ミニレビュー

「dアニメストア」と「アニメ放題」を使い倒して快適アニメライフ

 動画配信サービスの中でも、特定のジャンルでだけで成り立っているものといえば「アニメ配信サイト」がある。'02年から有料配信を始めている「バンダイチャンネル」が有名なほか、携帯電話事業者によるサービスでは、ドコモ「dアニメストア」、ソフトバンク「アニメ放題」、au(KDDI)「アニメパス」がある。これらのうち、筆者はdアニメストアとアニメ放題を愛用している。

 携帯キャリアのアニメ配信サービスを使うメリットは、スマートフォン用のアプリの使い勝手が良いなど機能的にも充実しており、いずれも月額400円という低価格な定額料金で多くの作品を観られること。

 上記で紹介した携帯キャリアの3サービスは「ダウンロード視聴」に対応し、動画をあらかじめスマートフォンに保存しておくことで、オフラインでも再生可能になっている。筆者は首都圏近郊在住で毎日仕事のため都内まで電車移動するのだが、電波状況が不安定な電車内でも途切れることなくアニメを観られるので、この機能は非常にありがたい。

筆者のスマホ待受画面。見たいアニメを全部カバーしようと思うと、これでもまだ足りない

 3社のサービスの中でも、ドコモの「dアニメストア」は、dTVなどドコモの他のサービスと同様キャリアフリーとなっていて、どの携帯キャリアを使っていても契約が可能。筆者は、携帯電話にいわゆる格安SIMを使っていたので、必然的にこれらの中では「dアニメストア」にしか契約できなかったのだが、ちょっとしたきっかけでソフトバンクに機種変更し、同社のアニメ配信サイト「アニメ放題」にも契約することにした。その経緯は以前、僚誌ケータイWatchで書いているが、簡単に説明すると「どうしても観たい作品があったから」に尽きる。

 両方使ってみると、料金はどちらも400円/月で、マルチデバイス対応、PCやテレビで鑑賞することも可能、と共通している部分が割と多い。今シーズン放映のアニメ番組では、子供たち御用達の「妖怪ウォッチ」や「バディファイト100」、筆者の深夜アニメ大本命「ご注文はうさぎですか??」、「ゆるゆり さん☆ハイ!」などは、もちろんどちらでも配信されている。

「ご注文はうさぎですか??」などはdアニメストア、アニメ放題のどちらにもある

 では、なぜ2つのサービスを併用しているかというと、主な理由は「別途有料コンテンツ」があることや、再生対応機器、それに各サイトの独自機能があることなど。また、配信されているコンテンツにも結構違いがある。

 なお、筆者はこれら2つに加えてHuluにも契約している。日本テレビ系のアニメの追っかけ配信があるのと、日テレ系アニメが他のサイトより一週早く配信されているケースがあるといったことが主な理由だ。

 観たいアニメを全部カバーしようと思うと、これでもまだ足りないのだが、今回は低価格で気軽に始められる「dアニメストア」と「アニメ放題」の2つを中心に、両サービスの具体的な違いや、使用感などを紹介していこう。

アップデートされた「dアニメストア」はさらに機能が充実

 dアニメストアは、月額400円で1,400タイトルのアニメが基本見放題となるサービス。なお、昨年末に基本的なサービス内容や使い勝手などをレビューしている

dアニメストアには見放題の他に、「レンタル」配信も始まった

 再生環境は、iPhone、Android両スマートフォンでのダウンロード/ストリーミング視聴が可能なほか、これらのスマートフォンからGoogleの「ChromeCast」やアップルの「Apple TV」に転送して家庭のテレビに映すことができる。それ以外のデバイスとしては、PC、Nexus Player、dTVターミナル(dTV01)などでも視聴可能で、例えば外出先にスマートフォンで途中まで観た番組を、家のPCやNexus Playerで選ぶと、中断した時点から視聴できる。

 アクトビラ対応テレビや、ゲーム機のWii Uでも視聴できるバンダイチャンネルには一歩及ばないものの、それに次ぐ充実したマルチデバイス視聴対応であると言える。

ChromecatやNexus Playerを接続すれば、テレビでもdアニメストアを視聴可能

 今年に入ってからも、いろいろ機能に変更点があったことをおさらいしたい。以前のミニレビューで紹介した時点からの違いとしては、「レンタル」と呼ばれる別途有料のコンテンツ配信が始まった。例えば2015年11月現在では「機動戦士ガンダム THE ORIGIN II 哀しみのアルテイシア」(HD配信1,000円)や「ガールズ&パンツァー これが本当のアンツィオ戦です!」(HD配信864円/SD配信648円)といった最新劇場上映作品がレンタル提供となった。

