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DJI、空撮ドローン「Matrice 600」とジンバル「Ronin-MX」でプロ向け強化。農業用も
(2016/4/25 17:55)
DJIは、1080/60fpsのライブ映像配信が可能なプロ向けの空撮用ドローン/マルチコプター「Matrice 600(M600)」や、3軸ジンバル「Ronin-MX」などを国内で発表した。DJIの直販サイトで販売中で、価格はM600が52万円、Ronin-MXが17万9,000円。
いずれも米国で4月18日~21日に行なわれた「NAB Show 2016」に合わせて発表されていた製品で、Matrice 600は、新たなフライトシステム「A3フライトコントローラー」による安定した飛行が可能。バッテリを6個搭載し、Zenmuse X5搭載時は最大36分間飛行できる。今回の国内発表に合わせて、企業向けSDKのサポートも開始された。
cm単位の誤差で安定制御できる「Matrice 600」
防塵設計で耐久性を向上させた、6つのローターを装備するヘキサコプター。組立ては不要で、カメラやジンバルなど、最大6kgまでの機材を積んで飛行できる。Z15シリーズやZenmuse Xシリーズのカメラを含む、DJI Zenmuseジンバルの全シリーズに対応。
新しいフライトシステム「A3フライトコントローラー」は、GPSの届かない場所でも安定した飛行が行なえるのが特徴。積載量をベースに飛行に必要なパラメータを自動調整。ランディングギア部分は格納式で、360度全方向を遮らずに撮影できる。
独自の映像配信技術「Lightbridge 2」で最大5km(日本では3.5kmまで)までのHDライブストリーミング機能に対応。別途用意したカメラと組み合わせられる。最大1080i/60fpsのビデオ出力をサポートし、720p/59.94fpsや1080i/50fpsなど、放送業務向けのビデオフォーマットも出力できる。カメラとのインターフェイスは、USB、HDMIミニ、3G-SDI端子に対応する。
スマートフォン/タブレット用アプリ「DJI Go」をサポートし、手元でフライト状況を確認可能。搭載したカメラの露出やシャッター速度をリモート調整することもできる。さらに、開発プラットフォーム「DJI Onboard SDK」や「Mobile SDK」との互換性も備える。
また、A3のオプション「DJIリアルタイムキネマティック(RTK)」により、GPSでは±2mという誤差が生じていた精度を、水平2cm/垂直3cmまで改善。RTKは、2つのアンテナを使って、片方でGPS信号の受信するほか、地上に置いた基地局が受信したGPS信号の誤差を修正した校正電波も合わせて受信することで測位の精度を高めるもの。RTK技術は磁気干渉にも耐えられるため、高圧線や鉄塔の近くなどの場所にも適しているという。
拡張機能のDATA LINKを活用し、最大5台のドローンを同時制御可能。複数の機体を同時に動かす群制御により、例えば重い荷物を複数の機体で協力して運んだり、撮影と照明を2台の機体で連携して行なうといったことも可能になる。
本体はIP56の防水防塵設計。モーターを駆動するESCアンプに特許技術のアルゴリズムを採用し、大出力と安定性を両立させたという。
電源はDJIインテリジェントバッテリ×6。1個のバッテリに不具合が生じても、バッテリ管理システムと配電ボード技術でフライトを維持できる。また、バッテリが6個の着脱となっていることで、移動時に飛行機にも持ち込める点をメリットとしている。空撮時の飛行時間の目安は、Zenmuse X5搭載時で36分間。大型のRED EPICで16分間。カメラを搭載しない場合は40分間。
カメラから近接画像転送も可能なジンバル「Ronin-MX」
3軸ジンバルシステムの新製品で、ドローンの空撮で利用できるほか、手持ちやクレーン装着での利用も可能。最大積載重量は約4.5kg。従来のRonin/Ronin-Mは手持ち用だが、Ronin-MXはフレームなどを軽量化したことで、ドローンにも装着可能になった。多くのカメラに対応できる点や、アクセサリーへの対応を充実させている点も特徴。
バッテリを内蔵し、M600に装着して通信連携が可能。M600のフライトデータを受信して、ジンバルを水平に保つことができる。360度のパンと上45度/下135度までのチルトに対応。「近距離高速画像転送モジュール」を利用することで、カメラから通信回線不要で機体に映像転送が行なえる。
Black Magic Designやキヤノン、パナソニック、ソニーなどのカメラを取り付けてM600に搭載し、オプションのコントローラなどを介してリモート操作で撮影開始/停止、フォーカスや絞りなどの制御ができる。M600のLightbridge 2と連動し、取り付けられたカメラからのリアルタイム映像配信も可能。DJI GOアプリを介した操作にも対応する。
企業向けSDKサポート開始。農業用ドローンの日本投入も
DJI JAPANの代表取締役の呉韜(ご とう)氏は、Matrice 600などに合わせて、SDK(開発者向けキット)の企業向けサポートも25日より開始したことを発表。従来の映画向け以外の産業用途への活用に積極的な姿勢を見せた。
DJIが現在提供しているSDKのうち、「MOBILE SDK」を使って開発したソフトでは、送信機を経由して機体を制御でき、スマートフォンなどを介してドローンをインターネットに接続するIoTとしての利用が可能。また、機体の遠隔制御などにも活用できる。
「ONBOARD SDK」では機体に取り付けたマイコンで直接制御するソフトを開発可能。マイコンの種類によって様々な機能を実現可能で、呉氏は「(特定の)においを追いかけるといった夢のあるドローンも実現できるかもしれない」とした。
発表会場には、中国などで先行販売している農業用ドローン「AGRAS MG-1」を参考展示。液状の農薬や肥料を10kgまで積んで飛行できるというモデルで、地形に合わせて、適した高度から液体の散布などが可能。防水/防塵/耐食性も備えている。呉社長はこのモデルを日本でも発売に向けて準備を進めていることを明らかにした。用途としては「みかんを収穫するといった、作業の一部をドローンで行なう」といった考えも示し、「まずは売上よりも、農業で使えるようにするインフラの整備を進める」とした。