【CEATEC 2012】NHK、SHV映像で「ジオラマ3D双眼鏡」

SHVから切り出して3D表示。SNS連動のTV視聴提案など


NHK/JEITAブースの入口には、スーパーハイビジョン映像と音声を体験できるソファを設置

 10月2日から幕張メッセで開催されている「CEATEC JAPAN 2012」(一般公開は3日~)において、NHK(日本放送協会)とJEITA(電子情報技術産業協会)は共同でブースを展開。「新しい放送サービスが変えるライフスタイル~テレビはまだまだ面白くなる~」をテーマとし、放送に関する新技術などを展示している。

 映像そのものの進化については、次世代の高臨場感放送システムとしてNHKが研究開発を進めているスーパーハイビジョン(7,680×4,320ドット映像/SHV)を中心に紹介。また、テレビの新しい楽しみ方として、SNSサービスなど通信連携による新しいテレビの視聴スタイルなどを提案している。

 「現在:ネット対応テレビをもっと楽しむ」というコーナーでは、テレビをインターネットにつなぐことで楽しめる双方向サービスなど、基礎的な内容を説明。また、「近未来:ハイブリッドキャスト 新しい視聴体験」のコーナーでは、通信と連携した新しい放送の楽しみ方を、デモを交えて案内している。「未来:テレビはSuperなメディア」の展示では、次世代の高臨場感放送システムとして研究開発を進めているスーパーハイビジョン(7,680×4,320ドット映像)を使った新しい体験などを紹介している。


ジオラマ3D双眼鏡

 スーパーハイビジョン(SHV)を使った新たな取り組みとしては、「ジオラマ3D双眼鏡」という体験コーナーを設置。双眼鏡のような展示機をのぞくと遠方に高精細な立体映像で風景が見え、ズームイン/アウトがレバー操作で行なえるほか、本体をパン/チルトすると映像もそれに追従して様々な方向の景色が見えるというもの。デモ機ではスカイツリー周辺の夜景(動画)と、遠くに富士山を望む風景(静止画)の2種類のコンテンツを用意。具体的な利用例として、博物館などの展示や、観光地など様々な場所を想定している。

 元の映像は、2台のSHV(相当)カメラ2台をステレオ配置して撮影したもの。それらの映像を切り出してフルHDの3D映像を生成して左右の目に見せている。映像の切り出し位置を変えることで、パン/チルトやズームしたように見せることが可能。両眼の映像の距離は数m以上。これは、通常人の目の間隔は6.5cmだが、この視差では遠景で立体感が得られないためだという。左右の目に見せるディスプレイはフルHD液晶を使用している。


双眼鏡をのぞくと、3Dの遠景映像が見え、操作も可能向かい側には、操作ができない「サブ双眼鏡」も設置されている
85型のSHVディスプレイ展示SHV対応カメラに搭載される120Hz対応のイメージセンサー22.2ch音声をヘッドフォンで聴けるオーディオプロセッサ
ハイブリッドキャストを活用したスポーツ視聴の例

 テレビの通信機能を活かした放送の例では、ハイブリッドキャスト(Hybridcast)の実用化に向けた様々な取り組みを紹介。スポーツ視聴の例では、サッカー中継で選手の名前を映像にオーバーレイ表示するといったサービスや、ピッチ上の選手の動きをリアルタイムにグラフィックス表示することで観る人がフォーメーションを瞬時に把握したり、選手の運動量を確認するといったことができるという例を紹介している。

 WOWOWが提案するのは、同社が提供中のVODサービス「WOWOWオンデマンド」とリアルタイム放送の連携。現在放送している番組と関連したWOWOWのVODコンテンツを紹介が画面下に表示され、すぐに視聴できるというサービスや、サッカー中継でゴールなどのハイライトシーンをピックアップしてサムネイル表示することでユーザーがすぐにその映像を観られるという「サッカーアプリ」をデモ。何を“ハイライト”とするかは番組の制作者が決め、視聴者が簡単に観たいシーンを探せるようにできる。また、リアルタイム番組視聴では、サッカーの試合で応援するチームの「応援ボタン」をタップすると、他の視聴者とともに応援合戦に参加する気分が味わえる。このように、VOD視聴とリアルタイム視聴の双方の楽しみ方を通信機能との連携で提案していくという。


