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TAD、PCオーディオ/ヘッドフォン向けDAC「DA1000」

独自クロック搭載。32bit/384kHz対応。SACD機も

左からSACD/CDプレーヤーの「TAD-D1000」、D/Aコンバータ「TAD-DA1000」。ノートPCは付属しない

 テクニカル オーディオ デバイセズ ラボラトリーズ(TADL)は、フラッグシップモデルの技術を投入しつつ、価格を抑えたEvolutionシリーズの2モデルとして、ヘッドフォンアンプ機能やUSB DAC機能も搭載したD/Aコンバータ「TAD-DA1000」と、USB DAC機能付きSACD/CDプレーヤーの「TAD-D1000」を発売する。価格と発売時期は、「TAD-DA1000」が1,260,000円で10月上旬、「TAD-D1000」が1,575,000円で9月下旬。

両機種共通の特徴

USB DAC機能も搭載したD/Aコンバータ「TAD-DA1000」

 発売中のフラッグシップ・ディスクプレーヤー「TAD-D600」(262万5,000円)の技術を投入しているのが特徴。D600と同等という超高C/N(搬送波対雑音比:Carrier to Noise ratio)のマスタークロック「UPCG」(Ultra High Precision Crystal Generator)を新たに開発。両機種に搭載した。常温でも高精度な発振が可能で、クイックスタートと長寿命を実現している。「本来はD600と同じものを採用したかったが、部品供給などの問題で今後作れなくなる見込みであるため、新たに開発した」という。

 高精度なクロックとしては、水晶発振回路にVCXO(電圧制御型水晶発振器)やTCXO(温度補償型水晶発振器)などを付加するものもあるが、C/Nが悪化する事に注目。また、ルビジウムやセシウムを使ったものもあるが、精度は非常に高いものの人間が感知できるレベルを遥かに超えている事や、これらの発信器の発振子には水晶振動子が使われていることなどから、精度(音程)はそこまで追求せず、純度(ジッタの少なさ)を追求。一般的な水晶振動子は2×2mm程度のサイズだが、UPCGには直径約15mmの大型円形水晶を使うなどしてシンプルな回路をし、高いC/Nを追求しつつ、コストも下げている。

ジッタの少なさを追求
ジッタとC/Nの関係
指先に写っている小さなものが、一般的な水晶。その上にある丸いのが、UPCGに使われている水晶
DAC部分

 DAC回路には、TI・バーブラウンの「PCM1794A」を左右独立で配置。並列接続したバランス型DAC回路を構成することで、正確な変換と高S/Nを達成したという。残留ノイズと高スルーレートを実現する独自のディスクリートIV変換回路も採用することで、音の立ち上がりや広がりに優れ、高品位での迫力ある音を再現するとしている。

SACD/CDプレーヤーの「TAD-D1000」

 どちらのモデルも入力端子として、USB×1、XLRデジタル×1、同軸デジタル×2、光デジタル×1を搭載。USBは独自に開発したアシンクロナス(非同期)USB伝送エンジンを採用。受信したデジタル信号を精度の高いクロックで読み出すため、ジッタから開放されるという。PCMデータは32bit/384kHzまでサポート、DSDの再生も可能で、伝送はDoP方式。2.8MHzと5.6MHzに対応する。なお、対応OSはWindows Vista/7/8、Mac OS 10.6以降だが、WindowsではPCMが192kHz、DSDは2.8MHzまでの対応となる。Mac OS 10.6以降のみ、PCMが384kHzまで、DSDは5.6MHzまで対応可能。これは、Windows向けドライバの仕様による制限で、今後の機能強化は「ユーザーの声を聞きながら検討していきたい」としている。

 出力端子はXLRデジタル×1、同軸デジタル×1、アナログXLRバランス×1、アナログアンバランス×1を装備。

 外部からの振動の影響を抑える8mm厚の無垢材アルミニウムシャーシを採用。重量のあるパーツは底部に配置した低重心構造で、電源トランスの取り付けには肉厚の真鍮製ベースを使用している。電源トランスには、独自の高出力大型トロイダルトランスを採用。デジタル系、アナログ系で専用に配置し、相互の干渉を防いでいる。

ヘッドフォンアンプ機能も備えた「TAD-DA1000」

 TAD-DA1000はDAC機能に加え、ヘッドフォン専用の独立したボリューム機能を持つヘッドフォンアンプを搭載。ICを使わず、ディスクリート回路で構成されており、インピーダンス8~600Ωまでのヘッドフォンが利用可能。

