「エコプロダクツ2010」開幕。各社が省エネ技術競う

-窓で充電、プレーヤーを無線充電。映画会社もエコ


エコプロダクツ2010。会場はビッグサイト

 国内最大級の総合環境展示会「エコプロダクツ2010」が9日、東京ビッグサイトで開幕した。会期は9日~11日まで。入場は無料(登録制)。主催は社団法人産業環境管理協会と日本経済新聞社。

 12回目を迎える今年は、「2020年までに温暖化効果ガスを25%削減する」ことを前提とし、持続可能な社会の実現や、次の10年で必要な事を考え、実践する場として構成。テーマを「グリーン×クリーン革命! いのちをつなぐ力を世界へ」とし、温暖化防止だけなく、生物多様性保全や、資源の枯渇なども重要な課題とし、その解決に役立つ最先端のエコプロダクツ、環境技術、ソリューション・サービス、CSR活動などを展示・紹介している。

 出展者数は745社・団体/1,762小間、来場者は18万5,000人を見込んでいる。ここでは家電メーカーのAV関連の展示をメインにレポートする。



■ソニー

 ソニーでは環境計画“Road to Zero”をテーマに、環境への取組みを体験できるようなブースを構築している。ソニーイーエムシーエス東海テック幸田サイト(幸田サイト)が、1972年の設立当初から実施している緑化活動「ソニーの森」に来場者が参加できるようになっており、子ども向けワークショップで、子どもたちが森に必要な腐葉土作りを体験。その腐葉土を実際にソニーの森で活用するという。

 ブースには大型の3D LEDディスプレイが設けられ、ソニーの森の3D映像を表示。さらに、子供達を3Dカメラで撮影し、森の3D映像と合成して表示。自分たちがソニーの森で実際に作業しているようなバーチャル体験ができるという趣向になっている。

ソニーブース。子供達が腐葉土作りにチャレンジ。正面には3D LEDディスプレイが設けられ、ソニーの森の映像が3D表示されているブース内では松ぼっくりや落ち葉、腐葉土などの展示も子供達を撮影する3Dカメラ

 また、“環境負荷ゼロを目指す未来の部屋”として、同社の最新技術を活用した未来の部屋のコンセプト展示を用意。色素が吸収した光で発電でき、材料が安く、製造時のエネルギーや資源の消費が少ないという「色素増感太陽電池」をメインとした展示で、この色素をステンドグラスのようにした窓を配置。曇の日や室内照明などの弱い光、斜めからの光などへの感度も高く、様々な場所で安定して発電できるという。

 生み出した電気は蓄電池に蓄えられ、ワイヤレス電力伝送機能を使って室内のノートPCやメディアプレーヤーなど、様々な機器に電力を供給するというイメージ。光ディスクの廃材をリサイクルしたタイルにも蓄電やワイヤレス伝送機能を持たせるなどのアイデアが披露されている。

色素増感太陽電池を使った試作機。光を当てると色素が吸収し、発電する右側のオレンジ色の窓に、色素増感太陽電池が使われている
左側の黒いボックスが蓄電池。これに充電した電池を蓄え、家庭内に配信するデザインモックのPC、腕時計型ウォークマン、Reader。こうした機器にワイヤレスで電力を伝送する

 ほかにも、9月の「ディーラーコンベンション2010」で展示され、今回が初の一般公開となる13.3型のフレキシブル電子ペーパーや、「DIGITAL CONTENT EXPO」などで展示してきた360度立体ディスプレイ「RayModeler」(レイモデラー)を使った地球環境映像の展示なども行なっている。RayModelerの具体的な製品展開はまだ未定だが、従来展示してきた試作機から輝度やコントラストが向上し、表示品質がより高まっているという。

13.3型のフレキシブル電子ペーパー360度立体ディスプレイ「RayModeler」

 さらに、同社液晶テレビ・BRAVIAに採用されている、人の顔を検知してテレビを見ているか、テレビの前にいるかなどを判断。画面の明るさをこまめに切替えて消費電力を削減する「インテリジェント人感センサー」、光学ディスク生産時に出る不要な材料をリサイクルし、カメラなどの製品で使うプラスチック部品にリサイクルする技術なども紹介している。

インテリジェント人感センサーのデモ不要なディスクのリサイクルの流れ(左から)プラスチックのペレット化され、カメラのボディなどに活用されている

■SPE

 今回のエコプロには、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(SPE)が映画業界から初の参加。ブース展示だけでなく、SPE日本代表の伊藤嘉明氏が環境配慮への取り組みを説明するプレゼンテーションも行なった。

