「iPodは毎年改善していく」。新iPod/iTunes発表
-初代の失敗から学んだ小型/低価格Apple TV
スティーブ・ジョブズCEO |
米Appleは1日午前10時(現地時間)より、iPodシリーズやApple TVなどの新製品発表会を開催。新しいiPod nano/touch/shuffle、iTunes 10のなどを披露した。
日本でもその模様を録画映像で2日午前10時からマスコミ向けに上映するとともに、体験コーナーを設け、新iPodの魅力をアピールした。
今回発表の新製品 | ||
iPod touch | iPod nano | iPod shuffle |
iPod classic | iTunes | Apple TV |
■ HDR対応のiOS 4.1を来週提供。iOS 4.2も11月に
冒頭スティーブ・ジョブズCEOは、積極的な新店舗展開が続くApple Retail Storeについて紹介。パリで2軒目のApple Storeや、ガラスシリンダーの建物が特徴の上海の新店舗、ロンドンの新店舗などについて言及し、日本を含む10カ国で展開していることなどをアピール。店頭のジーニアスバーにおける顧客対応も一週間で8万人を超えているほか、AppleStoreでMacintoshを購入する人の半数以上が、初めてMacに触れる人だという事例を紹介。直営店展開により、新たな顧客獲得や顧客満足度向上が行なわれていることをアピールした。
上海のApple Store新店舗 | Apple Storeには全世界で一日100万人訪れることも |
iOS搭載機器は1億2,000万台に |
続いて、iPhone/iPadなどのOS「iOS」についてプレゼンテーションを実施。これまでに累計で1億2,000万のiOSデバイスが出荷され、1日平均23万の新規アクティベーションが行なわれているなど、普及が進んでいることをアピール。
さらに、iOS向けアプリのダウンロードについては、累計65億ダウンロードを超えており、「1秒間に200のアプリがダウンロードされている」と説明。アプリ数は25万を超え、そのうちiPad用も2万5,000となっている。
iOS 4.1の概要 |
こうした普及状況を受けて、iOSの最新版iOS 4.1を9月第2週に提供開始することを発表。iOS 4.1では、「近接センサーやBluetoothのバグ、iPhone 3Gにおけるパフォーマンスの問題」などの不具合を修正した。
iOS 4.1の新機能は、写真のダイナミックレンジを向上させる「HDR(High Dynamic Range) Photo」と、ゲーム用API/アプリの「Game Center」、無線LAN経由でのYouTubeなどへのHD動画アップロード、iTunes Storeのテレビレンタル対応など。
ジョブス氏が「クールな機能」として紹介したのが、「HDR Photo」機能。3つの異なる露出で写真を連続撮影し、それらを合成することでダイナミックレンジを向上させるもので、複数の撮影サンプルから、青空の表現などが鮮やかになる、歩道の描写のディテール感が向上する、など、具体的な事例を紹介しながら、新機能を紹介した。なお、このHDR Photo機能が利用できるのはiPhone 4のみで、iPod touchでは対応しない。
HDR Photoの効果をアピール。左がHDR OFF、右がON |
Game Centerの概要 |
Game Centerはアプリの1つとして用意される。Game Centerを起動し、Apple IDでサインインするとニックネームを設定することができ、複数の友達とゲームを楽しむことができる。友達はリスト化され、友人がプレイしているゲームをチェックできる。加えて、特定のゲームを楽しむ友人がいない場合も、スコアの近いユーザーを自動的に表示し、一緒にプレイできる「オートマッチング」も搭載した。
会場には、EPIC GAMESのMike Capps社長が登壇。Game Centerに対応し、年内に発売予定というゲーム「PROJECT SWORD」のデモプレイを行なった。Capps氏は、リアルタイムでディテール豊かな3D映像を動かすiPod touchのパフォーマンスやグラフィックを紹介しながら、Game Centerへの期待を語ると、ジョブズCEOも「これがケータイで動いているんだ!」とそのグラフィックを絶賛した。
