ニュース

スカパーとNTT、アンテナ不要の「フレッツ・テレビ」で4K/60p放送を'15年度春開始へ

 スカパーJSATと東日本電信電話(NTT東日本)、西日本電信電話(NTT西日本)、日本電信電話(NTT)は21日、光ファイバーを使ったテレビ向け映像配信「フレッツ・テレビ」と「スカパー! プレミアムサービス光」の商用ネットワークを用いた4K/60フレームの映像伝送に成功したと発表した。これにより、将来的に家庭で「フレッツ光」1回線を使い、複数のテレビで4K/60pなどの映像を楽しめるようになるという。スカパー! プレミアムサービス光での開始時期は、2015年度の春を目指す。サービスは有料になる見込み。

アンテナ不要で、4K映像を含む複数台のテレビで同時視聴が可能になるという

 既報の通り、次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)が主体となって6月2日から行なう4K試験放送「Channel4K」は、スカパーJSATの124/128度CSを利用し、対応アンテナとチューナを利用して受信する。

既存のフレッツ光回線を用いて行なわれた4K映像配信のデモ。ONUで光から同軸ケーブルへ変換してテレビに接続

 今回の発表は、この「Channel4K」とは別に、スカパーJSATらが主体となって行なう4K放送サービスの開始に向けた映像伝送。伝送路に光ファイバーを利用するため、アンテナ不要で、CSでの視聴と同等の画質で視聴できることが特徴。なお、4K映像の視聴には、フレッツ光の回線のほか、4K再生装置(将来の4K映像対応チューナに相当)や4K対応テレビなどが必要。

 地上デジタル放送やBSデジタル放送、専門チャンネルを視聴できる現在の「フレッツ・テレビ」や「スカパー! プレミアムサービス光」の商用ネットワークを用いて、「フレッツ光」1回線に既存のHDサービス(地上/BSデジタル放送など既存サービスで提供している全てのコンテンツ)と、毎秒60フレームの4K映像(映像は約35Mbps)を同時に伝送し、複数台のテレビで同時に視聴することに成功。

 「フレッツ光」と「フレッツ・テレビ」及び「スカパー! プレミアムサービス光」は、映像とインターネット通信(上り/下り)を独立して伝送する特徴を持つため、大容量の4K映像の視聴と同時にインターネットを利用しても、インターネットの通信に遅延などの影響を与えることなく、高品質な4K映像を視聴可能になるという。

現在のフレッツ・テレビの特徴
フレッツ・テレビで4K映像配信を行なうメリットなど
現在のフレッツ・テレビ提供エリアと今後の予定

 4Kを含む映像伝送には「波長分割多重」を使用。映像視聴とネット利用の干渉が無く、大容量伝送が行なえる。4K映像はH.265/HEVCで圧縮して伝送する。1つのフレッツ光回線で、4K映像も複数台のテレビで視聴できる。また、既存のフレッツ・テレビで使っている宅内共聴設備もそのまま利用可能。

 2015年度春の開始を目指す配信サービスの詳細は今後検討していくが、NexTV-Fの放送サービスとは異なり、有料サービスとして実施する予定。4K映像コンテンツは、スカパーJSATがNexTV-Fと連携して開発。NexTV-Fの放送と同じ番組だけでなく、独自チャンネルなどの配信も見据え、コンテンツホルダらとの協議を進めて行く。既にスカパーが4K撮影も実施しているサッカーのほか、映画なども4K配信の主なコンテンツとして検討している。

 21日の説明会で行なわれた映像配信デモは、「送出拠点(ヘッドエンド)」と「フレッツ・テレビ商用ネットワーク」、「ユーザー宅(説明会場)」の3カ所をイメージしたもの。送出拠点に4K映像(3,840×2,160ドット/35MbpsのHEVC映像と、128kbpsのAAC音声)の送出装置を用意、会場には4K/HEVC対応の再生装置(チューナ)とテレビ(パナソニックの65型TH-L65WT600と、フルHDのテレビ)を設置した。

 4K映像はHEVCでエンコードして送出装置に入力、既存のHDサービス(地デジなど)と混合して商用ネットワークへ送出。商用ネットワークからユーザー宅(会場)には1回線のフレッツ光で全信号を伝送。会場に設置されたONUで光から同軸ケーブルへ変換後、分配器で2台のテレビに向け同時出力、それぞれHD対応チューナと4K再生装置を用いてテレビに映像を表示した。なお、実際のサービス開始後は、送出拠点において(送出装置ではなく)アンテナから放送設備に映像が送られるほか、ユーザー宅では4K再生装置ではなく4K対応チューナを利用する。

 なお、今回実現した内容は、NTT東日本エリアでは「光HOUSE新宿」、NTT西日本エリアでは「グランフロント大阪」において期間限定で展示される予定。

会場で行われたデモ。左のフルHD映像と、右の4K映像を1本のフレッツ・光回線で受信して表示
ONUで光から同軸に変換してテレビに表示
映像はH.265/HEVCで圧縮
1回線で複数のテレビに4K映像を表示可能
4K映像の伝送イメージ
ネット利用時も、映像とIPが干渉しない点も特徴
既存の宅内共聴設備をそのまま利用可能
今回のデモと、実際にサービス化された場合の構成の違い
公開展示の概要
今後の展開

4Kは20チャンネルまで拡大も

スカパーJSATの仁藤雅夫副社長

 スカパーJSATの仁藤雅夫副社長は、4K放送にCSだけでなく、光回線のフレッツ・テレビなどを利用するメリットとして、アンテナ不要で124/128度CSと同等の4K/60p/35Mbps映像を視聴できる点や、降雨障害/ネット利用時の干渉がないといった安定した映像品質などをアピール。チャンネル数は、4Kで20チャンネル程度まで増やせるという。回線の特徴を活かし、放送と通信を融合したサービスの拡大などにも期待を寄せた。

 なお、スカパーは過去に3D専門チャンネルを開局後、'13年に閉局している。今回の4K配信の将来性について質問が出ると「3Dのアプローチも意欲的なサービスだったが、メガネを掛けてテレビを観ることへのハードルが高かった。4Kは自然な立体感で、スポーツを見るときにスタジアムにいるような感覚で中継を楽しむという臨場感、実物感がある。4K対応テレビの売れ行きもいいとうかがっている。コンテンツ側もしっかり出していけば、可能性は広がっていくと考えている」とした。

4K映像デモなどについて説明したNTT東日本のビジネス開発本部 第二部門 アライアンスサービス担当部長の松村和之氏
各社の役割

(中林暁)