JVC、初の業務用ハンドヘルド4Kカメラ。重さ1.67kg

-SDカード4枚に記録、HDMI×4出力も。実売75万円


GY-HMQ10を手に持ったところ

 JVCケンウッドは、JVCブランドの業務用4Kハンドヘルドカメラレコーダ「GY-HMQ10」を3月21日より発売する。価格はオープンプライスで、想定価格は75万円前後。

 SDHC/SDXCカード4枚に、フルHDの4倍となる4K解像度(3,840×2,160ドット)で記録可能なカメラレコーダ。HDMIミニ出力を4系統備え、東芝「55X3」などの4Kテレビ/モニタにスルー出力することも可能。バッテリ装着時の重量は約1.67kgで、「業界初の小型/軽量ハンドヘルド4Kカメラレコーダ」としている。

 撮像素子は1/2.3型、有効829万画素の裏面照射CMOS。4Kの記録フォーマットはMPEG-4 AVC/H.264(MP4)。ビットレートは最高144MbpsのVBR。画像処理エンジンのFALCONBRIDを採用する。音声はAAC 2chで、16bit/48kHz、384kbpsとなっている。

 4K撮影時は60p/50p/24pで記録。4枚のSDHC/SDXCカード(Class 6/10推奨)にそれぞれ4Kを4分割したフルHD映像を記録。パソコン接続時に結合して表示できる。なお、結合するソフトはMac OSのみの対応で、詳細は後述する。16GBのカード4枚(64GB)では約1時間、32GB×4枚(128GB)では約2時間、64GB×4枚(256GB)で約4時間記録できる。

GY-HMQ10フルHDの4倍の解像度で記録SDカード4枚に同時記録する

 4つのファイルを圧縮する場合に境目が目立つのを防ぐため、境界部分をオーバーラップして記録する「エッジブレンド」も可能で、その場合は上下左右8ドットずつを重ね合わせることで映像としては3,824×2,144ドットとなる。このとき周辺に8ドットずつの黒帯を設けるため、ファイルの解像度としては4K/3,840×2,160ドットとなる。

 1つのフルHDファイルとして撮影することも可能で、AVCHD Progressiveの60p/60i/50p/50i(MTS)で記録。この場合、撮像素子はフル画素を使って、最終的な処理でフルHDにダウンコンバートするため、フルHDカメラの撮像素子を使う場合に比べて高画質な記録が行なえるという。フルHDでのビットレートは最大28Mbpsで、24/17/12/5Mbpsのモードも用意する。音声記録はドルビーデジタル 2ch。

 そのほか、タイムラプス撮影にも対応。1コマごとの撮影間隔を1秒/5秒/40秒間隔で自動記録して、長時間でゆっくり変化する雲の動きなどのシーンを圧縮。短時間で再生できる。

 HDMI出力時は、4KモニタにHDMIを4本接続すると、それぞれフルHDで4画面を出力することで合わせて4K表示が可能だが、1本だけ接続してフルHDにダウンコンバートして表示することもできる。さらに、4K記録した映像の再生中に、カメラの液晶モニタをタッチして場所を指定すると、その部分を接続したモニタにフルHDでトリミングして表示できる。そのほか、フルHDモニタを4台用意して、それぞれにHDMI接続すれば、各モニタで細部を確認するといったこともできる。

 なお、接続する4Kモニタとしては、JVCの業務用4Kプロジェクタ「DLA-SH4K」と、「DLA-SH7NL」、アストロデザインの4Kモニタなどで動作確認(DVI-HDMI変換して接続)したという。また、東芝の55X3については、HDMI 4系統からの映像を1つの4K映像で表示するボックスを東芝が3月末に発売予定で、これを介して4K表示が可能になる。なお、発表会のデモでは、このボックスそのものではなく、テスト用の基板を介して4Kで表示していた。

