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シャープ、鴻海傘下の再建を正式発表。有機EL2,000億投資、ブランド・雇用維持

 経営再建に取り組んできたシャープは25日、台湾の鴻海精密工業傘下での再建を決定した。シャープは第三者割当による新株式(普通株式及びC種類株式)の発行を行ない、鴻海による出資規模は総額4,890億円となる。割当先は、鴻海とその子会社であるFoxconn FE(Far East) Foxconn Technology、SIO International Holdingsの4社。発行価額は1株につき118円。

 本増資により、鴻海グループがシャープ株式の66.07%の議決権を保有することとなり、シャープの親会社となる。

 シャープ再建は、鴻海と産業革新機構(INCJ)が再建策を提案してきた。シャープは、鴻海案を選択した理由について、第1にディスプレイデバイス事業の競争力強化と各事業一体での成長のための必要な成長投資の手当が可能になることを挙げている。さらに、財務体質改善が可能となることや、液晶事業において相互補完関係にあること、加えて、シャープの今後の経営について、経営の独立性や、一体性の維持、従業員雇用の維持、ブランド価値、技術保持などについて強いコミットメントが得られたこと、かねてより液晶テレビ、携帯電話、スマートフォンなどのODMを通じた取引があることから、鴻海案を選択したという。

 増資実行の確実性を高めるため、締結する予定の株式引受契約において、1,000億円のデポジットを提供。実行されなかった場合は、シャープが予定損害賠償額として没収する事ができる。また、鴻海は、みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行が保有するA種種類株式の半数を総額1,000億円で買い取る予定。

OLEDに2,000億投資で「世界の主要サプライヤー」に

 調達資金の具体的な使途については、OLED(有機EL)事業化に向けた技術開発投資、量産設備投資などで2,000億円、ディスプレイカンパニーにおける中小型液晶を中心とした高精細化・歩留まり改善投資、次世代開発投資、その他増産・合理化投資に約1,000億円を予定。

 また、コンシューマエレクトロニクスカンパニーにおける、IoT分野の業務拡大などビジネスモデル変革等に450億円、エネルギーソリューションカンパニーの業態転換に向けた投資が100億円、電子デバイスカンパニーにおける車載・産業・IoT分野などへの研究開発や販路開拓投資が120億円、ビジネスソリューションカンパニーの成長投資等が500億円、ブランド価値向上への宣伝投資等で372億円、基本社債償還資金300億円となる。

 OLED事業化については、「世界の主要なスマートフォンメーカーが、2018年までに液晶の代わりにOLEDを使用した製品の投入を計画しており、このトレンドがディスプレイ市場を変革する」と大幅な市場拡大を予測。液晶向けのIGZO技術などを転用きるため、「世界の主要なOLEDディスプレイサプライヤーになることを目指す」とする。

 そのため、2017年中頃までに有機ELディスプレイの試作ライン立ち上げのための技術開発や量産設備を取得し、量産技術を確立。2018年初頭には量産開始できるよう準備をすすめるという。

 具体的には、亀山工場内に新たにOLED量産に向けた研究開発ライン、パイロットライン、量産ラインを立ち上げ。OLEDだけでなく、折り曲げも可能なフレキシブルOLEDの生産も目指す。投資額は研究開発ラインが280億円、パイロットが480億円、量産ラインが1,240億円。各年別では、'16年に50億円、'17年に750億円、'18年に1,000億円、'19年に200億円を見込む。これらの投資により、'19年までに5.5インチパネル換算で月産約1,000万枚相当の生産能力を実現。年間約9,000万枚相当のスマートフォン向けOLEDディスプレイを生産し、売上高2,600億円を目指す。

 中小型液晶ディスプレイについては、亀山工場のカラーフィルター工程装置の増強やプロセス装置の改造、中国工場における後半工程効率化投資などを予定している。

 コンシューマエレクトロニクスカンパニーについては、人工知能(AI)とモノのインターネット(IoT)を組み合わせた「AIoT」搭載のコミュニケーションロボットや液晶テレビ、調理家電などにおける新規商品創出に向けた研究開発投資や金型投資支出に100億円、白物家電等新興国ローカルフィット商品拡充に向けた金型投資支出充当に100億円、国内、中国、アジア各工場の設備合理化や更新などに250億円などを予定。「現下の財政状況により抑制せざるを得なかった成長・合理化投資であり、第三者割当増資の実行後、すみやかに支出を開始する」という。

 エネルギーソリューションカンパニーについては、ふくしま復興地域におけるIPP案件などを中心とした投資支出等への充当50億円、住宅用エネルギーソリューション事業強化に向けたHEMS開発用ソフトウェア投資支出等への充当で50億円などを予定。これにより、「PVモジュール販売を中心とした既存事業からエネルギーソリューションを核とした新たな事業体へ変革をすすめる」としている。

 電子デバイスは、スマホ向けカメラや車載向けカメラモジュールなどの新規事業分野における開発投資(70億円)などを中心に、抑制していた成長・合理化投資を実行していく。

(臼田勤哉)