 「映画とエコ」はあまり結びつかないイメージだが、SPEは映画会社ならではの取り組みを行なっている。その1つが「グリーンシーン」と呼ばれるもの。これは、手掛ける映画作品の中に環境メッセージを折り込み、観客に届けるもので、具体的にはジャッキー・チェンと、ウィル・スミスの実子、ジェイデン・スミスが共演したリメイク版「ベスト・キッド」の中で、ジャッキー演じるハンが、「シャワーを浴びたら(お湯の)スイッチを切るんだ。スイッチは地球に優しい」と、ジェイデン演じるドレに語るなど、ちょっとしたシーンに環境への意識を高めるメッセージが込められている。

 伊藤代表はこの取り組みについて「例えば映画を100万人が観たら、100万人に環境メッセージを届ける事ができる、我々ならではの取り組み。ハリウッドでも先陣を切って取り組んでいる」と説明。

 さらに、映画を撮影する際のセットでもエコに取り組んでおり、95%以上を再利用し、約450トンの資源節約に成功。他にも、レンガの壁を使うシーンで、レンガに見える塗装を施した紙を使ったり、家のセットで18カ月使用していないものを恵まれない人達に寄付、窓や家具などを新品価格の2割という破格で低所得層に販売するなどの取り組みも行なっているという。

SPE日本代表の伊藤嘉明氏映画のために作られたセットを95%以上再利用しているBD/DVDのパッケージを紙にする「Secolo」

100枚の通常プラスチックケース(左)と、100枚のSecoloパッケージ(右)を重ねたところ
 こうしたハリウッドでの取り組みに加え、日本ではBD/DVDソフトのパッケージでもエコを推進。SPEJとソニー・ミュージックコミュニケーションズが共同開発した紙のパッケージ「Secolo」(セコロ)を一部タイトルで採用している。原料が削減できるだけでなく、プラスチックケースと比べて重さが約半分、サイズは約1/5になることから、輸送時のCO2も削減。約30カ月で約72トンのCO2削減に成功したという。なお、同社はディスクのプレスと印刷工程で発生した電力による温室効果ガスを、グリーン電力証書の購入によって埋め合わせるカーボンオフセットも実施している。

 このSecoloは、セル用タイトルでは、Amazon限定の「マイケル・ジャクソン THIS IS IT コレクターズ・エディション アース・ソングバージョン」や、BBC EARTHシリーズなどで採用している。こうした取り組みを通じて、SPEは2007年対比でCO2排出量20%削減を2013年までの目標と掲げている。


「BBC EARTH グレート・ネイチャー ブルーレイ・デラックスBOX [episode2-6] 3枚組」
発売・販売元:(株)ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式ページ
http://love-bbcearth.jp/
横から見たところ

BOXケースから取り出したところ。なお、シリーズ最新の第6弾「BBC EARTH ライフブルーレイ・デラックスBOX [episode1-10](5枚組)」も9月より発売されている


■シャープ

 シャープブースでは、「グリーンフロント堺」で実施しているLED照明の導入や、排熱利用、液晶パネルの廃材を活用した撥水性ブロックを歩道に使うなどの、環境負荷低減への取り組みを紹介。さらに、従来の3原色液晶テレビとAQUOSクアトロンの消費電力を比較し、4原色の色再現だけでなく、省エネ性能も高い事をアピールする展示も用意している。

グリーンフロント堺の紹介コーナークアトロンの利点を、映像と消費電力で提示薄型のBDレコーダ「BD-AV70」も展示された

 また、液晶テレビのリサイクル技術も紹介。AQUOSの背面キャビネットに使用している、リサイクルが可能な「ノンハロゲン樹脂」も紹介。液晶パネルの生産過程で排出されるガラスは、粉砕し、高機能性塗料やペーパーウェイトに再利用しているという。これは、液晶パネル用ガラスの特性である高強度、耐食性、耐候性、耐摩耗性などの特徴を活かせるためだという。

AQUOSの背面キャビネットはリサイクルが可能液晶パネル生産過程で排出される液晶ガラスをリサイクルしている工程液晶パネルのリサイクル品は、高性能の塗料や、ペーパーウェイトなど

 ほかにも、ソーラー充電機能を備えた携帯電話や、薄膜太陽電池モジュールの解説、発電しながら太陽光の一部を透過し、明るい室内を保つという「薄膜シースルー太陽電池モジュール」などの最新技術も紹介している。

薄膜シースルー太陽電池モジュールソーラー充電機能を備えた携帯電話薄膜太陽電池モジュール

■パイオニア

 パイオニアブースでは、音楽や映画を楽しめるエコな電気自動車「Music EV」を展示。薄型で明瞭な音が出力できる独自のHVTユニットを使ったセンタースピーカー、サテライトスピーカーを採用し、運転席と助手席にはシートスピーカーも配置。電気自動車ならではの静粛性と組み合わせ、静かな車内で高品位な再生が行なえるという。

