード。同社の大容量NANDフラッシュメモリ技術と、低消費電力システムLSI技術の強みを生かし、実現したという。2011年第3四半期の商品化を予定している。
TranferJetの利用方法としては、既にデジタルカメラからのデータコピーや、ダイレクトプリントなどが実現している。将来的には音楽/動画の転送も目指しており、音楽や電子書籍コンテンツの販売についても検討されている。こうしたダウンロード型のコンテンツ転送という用途の他に、今回のCEATECでは、携帯電話をモデムとしてストリーミング伝送するという提案も行なわれている。
これは、PCから、TransferJet対応携帯電話の通信機能を使って、高速のデータ通信が行なえるというもの。最高560MbpsというTransferJetのデータ転送速度により、Bluetoothなどを使ったテザリングに比べても高速化でき、将来的に携帯電話がLTE対応となった場合などにも活かされるという。
ブースでは、PC上の動画配信サイトに接続する際に、携帯電話を経由して動画を視聴するデモを実施。携帯に着信があった場合などで一度通信が途切れても、接続状況が管理されているため、再接続したときに動画が最初に戻らず、続きから観られることもアピールしていた。
パソコンの右下のポート部分に携帯を置くと、通信が開始して動画が再生された | 通信管理画面 | 参考展示として、対応のSTB試作機も展示されていた。左側に携帯電話をかざすポートを用意。携帯電話からコンテンツが転送するという利用をイメージしている |
■ 62chの立体音響システムが開発
独立行政法人情報通信研究機構(NiCT)のブースでは、多チャンネル音響や、3D映像などに関するユニークな展示を行なっている。
62個のユニットを搭載したスピーカー |
9月29日に発表した「62ch 立体音響システム」は、62個のスピーカーユニットを搭載した28㎝径の球体を使って、楽器や歌声を、“演奏者の動きも含めて”立体表現できるというもの。球面状に62方向へ音を放射し、「歌っている人の向きや、バイオリン奏者の演奏中の動きが音を聞くだけで想い描けるようになった」という。62chの音源は、演奏者の周りを球状に取り囲むように配置したマイクで収録している。
ブースでは、この球体スピーカーと、汎用スピーカーを組み合わせた形でデモを実施。球体スピーカーでソロ楽器の音源を再生し、後方の汎用スピーカーで伴奏を表現し、実際のステージ演奏に近い再生に感じられるようになっている。
ホテルのエントランスや、公共施設などでの利用を想定。また、「将来の立体テレビや、それを利用した超臨場感コミュニケーションの実現に向けて、技術を前進できた」としている。
そのほか、4K/3D映像のライブ伝送に世界で初めて成功したという超高精細3次元映像技術(7月6日発表)や、研究開発用に無償で利用できる「3D映像標準コンテンツ」をNiCTサイト内で公開したことなどをブース内で紹介している。
汎用スピーカーを「伴奏」に利用 | 演奏者の録音風景 | NiCTが無償公開している3Dコンテンツの紹介 |
(2010年 10月 7日)
[AV Watch編集部 中林暁]