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シャープ、IGZO液晶新技術「CAAC」。498ppiの6.1型など

−13.5型/4Kの有機ELも。「IGZOがモバイルの勝者」


 シャープと半導体エネルギー研究所は1日、共同開発した酸化物半導体(IGZO)の新技術「CAAC(C-Axis Aligned Crystal)」を発表した。スマートフォンやモバイル向けの液晶ディスプレイの高精細化や低消費電力化、タッチパネルの高精細化などが見込まれる。シャープは3月より亀山第2工場でIGZO液晶パネルを量産開始したが、2012年度内にCAAC IGZOでの生産に移行する計画。

 新開発のIGZOは、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、Zn(亜鉛)により構成される酸化物半導体に結晶性をもたせたもの。現行のIGZOに対し、より一層の薄膜トランジスタ小型化や高性能化が実現できる。また、有機ELへの応用も可能としている。

 今回開発したIGZO液晶ディスプレイは、4.9型/720×1,280ドットで302ppiのスマートフォン向けと、6.1型/2,560×1,600ドット、498ppiのモバイル機器向けの2機種。早期の実用化を目指すとともに、ノンディスプレイデバイスへの応用に向けた研究開発をすすめる。

4.9型/720×1,280ドットIGZO液晶
6.1型/2,560×1,600ドットIGZO液晶

 さらに、有機ELディスプレイへの応用事例も発表。13.5型/3,840×2,160ドットで326ppiのものは、白色OLED+RGBカラーフィルターを採用。また、3.4型/540×960ドット、326ppiのフレキシブルタイプものも参考展示した。

13.5型/3,840×2,160ドット有機EL
3.4型/540×960ドットのフレキシブル有機EL

 新IGZO液晶は、シャープと半導体エネルギー研究所(SEL)が共同で開発した酸化物半導体の新しい結晶構造を採用したもの。この結晶構造をCAAC(C-Axis Aligned Crystal)と命名している。

 これまで薄膜のIGZOはアモルファス構造を持ち、その結晶化は不可能とされていたが、SELは2009年にCAAC構造を発見。単結晶構造ともアモルファス構造ともことなる構造を持ち、さらにアモルファスIGZOよりも信頼性に優れていることがわかったという。

 このCAAC-IGZOについて、シャープとSELが共同で量産技術を確立。IGZOの物性を安定化し、製造プロセスウィンド拡大により、デバイスの進化を加速できるとする。具体的には「500ppi以上の高精細化」、「アモルファスよりもプロセスを簡略化できる」、「ディスプレイデバイス以外への応用展開」などを見込んでいるという。

半導体エネルギー研究所 山ア社長

 CAACを発見した、SELの山ア舜平 代表取締役社長は、CAACとCAACを用いたIGZO TFTについて解説。IGZOの単結晶はC軸方向から見ると六角形構造、C軸に垂直な方向から見ると層状構造という特徴があるが、CAAC IGZOを電子顕微鏡で見ると、平面は六角形構造、断面は層状構造が見いだされ、結晶構造をもっていることがわかる。この膜の膜表面とC軸の関連については、IGZO結晶のC軸は膜表面に対して垂直になっているため、これらの膜をC-Axis Aligned Crystal(CAAC)と名付けたという。トランジスタを作ってみても光照射時の特性変動が非常に少なく、信頼性も向上。「一番の特徴は信頼性が高いこと。だから、高精細化も用意になる」とした。また、超省電力のCPUやメモリーなども実現できるとする。


CAACとは何か CAACの構造 まとめ

■ 「IGZOを持つものがモバイルの勝者」。有機ELは選択肢の一つ

シャープ 水嶋副社長

 シャープ 水嶋繁光 副社長は、モバイル液晶事業とIGZO液晶の展開について説明した。モバイル液晶は、年率17%成長の成長市場で、この市場で求められる液晶の特性として、「高精細」、「低消費電力」、「タッチパネルの高性能化」の3つの要素を解説。IGZOの特徴である、アモルファスに比べて約20〜50倍という「高い移動度」と、「OFF性能の高さ」、「生産性の高さ」がこれらの課題解決に最適であることを訴えた。なお、水嶋副社長のプレゼンの内容は基本的には従来のIGZOについてのものだが、CAAC化により、さらなる高精細化や低消費電力化が見込めるとする。