 ただ、それ以外のテレビ放送作品やOVA作品などに関しては見放題で、依然、多くの作品がdアニメストアを契約すれば観ることができる。

 また、dアニメストアは、9月終わりにリニューアルがあってサービスが強化されたのだが、リニューアルによって「そうかこうすればもっと便利になるのか」と感心するような細かい改良が多く加えられた。

 dアニメストアのサービスに関して、筆者は(バンダイチャネルなどにある2倍速再生がほしいと思うくらいで)あまり不満は感じていなかったのだが、それでも、リニューアル後のアプリを触っていると、便利になったことが実感できる。

 一番大きい変更は「連続再生」機能が実装されたこと。Huluなどではサービス開始当初から実装されていた機能で、その名の通り、1話観終わった後で特に操作なしでその次の話を再生してくれるものだ。dアニメストアもこの機能が使えるようになり、デフォルトでONとなった。

 1話観ると早く続きが観たくなるのは当然で、いちいち操作しなくてもよいのは非常にありがたい。これのおかげで作業しながらアニメをかけっぱなし、というような使い方がしやすくなった。ただし、PC版だとフルスクリーン再生が解除されてしまうのは改善してほしいところだ。

 PC版では、画面右下の「AP」というボタンが連続再生のオン/オフを切り替え可能。デフォルトではオンとなっている。スマートフォンの場合、画面左下のフィルムの形のアイコンで連続再生のオン/オフを切り替える。PC版/スマホ版とも、ちょっとわかりにくいアイコンだとは思うが、これのおかげで視聴がはかどるようになった。視聴を切り上げるタイミングを逸して、観続けてしまうことにもなりやすいほどだ。

PC版での操作画面。画面右下の「AP」というボタンで連続再生のオン/オフを切り替える
スマートフォンの場合、画面左下のフィルムの形のアイコンで連続再生オン/オフを切り替える

 リニューアルで大きく変わったものとしてはレコメンデーション機能が挙げられる。

 これは、スマートフォンアプリのみの機能なのだが、アプリを最初に起動するときに「おすすめアニメ診断」を行なうとそれに基づいて、おすすめの作品を表示してくれるという機能だ。筆者の場合、これから観ようかと思っていた「アカギ」や「ジパング」などが表示されたので、このレコメンデーションが筆者が想定していたよりもいいセンを突いてくるように感じている。

 ちなみに、レコメンデーションでお勧めされて気になった番組は、ハートマークの「気になる」ボタンをクリックしておくといいだろう。これで選んだ番組はマイリストに一覧表示されるようになる。以前からあった「マイリスト」では観てよかった作品を登録して、「気になる」ではまだ未視聴だが観てみたい作品を登録するという使い方をする。

 また、PC向けでもある機能だが、SNS上で話題になっているという作品をピックアップしてくれる。具体的にどのような基準で話題になっていると判断しているかは分からないが「今話題になっているアニメ」という項目で表示。毎日何回か更新されるようで、例えば、この記事を書いていた10月29日の午前3時半の更新では「対魔導学園35試験小隊」が表示されていた。なお、その頃SNS上で一番話題になっていたアニメといえば、各サイトでの配信が停止された「キルミーベイベー」では? という気もするが、配信されていないアニメは対象外なのかもしれない。

SNS連携で、話題になっている作品をおすすめ

独特の配信コンテンツ傾向のあるソフトバンク「アニメ放題」

 筆者がもうひとつ加入した携帯電話系アニメ配信サービス、ソフトバンクの「アニメ放題」を紹介しよう。

 ソフトバンクは、最近、自社の携帯電話契約者のみが視聴可能なメディア配信サービスを充実させていて、例えばプロ野球の試合実況が見られる「パ・リーグLIVE」や、映画音楽を配信する「UULA」、それにこの「アニメ放題」などを提供している。ソフトバンクの携帯電話のユーザーにのみこれらのサービスを提供している。

