ニュース

JVCケンウッド、“森を感じる”スピーカー「Forest Notes」

栗材を伝統技術で加工。「森の声」をスマホへライブ配信

Forest Notes(右)とForest Notes mini(左)

 JVCケンウッドは、新コンセプトのBluetoothワイヤレススピーカー「Forest Notes(フォレストノーツ)シリーズ」を発表。3月中旬より発売する。

 ラインナップは2モデルで、価格はオープンプライス、店頭予想価格(1台)は「Forest Notes(YG-FA30HV)」が32万円前後、「Forest Notes mini(YG-FA2HV)」が6万円前後。同社の直販サイトやインテリアショップなどを中心に販売する。

利用イメージ。配信音声をスマートフォンやパソコンなどで受信して、Bluetoothでスピーカーに伝送して聴く

 また、このスピーカーで聴く音として、本物の森に設置したマイクからの音声をライブ/アーカイブで配信するサービスも3月中旬より開始。スマホ/タブレット/パソコンで受信して、Bluetoothからスピーカーへ伝送して聴く形となる。配信フォーマットはMP3で、320kbpsの「高音質プラン(YG-FL10)」の料金は月額980円、128kbpsの「標準プラン(YG-FL5)」は月額490円で、いずれも加入月は無料。無料試聴もできる。

 「都会に居ながらも、森の音と木の温もりを楽しむ」ことをコンセプトとしており、スピーカー本体と配信サービスを組み合わせて提案。住宅だけでなくオフィスや店舗などでの利用もイメージしている。なお、スピーカーを購入せず配信サービスだけ利用することもできる。

Forest Notes/Forest Notes mini

Forest Notes

 日本の伝統技術で加工した木製のアクティブスピーカーで、エキサイター(振動素子)によりエンクロージャ全体を振動させて音が出る。一般的なスピーカーのようにユニットが前面にあるのではなく、Forest Notesは本体両側面に、Forest Notes miniは向かって左側面にエキサイターを内蔵。四角く囲われたエンクロージャの中央部分は完全な空洞。本体の外側は平面だが、内側は前後方向に緩やかなカーブを描いており、ホーンスピーカーのように前後へ音を放出する仕組みとなっている。

 Bluetoothレシーバを内蔵し、プロファイルはA2DPに対応。コーデックはSBC。ステレオミニ入力も備え、スマートフォン/タブレット/PCだけでなく有線接続も可能となっている。なお、同社は「(配信サービスの)“森の声”が最適になる音響設定をしており、通常の音楽再生には適さない」としている。

 Forest Notes本体は31cm四方の立方体デザインで、この大きさは1本の樹木が1日に作り出す酸素の量である30リットル(日本の平均的な樹木の二酸化炭素吸収量を約20kgとし、光合成の化学合成式から算出)を視覚化したもの。miniは13.6cm四方で、1本の樹木が昼間1時間あたりに作る酸素の量2.5リットルを表している。JVCケンウッドは「光合成を行なう樹木への感謝の気持ちを持って欲しいという願いを込めた」としている。

Forest Notes mini
中央は空洞になっている。実際にここから出る音は広がりがあり、スピーカーの存在をあまり意識させない自然な聴こえ方が印象的。静かな場所では落ち着くことができ、多少騒がしい状況でも、自然の音がその場になじんで邪魔にならないと感じた

 エンクロージャは、飛騨高山の家具メーカーであるオークヴィレッジが製作。素材は国産の栗材で、高い強度と粘りの強さなどが特徴で、建造物の土台や鉄道の枕木にも使われている。この栗の無垢材を活かしたシンプルなデザインに仕上げた。天然材のため、木目や節なども一つ一つ異なっている。飛騨の伝統技術を踏まえ、ネジやクギを使わない接合技術を採用。Forest Notesには高い強度とデザイン性を両立した「蟻型千切留組(ありがたちぎりとめぐみ)」を、miniには通称“カンザシ”と呼ばれる「挽込留接(ひきこみとめつぎ)」を用いている。表面は亜麻仁油を主成分としたオイル仕上げ。