 さらに、ライン出力にボリューム機能を搭載。パワーアンプやパワーアンプ内蔵スピーカーとダイレクトに接続し、DA1000からボリュームを調整するシンプルなオーディオシステムを構築する事も可能。ライン出力のボリュームレベルと前述のヘッドフォンアンプのボリュームは個別に設定できる。

 消費電力は49W(待機時0.5W以下)。外形寸法は440×406×150mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は16.5kg。

ヘッドフォンアンプも搭載している
背面端子部

SACD/CD再生対応「TAD-D1000」

 SACD、CD再生も可能なディスクプレーヤー。USB DACなど、DACとしての機能はDA1000と同じだが、ヘッドフォンアンプやライン出力のボリューム機能は備えておらず、代わりにディスクプレーヤー機能を搭載している。

 プレーヤーのメカ部には、スムーズで精度の高いローディング動作に加え、外部振動がサーボ系に与える影響を抑えた独自のメカを採用。アルミ削り出し加工によるトレー部分はD600に使われたものとほぼおなじで、黒色の素材を使う事で、レーザー光の乱反射を防ぎ、読み取り精度を向上させている。ピックアップは信頼性や精度の高いパイオニア製を使用。ブラシレススピンドルモーターも細葉している。

 消費電力は43W(待機時0.5W以下)。外形寸法は440×406×150mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は18.5kg。

トレー部分
背面端子部

PCオーディオ/ヘッドフォン好きの若年層にも

平野至洋社長

 平野至洋社長は、「世界35カ国で販売を行なっており、音質についてありがたい評価を頂いている。昨年はスピーカーだけの導入だったが、その間もエンジニア達が技術偏重ではなく、音質を重視する事が本当の技術だという哲学を肝に銘じながら開発してきたものを、やっと製品として紹介できる」と語り、「TAD-DA1000」と「TAD-D1000」を披露。

 Evolutionシリーズである2機種の位置付けについては、「TAD-D600が欲しいが、サイズや価格の面で適わないユーザーへの現実的な回答として、単価100万円台のゾーンをターゲットにした。新しい技術へのチャレンジをどんどんやっていこうというEvolutionシリーズらしく、最新のデジタル伝送技術に対応した製品で、全世界で市場が拡大している音楽配信、PCオーディオに対応するモデルでもある」と説明。

 さらに、利用シーンとして、「都会の高層マンションのリビングや、週末の別荘などで、置いてあるだけで持つ喜びが感じられるようなシステムを目指し、奥さんにも反対されないようなモダンなデザインを採用した」という。

 さらに、ヘッドフォンとの親和性が高く、シンプルなシステムの構築も可能な「TAD-DA1000」については、「PCオーディオやヘッドフォンを楽しんでいる若年層ユーザーにも、ハイエンドオーディオの世界に目覚めてもらいたい」という想いで開発したという。

試聴してみる

 発表会で試聴したので、印象を簡単にお伝えしたい。

発表会で試聴した

 TAD-DA1000/D1000、2機種の音の傾向は基本的に同じであり、TADLらしい、音の輪郭がカチッとした、シャープで情報量の多いサウンド。かといって、無味乾燥な硬い音ではなく、高域のしなやかな描写や、低重心で腰の座った低域も味わえ、安定感や艶やかさも聴かせてくれる。

 印象的なのはDSDファイルの再生で、一般的なDSD対応USB DACでは、PCMデータと比べ、DSDはしなやかでアナログライクな、ソフトな音になるものだが、DA1000/D1000ではPCMと同じようにフォーカスがピシッと合った音になる。DSDデータを転送後、あえて内部でPCMに変換し、デジタルフィルタでDSD特有の高域のノイズを除去し、DA変換しているとのことで、こだわりの部分だという。この情報量の多さや、音の輪郭のシャープさは、音量を挙げてもブレず、“凄み”のあるサウンドへと昇華する。

 DA1000でヘッドフォンを試聴しても、スピーカーと同様にレンジの広さ、正確な描写、付帯音の感じられないクリアなサウンドが維持されており、ボリュームを増減しても音がふらつかず、安定感があり、ヘッドフォンアンプとしても高いクオリティを感じさせる。

(山崎健太郎)