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オーディオ協会、“ハイレゾ”定義や推奨ロゴ発表。DSDも対象。マイクやスピーカーも定義
(2014/6/12 14:02)
日本オーディオ協会は12日、オーディオ市場活性化にはハイレゾの普及が鍵とし、ハイレゾの定義や推奨ロゴなどを発表した。協会では、これまでの「Hi-Fiオーディオ」に繋がる「新しい時代のオーディオ」表現として「ハイレゾ」を位置づけ、認知向上を図る。
ハイレゾの定義については、一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が既に公告している。オーディオ協会はこれを踏襲・原則としながら、協会が示すハイレゾ対応機器は、以下の付帯項目を満たしたものと定義する。
【アナログ系】
(1)録音マイクの高域周波数性能:40kHz以上が可能であること
(2)アンプ高域再生性能:40kHz以上が可能であること
(3)スピーカー・ヘッドフォン高域再生性能:40kHz以上が可能であること
【デジタル系】
(1)録音フォーマット:FLAC or WAVの96kHz/24bit以上が可能であること
(2)入出力インターフェイス:96kHz/24bit以上が可能であること
(3)ファイル再生:FLAC/WAVの96kHz/24bitに対応可能であること
(自己録再機はFLAC、またはWAVのどちらかのみで可とする)
(4)信号処理:96kHz/24bit以上の信号処理性能が可能であること
(5)デジタル・アナログ変換:96kHz/24bit以上が可能であること
(6)生産若しくは販売責任において聴感評価が確実に行なわれていること。各社の評価基準に基づき、聴感評価を行ない、ハイレゾに相応しい商品と最終判断されていること
アナログ系の定義について、日本オーディオ協会の校條亮治会長が説明。マイクは「楽器の倍音なども考えた場合、40kHz以上が保証されている事が大事。スペアナなどで見ると、恐ろしいような倍音が含まれているが、そういうものをキチッととらえられるような周波数性能を持っていなければならない」と説明。
「アンプは昨今はデジタルアンプが多いので、ここはスムーズに行けるだろうと考えている。スピーカーとヘッドフォンについては、40kHz以上がどのくらいのレベルで出せるのかが問題になる。この数値についてはかなり厳しいものを設けているが、公表は控える。高域が伸びているけれど、減衰率が半分以下になっているというようなものは当然認められない。基本的にはなだらかに減衰するもの」とした。
「JEITAさんはデジタル系をメインに定義されたが、我々はオーディオ屋なので、マイクで録って、スピーカーから出して、お客さんの耳に届けるまでが仕事。アナログの範囲もハイレゾリューションと考えている。ここが根本的に違うところ」(校條会長)。
デジタル系の定義に記載されているFLAC/WAVはどちらかに対応していれば認められるが、再生に関しては両方への対応が必要。また、FLAC/WAVは一例として挙げられているもので、オーディオ協会では、リニアPCMのFLAC/Apple Lossless/WAV/AIFF、DSDのDSF/DSDIFF/WSDもハイレゾと認めるという。MP3などは認められない。
また、ディスクについてはBlu-ray Disc Audio(BDビデオ規格に準拠しながら音質にこだわったBDソフト)、SACDはハイレゾディスクオーディオとして認めるが、DVDオーディオは対象外となる。これは、過去に発売されていたDVDオーディオソフトによっては、オーディオ協会が今回定義したハイレゾの要件に合わないものもあるため。さらに校條会長は「(今回の定義は)単なる区分定義ではなく、近い将来、どのようなオーディオ市場を構成していけば、お客さんに喜んでいただけるか、日本の新しい産業機構の形を作っていけるのか、将来を託すに値するかを念頭に議論した」と語った。
また、協会推奨のハイレゾロゴとして、ソニーが以前から使っていたロゴマークを採用。「ソニーの経営トップから、無償譲渡としてアグリーメント(許諾)をいただいたので、業界のロゴとして活用させていただく」(校條会長)という。
このロゴは、協会法人会員が原則として利用でき、協会が定めたハイレゾ定義を満たす商品のみ使用が認められる。海外で使用する場合は、「商標」として適法に使用できる海外主要地域を前提に使用可能。ロゴ使用の同意書に同意する必要などがあるが、これらの条件を満たしてロゴを使う場合は、原則として無償で利用できるという。
また、協会会員以外がロゴ使用を希望した場合は、「案件ごとに提案があれば真摯に検討していきたい」、海外のメーカーがロゴの使用を希望した場合は、「議論はしたが、今回の発表の内容からは除外している」とした。
なぜ新しい定義を作ったのか
校條会長は、オーディオ協会としてハイレゾを定義し、推奨ロゴを定めた理由として、「我々はHi-Fiとして、高忠実度の録音と再生を何十年も追求してきたが、そろそろ、それだけでは解決できないところに来ているのではないかと考えた。iPodに代表されるような携帯プレーヤーとヘッドフォンで十分だと感じているユーザーもいる。しかし、将来もそれでいいのだろうかという疑問を抱いている。また、日本の産業が欧米のIT産業に追い込まれて来たとも言える。そこで、Hi-Fiにつながるハイレゾとして新しい時代のオーディオを提案し、できる事ならば国内の構造をもう一度見直し、感性価値の新しい産業機構の形を作っていきたい」と説明。
さらに、定義にかなり厳しい付帯項目を用意した理由については、「音を聴いて感動する、涙流せるような音とは何なのか、それをとらえようとすると、このような定義になる。私どもが狙っているのは、新しいステージ。音楽や音が人の生活になくてはならないというのがキーなので、そういう意味で欲張ったものになっている」と語った。
また、ソフト業界におけるハイレゾの定義については、「日本レコード協会さんとも話はさせていただいているが、今回はハード側の定義をしっかりと決めたという形。これをキーに、国内市場の活性化をしていきたい。しかし、ハードとソフトは両輪。今後も相当詰めていかなければならない課題は沢山ある」という。
さらに校條会長は、「お客さんが混乱する事になるのはよくないので、ソフト業界さんがお考えになるハイレゾ、どのように作っている音楽なのかがわかるようになれば」と、“ソフト業界側のハイレゾの定義”が作られる事についての期待も口にした。ただし、ソフト業界が「ハイレゾだ」と自社で認定した楽曲に対し、オーディオ業界が今回の定義などをもとに異を唱えるような事はないという。