オーテク、創立50周年記念レセプションを開催

-ピュアオーディオ用スピーカーを参考展示


レセプションは都内のホテルで盛大に行なわれた

 オーディオテクニカは13日、創立50周年を記念したレセプションを開催。50周年記念モデルを含めた、多数の新製品を発表した。各製品の詳細は個別の記事で紹介している。

 さらに会場には50周年を記念した試作機として、ピュアオーディオ用のスピーカー「AT-SP2000ANV」も参考展示された。

 ここではレセプションの模様をレポートする。




■50年を振り返る

 オーディオテクニカは、'62年に松下秀雄氏が創立。MM型ステレオ・カートリッジ「AT-1」と「AT-3」の発売から事業がスタートした。現在の社長であり、秀雄氏の子息でもある松下和雄氏は、父から聞いた当時のエピソードを披露。「なかなか売れず、失敗かと覚悟を決めたそうだが、その年の年末のオーディオ雑誌で“とても音が良い”と書かれ、販売店から注文が入るようになり、ようやく一息つけた」という。

松下和雄社長MM型ステレオ・カートリッジ「AT-1」と「AT-3」創立者の松下秀雄氏

 当時はモノラルからステレオにレコードが変化していく時代。海外ではMMカートリッジの特許を、米国ではShureが、ヨーロッパはエラックが抑えており、カートリッジを海外に輸出する事はできなかったという。そこで、独自の特許となるVMカートリッジを開発。海外に販売会社を構えるまでに成長し、コンポを輸出したい国内オーディオメーカーからのOEM受注も増加。ピーク時には月産100万個のカートリッジを生産していたという。

 しかし、'82年にCDが登場。デジタル化の時代の流れの中で売上が伸び悩み「10年ほどは危機感を持って、難局を乗り切るために、様々なアイデアに飛びついて製品化した」(松下社長)という。「巻きずしだけでなく、にぎり寿司も家庭で食べたい」という社内のアイデアコンテストから生まれたという、'84年発売の家庭用すしにぎり器「ASM50」、通称“にぎりっこ”もその1つだ。

VMカートリッジの「AT-VM35」海外の販売会社からの要望でヘッドフォンも開発。当時はレコード機器のおまけと見られていたため、ビジネスとしては成り立たなかったという'84年発売の家庭用すしにぎり器「ASM50」、通称“にぎりっこ”

 松下社長は「“にぎりっこ”も作ったけれど売れない。そこでテレビCMを作り、ケント・デリカットさんに出演してもらったけれど、“にぎりっこ”は売れず、デリカットさんだけが有名になった」と当時を振り返り、会場を沸かせた。しかし、その後にモーターを搭載するなどして、すしにぎり器は回転寿司屋など、業務向けの製品として軌道に乗る事になる。

 その後も、レコード盤用の静電気・ホコリ除去装置が、印刷業界で受け入れられ、現在では液晶の生産工場でも活躍している事、音楽用だけでなく、カラオケや会議用、オリンピック中継などの番組制作用で同社のマイクが広く普及していく過程など、これまでの50年で登場した様々な製品が紹介された。

レコード盤クリーナーから生まれた、印刷用フィルム向けの静電気除去装置「テクニクリーン」グラミー賞やオリンピックで毎年採用されるなど、マイク事業は世界規模で展開している

 松下社長はこうした歩みを踏まえ、「これからも文化や習慣、技術革新、市場変化、そして法律や税制の変化など、様々な変化に影響を受ける可能性がある。“企業は人なり”と言うが、社員一人一人が明るく、生き生きと、能力を発揮できる会社にしていきたいと考えている」と50周年の挨拶を締めくくった。

 さらに、同社CMに起用されているアーティストのBoAさんも登壇。50周年記念のCMにも起用されており、BoAさんは「日本でのデビュー10周年を迎える意味のある年に、オーディオテクニカさんの50周年のCMを撮影していただき、光栄でした」と喜びを語った。さらに、CMで流れる楽曲「マイルストーン」も生歌で披露した。

レセプションの司会を務めたのは、、J-WAVEなどで活躍中のSascha(サッシャ)氏過去の名機だけでなく、女性向けファー付きヘッドフォンなどの新モデルも紹介されたレセプションの中では、東京フィルハーモニー交響楽団も登場。生演奏が披露された
過去の名機を紹介するコーナーでは、広報宣伝課の中込直樹マネージャーが、30年前にヒットしたバキューム式ディスクスタビライザー「AT-666」を紹介。金属の板とレコードを吸着させ、レコードの反りを抑え、音質を高めるオーディオアクセサりだサウンドバーガーの愛称で発売されたのは「AT727」。屋外でもレコードが聴けるというプレーヤーで、その名の通り、レコードを挟むようにして再生する



■スピーカーを参考展示

 レセプション会場には、「AT-SP2000ANV」という型番がつけられたスピーカーが参考展示された。「今後の製品化を目指して開発を進めている」というモデルで、具体的な発売はまだ決定していないが、製品化する場合の価格イメージは「1本20万円程度」だという。

参考展示スピーカー「AT-SP2000ANV」ウーファは16cmで、振動板にケブラーコーンを使っている独創的なフォルムが特徴

 最大の特徴は独創的なエンクロージャのフォルム。この独特の形状を実現するために、素材にBMC(Bulk Molding Compound)を使用している。これは、ガラス繊維やポリエステル樹脂、炭酸カルシウムなどを混ぜた素材で、熱を加えて様々な形に成形できるのが特徴。エンクロージャ素材としても制振性に優れ、鳴きが少なく、高音質を実現できるという。

 ユニット構成は2ウェイのフロントバスレフ。ツイータは2.5cm径のシルクドーム型、ウーファは16cmで、振動板にケブラーコーンを使っている。

 「音決めがまだ完了していない」という試作機だが、付帯音の少ない非常にクリアなサウンドを奏でており、ポテンシャルの高さを伺わせた。

スピーカーの断面図エンクロージャにはBMC(Bulk Molding Compound)が使われている

(2011年 10月 13日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]