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NTT、20m先の人の声をクリアに収音「ズームアップマイク」開発。ニコニコ超会議で展示

 NTTは16日、約20m先にいる特定の人の声を、カメラでズームするかのように収音できる「ズームアップマイク」を開発。スポーツ中継やカーナビの音声認識など、様々な分野への展開を想定しているほか、4月26日、27日に幕張メッセで開催される「ニコニコ超会議3」のNTTブース「NTT超未来研究所」にも出展する。

ズームアップマイク

 遠くの音を収音する技術には、ガンマイクやパラボラマイクなどがあるが、音源が5m以上離れた位置にあると、受音時のエネルギーが小さいことや空間分解能が低いため、周りの雑音と区別して収音することが困難だった。

 新開発の「ズームアップマイク」は、音を反射させて遠くの音を収音可能とする凹型反射板の前に、約100本のマイクロホンを設置したもの。マイク間に生じる位相/振幅差を利用し、遠く離れた場所(約20m)の狙った音だけをクリアに収音できるという。

 20m以上の距離にある音源に対する収音能力についても、今後検証作業も予定しており、2年後を目安として、50m(サッカーコートの長辺の半分)先にある音源をクリアに収音できるように技術レベルを向上するとしている。

 なお、約100本のマイクがとらえた音声を全て録音しておけば、後から任意の場所の音をズームアップして聞くことも可能。

 音にズームアップするために、あらかじめ、無響室内で収録した計測データから膨大なフィルタ群(約2,300パターン)を生成。パソコンのメモリ内に展開し、ユーザーが選択した任意の場所に対応したフィルタを観測信号に瞬時に適用することで、狙った音を強調して収音できるようにしている。

 さらに、受聴信号に含まれる残留雑音のレベルを約1/1,000まで抑圧し、よりクリアに聞き取りやすい信号を出力する技術や、100本程度のマイクを準最適に配置するための受音系設計技術なども開発している。

 望遠カメラと組み合わせ、スポーツ選手に映像も音声もズームアップするなど、より臨場感のあるスポーツ観戦や放送サービスが可能になるため、スタジアムへの設置を目指す。大きな会場の客席からの質疑応答をする場合、手元にマイクが無くてもクリアに聞くことができるほか、大人数のテレビ会議でも一人一人の発言をクリアに聞けるという。

 さらに小型で汎用性のあるマイク素子(2~3本)と、今回開発した信号処理技術を組み合わせ、騒音や雑音環境下でもクリアな収音ができるマイクをNTTグループの事業会社を通じて開発・販売予定。雑音の多い車内でのカーナビ音声認識操作や、騒音に満ちた工場でのハンズフリー通話などが可能になるほか、ロボットが聞きたいと判断したエリアから到来した音をクリアに収音する事も可能になるという。

ニコニコ超会議にも出展

展示紹介イラスト

 NTTは「ニコニコ超会議3」に「NTT超未来研究所」というブースを展開。開発段階の研究から実用化されている研究までを幅広く展示するというブースで、「大人が少年の頃に思い描いていた希望と躍動に満ち溢れる楽しい“超未来社会”を実現する」をコンセプトとしている。

 ブースには電柱作業等で活用する高さ6mのバケット車を設置。その上に、離れた場所の様子を複数の視聴者が360度同時に視聴できる「リモート・ウォーカー」を設置し、超会議の会場を自由に見る事ができる。

 さらに、地下で光ケーブルなどを収容する管路を中継するマンホール(全国に約68万個)の実物なども展示する。「ズームアップマイク」もそうした展示の1つとして予定されており、NTT超未来研究所所属の宇宙飛行士が、遠く離れた場所で未知との遭遇を果たす様子をクリアに収音するという。

(山崎健太郎)