境界が目立つのを防ぐ「エッジブレンド」利用時は、上下左右8ドットずつが黒帯になるHDMIミニを4系統装備フルHDトリミング表示
SDHC/SDXCスロットとHDMI端子のカバーを開いたところビューファインダ液晶モニタ部
東芝の55X3と、「GY-HMQ10」をHDMI×4本で接続してスルー表示。細部まで高解像度な表示が確認でき、動きの激しい動画や、人が密集したシーンなどでも破たんは見られなかった。4つの映像の境界が目立つのを防ぐエッジブレンド機能も用意されているが、これを使っていないサンプル映像でも、境目はほとんどわからなかった

 レンズは光学10倍ズーム対応で、35mm換算の焦点距離は42.4~424mm、F値はF2.8~4.5。フィルタ径は46mm(スクリューピッチ0.75mm)。シャッタースピードは1/2~1/4,000。ゲインは0/3/6/9/12/15/18dBとAGC。光学手ブレ補正も備える。マニュアル撮影の機能としては、ゼブラ表示やフォーカスアシスト、アイリス調整、ホワイトバランス設定などを用意する。

 ビューファインダは0.24型/26万画素/カラーのLCOS。液晶モニタは3.5型タッチパネルで、92万画素。内蔵マイクはステレオで、音声出力としてファントム電源対応のXLR×2(MIC/LINE)を装備。4極の3.5mmリモート端子や、ステレオミニのヘッドフォン出力も備える。外形寸法は、139×198×271mm(幅×奥行き×高さ/オーディオユニット装着時)。バッテリを含む重量は1.67kg。

 パソコンとはUSB 2.0で接続。4Kファイルの転送時間は、パソコンの処理能力により異なるが、目安としては実時間の1/3程度になるという。4枚のSDカードに記録した4KのMPEG-4 AVC/H.264を、1つのProRes422(MOV)に統合する変換ソフト「JVC 4K クリップマネージャー」も無償でダウンロード提供予定。取り込んだ後にFinal Cut Pro X/7で編集できる。このソフトの対応OSはMac OS X 10.6.8/10.7.2

XLR端子レンズ下部にAGCボタンなどを備える付属バッテリはIDX製
JVC 4K クリップマネージャー4つのAVC動画をProRes422(MOV)に変換Final Cut Pro Xで編集している画面


■ ハンドヘルド&低ランニングコストを重視

同社4Kカメラレコーダのこれまでの開発

 同社の4Kハンドヘルドカメラレコーダは、これまで試作機が2011年のCESやIFA、CEATECなどのイベントで展示されてきた。「GY-HMQ10」と型番がついてからは、CESとNABには出展されたが、国内では今回が初披露となった。試作機と比べると、本体のサイズが大きくなったようにも見えるが、これは、下のスタンド部にファンを備えていたためだという。


JVCケンウッドの大浦徹也氏

 JVCケンウッドのホーム&モバイル事業グループ HM技術統括部 商品設計第一部 シニアエンジニアリングスペシャリストの大浦徹也氏は、GY-HMQ10の企画意図として、ハンドヘルドにこだわったことを強調。「これまでの展示会でも、HDを超える画質はもちろん、大きさ、価格、扱いやすさ、長時間記録などに評価をいただいている。画像処理のFALCONBRIDは、開発当初から3Dや4Kを意識していた。昨今、4Kテレビや編集環境、PC性能の向上など、環境が整いつつあり、コンテンツの充実に向け、カムコーダは最も早く対応する必要がある。そこで、求めやすい価格で手軽に撮影できる“レンズ内蔵ハンドヘルド型”を重視した」と述べた。

 ビジネス・ソリューション事業部 営業技術部 国内マーケティング クリエーション担当グループ長の熊谷肇氏は、「“単なる4K”ではなく、機動性に優れた撮影を可能にすることが最大の企画意図」と説明。汎用のSDHC/SDXCカードを記録メディアに採用した理由は、低ランニングコストを優先したものだという。

 HDMIライブ出力機能にも対応したことで、「“カメラスルー”で、新たな市場を提案する」としており、ターゲットについても「主に映像制作や、そのための学校、病院、観察などの用途だが、あらかじめ限定するつもりはない」とした。なお、出荷台数の目標は公開していない。


4Kカメラの試作機。下のスタンド部に実はファンが入っていたという「4Kの環境が整いつつある」と説明熊谷肇氏


(2012年 3月 16日)

[AV Watch編集部 中林暁]