ゼンハイザー、最上位カナル「IE 800」は実売7万円台
同社初アンプは、ヘッドフォンとバランス接続可能
発表された新モデル |
ゼンハイザーは、「秋のヘッドフォン祭 2012」(10月27日~28日)において新製品発表会を開催。イヤフォンのフラッグシップ機となるカナル型(耳栓型)の「IE 800」や、高級感のあるデザインが特徴のヘッドフォン「MOMENTUM」、ゼンハイザー初となるヘッドフォンアンプ2機種「HDVD 800」、「HDVA 600」を発表。
これらのモデルは10月15日に発表されており、今回のヘッドフォン祭での出展を予告していたが、発売時期や詳細な仕様は明かされていなかった。国内では初披露となり、会場に試聴スペースも設けられている。
上記製品のうち、ヘッドフォンのMOMENTUMについては、26日より発売を開始したほか、イヤフォンのIE 800についても「そろそろ量産に入れるという情報を得ている」として、発売が近いことを明かした。一方、アンプ2機種の発売時期については未定。
価格はいずれもオープンプライスで、店頭予想価格はMOMENTUMが3万円前後(税抜)、IE 800が7万円前後(同)。なお、アンプのHDVD 800とHDVA 600は、米国では、それぞれ1,999ドル、1,599ドルで販売され、日本でも同等になる見込み。
■ イヤフォン「IE 800」、ヘッドフォン「MOMENTUM」
IE 800 |
カナル型(耳栓型)イヤフォンの「IE 800」は、広帯域な再生に対応しながら、同社製品で最小とする7mm径のダイナミック型ユニット「エクストラワイドバンド(XWB)ドライバ」を1基搭載。同社のオープンエア型ヘッドフォン上級機「HD 700」にも採用された、「Vented Magnet System」を採用する。ハウジングはセラミック製で、傷に強く、肌触りにも考慮したという。プラグはステレオミニ。
XWBドライバは、5Hz~46.5kHz(-10dB)までフェーズ歪みが無いという点が特徴。ドイツのクリーンルームで製造されているという。また、イヤフォン内の共鳴を相殺するというD2CA(Damped 2 Chamber Absorber)を採用。同社によれば、「他社のマルチドライバのイヤフォンは、7.5kHzにピークがあり、10kHz以上をマスキングしてしまう」としており、IE 800のD2CA技術により7.5kHzのピークを抑制することで、リニアな高域再生を可能にするという。
小型ユニット採用でハウジングもコンパクトになっている | 新開発のドライバユニット。右は1ユーロ硬貨 | 内部構造 |
そのほか、ユニークな点としてシリコンイヤーピースにフィルタを設け、ぬるま湯と中性洗剤で洗浄も可能とした。これにより、イヤフォン本体側のメタルガーゼ部分などを清潔に保てるという。イヤーピースは、楕円形の物を含む5サイズを同梱する。
ケーブルはOFCで、被覆にケブラー繊維を使用している。長さは1.2m。インピーダンスは16Ω、出力音圧レベルは125dB、全高調波歪み率は0.06%以下。ケーブルを除く重量は約8g。
周波数特性のグラフ。赤が他社のバランスド・アーマチュアのマルチドライバ搭載イヤフォン。青がIE 800 | 高域部を拡大したもの。IE 800(青)は比較的フラットに高域まで伸びている | ケーブルとイヤーピース |
イヤーピース部(左)にもフィルタが設けられている | イヤーピースの構造 | 付属ケース |
MOMENTUM |
「MOMENTUM」は、デザインも重視した密閉型ヘッドフォン。クラシックな形状をベースとしながら、高級感を持たせたことが特徴。ヘッドバンドのスライダー部にはステンレススチールを、イヤーパッドには天然革を使用。ヘッドバンドも革製で、通気性も高いという。
ユニットにはネオジウムマグネットを搭載。周波数特性は16Hz~22kHzで、インピーダンスは18Ω、出力音圧レベルは110dB、全高調波歪み率は0.5%以下。ケーブルは着脱式で、通常のステレオミニケーブルのほか、iOS機器用のマイク付きリモコンケーブルや標準プラグアダプタも同梱する。ケーブルを除く重量は約190g。
装着例 | 主な特徴 | 付属のケース |
■ ヘッドフォンアンプ「HDVD 800」、「HDVA 600」
「HDVD 800」は、24bit/192kHz対応のDACを備えたヘッドフォンアンプ。入力から出力まで、完全シンメトリカルなレイアウトを採用し、低歪みやサウンドバランスの良さなどが特徴。また、ヘッドフォン出力は標準プラグだけでなく、4ピンのバランス出力端子も装備。対応ケーブルを使うことで、本体内部だけでなくヘッドフォンまでのバランス接続が可能になる。なお、同社ではバランス接続ケーブルを発売する予定は無く、バランス接続する場合は他社のケーブルを使うことになる。
DAC内蔵のHDVD 800 | 背面 | 天面から内部のパーツが見える |
入力端子はUSBと光/同軸デジタル、さらにデジタルとアナログのAES/EBU(XLR)、アナログRCAを搭載。USB Audio 2.0に対応し、MacではOS X 10.6.4以降で利用できるが、Windows用には同梱のCD-ROMに専用ドライバを収録する。外形寸法は約224×306×44mm(幅×奥行き×高さ)、重量は2.2kg。
「HDVD 600」はアナログ接続専用のモデルで、こちらもヘッドフォンとのバランス接続(別売ケーブル利用)が可能。標準ジャックも備える。入力はアナログRCAとアナログAES/EBU(XLR)を搭載する。外形寸法は約224×306×44mm(幅×奥行き×高さ)、重量は2.2kg。
HDVD 600 | 背面 | 両製品の主な特徴 |
■ アンプは「ゼンハイザーのヘッドフォンに完璧にマッチ」
MOMENTUM |
発表会で製品を紹介したゼンハイザーのハイエンド・プロダクト・マネージャーを務めるアクセル・グレル氏は、イヤフォンのIE 800の音質について「決して過剰にならない低音」と「クリーンで色づけされていない中域」、「バランスがとれた周波数特性の高音域」などをアピール。来日にあたり、コペンハーゲンから飛行機で聴き続けていたとのことだが、「ずっと聴き続けていたくなる音」と自信を表した。
初のヘッドフォンアンプを手掛けた目的については「ゼンハイザーはヘッドフォンが何を求めているか一番よく知っている。今日のヘッドフォンは、普通のCDプレーヤーでは対応できないくらい完成の域に達している」として、アンプ開発に着手したことを説明した。
リファレンスのヘッドフォンとしては、同社のHD 800/700/650を使用。「ゼンハイザー製ヘッドフォンに完璧にマッチするバランスドアンプ」と述べた。
ゼンハイザー本社役員のアンドレアス・ゼンハイザー氏も来場。「日本での成功が、全世界の成功につながる」と日本市場の重要性を強調した | 新製品や、現行モデルの試聴コーナー。発表会の後、多くの来場者が訪れた |
(2012年 10月 27日)
[AV Watch編集部 中林暁]