「アニメ放題」の画面。PCでの再生や、Chromecastでのテレビ視聴も可能になった

 今年の2月から始まったアニメ放題は、当初は配信本数も少なく、また視聴環境はiPhoneおよびAndroidスマートフォンでしか観られなかったのだが、2015年10月末現在、配信本数も約1,000本とかなり多くなってきており、視聴環境も、PCや、Chromecast/Apple TVを使ったテレビ視聴も可能となった。

「俺ガイル」で検索してもちゃんとヒットした

 作品検索では、例えば「俺ガイル」で「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」がヒットするといった、番組の略名対応やインクリメンタルサーチに対応したのもdアニメストアやバンダイチャンネルなどと同様だ。一方、登場人物での検索には対応していないようだ。これで、アニメ放題もdアニメストアにかなり近い環境となった。

アニメ放題の独自機能「アニソン」は作業BGMにも

 面白くて使える機能として「アニソン」を紹介したい。これは、アニメ放題で配信している番組のオープニング曲エンディング曲などだけを続けて流すという機能。他のアニメ配信サイトにありそうでなかった機能だろう。

 このアニソン機能の使い方は簡単で、スマートフォンの場合は、ホーム左上の音楽アイコンをタップし、プレイリストをタップするだけ。

 あるいはすでに再生したいオープニング/エンディングの番組が決まっていれば、番組視聴のときと同じように番組を検索して、視聴する際に表示される「タイトル詳細」で「主題歌・挿入歌」欄をタップするだけ。その番組のオープニング/エンディングソングを再生してくれる。

アニメ放題独特の機能「アニソン」。アニメ番組のオープニング/エンディングのみを再生してくれる機能。バックグラウンド再生、リピート再生にも対応している。

 なお、このアニソン機能は、再生モードに入ったら、他のアプリを実行しながらのバックグラウンド再生にも対応している。リピート再生にも対応し、リピートに設定するとオープニング/エンディングが繰り返し再生される。同じ曲ばかり再生されることになってしまうが、作業用BGMプレーヤーにはいいかもしれない。ちなみに、この記事の執筆中のBGMとして、筆者はアニメ放題のこの機能を使って「一週間フレンズ。」のオープニング/エンディングをずっと繰り返してかけていた。

 なお、当然だが、再生する曲はアニメーションのオープニング/エンディングそのままの短いテレビバージョンだ。また、残念ながら、この機能が使える番組が一部に限られてしまっている。筆者は、例えば「NARUTO! 」や「銀魂」のように長期シリーズでオープニングソングが何度も変わっているものがこの機能に向いていると思うのだが、残念ながら対応していない。

インタビューなど濃い内容の独自コンテンツも
アニメ放題の独自コンテンツはちょっと濃くて面白い

 アニメ放題は、アニメ以外の独自コンテンツを制作・配信しているのも特徴。佐倉綾音や、内田真礼/小松未可子/久保ユリカ/水瀬いのり/山下七海がパーソナリティを務める「ガンガンGA」や「ガンガンONLINE」関連のアニメなどを紹介する「ガンガンGAチャンネル」、DJ・鮎貝健と声優・立花理香(アイドルマスターシンデレラガールズの小早川紗枝の声優)によるアニメ発掘バラエティ「アニホーレディオ! 」といった番組を配信している。

 「アニホーレディオ!」はこの7月から始まった番組だが、アニメを掘り下げる情報番組で、例えば先月は松本零士のインタビューで「銀河鉄道999」の制作秘話などが語られていた。聞き手を選ぶ気はするが、この番組は濃い内容で、アニメファンは興味が湧くのではないだろうか。

実は配信コンテンツの傾向が分かれている両サービス

 ところで筆者がソフトバンクのアニメ放題を知ったのは、少し前にTBS系で放送された「ひだまりスケッチ」というアニメを配信しているサイトを調べていたときのことだ。

アニメ放題で配信している「ひだまりスケッチ」シリーズ

 dアニメストアでは配信されていなかった「ひだまりスケッチ」が観たくてたまらなかったのだが、検索し、「ひだまりスケッチ」、「ひだまりスケッチ(特別編)」、「ひだまりスケッチ×365」、「ひだまりスケッチ×☆☆☆」、「ひだまりスケッチ×SP」、「ひだまりスケッチ×ハニカム」と全てではないものの放送済みのほとんどのシリーズを配信していることを知った。