WOWOWのVODコンテンツと放送画面の連携ハイライトシーンをサムネイル表示。好きなシーンを再生できるタブレットで「応援」をタップして、応援合戦に参加した気分を味わえる
TeleVidEchoの画面。左右にツイートを表示

 北海道テレビ(HTB)がNTTコミュニケーションズとともに提案するのは、「TeleVidEcho」(テレビ凸:デコ)というサービス。視聴者からのツイートや投票で、“番組本編とは別の演出シナリオ”を提供するというものだ。

 これは、例えば2つの有名な観光地を提示し、「どちらに行きたいか?」を視聴者に質問。視聴者は、自分が行きたい方の場所について良い点などをツイートして互いに競い合う。このツイートは放送画面の両脇に流すことで、他の視聴者も読むことができる。これとは別に、番組内には投票の時間を設け、テレビリモコンの赤ボタン/青ボタンなどで意見を送信。その結果、投票が多かった場所にツイートした人々が“勝ち”となる。投稿されたツイートのうち、有力な意見などには放送中に“いいね”と番組制作者らが指定。勝ったチームで“いいね”された人には、プレゼントとしてその観光地への旅行チケットがプレゼントされるといったことが可能になる。

 上記番組の場合、オンエア内容としては、2つの観光地を交互に紹介するというものだが、これと同時にテレビ画面全体では別のストーリーが展開。このため、同じ番組を別の時間帯で放送すると、違う結果になるということも起こり得る。このように、一つの映像コンテンツを何通りにでも楽しめることから“平坦ではない凸凹サービス”という意味で「テレビ凸」という名前が付けられている。

リモコンのボタンで投票できるサービスイメージ
次世代STB(ハイブリッドSTBの仕様概要)

 ブース内にある日本ケーブルラボ/日本ケーブルテレビ連盟のコーナーでは、「次世代STB」(ハイブリッドBOX)を紹介。CATV用STBでは、放送/通信連携のための次世代STB規格として、AndroidアプリとWebアプリ(HTML + JavaScript)の両方に対応した「ハイブリッドBOX」の仕様(JLabs SPEC-023)が策定されている。

 複数のソフトウェア実行環境に対応しているため、利用者が様々なアプリを使えるという利点があるだけでなく、各CATV事業者がCATVのサービスを向上するためのカスタマイズができるというメリットもある。サービスの例としては、自宅のSTB経由で録画した番組を外出先でも楽しめるという「ロケーションフリーTV」や、テレビ番組に関する書き込み情報を自動収集して番組ホームページと連動する「ソーシャルメディアによるテレビ視聴」といったことなどを挙げている。

 今回、HTML 5などのWebアプリが動作するSTBは出展されていないが、次世代STBの例としてKDDIの「Smart TV BOX」を展示。このSTBは、Android 4.0を搭載し、様々なアプリが利用できるだけでなく、日本ケーブルラボが2012年内に提供予定とする新しいアプリマーケットにも対応する予定。

 このマーケットで提供されるアプリは、テレビ画面に最適化することだけでなく、リビングで家族といっしょに安心して利用でき、STBの動作に問題などが生じないことも必要。このため、日本ケーブルラボが認定したベンダーのみが参加でき、Google Playなどには無いアプリも提供される予定。8月にはアプリベンダー向けの説明会も行なっており、サービス開始に向けて準備しているという。

KDDIのSmart TV BOX番組をタブレットなどで視聴できる「ロケーションフリーTV」のデモ他にも次世代STBのプロトタイプを展示していた


(2012年 10月 2日)

[AV Watch編集部 中林暁]