 出力はForest Notesが1W×2ch、miniが1Wモノラル。通信距離はいずれも約30m、電源はACアダプタを使用するほか、リチウムイオンバッテリも内蔵。連続使用時間は、Forest Notesが約7時間、miniが約10時間。充電時間はいずれも約6.5時間。重量は、Forest Notesが約4.0kg、Forest Notes miniが約0.6kg。フットや電源用のUSBケーブルなどが付属し、Forest Notesには着脱式カバーも同梱する。

Forest Notesは底面に、Forest Notes miniは側面にBluetoothレシーバを内蔵。ここにステレオミニ入力も備える
伝統的な接合技術を用いている

飛騨高山と諸塚村から“森の声”をPC/スマホへ配信

音声配信サービスの概要

 国内2カ所の森に設置したマイクでとらえた鳥の声や風の音といった音声を、リアルタイムまたはアーカイブ音源として配信。スピーカーと組み合わせて利用することで、「森や自然と触れ合う機会が少なくなった生活の中で、いつでも森の息づかいを感じて頂ける。パッケージ化された音楽とは別の新たな音の楽しみ方を提供する」としている。

 鳥は早朝に鳴くなど、時間帯によって森の音は異なる。このため、森のリアルな時間をそのまま感じたい時はライブ配信を利用し、夜に帰宅したときに静寂ではなく鳥の声を聴きたい場合などはアーカイブを利用するといった使い分けを想定している。

 サービス開始時は、前述したオークヴィレッジのある「飛騨高山」(岐阜県)と、村全体が森林認証(FSC)を受けているという「諸塚村(もろつかそん)」(宮崎県)から配信を予定。諸塚村へのマイク設置や実験サーバー構築には、東京大学大学院や東京芸術大学らも協力している。今後も順次配信する森を増やす予定だという。

 利用にはスマートフォン/タブレットやパソコンのWebブラウザを利用。対応OS/ブラウザはWindows 7(Internet Explorer 8/9、Google Chrome最新版)と、Mac OS X 10.7以上(Safari/Chrome最新版)、Android 2.3以上(標準ブラウザ/Chrome最新版)、iOS 4.3.5以上(Safari最新版)。

2つの森にマイクを配置
マイクがある場所からの眺め(諸塚村)
配信サービス画面のイメージ

「ピュアモルトスピーカー」を手掛けたオークヴィレッジが協力

 製品のコンセプトについては、ケンウッドデザインのコンシューマーデザインスタジオ デディケイテッド プロジェクトリーダーの柳沼広紀氏が説明。Forest Notes本体の、向こう側が見えるデザインを「森への入口」と名付けており、「当たり前の自然をもう一度見直し、不思議さに驚く感性を育むツールを考えたい」という想いに基づき、ハードでもソフトでもない“センスウェア”と位置付けている。

ケンウッドデザインの柳沼広紀氏
開発のコンセプト
1本の木が作り出す酸素の量をイメージしたという本体

 ウッドコーンやKシリーズといった高音質のオーディオ機器を作っている同社としては、ユニットを側面に配置するForest Notesは異色の製品。JVCケンウッド ホーム&モバイル事業グループ 商品企画統括部 シニアマネージャーの高橋利幸氏によれば、開発にあたって技術者とデザイナーの間で衝突もあったという。苦難を越えて製品化に至ったForest Notesを、高橋氏は仕事時に自らの机に置いて使っており、「会社が重い雰囲気になっていても、私の周りだけ柔らかくなる。会議室で使うと、いつもネガティブな発言をする人の意見が若干和らいだ(笑)」といった経験談も明かした。

 製品化のプロジェクトは、飛騨高山のオークヴィレッジとワークショップ形式で進行。同社は、かつてサントリーの樽材と使ったパイオニアの「ピュアモルトスピーカー」を手掛けており、使用する木材のセレクトなどの経験がForest Notesにも活きているという。同社代表の稲本正氏も登壇し、「小川の音、鳥の声、風の音、秋には虫の声がリアルタイムで聴ける。タイミングが良いと、東京のど真ん中で、予測できないことを体感できる」とした。

JVCケンウッドの高橋利幸氏
製品化に向けて行なわれたワークショップの様子
オークヴィレッジの稲本正代表

(中林暁)