 2015年10月現在の配信本数でいうと、dアニメストア約1,400本に対してアニメ放題は1,000本と数の上では劣るのだが、このひだまりスケッチだけでなく、意外にdアニメストアにもない魅力なるコンテンツが配信されているのだ。

 ちなみに、他に「ひだまりスケッチ」シリーズを配信しているサイトとしてはAmazonプライム・ビデオが「ひだまりスケッチ」と「特別編」を、バンダイチャンネルがアニメ放題とほぼ同じラインナップを配信している。Amazonプライム・ビデオはAmazonプライム会員(年会費3,900円)向け、バンダイチャンネルは月額1,080円が必要となる。

 他にアニメ放題にあってdアニメストアにない番組としては、例えば10年前のメイドブームの先駈けのころアニメ化された「英國戀物語エマ」や、コンビニでさまざまなコラボパンが販売された「焼きたて!!ジャぱん」、子供向けだと劇場版の「プリキュアオールスターズ」「スマイルプリキュア」「ハートキャッチプリキュア」などプリキュア全シリーズ、劇場版「アンパンマン」全シリーズ、それから現在のGo!プリンセスプリキュア制作スタッフも多く参加していた「おジャ魔女どれみ」、「カードキャプターさくら」などもその例に当てはまるようだ。

 dアニメストアの配信ラインナップは、割とアニメマニア向けが多いイメージもあるが、このような家族向けの番組も偏らずに収録しているのもアニメ放題の特徴かもしれない。

 それから、「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」、「下ネタという概念が存在しない退屈な世界」、「ささみさん@がんばらない」など、小学館のガガガ文庫原作のアニメはアニメ放題の方で配信している。

 dアニメストアはKADOKAWAとNTTドコモの共同で出資による「ドコモ・アニメストア」が運営しているためか、KADOKAWA系の深夜アニメに非常に強い。例えば「とある魔術の禁書目録(インデックス)/科学の超電磁砲(レールガン)」、「艦隊これくしょん -艦これ-」、「シスター・プリンセス(RePure含む)」など、かなり多くのKADOKAWA作品が配信されている。これらひとつひとつはdアニメストア以外でも配信しているサイトもあるが、全部ひとつのサイトでカバーしているのはおそらくdアニメストアだけのはずだ。

dアニメストアはKADOKAWAアニメに強い。'15年10月期のアニメだと「へヴィーオブジェクト」、「学戦都市アスタリスク」「対魔導学園35試験小隊」なども

 なお、ソフトバンク系列であるSBクリエイティブのGA文庫原作アニメはソフトバンクのアニメ放題が強いのか? と調べてみると「這い寄れ! ニャル子さん」「ダンまち」「のうりん」など、いずれもdアニメストア・アニメ放題両方で観られる。ついでにいうと芳文社アニメは「桜Trick」はアニメ放題しか観られず、「幸腹グラフィティ」「わかば*ガール」はdアニメストアにしかないといった違いがあった。

 ただ、dアニメストアがどの携帯電話事業者を使っていても契約できる「キャリアフリー」なのに対して、アニメ放題はソフトバンクの携帯電話の利用者のみが契約可能な「キャリア縛り」のあるサービスだ。ソフトバンクのiPhoneか、Android 4.01以降の対応機種を購入していないと契約できない。

 ドコモユーザーが今からアニメ放題を契約しようとすると、ホワイトプラン契約でも月に3,000円程度が2年縛りの場合は24カ月で7万2,000円程度、それにプラス端末代がかかることになるので、これ目的でソフトバンクに乗り換えるというのは現実的ではない。

 従って、アニメ放題は基本的にはソフトバンクのスマートフォンを契約しているユーザーのみにお勧めすることになるが、dアニメストアの料金と合わせても月額800円程度(税込832円)。1カ月の無料体験もあるので、観たい作品が1つのサービスだけでカバーできない場合は、両方に加入してみてもいいのではないかと思う。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身のライター。88年、パソコン誌「Oh!X」(日本ソフトバンク)にて執筆開始。PCやスマートフォン、モバイル関係のQ&A、用語解説、プログラミング解説などを書く。代表作は「ケータイ用語の基礎知識」(インプレス・ケータイWatch) Oh!X誌上では「オタッキー(で)」とも呼ばれた、その筋人。最終学歴は東海大学漫画研究会。ホームページはhttp://ochada.net(イラスト : 高橋哲史)