音楽や映画を楽しめるエコな電気自動車「Music EV」フロントガラスのすぐ下に、HVTユニットを使ったセンタースピーカーが配置されている

 ナビのモニターは11型で、映画も表示可能。ナビ機能には電気自動車の充電が行なえる施設の検索や、電力消費量を抑えるエコなルート検索機能も備えている。

シートにもスピーカーを装備。振動を体で感じることができるナビのモニターは11型で、映画も表示可能

 他にも、NTTドコモの車載機器向け情報サービス「ドライブネット」とパイオニアのハードウェア・Android OS用アプリなどを組み合わせて実現する「スマートクレイドル」を展示。CEATECでも展示していたものだが、パイオニアが開発するスマートフォン用クレードル「スマートクレイドル」で、ドライブネットから最新の地図情報、観光情報、駐車場の満空情報などを受信。クレードルには、Android端末を搭載でき、クレードル内にGPSや加速度センサー、ジャイロセンサーなども内蔵。

スマートクレイドル

 Android端末にはパイオニアが開発したナビアプリ「ドコモ ドライブネット powered by カロッツェリア」をインストールしており、通信とクレードルのセンサーを用い、さらにパイオニアのスマートループ渋滞情報も取り込むことで、従来のスマートフォンのナビアプリを超える精度や機能を実現している。具体的なサービスは2010年度第4四半期開始を目処としている。

 さらに、スマートフォンと連携した次世代の車載用ディスプレイ「ネットワークビジョンヘッドアップディスプレイ」(HUD)も参考展示。フロントガラスをスクリーンに見立て、RGBのレーザーを光源としてスマートフォンからの各種情報を投写。フロントガラス前方の空間に鮮明な情報コンテンツを浮かびあがるように表示できる。

HUDの試作機デモ。奥のテレビは風景を表示するためのものHUDの試作機HUDで実際にフロントガラスに情報を投写しているところ

 なお、パイオニアは8日に、このレーザー光源を含むプロジェクタモジュールについて、米マイクロビジョンと共同で開発・生産・販売を行なうことで合意しており、HUDの早期商品化に向けて取り組みを加速。2012年中に市場導入する予定だという。


■その他

 富士通のブースでは、富士通テンのカーナビに投入予定の技術が参考出展している。LEDバックライトを採用したカーナビ用液晶で、液晶テレビなどと同様に、LEDのバックライト制御を行なうもの。24個のLEDを使い、暗い映像の部分では消灯するなど、映像に合わせて個々のLEDの光り方を制御。大幅な消費電力の低減を実現している。

 同じく富士通ブースでは、OAタップにエコ機能を投入したものを参考展示。USBでPCと接続でき、個々のコンセントの消費電力をPC上でチェックできるというもので、ログを取る事も可能。オフィスに導入してPCの不要なつけっぱなしをチェックしたり、こまめに電源をOFFにするエコな社員を表彰するなど、様々な使い方を提案している。遠隔操作での給電OFF機能の搭載なども検討しており、まずはオフィス用で展開するという。家庭用が登場すると、AV機器でも活用できそうなタップだ。

富士通テンのカーナビに投入予定のLEDバックライト制御技術個々のコンセントの消費電力をチェックできるタップ
パナソニックブースでは、VIERAに投入している明るさセンサーの機能や、竹繊維を使ったスピーカーユニットの作り方などを紹介。3Dコンテンツで生物の多様性を学習できるコーナーも設けている
東芝ブースではLED REGZA「55F1」の省エネ機能や3D映像などを紹介日立ブースではWoooシリーズの「L37-ZP05」の省エネ機能をアピール。スリムブロック型LEDバックライト「S-LED」を採用しているのが特徴だドコモブースでは「TOUCH WOOD」という四万十ヒノキを使った端末を参考展示。森林を育てるために必要な間引きによって発生する間伐材をボディに使ったもので、15,000台の限定販売。木目はそれぞれ異なり、豆のような形状を採用している
バンダイも出展。プラモデルを作る際に残った破片「スプルー」を細かく粉砕し、ペレット化。それをリサイクルして作られるガンプラ「エコプラ」などを展示しているエコカーが注目を集める会場だが、バイクの展示も注目を集めている。ホンダのブースでは、燃費の良さが特徴の初代スーパーカブ「c100」と、12月に発売予定というビジネスユース向けの電動二輪車「EV-neo」を並べて展示
会場には飲食コーナーも用意。「エコごはんとスイーツ」と名付けられており、各メニューの横に「フードマイレージ」が表示されている。これは食べ物が運ばれてきた距離のことで、その際に排出されるCO2を測ることで、食べることとCO2が出ることの繋がりを分かりやすくしているという東芝にはノートPCの取り組みを紹介するコーナーもあり、世界初のノートPC「T1100」も登場

(2010年 12月 9日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]