 水嶋副社長は市場動向として、ディスプレイサーチのデータをもとに、スマートフォンやタブレットの高精細化トレンドを紹介。「現状、今後は精細度の高さがディスプレイの価値を決める。それ以外の性能価値に優先される要素と考えている」と言及。IGZOでは、高い移動度によりTFTの小型化と配線の細線化が可能なため、開口率を大幅に向上できる。そのため同等の透過率で2倍の高精細化が可能となるという。

モバイルディスプレイ成長の3要素 IGZO技術の3大特徴 IGZOの高開口率を生かして高精細化

 低消費電力化については「モバイルでは電池がどれくらい持つかが競争ポイント」とする。ディスプレイの消費電力が75%を占め、特に駆動に関わる電力が非常に大きい。これを改善することが顧客から求められてきた。IGZOにおける新駆動方式では休止駆動では、1/5〜1/10までの低消費電力化が可能で、さらに休止駆動中でもフリッカを抑えることができるなどの特徴もあるという。また、タッチパネルについても、SN比を約5倍に高めた新システムにより、タッチ検出の精度を向上し、スムーズな操作が可能とする。

低消費電力化への要望 IGZOによる低消費電力化 タッチパネルの高精度化

 生産性についても、アモルファスシリコン(a-Si)TFTとほぼ同等とする。「生産性に優れ、プロセスも大きな変更なく対応できる。LTPSのようにマザーガラスの大きさに制約はなく、また、亀山第2の第8世代でも問題なく対応できる。コスト面でも大きな意味を持つとご理解いただけると思う」とした。

 「IGZOはモバイルディスプレイの根本を変革するものになる。今回発表のCAAC新技術もできるだけ早期に導入。500ppi以上の高精細化も図っていく。また、ディスプレイデバイスだけでなく、CAACを用いた新しい商品開発も目指す。シャープは世界で唯一、IGZOディスプレイの量産を開始しているが、IGZO技術をもつものだけがモバイル液晶の大きな成長の成果を享受できると考えている」と自社のIGZO技術への自信を語った。

生産性もa-Si TFTと同等に IGZOのコア技術

 なお、CAAC技術の導入については、「IGZOのラインはできるだけ早期に新技術に移行する。モバイル液晶は顧客にあわせたカスタム製品ビジネスなので顧客次第となるが、目標としては2012年度内には全てCAAC IGZOに切り替えたい(水島副社長)」と説明。生産プロセスの詳細は明かせないとしながらも、「大きな追加設備が必要になるわけではなく、大きな投資にはならない。現在のIGZOラインを適時切り替えていく」とした。歩留まりも「全く問題ない」とのことで、対応製品の発売については「(顧客次第だが)来年まではお待たせしたくないですね」とした。

 また、IGZO液晶とCGシリコン液晶との住み分けについては、「顧客次第。CGシリコンにも良さがある。ただ、今後のIGZOに軸が移っていくことは間違いない」とした。

 4Kテレビへの展開については、「技術的にはイエス。ただ、意味があるかというのは議論が必要。単純に技術が優れているから採用ではなく、しっかりとしたシナリオに落として行かなければ。テレビ向けの4Kはアモルファスシリコンでもできる。まずは、競争力を100%発揮できるモバイル液晶分野に生かしていく」と語った。

 有機ELの展開については、「モバイルディスプレイの一分野として重要だと考えている。ただ市場の要求は、精細度と低消費電力が最優先。そして価格、コスト。それらを満たすのが液晶なのか有機ELか、というだけの話。シャープの有機EL開発は他社に遅れることのないレベル。市場動向を見て考える。シャープとしては、有機ELをモバイルディスプレイのバリエーションに持つことは考えている。ただし、有機ELが液晶を置き換える、という話ではない、というのが個人的な意見」とした。


(2012年 6月 1日)

[ AV Watch編集部 臼田勤哉]