東芝、2010年度経営方針発表。新興国市場の強化へ

-「グローバルトップの複合電機メーカーを目指す」


佐々木則夫社長

5月11日発表


 東芝は10日、経営方針説明会を開催。2009年度の業績概要を説明したほか、今後の成長戦略を発表した。

  テレビを始めとするデジタルプロダクツ事業や社会インフラ、半導体などの今後の展開とともに、新規事業として、エネルギー・環境などのバイタル、ヘルスケア領域やICT領域を成長領域とし、強化する方針を明らかにした。


■ 2012年度売上高8兆円を目指す

2009年度の実績

2009年度の実績は、売上高が前年比4%減の6兆3,816億円、営業利益は1,172億円で、前期2,502億円の赤字から黒字に転換した。半導体事業がメモリの好調により大幅に改善した事が好影響となった。しかし、純損益は構造改革費などがかさみ、197億円の赤字。

 デジタルプロダクツは、テレビが5半期連続で黒字で、国内シェアは2位を獲得。さらにHDDも富士通との統合でシェアを14%~23%まで拡大している(2.5型)。2008年度に市況の悪化により大きな赤字を計上した半導体事業も、年間営業利益を黒字化。メモリは第2四半期に、ディスクリートは下期に、システムLSIも第4四半期に黒字化した。NANDフラッシュの強化に向け、2010年7月から四日市工場第5製造棟を建設、2011年の稼働を目指すという。


2009年度のトピックス体質改革プログラムの成果

 2009年度の固定費削減については、電子デバイス合計で前年比1,730億円削減。半導体の製造拠点再編やメモリの前工程/後工程の四日市への集約などを実行した。

 液晶については、アモルファス製品を大幅に縮小し、低温ポリシリコンに集中。さらに、シンガポールでPC向け液晶を手がけていたAFPDの株式をAUOに売却し、PC向けの液晶パネルから撤退。今後はスマートフォン向けの高精細パネルなどに注力するという。

 デジタルプロダクツは、携帯電話の日野工場での製造を終息し、海外へ生産移管。テレビもベトナム工場の製造終息とともに、ODMの比率を拡大している。家庭機器でも愛知工場の製造終息や秦野工場の開発終息など拠点集約を進めたほか、事業再編などを実行。家電と一般照明の黒字化を実現した。

半導体の構造改革液晶の構造改革デジタルプロダクツ、家電の構造改革

 2010年以降の中期経営計画については、海外比率の拡大とともに、新規事業を創造し、「グローバルトップの複合電機メーカー」を目指すとする。

 2012年の売上高は年間伸長率7.8%の8兆円に、営業利益は4,500億円と設定。このうち海外の売上高を2009年度の55%から12年度に2012年度の63%まで拡大する方針。2009年度に国内45%、欧米31%、新興国24%という売上構成を、2012年度には国内37%、欧米32%、新興国31%とするなど、成長が見込まれる新興国にフォーカスする。

2012年度に売上高8兆円、営業利益4,500億円を目指す2012年度の経営指標目標事業グループ別の計数計画
デジタルプロダクツ事業の展開

 デジタルプロダクツ事業については、2010年度売上高2兆6,300億円、2012年度3兆円を目指す方針。2010年度の製品別の販売目標やテレビが1,500万台、パソコンが2,500万台で、新興国の売上比率は、テレビ/PCともに30%以上を目指す。また、新興国専用モデルをテレビとパソコンで約40モデル用意するなど、新興国での販売増を目指すという。

 商品については、テレビについては高画質3Dモデルを夏に投入予定。また、LED化も推進する。パソコンについては3D対応や399ドル以下の低価格モデルなどを投入予定としている。

 電子デバイス事業では、システムLSIにおいて「レグザエンジン」などのテレビ用半導体を多品種展開し、外販を強化。CMOSセンサやアナログのシェア向上も図る。また、液晶については、スマートフォンなどの小型向けに注力するとともに、裸眼式の3Dディスプレイの事業化を加速する。また、パワー半導体などを強化し、ディスクリートのシェア1位堅持を目指す。

 社会インフラ事業も発電や、送変電、環境用モータ、鉄道などソリューション展開しながら拡大。家庭電器事業については、可変磁力モーターを搭載した洗濯機や、COB高密度実装により業界最高発光効率を実現したLED電球など独自技術を生かした商品展開を図る。さらに、現地密着機種の設計、開発体制を拡充し、冷蔵庫や洗濯機など40モデルを新興国専用として展開。海外売上高を2012年度に22%まで引き上げる方針。

電子デバイス事業の展開家電事業の展開

 


■ 「メガトレンド」にあわせて新興国強化

 上記の中期経営計画を達成するための取り組みとして、佐々木社長が時間を割いて言及したのが、事業構造の転換について。

 今後の「メガトレンド」として、「新興国のGDPの伸びが拡大するのは明らか。『どこを狙っていくか』は明確だ」と、BRICsをはじめとする新興国への取り組みと、エネルギーや食料、環境などの分野を強化していく方針を説明した。

中長期ビジョンリーマンショックを境に経済にパラダイムシフト新興国の市場拡大や環境意識の向上にあわせて、バイタル&ヘルスケア、ICTなどを強化
半導体の成長戦略

 成長事業への集中として第一の課題が半導体。NANDフラッシュメモリは微細化を加速し、20nm台の64Gbitチップを2010年夏に量産開始。さらに、四日市工場の第5製造棟を2010年7月に着工、2011年春に竣工し、20nm台以降のフラッシュ量産を量産する予定。さらに「ポストNAND」の技術についても、2010年度に方針を決めて、同製造棟での量産展開を視野に入れていくとする。

 原子力については、WEC(ウェスティングハウス)との協力により、2015年までに39基の受注を計画。さらなる受注促進とともに、IHIなどとの合弁による生産能力拡大に取り組む。また、ウラン製品販社の設立や燃料事業などのフロントエンドから、サービス事業まで一貫体制を構築し、2015年度の売上高1兆円を目指す。

 ヘルスケア事業も、ハイブリッド手術室や造影剤を使わないMRI機器などの強みを生かし、2015年度売上1兆円を目標に掲げている。

 通信/IT技術により、適正な電力網を構築する「スマートグリッド」やビルやデータセンタ、工場などの効率的な運用を図る「スマートファシリティ」などは「スマートコミュニティ ソリューション」として強化。発電、送電から配電系、ビルや工場などにおける照明、セキュリティ、エレベーター、電源などをソリューション提供することで、競争力を高め、2015年度売上7,000億円を目指す。太陽光発電も強化。2015年度売上高2,000億円を目標に掲げる。

 二次電池の「SCiB」については、柏崎新工場を着工し、2011年春に量産を開始。年間1,200万セルの量産を目指す。また、ホンダの電動バイク「EV-neo」向けに量産受注したほか、電気自動車向けにも「まだどこの会社の製品かはいえない(佐々木社長)」としながらも採用内定したことを明らかにした。SCiBの2015年度売上高目標は2,000億円。

 また、2020年には2009年比でデジタルデータ量が44倍に拡大すると予測。このため「デジタル&ネットワーク」の強化として、データセンターなどでの利用を想定したHDD+SSDのハイブリッドディスクなどを供給予定。対HDD比で約80%の省電力化が見込めるという。

 これらの施策により、「グローバル競争力を持った複合電機メーカーへの構造転換を図る」とし、中期経営計画の達成への意気込みを語った。

スマートコミュニティソリューションを強化原子力事業も強化デジタル&ネットワークの強化店

(2010年 5月 11日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]