EPIC GAMES Mike Capps氏 | 2台のiPod touchでネットワーク経由で対戦 | PROJECT SWORDをプレイ |
続いて、次世代バージョンとなる4.2についても紹介。iOS 4.2はiPadにも対応予定で、iPadでもマルチタスク機能が利用可能になる。加えて、ワイヤレスプリンティング機能を追加。iOS 4.2搭載機器のメニューから[Print]を選ぶだけで、対応のプリンタから画面などが印刷可能になるという。
さらに、「AirPlay」と呼ぶ新機能も追加。従来、iTunesやiPod上の音声をワイヤレスで対応機器に伝送する機能を「AirTunes」と呼んでいたが、iOS 4.2では音楽だけでなく、ビデオや写真も伝送可能になった。そのため、AirPlayと名称変更して展開する。
これにより、iPhoneやiPadなどで選択した映像や音声を、Apple TVなどの対応機器にワイヤレスで出力可能になる。なお、iOS 4.2の提供時期は11月を予定している。なお、2日より提供開始されたiTunes 10でもAirPlayに対応している。
iOS 4.2についても紹介 | iOS 4.2ではiPadからワイヤレスで印刷が可能に | AirPlayを搭載 |
■ 新iPod登場。nanoはより小さく、軽くを目指した
続いて、ジョブズCEOは、新型iPodを発表。「これまで、2億7,500万台のiPodを販売してこれた。大きな成功を収めたが、毎年新製品をユーザーのために改良してきたからだ。さらに今シーズンは激しく行く。iPod全モデルを刷新した(実際にはiPod Classicは変わらず併売)」と強調し、新ラインナップを紹介した。
まずはiPod shuffle。第2世代より小さく、第3世代のVoice Overを使った“いいとこ取り”と説明。ディスプレイなしでシンプルな操作感や、プレイリスト再生対応、Genius Mix対応、15時間再生などの点を強調した。
「全iPodを一新」とアピール | 新iPod shuffleの特徴 |
次はiPod nano。第1世代は大容量フラッシュベースで大人気など、nanoシリーズの歴史を紹介。「nanoは超人気シリーズだ。しかし我々はもっと小さくしたかった。nanoを小さくするためにできることは一つ。クリックホイールを取り除くこと。そして、マルチタッチのタッチパネルを採用することだった」と第6世代nanoのコンセプトを説明した。
これにより、前世代nanoに対し、「体積比で46%小さく、42%軽くできた。ほぼ半分の大きさ、軽さになった」とし、「クリップで止めたり、アームバンドにつけるなどの使い方も可能だ。さらに24時間のバッテリライフ(音楽再生時)があり、ポットキャストもボイスメモも、Nike+iPodもFMラジオも入っている」とアピール。小さなボディに豊富な機能をつめたnanoの魅力をアピールすると共に、マルチタッチの操作などを、ジョブズ氏が自ら案内した。
新iPod nanoの特徴 | 音楽プレーヤー以外にも多彩な機能を搭載する |
iPod touchは最もポピュラーなiPodに |
最後はiPod touch。「touchは、nanoを抜いて昨年最も人気のiPodになった。電話無しのiPhoneや回線契約のいらないiPhoneと呼ばれることもあるが」とジョブズ氏は笑いながら紹介。さらに、「touchは、世界ナンバーワンのポータブルゲームプレーヤー。任天堂とソニーの合計よりも多い。米国では60%のシェアを得ている」とゲームコンソールとしての魅力を強調。「15億のゲームタイトルがダウンロードされている」とする。
ジョブズ氏は、「では、大成功したtouchの何が変えられるだろうか? それはより“薄く”することだ」と語り、旧モデルとの厚さの違いを比較。“世界最高”と呼ぶRetinaディスプレイや、A4チップ、前面/背面カメラによるFaceTimeの実現、音楽再生時40時間のバッテリライフなどをアピールした。
従来モデルより50%薄型化 | 新iPod touchの特徴 |
iTunes Storeの概要 |
iPodに続けて紹介したのは「iTunes」。11億7,000万の楽曲、4億5,000万のTVエピソード、1億の映画、3,500万の電子書籍、1億6,000万のクレジットカードに紐づいたアカウントなど、iTunesの実績について説明。その上で最新バージョンのiTunes 10を提供開始することを発表した。
ジョブズ氏がまず触れたのは、ロゴについて。従来は音楽CDのディスクに音符をあしらったロゴを採用していた。だが、「来年の春には米国のCDの売上をiTunesが抜きそうだ。そろそろロゴを変えよう」と語り、ディスクの無い新しいiTunesロゴを紹介。iTunes 10で導入したアルバムアート付きのリストビューなどの新しいUIを紹介した。
いままでのiTunesロゴはCDをモチーフにしていた | iTunes 10以降の新ロゴ | iTunes10では新しい表示モードを採用 |
iTunes 10について強調した点は、「新しい発見(ディスカバリー)」というキーワード。ソーシャルネットワーク機能の「Ping」を追加したことで、アーティストやユーザーをTwitterのように“フォロー”する事ができ、アーティストをフォローした場合、ファンコミュニティの一員として、アーティストの写真や最新情報、コメント、お気に入りの楽曲などをiTunesやiPod上から確認でき、どこでもアーティストの最新情報が確認できるという。
Pingの概要 | フォローしたアーティストやユーザーの情報や、参加コンサート情報などがチェックできる | iPhoneやiPod touchからもPingにアクセスできる |
■ 初代Apple TVから学んだこととは? 回答が新Apple TV
初代Apple TVの失敗から学んだこととは…… |
最後に紹介したのはApple TV。同名のネットワークSTBは2007年にも発売しているが、ジョブズCEOは「ヒットには至らなかった」とする。
その上で、「我々が学んだことは、ユーザーが求めているのは、『ハリウッドの最新の作品』、『HD』、『低価格なコンテンツ』、『コンピュータは不要』、『コンテンツ管理は不要』、『同期は不要』という点だった。これは他のメーカーとはかなり違う考えかもしれない。しかし、ユーザーの生の声だ」という。
こうした考えを元に開発されたのが、新Apple TV。ストリーミング再生に特化し、ストレージを持たず、シンプルな操作を実現する。価格も99ドルに押さえ、出力端子はHDMIと光デジタルのみで、付属のリモコンやiPad/iPhoneのRemoteなどから操作できる。Apple TVにあわせて、iTunes Storeでもビデオレンタルサービスを強化する。
ユーザーのニーズ | 小型の新Apple TV | ジョブズCEOはApple TVを手に持って紹介 |
新Apple TVの特徴 | Apple TVのコンテンツ選択画面 |
Apple TVの再生画面 |
コンテンツについては、「iTunesは世界最大の映像ストア。HDの映像をDVDの発売日に提供開始する。映画の場合、初値はレンタルで4.99ドルだが、旧作になればもっと安くなる」という。テレビエピソードについては99セントで、FOXやABCが提供する。レジューム再生も可能で、iPadで再生したコンテンツを途中からApple TVで再生することもできる。
加えて、米国のVOD最大手Netflixのアカウントにも対応しており、Apple TVでNetflixにアクセスし、NetflixのコンテンツをApple TVにストリーム再生することもできる。YoutubeやFlickrなどのネットサービスにもアクセス可能。
Apple TVは9月中に発売予定で、価格は99ドル。ただし、日本での発売は未定で、体験コーナーにもApple TVは用意されていなかった。
NetflixやYouTubeに対応 | 「一番使いやすいNetflix端末」とジョブズ氏 |
COLD PLAYのクリス・マーティン氏がViva La Vidaなどを披露 |
最後に、ジョブズ氏が、iPodの新ラインナップを紹介するとともに、「AppleがここまでiPodに真剣に取り組むのは皆が音楽を愛しているから」と語り、コールド・プレイのリーダーであるクリス・マーティン氏を紹介。マーティン氏は、iPodのテレビCMにも使われた「Viva La Vida」などを歌い、「この曲はレコード会社はヒットするとは考えていなかった。でも、Appleが使ったら最大のヒットシングルになった。アップルのマーケティングの人は何でも売れる」など、終始上機嫌だった。
(2010年 9月 2日)
[AV Watch編集部 臼田勤哉]